トランプ政権に対する助言機関が解散 いっそう遠のく税制改革と大型インフラ投資

製造業評議会が解散

ビジネス界のリーダーから構成される、トランプ政権に対する助言機関、製造業評議会が、解散を決めました。

事件の背景は、こうです。

まず先週末にバージニア州シャーロッツビルでネオナチ集団と反対派が衝突し、死者がでる事件がありました。
この事件に関し、アメリカ国民は、トランプ大統領がネオナチ集団を非難することを期待しました。
しかしトランプ大統領は、日和見的な発言で、フラフラと意見を変えました。

この様子を見て、トランプ大統領の経済アドバイザーの機関である製造業評議会に名前を連ねているCEOが、続々と辞任を表明しました。
そうするうちに、他のメンバーも、それぞれの企業の顧客や従業員から「なぜ辞めない?」と突き上げを受け、評議会そのものを維持することが困難になったのです。 

なお、もうひとつの助言機関、戦略政策フォーラムも、同様のプレッシャーを受けていました。
製造業評議会が解散を大統領に打診したところ、大統領は「それなら、この際、製造業評議会も、戦略政策フォーラムも、両方とも取り潰す」と機先を制してツイートしました。

大統領としては、自分からこの決断をしたように見せ、体面を保つ必要があったのです。
実情としては、ビジネス界のリーダーは大統領を見限り始めています。

解散の影響

もちろん、製造業評議会や戦略政策フォーラムは、単なるアドバイザー的な役割なので、それが解散になっても直接、国政には影響は出ません。
しかし今回の事件は二つの点で投資家を残念がらせました。

まずトランプ大統領は「経済のことなら、おれに任せておけ!」と胸を張っていたにもかかわらず、これらの評議会が解散したということは「実業界がトランプを見放した」と言う印象を与えました。

次にトランプ政権が、念願の税制改革や大型インフラ投資の法案を通過させるにあたって、実業界からの支援、ならびに議会への働きかけは大変重要です。
しかし評議会が解散したということは、意見のとりまとめが、今まで以上に難しくなったことを意味します。

つまり米国経済の推進要因と期待されてきた税制改革ならびに大型インフラ投資法案が、一層遠のいたのです。

実業界はトランプ大統領を恐れなくなっている

もうひとつ重要な点は、実業界が、もうトランプ大統領を恐れなくなっているという点だと思います。

トランプが大統領に就任する前後は、(いつツイッターで攻撃されるか?)とアメリカの大企業の経営者は戦々恐々としていました。
しかしだんだんトランプ大統領のクレディビリティーが失われるに従って、実業界は大統領から攻撃されることを恐れなくなっています。

実際、8月16日にトランプ大統領は「アマゾンは小売業にとってたいへん悪い存在だ」と名指しでアマゾン批判をしましたが、株価は反応薄でした。
市場関係者もトランプ大統領の「おおかみ少年」ぶりに、慣れっこになっているのです。

ある意味、アメリカは、何も成果がなく、支持率も過去最低のトランプ政権に対し、「損切り」モードに入っているとも言えます。
(大統領からはなるべく距離を置いた方が良い)と考えるCEOや政治家が増えているのです。