カナダドル円-2024年相場予想と戦略-

金融政策の行方と原油価格次第か?

※本記事は2023年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

【2023年のカナダドル円相場を振り返って】

 2023年のカナダドル円相場は、カナダ中銀の政策金利の引き上げ、原油や金価格などが堅調な展開を維持したことで、前年に続き歴史的な高値を目指す動きが続きました。

  年初は、前年の財務省の円買い介入の影響に加えて、黒田日銀総裁の任期満了の絡めた日銀総裁人事の思惑、米地銀2行の破綻を受けたリスクオフの動き、カナダ中銀が3月の会合で、2022年3月から続けて来た利上げを一旦停止したことなどから、3月24日に94.08まで値を下げました。その後は、これを年間安値として、新たな日銀総裁に就任した植田氏が、しぶとく金融緩和政策を維持することを表明し、5月カナダ中銀が利上げを再開したこともあって109.51まで上昇しました。ただ、7月の会合で、日銀が投機筋の日本国債売りのパワーに負けて、YCCの上限を撤廃したことなどから104.22まで利食いに押されました。

 夏場は、カナダ中銀が7月に0.25%の利上げも、9月に再度据え置きを発表し、その後政策金利の当面の据え置きを公表しましたが、ハマスのイスラエル侵攻もあって、原油価格や金価格が年間の高値まで上昇する過程で、前年の高値110.53を上抜け、111.17と2007年の以来の高値をつけました。

 その後は、植田日銀総裁が、国会において「年末から来年にかけて、よりチャレンジングになる」との発言により、再び早期の金融政策変更の思惑が高まったこと。また、今年最後のFOMCでは、政策金利が据え置かれ、加えて2024年のFF金利見通しが、再び6月時点の4.6%に引き下げられたことがサプライズなり、12月14日には、ドル円相場が140.97まで急落しました。カナダドル円も104.25まで売りに押されましたが、これを維持して、比較的堅調な姿で2023年の取引を終了しようとしています。

【2024年の主な材料】

 以下が現在、知り得る2024年のイベントや材料です。注目度の高いものは赤字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更される可能性があることは、ご了承ください。

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2024年は、米国の大統領選挙が、大きな波乱要因となるのか注目となりそうです。

 米大統領選に関しては、トランプ元大統領の再立候補が話題となっています。ただ、前回の大統領選挙に絡めた自身の疑惑に関連して、多くの告訴を抱えています。また米憲法修正第14条によって、一部の州で「大統領選出馬の権利がない」との判決も出ています。裁判自体は長期に渡ることで、大統領選まで時間稼ぎが可能でしょうが、もし、こういった裁判で、次々に有罪が確定した場合、7月の共和党の全国大会に向けて、予備選を勝ち抜けるかは不透明感が残りそうです。また、そうでなくても、もしトランプ大統領が再び大統領に返り咲くなら、バイデン政権の政策を全て「ちゃぶ台返し」する可能性が高く、その場合恐らく世界の政治や経済、金融市場に大きな混乱を招く可能性高いことは、留意しておきたいと思います。

 一方バイデン大統領も次男のハンター・バイデン氏の問題で、共和党が同大統領の弾劾裁判に向けて動いています。また、高齢であることもあって、健康問題も懸念として残りそうです。つまり、夏の全国大会に向けて、両氏が候補者としての立場を維持出来るのかは、現状は全くの不確実です。その場合、次の候補者次第となるでしょうが、現状米国の大統領選の結果を占うことは非常に難しく、特に金融市場においては、この問題に関して、2024年を通して、常に経過を確認しておくことは重要となりそうです。

 また、台湾総統選、ロシア大統領選、9月の岸田首相の任期などの政治的日程が、予定されていますが、台湾の総統選で与党が勝利しても、中国が軍事行動に出る可能性は低く、プーチン大統領の再選は揺ぎ無く、為替・金融市場に大きな影響を与えることはなさそうです。ただ、直近米国の支援が止まる可能性が指摘されているウクライナ情勢では、今年も混戦が続く可能性が高いと思われますが、もし何かの政治的な動きが出て、停戦や終戦に向かう兆しが見えた場合、過去2年のエネルギーや商品市況に、大きな巻き戻しの動きが出るかもしれません。その場合、ユーロ相場に大きな動きが出る可能性があることは注意しておきましょう。

 一方金融市場では、5月にスタートするNY株式の決済の短縮化が、相場の波乱要因となるとの指摘が出ています。現状2営業日後に決済する売買代金を、翌営業日に決済を前倒しするというものですが、世界的な市場では、まだ2営業日後の決済が主流です。為替市場も、2営業日後に決済されますが、株式の取引に伴う為替ヘッジのリスクと絡めて、機関投資家やファンドなどの対応が遅れているようです。一部でこの変更によって、流動性のリスクも指摘されており、金融市場に混乱が生まれる可能性に注意しておきましょう。  その他、今年も大きな地震や自然災害、ガザの問題などいろいろ自然・地政学リスクが、市場の混乱につながっています。2024年も温暖化の影響など、何が起きるのかわかりません。こういった事象は突発的に起こることで、準備することはできませんが、常に、こういったリスクも念頭に入れて、相場に臨む姿勢を維持しておいた方が得策もしれません。

【2024年の注目点】

 2023年の相場環境を踏まえて、2024年のカナダドル円相場の注目点をまとめてみました。

  • カナダ中銀のスタンスは?
  • 日銀の政策変更が遂に実現するのか?
  • 加日金利差との連動性
  • 原油との連動性

〇 カナダ中銀のスタンスは

 カナダ中銀は、2022年3月に、2018年5月以来の利上げに踏み切り、2023年7月には、政策金利を5.0%まで引き上げました。実に一年半に4.75%の利上げを実行して、現在は政策金利を5.0%で据え置いています。

 2024年カナダ中銀が、どういったスタンスとなるかは、やはりカナダの景気や物価の今後の状況次第ですが、一応12月の会合のカナダ銀行の声明では、「経済の減速により、インフレ圧力が低下している」、「理事会は依然としてインフレ見通しに対するリスクを懸念しており、必要に応じて政策金利をさらに引き上げる用意がある」としています。また、マックレム加銀行総裁は、「利下げについて議論するのは時期尚早」、「経済は2024年も低迷が続くと予想」、「明らかに物価安定への道筋にある場合は利下げを検討」と述べています。

 どちらなのかはっきりしませんが、下段のチャートのように、インフレ率は、確かに低下傾向を示しています。カナダ中銀は、インフレ・ターゲットを1-3%に現在も設定していますが、来年インフレ率が、確実に低下できるか、中央銀行も判断できない状況が続いているようです。そうなると我々も、この状況をつぶさに観察していく必要がありそうです。

 だが、一方でグラベル加銀行副総裁の次の発言には、注目してください。同氏は「10月の家賃インフレは40年ぶりの高水準に加速、住宅供給は近年の移民増加に追いついていない」、「人口動態に伴う需要の急増と既存の構造的供給問題が相まって、 家賃インフレが上昇を続けている可能性がある」と述べています。

 実は、今年6月にカナダ統計局が、カナダの総人口が同局の推計で、4000万人を超えると発表しています。また、カナダの人口は1950年代のベビーブーム以来の高い増加率となっていて、その大部分は移民の流入によるものとみられているようです。現在カナダ政府は、積極的な移民受け入れ政策を取っていて、2043年までに、人口が5000万人に達するとされています。

 こういった面を考慮すると今後もカナダ経済には、成長期待が維持され、インフレの高止まりも想定されそうです。カナダの政策金利は、それほど大きく下がることは無いのかもしれません。

有限会社フォレックス・ラジオ作成

 以下は、2023年のカナダ中銀の政策金利公表予定日です。

尚、カナダ中銀は、2024年の金利政策決定を、東部冬時間午前10時(日本時間午前0時)から、東部冬時間午前9時45分(日本時間午後11時45分)に変更、金利政策決定ごとに記者会見を開始する予定しています。

カナダ中銀政策金利公表

01月24日+金融政策報告公表

03月06日

04月10日+金融政策報告公表

06月05日

07月24日+金融政策報告公表

09月04日

10月23日+金融政策報告公表

12月11日

〇 日銀の政策転換が遂に実現するのか?

 2023年は、日本の30年にわたるデフレ経済から脱却したことで、日銀の金融政策の転換が、大きなマーケットの材料となりましたが、実際新たに就任した植田総裁は、YCCの上限撤廃などの一部変更を実施するも、結局2023年度中、本格的な政策変更に踏み切ることはありませんでした。

 一時植田総裁の発言に、期待感を持つ動きもありましたが、今年の最後の会合では、「我が国の景気は緩やかに回復している」としながらも、「経済・物価を巡る不確実性は極めて高い」、「粘り強く金融緩和を継続していく」として、「賃金から物価への波及、サービス価格への動向を見たい」と今後も慎重姿勢を続けそうです。

 ただ、実際の物価の動きを見る限りは、特に円安の影響が強く、日本がコストプッシュ・インフレに晒されていることは明らかな事実です。2024年もこの円安が続けば、引き続き物価が高止まりすることは間違いないでしょう。

 ではなぜ日銀は、政策を動かせないか?

 日銀や人々がデフレ慣れしていることも、大きな要因の一つですが、加えて、これは憶測ですが、植田総裁の過去の発言からは、「拙速な引き締めで物価目標が達成できないリスクの方が大きい」としています。

過去自身が速水元日銀総裁時代に、審議委員を務めていた時期、速水日銀の利上げが、景気の腰折れにつながったことへの悪いイメージが残っていて、現状の日本経済においても、自身の政策転換が、再び景気の腰折れにつながることを恐れているのではないかと疑ってしまいます。通常金融政策は、「フォワード・ルッキング=将来の見通し」によって政策運営されますが、来年の春闘で、順当に賃上げが実施されるのを確認するまで、政策変更はないのではないでしょうか。

 そうなると政策が変更されるのは、早くても来年の4月会合以降であり、その場合も「マイナス金利の解除」、「YCC政策の撤廃」が限界で、その後も、長くデフレにつかり切った日本経済が、政府の減税策を受けても、強い上昇圧力をみせる可能性は低く、年内の「利上げ」に踏み切る可能性は低そうです。過去自身が速水元日銀総裁時代に、審議委員を務めていた時期、速水日銀の利上げが、景気の腰折れにつながったことへの悪いイメージが残っていて、現状の日本経済においても、自身の政策転換が、再び景気の腰折れにつながることを恐れているのではないかと疑ってしまいます。通常金融政策は、「フォワード・ルッキング=将来の見通し」によって政策運営されますが、来年の春闘で、順当に賃上げが実施されるのを確認するまで、政策変更はないのではないでしょうか。

 それでは、日本の長期金利動向も見ておきましょう。

 10年物国債の利回りは、3回のYCC政策の上限の変更で、一時1.0%に迫るレベルまで上昇しましたが、テクニカル的にははっきりと上ヒゲを出しています。下段のスロー・ストキャスティクスも、既に上昇し過ぎ(売られ過ぎ)の位置にあって、来年もこの1%を超えることはなそうです。一方下方では、流石に0.55%のそれ以前の高い位置は逆サポートされそうです。来年の日本国債の利回りとしても、0.55%から1.00%での推移が限界となりそうです。

 ただ、2024年も、長らく市場から全く注目を集めなかった日銀金融政策が、大きな注目となりそうです。以下は2024年の日銀金融政策決定会合や議事録の公表日です。しっかりと押さえておきましょう。

日銀金融政策決定会合(議事録公表日)

01月23日+展望リポート公表(03月25日)

03月19日

04月26日+展望リポート公表(06月19日)

06月14日(08月05日)

07月31日+展望リポート公表

09月20日

10月31日+展望リポート公表

12月19日

〇 加日金利差との連動

 また、以下はカナダと日本の金利差とカナダドル円相場を比較したチャートです。水色の時期は、若干連動性が薄れていますが、基本的にカナダドル円相場は、加日金利に連動して動いています。

  一応日銀は、2024年には、間違いなく金融政策を正常化に戻すと見られています。ただ、正常化もマイナス金利の解除やYCC政策の撤廃に留まり、政策金利の引き上げまで踏み込むことは無さそうです。一方カナダ中銀も、直近の強い利上げからは、一定の緩和策を実行する可能性はありそうです。ただ、カナダ政府が実施している移民政策などを考えると、大きく利下げする可能性は低く、2024年では、加日金利差が、大きく縮小すると考えるのは避けておいた方が良いかもしれません。

〇 原油との連動性

 カナダは、資源が豊富な国です。その中でも、オイルサンドは世界第3位の埋蔵量を誇っています。そのため、原油価格に経済が大きく影響を受けることで、カナダドル相場も連動性が高いことで知られています。

 以下のチャートは、カナダドル円と原油価格を比較したチャートです。 ご覧のように、2011-13年前後は、若干ブレのある時期もありますが、カナダドル円と原油相場の連動性は非常の高い状況が見えます。2024年のカナダドル円相場も毎月のOPEC会合や年2回開催される総会などに注目しながら、原油価格の動向を睨みながら対応することが望まれそうです。

 それでは、原油価格もチェックしておきましょう。

 以下は、2020年から直近の原油価格の月足チャートです。

 WTI原油先物価格は、6.20ドルの安値から綺麗に波動を描いて上昇も、しっかりと130.50ドルで第5波の高値をつけて、現状は調整を63.57ドルで維持し反発を95.03ドルでCapしています。一応この位置がレジスタンスとして機能していて、一方で安値から63.57ドルの戻り安値を結んだサポートを割れていることは懸念です。また、下段のスロー・ストキャスティクスは、売られ過ぎでゴールデン・クロス気味ですが、ただ、未だしっかりと反転を示しておらず、今一歩調整のリスクをはらんでいるようです。あくまで63.57ドルと95.03ドルの次のブレイクがキーとなりますが、下値は第4波の安値61.74ドルまで割り込むと、次のターゲットは、第1波と2波の33.64-43.78ドル・ゾーンまでターゲットとなります。

 一方上値は85.41-95.03ドルを超えると再度98.65ドルや111.45ドルなどもターゲットとなる形です。

 原油相場は、ウクライナ情勢次第の面がありますが、今後85.41ドルやレジスタンスとなる86ドル前後が押さえると弱く、その場合43.78ドルを目指す可能性がありそうです。

  従って、2024年のWTI原油先物の想定レンジは、45ドルから86ドルを想定しておきたいと思います。そうなると連動性が高いカナダドル円相場は、まだ下値トライのリスクが残っていることは、留意しておいてください。

【テクニカル面】

≪ドルカナダ≫

 テクニカル面からまず、カナダドル円を構成するドルカナダ相場(カナダドルの対ドル相場)の長期月足をチェックしておきましょう。

 2007年11月の安値0.9059から反発が1.3065で抑えられて、再度調整を0.9405で維持して、1.4690と1.4668まで反発も、2つの上ヒゲがダブルトップとなり、調整が1.2007で維持される形となっています。

 現状この位置からの反発が1.3978でこのダブルトップを前に、長期のレジスタンスに抑えられています。下段のスロー・ストキャスティクスは、現状不透明な反発気味ですが、再度下落の兆候が見えています。今後のこの高値圏となる1.3892-1.3978ゾーンが抑え続けるなら上値追いは厳しい状況です。あくまで1.3978を越えて、更に上昇期待ですが、1.4668-90のダブルトップを越えるかは不透明です。ただ、超えると1.50や1.60のサイコロジカルがターゲットとなります。

 一方下値は、現状下値を支えている短期サポートの1.3000前後の維持では強いですが、維持できない場合、1.2288-1.2728ゾーンが視野となります。こういった位置が維持できれば、直ぐに下落は拡大しないでしょう。リスクは0.9405から1.4690と1.46681のフィボナッチ・リトレースメント50%となる1.2035-48を維持出来ずに、1.2007やサイコロジカルな1.20を割り込んでしまうケースです。その場合1.1279のそれ以前の高値、1.0622-1.0656の節目まで視野となりますが、こういった位置は最終サポートが控えていて、維持出来れば更に下落は進みません。リスクは0.9634や0.9405を割れるケースとなります。

 こういった面から、ドルカナダの来年の想定レンジを、1.2000~1.4000と想定します。

≪ドル円≫

 次に、テクニカル面からカナダドル円を構成するドル円相場を見ておきましょう。

 1989年からの長期のドル円相場の月足チャートです。

 ドル円相場は、1990年の160.35の高値から、2011年10月の75.31まで下落後、2022年10月には、160.35の高値と、147.66や125.86の高値を結んだレジスタンスを越えて、151.95まで急反発しました。

 特にこのチャートで注目して頂きたいのは、チャート形状から「E」の75.31をボトムとしたリバースH&Sを形成していることです。また現状は、このショルダー部分のネックラインとなる「D」と「F」をクリアして、151.95の上ヒゲで、アーム部分「G」の形成を完了しています。

 これを前提とすると、チャート形状の観点からは、75.31の安値を基準に、ロールシャッハ・テストのように、左右対称の動きをすることが、2023年の相場では、期待されていました。もし、その通りであれば、再び「J」の動きを「K」で繰り返し、「B」と同様に「I」の位置まで相場が下落して、その後再び「A」の160.35方向を目指し「I」を完了するというが想定です。

 ただ、2023年の相場は、「D」と「F」のネックラインを割れることはなく、再度高値を目指す動きに留まりました。つまり、前述の前提が崩れているわけですから、理想的なリバースH&Sは、実現しなかったという事です。

 そうなると次の見方は、あくまで昨年のレンジである127.23と151.95をどちらが先にブレイクするかで方向感が決まると考えざるを得ません。もし、2024年の相場が、151.95を越えて行くなら160.35の高値を目指す動きとなり、一方127.23を割れて、更にネックラインとなる「D」と「F」を割れるなら、「H」方向への調整リスクとなります。ただ、ファンダメンタルズ面を考えると、2024年に、そこまでの円高が再燃するリスクは、想定することは難しく、「D」と「F」のネックラインさえ維持されるかもしれません。あくまでこういった位置を割れて、120円程度までの下落が目途となりそうです。

 こういった面を考慮して、ドル円の想定レンジを130.00から150.00とします。

≪マトリックス・チャート≫

 加えてドルカナダとドル円の想定レンジから作成したマトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)をみておきましょう。

 ドルカナダの予想レンジを1.2000~1.4000、ドル円を130.00~150.00としましたので、これから算出されるカナダドル円の最大想定レンジは、92.86から125.00となりますが、大きすぎるので適正レンジを94.26から120.00とします。

≪カナダドル円≫

 それでは、最後にカナダドル円の月足を見てみましょう。

 月足チャートからは、106.49をトップとした大きなH&Sの形から「C」の右肩のネックラインとなる91.64-93.08を越えて、上昇が大きく110.54や111.17まで上値を拡大しました。この位置は過去の高値圏からは不透明ですが、少なくともトピッシュな上ヒゲでダブルトップをつけていることは象徴的な展開です。下段のスロー・ストキャスティクスが、再上昇しておりダイバージェンスの可能性はありますが、今後もこの上値が押さえると更なる上昇は厳しそうです。あくまで超えて、113.23、116.85の戻り高値、歴史的な高値となる125.55が視野となります。  

 一方下値は、102.42、97.10-98.36の戻り安値圏の維持では良いがですが、過去の「A」や「C」のネックラインとなる91.64-94.30ゾーン、この中にある94.08の戻り安値を割り込むと、相場は崩れ気味となり、89.24、87.45,84.60、77.88の戻り安値が順次視野となりますが、最終サポートからは、維持出来れば更なる下落は想定できません。ただ、73.82や73.77まで割り込むと68.40の最安値がターゲットとなります。

【予想レンジと戦略】

 それでは以上を踏まえて、カナダドル円相場の来年の戦略についてお話します。

 一応来年は、過去のような新型コロナウィルスの感染拡大やウクライナの情勢の勃発など予測不能な事態が発生しない前提でお話させて頂きます。  2024年のカナダドル円の想定レンジは、マトリックス・チャートも参考にして、95.00から110.00とします。

 戦略の前提としては

  • カナダ中銀は、来年利下げの可能性がありますが、利下げ幅は限定される見通し。一方日銀の金融正常化は、小幅に終わる可能性が高く、加日の金利差縮小は大きく広がらない。
  • ウクライナ情勢は不透明ですが、連動性の高い原油価格が、テクニカル的に調整し易く、上値追いは避けたい。
  • テクニカルからカナダドル円やドル円のスロー・ストキャスティクスは、未だデッド・クロスを示していませんが、ダブルトップからは調整リスクが先となりそうで、将来的なオシレーターの悪化には注意しておきたい。
  • カナダの人口増加傾向、地政学リスク回避もあると見られるが、移民の増加傾向が続くと、移民のカナダドルへの資産移動も高まることで、将来的なカナダドル相場の行方は明るいとみたい。あくまで押し目でのカナダドル買いを推奨したい。

また、タイミング的な注意点は

①1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。

②ドル円は、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意です。ただ逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。

③9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。

 基本的な、カナダドル円の中期スウィングトレードとしての戦略は、早期は、111.17が押さえると、これをストップに売り狙い。また超えても、歴史的な高値の上抜けは想定できず、125.55を睨んで、売り直し場を探したい。売りのターゲットは、総じて100.00-105.00ゾーンは利食いながらの対応となります。

  一方買い戦略は、95-100.00ゾーンで検討しましょう。ストップは、オーバーシュートもあり注意が必要ですが、一応94.08の戻り安値割れとします。またもし、割り込むケースがあって、85.00方向の下落では買い直し、この場合のストップは、84.68割れとなりますが、更に75.00まで買い下がりも一考です。ただ、こういった下落では、反発も限定されることで、95-100.00などが押さえると利食い優先が良さそうです。

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。