
トランプ次期政権次第も需給の円売りと円買い介入との駆け引き
※本記事は2024年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。
【2024年のドル円相場を振り返って】
2024年のドル円相場は、2022年や2023年に続いて、円の軟調な展開が続きました。
ドル円相場は、年初140.92でオープン。能登半島地震発生により経済に影響を与える懸念はありましたが、新NISA制度スタートによる株価の上昇期待などから、円がじり安の展開となりました。日経平均株価はバブル期の最高値38915円を超えて4月19日には41087円の高値を示現しました。ドル円相場は、3月の日銀金融政策決定会合で政策金利を0.10%引き上げマイナス金利から脱出。量的緩和策の解除の方針も示されましたが、同時に利上げを急がない姿勢が示されたこともあって、4月29日に160.17の高値をつけました。
ただ、ゴールデン・ウィークを前に、円安に懸念を強める財務省が、4月29日と5月1日の2日間で、9兆8千億円相当の強力な円買い介入を実施したこともあって、5月3日には151.86まで下落しました。しかしながら、このレベルでは本邦輸入勢や投機筋からの値ごろ感も強く、米財務省が半期為替報告書で日本を再び「監視国」に認定したことで、市場介入に踏み切り難くなるとの見方が強まりました。
6月のFOMCでは政策金利が据え置かれるも、FOMCメンバーのFF金利見通しが、前回の年内2回利下げ見通しから1回に後退、7月3日には直近高値を超えて161.95まで高値を更新しました。現状これが2024年の最高値となっています。しかしその後、円安に懸念を示す神田財務官が自身の退任を控えた7月11-12日に再び5兆5千億円規模の円買い介入に踏み切ったこと。7月31日の日銀金融政策決定会合での利上げ思惑の高まり。米7月雇用統計が弱い結果となり米国の景気後退懸念が高まったこと。日経平均株価が過去最大の下げ幅となる前日比で4753円の下落となったことなどから、リスク・オフの動きが強まり8月5日には141.70まで売り込まれる展開となりました。
株価の急落に批判が高まったことで、内田眞一日銀副総裁が、「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要」、「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と発言したことが安心感を誘い、日経平均株価が大きく反発、ドル円も8月15日には、149.39まで反発しました。しかし、米労務省が2024年3月末までの一年間の非農業部門雇用者数の数値を大幅に下方修正したことで、FOMCでの更なる利下げの思惑が高まったことなどから、9月16日には139.58と2024年の安値まで下落しました。実際9月18日のFOMCでは、想定外の0.50%の利下げが実施され、ドット・チャートでは年内にあと2回の利下げが想定されました。
その後は年末に向けて再び本邦実需筋の円売りニーズが強く、自民党の総裁選や米大統領選に対する思惑もあって、日本の長期金利が上昇基調を強めるも、米国の大統領選挙では、接戦が伝えられていたトランプ氏が大差をつけて勝利。米上下院も共和党が、過半数を上回ったことで、「トリプル・レッド」が実現。新大統領が政策を推進し易くなることから、トランプ氏が主張する中国などに対する大幅関税強化、移民の制限や減税策を睨んだインフレ懸念が高まり、9月17日に3.600%まで低下していた米10年物国債利回りが大幅に上昇。11月15日に156.75の戻り高値をつけて、現状(12月13日時点)では、12月のFOMCや日銀金融政策決定会合を控えて、ドル円は高値圏で揉み合い気味の展開となっています。
【2025年の主な材料】
以下が現在、知り得る2025年のイベントや材料です。注目度の高いものは赤字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更される可能性があることは、ご了承ください。

リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、やはり年初から大注目となるのは、1月20日からスタートするトランプ次期政権です。トランプ氏は既に追加関税など多くの発言をしていますが、就任当日から多くの「大統領令」に署名する見通しです。その内容次第では、市場を大きく混乱させることは間違いなさそうです。トランプ氏の政策に関しては後述しますが、2025年の相場を考える上で、特に注意を払っておく必要があるでしょう。
また、2024年は「選挙の年」でしたが、2025年にはあまり大きな選挙はありません。ただ、ショルツ独首相の連立政権が崩れたことで、2月には独連邦議会選挙が、前倒しで実施されます。2024年、世界各国で与党勢力がことごとく選挙で敗退しています。この潮流は止まりそうもありません。保守派与党のキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)が大敗するようなら、大きな混乱を招きそうです。その場合ユーロ相場の圧迫要因となることは留意しておきましょう。
一方日本では、7月に参議院選挙と東京都議会選挙が行われます。都議会選挙の影響は直接的にはありませんが、昨年の解散衆議院選挙では、裏金問題などから自民・公明両党が過半数を割れたことで、日本の政局も混乱しています。一部では衆参同時選挙の可能性も指摘されていて状況次第では、再び自公連立が過半数を維持できない可能性もありそうです。その場合石破総理の総理存続も難しくなりそうです。金融面では政局不安が、株価に悪影響を与えるでしょう。為替に対する影響は不透明としても、通常なら株価の下落がリスク・オフの円買いにつながる可能性を考慮しなければなりません。ただ、もしこれが株安、債券安、円安と「トリプル安の日本売り」に繋がるなら大惨事となりそうです。2025年は日本の政局にも注意を払っておきたいと思います。
その他では、1月から再び米国の債務上限の期限を迎えます。この問題は、12月13日現在あまり話題となっていませんが、恐らく年内に延長され直ぐには問題にならないでしょう。ただ、2025年初頭には再び大きくクローズ・アップされる可能性があり、問題が長引けば米国債の格下げのリスクとなります。毎年のことで若干食傷気味の話題ですが、特に2025年はイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」がスタートします。「小さい政府」を目指す共和党が、本当に米国の財政問題を解決できるのか、それとも混乱につながるのか注視しておきましょう。
また、欧州関連では、7月からブルガリアが、通貨ユーロを導入する予定を表明しています。現在の情報ではまだ確定しているわけではありませんが、もし今後決定するようなことがあれば、ユーロを取引する場合には注意が必要です。EUの参加国が新たにユーロを導入する場合、導入日に一気に通貨が変更されます。ブルガリアの場合、元来2025年から予定されていましたが、7月1日に一旦延期されたようです(過去の通例では1月1日に導入するのが基本)。その場合6月末のコンバージョン・ファクター(交換率)によって、一気にブルガリア内の資産・負債が、ブルガリア・シフからユーロに代わります。つまり、ブルガリアの企業や個人などは、この変更によって大きな為替リスクを負うことになります。当然それを避けるために、事前にヘッジしようとうする行為が自然に行われると思います。つまり、ユーロ・シフ相場では、7月に近づくにつれてユーロ買いが増加しユーロを押し上げる形になります。
近年では、エストニア(2011年)、ラトビア(2014年)、リトアニア(2015年)、クロアチア(2023年)の導入時に、国の規模により影響度は限られますが、このような傾向がユーロ相場の動きに見えています。まだ2026年からの導入となる可能性がありますが、どちらにしても、もし決定された場合のユーロの動きにも注目しておきましょう。
加えて、近年では年初から大きく世界を変えるような事件や事象が起きています。2020年にはパンデミック、2022年はロシアのウクライナ侵攻、2024年は元旦から能登半島地震、年央からはイスラエルのガザ侵攻など金融市場に大きな影響を与える「リスク」が発生しています。2025年もそのような「ブラック・スワン」が起きるかは誰にもわかりません。起きて欲しくはないですが、奇しくも2025年はアストロ的に、太陽の黒点数がピークに達します。以下のチャートをご参考頂きたいのですが、太陽の黒点の数は、約11年周期で増加・減少を繰り返しています。そして増加のピークと減少のピーク時(半期)には、ぴったりではありませんが、過去ドル暴落、ブラック・マンデーやリーマン・ショックなど多くの金融ショックの発生と重なっています。これが2025-26年にピークをつけて、2031年まで減少過程に入ります。

特に黒点のピーク時は、太陽内で水爆の100万個分相当の爆発が発生し、太陽フレアによる電磁波が地球にも大きな影響を与えるとされています。それが地球を回る衛星を破壊・損失させたりすれば、GPSや通信、インターネット回線や携帯端末に過大な影響を与えるかもしれません。それが世界的に発生した場合、どういった混乱となるか恐ろしい気がしますが、特に金融関連で考えるとインターネットやコンピューターを取引の基盤としている「仮想通貨取引」に大きな影響を与えるかもしれません。それでなくても異常な高値となっていて危険ゾーンにあるような気がしますが、2024年10万ドルを超えたビットコイン相場が暴落でもすれば、その影響は世界的な資産クラッシュの動きにつながりそうです。
またこれは蛇足ですが、日本の干支をベースとした相場格言に、「辰巳天井」という言葉があります。これは辰年と巳年の間に株価が大きなピークをつけて、下落相場に転換するというものです。日本の格言が米国や海外株式市場でも適応されるかは疑問も多いですが、辰年の2024年のNYダウやナスダック指数、日経平均株価の歴史的な高値更新やこの黒点のピークと合わせて考えると2025年は、大きな金融ショックが起きる可能性も捨てきれません。悲観的過ぎるかもしれませんが、少なくとも近年は、温暖化の影響もあってか、自然災害、加えてウクライナや中東紛争などの世界的な軍事紛争が続き、自然・地政学リスクが市場の混乱につながっています2024年7月13日に起きたトランプ氏の暗殺未遂と共に考え合わすと、トランプ氏が神がかり的に生還し、更に大統領選で勝利するという運命の不思議が、2025年以降の世界の分かれ目となるのかもしれません。
あくまで個人的な妄想ですから、信じて頂く必要はありません。それでなくとも、自然災害や紛争、金融リスクは突発的に起こることで、準備することはできませんが、常にこういったリスクも念頭に入れて、相場に臨む姿勢を維持しておいた方が得策かもしれません。
【2025年の注目点】
2024年の相場展開を踏まえて、2025年の注目点をまとめてみました。
- トランプ次期大統領の政策は実現できるのか?
- FRBの利下げ姿勢は続くのか?
- 日銀はどこまで利上げするのか?
- 続く日本の貿易赤字
- 円買い介入はあるのか?
〇 トランプ次期大統領の政策は実現できるのか?
トランプ氏は大統領当選前から、様々な発言をしています。どこまで本気でやるつもりなのかは分かりませんが、一応現在彼が掲げている政策を以下にまとめてみました。
1. 移民政策:不法移民の強制送還、「出生地主義」の廃止
2. 経済政策:トランプ減税の延長または恒久化、法人税の引き下げ、 全ての輸入品に10~20%の関税、中国からの輸入品には最大60%の追加関税、CHIPS法に否定的
3. 外交政策:ウクライナへの支援縮小、NATO加盟国の負担増・必要に応じて米国の関与の見直し
4. エネルギー政策:「国家エネルギー会議」を新設、化石燃料の推進や輸出の後押し、再生可能エネルギーへの移行を遅らせる
5. 環境問題: パリ協定からの離脱、IRA法の見直し(EV補助金の廃止など)
6. 教育政策:教育省の廃止、教育政策の管理を州や地方に委譲
7. 社会政策:連邦レベルでの中絶禁止法案に対する拒否権行使、中絶の権利は各州が決定すべき、LBGT+Qの権利に関するプログラムの廃止
8.「政府効率化省(DOGE)」の新設:連邦政府の規制撤廃、行政部門の縮小、歳出削減
特に米上下院の共和党勝利で、「トリプル・レッド」となったことで、トランプ次期大統領が掲げる政策が実現し易くなるとの見方が主流です。ただ、実際一部の共和党議員は、CHIPS法やIRA法の見直しに否定的とされています。この「トリプル・レッド」も実際は、2025年の補欠選挙によって変わる可能性が残っています。まだ盤石とはいえないことは、考慮しておきましょう。
この中で特に、金融市場に大きな影響があると思われる3つの課題に関して、注目されるポイントを見ておきましょう。
≪ウクライナ問題≫
トランプ次期米大統領が、2025年2月で3年目に突入するウクライナ戦争の終結に向けて元陸軍中将のキース・ケロッグ氏をウクライナ・ロシア特使に指名しました。彼が提唱する和平交渉案は以下の通りです。
1.停戦によって前線を凍結、非武装地帯を設置
2.停戦後は、英仏独軍などが治安維持のため非武装地帯を管理
3.ウクライナのNATO加盟を10年間延長
4.和平協定の締結に伴い、ロシアに対する経済制裁を段階的に解除
5.ウクライナに対する軍事援助と安全保障の継続
6.ただしウクライナが拒否した場合軍事援助の打ち切りもある、一方ロシアが拒否した場合、米国はウクライナ支援を強化する
これを両国が受け入れるかは不透明ですが、既にトランプ氏は2024年12月7日、ノートルダム大聖堂の再開式典において、マクロン仏大統領の仲介で、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談しています。一部にここで一定の合意があったとの可能性も指摘されています。
特にトランプ次期大統領は、以前から「就任後24時間以内にウクライナ戦争を終結させる」と発言しています。ロシアと水面下で交渉が進んでいる可能性もあって、これが本当に実現すれば、トランプ次期大統領の「MEGA」の実現に大きな支援となり、ノーベル賞受賞の期待感にもつながりそうです。
その場合金融市場はどういういった反応を示すでしょう?
当然株価などは好感すると思われますが、ドルが買われるかはわかりません。ウクライナ戦争での懸念が、過去3年上値を押さえていた欧州通貨、特にユーロ、スウェーデン・クローナ、ノルウェー・クローネ、ポーランド・ズロチなどの対ドルでの買い戻しにつながる可能性で見ています。また、原油や金には利食いが出てくるでしょう。
ただ、個人的には簡単ではないと考えています。トランプ氏は、プーチン露大統領と仲が良いとしていますが、彼はもっとしたたかです。ロシア国民はこれまで大きな犠牲を払っており、簡単に許すとも思えませんし、経済制裁の段階的な解除がされるとしても、得るものは少ないでしょう。ともかく、プーチンがカギを握ることを考えると、交渉の決裂の可能性は考慮しておきたいと思います。
≪トランプ氏が主張する関税強化策≫
「タックス・マン」を自称するトランプ氏は、既に大統領選での勝利後、早々と「メキシコとカナダからの全ての輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加関税を課す」と表明しています。以前は「全世界からの輸入に一律10~20%、中国には100%の関税を課す」と述べていて、若干数字的に矛盾があるようです。
これは米国の関税に関しては、通商法や通商拡大法の規定があって、議会での決定がなければ、トランプ次期大統領の一存だけでは変えることはできません。トランプ大統領第1期の時も、就任後直ぐには追加関税は実施できませんでした。ただ、この「メキシコとカナダの25%、中国に10%の追加関税」に関しては、米国で大きく問題となっている「フェンタニル」という麻薬密輸に関して、十分な措置が講じられていないという「国家安全保障上」の理由を適応することによって、直ぐに実施出来る料率のようです。その場合はやはり、当該通貨に売りが強まる可能性には注意が必要となります。
ただ、「全世界からの輸入に一律10~20%」の追加関税となると、話は複雑となりそうです。北米では、北米通商条約(NAFTA)を2018年に「USMCA」に切り替えています。既に世界的には、様々なFTAやFAが締結しており、自由貿易の流れが強まっていることや、実際追加関税によるコストは、米国民が負担することになります。トランプ氏は、あくまで「ディール的な駆け引き」として利用している可能性もあって、2025年早々この問題に大きな懸念を持つ必要はないようです。
≪「政府効率化省(DOGE)」の行方≫
トランプ次期米政権で政府外の助言機関として、実業家のイーロン・マスク、ビベック・ラマスワミ両氏が主導して2025年から発足します。
この「DOGE」の役割は、連邦政府の規制撤廃、行政部門の縮小、歳出削減の3本柱として、少なくとも年間5000億ドル(約77兆7千億円)の歳出削減を目指します。また国際機関への拠出金を削減し、政府機関の余剰人員を減らすために民間企業への転職を促す方針も明らかにしていて、ホワイトハウスの行政管理予算局(OMB)とも連携し、建国250周年を迎える2026年7月までに一連の改革を行う計画です。
米国の財政赤字が巨額であることを考えると実際にこういった削減が実現できれば、米経済に良い効果を与えることになるでしょう。ただ、一方で中央政界の既得権益層からは大反対が起きる可能性が高く、米国の分断と2極化を拡大させ経済社会的な大きな混乱の要因となる可能性にも注意が必要です。
以上簡単にまとめてみましたが、現状市場で考えらえている「トランプ政権→景気の過熱→インフレ→ドル高・株高」という「トランプ・トレード」シナリオもあまり期待を強めない方が良いかもしれません。その面では、関税強化策や政府効率化省の問題は、先行きの長い話として、直ぐに影響は見えないでしょうが、就任時に本当にトランプ次期大統領が、ウクライナ戦争を終わらせることが出来るかは大きな注目です。
実現できるなら政権の評価や威信は高まるでしょうが、もし失敗するようならトランプ次期政権の失望に変わりそうです。こういった面に関しては、相場がどういった反応を示すかは不透明ですが、トランプ氏は態度をころころ変えることも多く、第1期トランプ政権の時と同様、2025年も荒れた相場展開となる可能性に注意して対応するのが良いかもしれません。
〇 FRBの利下げ姿勢は続くのか?
FRBは、2022年3月からの利上げ姿勢を変更。遂に2024年9月の会合で0.50%の大幅利下げを実施しました。その後も年内2回の利下げ、2025年では4回の利下げを実施する見通しを発表しています。(参照:以下ドット・チャート)

ただ、現在は米国経済が比較的底堅く推移しており、一時懸念の高まった米労働市場にも下げ止まりが見え、トランプ氏が米大統領選に勝利したこともあって、2025年の利下げ見通しを上方修正するとの思惑が高まっています。
それでは以下の1990年からの米国の政策金利の推移をみてみましょう。

このチャートでの注目点は、FRBは利上げも利下げも一旦政策変更を開始すると、1-2回の会合での据え置きというクッションはあっても、方針を継続する傾向があるということです。また利上げ時のピークは、1994年から2000年の利上げ時期を合算して考えると3回のピークもだいたいは、13-15ヶ月程度で終了しています。そうなると今回も5.25-5.50%まで利上げした政策金利ですが、一旦引き下げを開始したことから、この流れは変わらないと思います。
あくまでパウエルFRB議長が指摘するように、今後の「データ次第」ではありますが、FRBがインフレ・ターゲットとする2%を前に、中立金利とされる「Longer Run」金利となる3.00%までの政策金利の引き下げは、2025年、2026年以降あり得ない話ではありません。
加えて米長期金利の動向もチェックしておきましょう。以下は米国10年物国債利回りの月足チャートです。

米10年物国債利回りは、4.997%まで一時上昇しましたが、FRB要人の懸念発言が相次いだこともあり、その後は3.600%まで低下後、現状は反発気味の推移となっています。ただ、金利は4.733-4.510%が上値を抑え、下段のスロー・ストキャスティクスも、上昇し過ぎ(売られ過ぎ)のレベルにあります。確かに3%近辺は、FRBの中立金利として支えられても、こういったレベルを超える可能性は低く、当面は3.600-4.510%の推移に留まると見ています。そうなると日米金利差からのドル買いは、日銀が政策金利を据え置いたとしても、限られる可能性には注目しておきましょう。
以上を整理するとFRBは、米経済がソフト・ランディングしても、過去の大幅な金利引き上げから、米国の商業用不動産市場に痛みが見えること、米銀などが債券市場の下落で大きく評価損を抱えていることを鑑みると、2025年3%台までの利下げを実施する可能性が残っています。その場合米10年債利回りも総じて3%台から4%台の推移に留まり、5%を超えるような可能性は低く、金利面からのドル買いには限界があると思っています。
以下が2025年度のFOMCに関連する予定日です。
FOMCの金融政策の行方は、世界の金融経済に大きな影響を与えることで、パウエルFRB議長の発言や例年8月に開催されるジャクソンホール会議と合わせて、2025年もこの日程をしっかりと押さえておいてください。
2025年FOMCの日程(議事録公表日=2週間後の火曜日)
01月28日-29日(02月19日)*地区連銀の投票権メンバーの入替
03月19日-20日+FRBスタッフの経済見通しとFOMCメンバーのFF金利見通し公表(04月09日)
05月06日-07日(05月28日)
06月17日-18日+FRBスタッフの経済見通しとFOMCメンバーのFF金利見通し公表(07月09日)
07月29日-30日(08月20日)
09月16日-17日+FRBスタッフの経済見通しとFOMCメンバーのFF金利見通し公表(10月08日)
10月28日-29日(11月19日)
12月09日-10日+FRBスタッフの経済見通しとFOMCメンバーのFF金利見通し公表(12月31日)
〇 日銀はどこまで金利を引き上げるのか?
2024年は、日本が30年にわたるデフレ経済から脱却したことで、遂に年3月の日銀会合で、マイナス金利から政策金利を0.10%引き上げ、量的緩和策の解除、YCCやETF購入の停止を表明しましたが、7月に政策金利を0.25%まで引き上げた後は、現状(12月13日現在)据え置きを続けています。12月の会合で政策金利を引き上げるか注目ですが、リポート作成時では、「トランプ政権の誕生で米経済の先行きに不透明感が高まっているうえ、春闘の賃上げ動向を確認したい考えで、利上げを急ぐ必要はないとの判断に傾きつつある」、「消費者物価は前年比で、2025年度以降は2%に届かない可能性がある」として未だ政策金利の引き上げを躊躇しているようです。
以下日本の2013年からの全国総合物価指数のチャートをご覧ください。
このチャートは、2020年を基準とした物価の動向を「インデックス」で示したチャートです。通常物価を見る場合に、前年比で判断するのが基本です。現に日銀も「物価が2%で安定的に推移するまで金融緩和を継続する」としていました。しかしながら、この見方の場合、既に前年の物価が上昇していると翌年同月の物価は、あまり上昇していない形に見えます。これを以下のチャートのように、「インデックス自体」で見ると様変わりします。

2022年までデフレ状態が続いていましたが、黒田総裁の任期最後の1年前から、物価はレンジ・ブレイクしている形が見えると思います。一方政策金利の方は、植田総裁就任後1年を経てやっと引き上げに変わっていますが、この出遅れ感は異常です。
また、先ほどの全国総合物価指数のチャートを見てドル円レートと比較してみましょう。2022年からの物価の強い上昇が、円安とともに拡大している姿が見えると思います。日銀は円安を食い止めるためにも、早期に利上げを実施すべきだと思います。また、適切な時期に金利を引き上げておかないと、再び景気が悪化した場合に、金利を引き下げるという「伝家の宝刀」という手段も錆びついてしまうでしょう。
次のチャートは、2024年のドル円の日足チャートに、日銀金融政策決定会合の結果発表の日を、赤い矢印で示したチャートです。

パターン的には、円買い介入後の日銀の0.15%の利上げで、日経平均株価が4000円以上の急落を示現した時を除くと、日銀金融政策決定会合に向けて円安が進み、結果発表後は利食いによって一時的にドル円は下落するも、そこが再び起点となって円安が拡大しています。
つまり、これらを総合して考えると日銀の政策修正の遅れが、明らかに円安を招いていることは明白です。今後日銀がどこまで利上げするのかはわかりませんが、こういった金利修正の遅れが、更に円安を招くなら2025年は円安が止まるまで、日銀の利上げは続かなければなりません。あくまでこれは想定ですが、以下の過去の日米政策金利差とドル円レートの関係から見ると、2025年FOMCが3.50%まで利下げすると仮定するなら、日銀は1.50%まで政策金利を引き上げる必要があるようです。

ただ、こういった可能性は、現状の日銀のスタンスを見ると難しそうです。政策金利差の面からは、2025年も円の軟調な展開が続くと見るのが妥当でしょう。
以下が2025年の日銀金融政策決定会合や議事録の公表日です。日銀の政策の行方が、2025年のドル円相場を左右するでしょう。しっかりと押さえておきましょう。
日銀金融政策決定会合(議事録公表日)
01月24日+展望リポート公表(03月25日)
03月19日(05月08日)
05月01日+展望リポート公表(06月20日)
06月17日(08月05日)
07月31日+展望リポート公表(09月25日)
09月19日(11月05日)
10月30日+展望リポート公表(12月24日)
12月19日
〇続く日本の貿易赤字
日本の貿易収支は、過去長らく黒字を維持していましたが、2011年には、東北大震災の影響もあって赤字に転落。その後2016年に回復も見えていましたが、新型コロナウィルスの蔓延を受けたワクチンの購入や訪日外国人観光客の激減、更にロシアのウクライナ侵攻を受けた資源・商品価格の上昇、加えて大幅な円安の悪影響もあって、2021年以降再び、大きく赤字幅が拡大しています。
一応2022年10月以降は、資源・商品価格の落ち着き、訪日外国人観光客の持ち直し、円安の効果などもあって、一定の改善が示されていますが、これが2025年に黒字転換できるか保証はありません。
貿易赤字には様々な要因があって、一言で示すことはできません。訪日外国人はある程度回復していますが、過去のような中国勢の爆買いが見えていないこと、自動車産業を中心とした輸出の拡大も頭打ちとなっており、あまり期待するのは難しそうです。
一方で日本では、再生エネルギーへの転換が遅れていて、電気自動車の普及も拡大せず、2025年以降も高水準の原油・天然ガスなど石化エネルギーの輸入が続きそうです。まだ全貌は明らかになってはいませんが、2022年12月に決定した43兆円規模の防衛費の拡大政策によって、今後毎年5兆円弱の海外調達が実施されるようです。その場合当然ドルで決済されるはずですが、これが決定した当時は、1ドルが135円程度であったものの、もし現在の150円台の為替レートで支払われるなら、毎年円ベースで約1兆円程度の支払い増となるようです。2025年から国民の税負担がスタートしますが、こういった面からのドル需要が、2025年以降の円の上値を押さえそうです。
以下は2009年10月からの通関ベースの貿易収支と円ドル相場(下方が円安)ですが、通関ベースの貿易収支が、赤字転換したタイミングで、しっかりと円安が進んでいる形が見えています。

これを黒字に改善できれば、また円高の再来も期待できるのでしょうが、2013年から2021年の間、どうにか黒字を維持している時期でも、円ドルレートは、円高というより、円安傾向での揉み合いの動きに留まっています。国際収支との関連もあって、一概には言えませんが、貿易の代金決済は、直接的に為替市場に影響を与えることもあって、あくまでこの貿易収支が、過去のような黒字レベルを回復しないと、大幅な円高を期待するのは難しいでしょう。
以下は日本の貿易収支と原油価格を比較したチャートです。

特に2011年以降の貿易収支の悪化は、原油や液化天然ガス等の輸入増に起因しています。貿易赤字の拡大と原油価格に比較的連動性が高いことが見えてとれます。そうなると2025年以降の日本の貿易収支のカギを握るのは原油価格となりそうです。現状上げ止まりが見える原油価格ですが、2025年以降1バレル・60-65ドルを割れてくれるかは大きな注目となりそうです。
〇 円買い介入はあるのか?
2024年も、2022年に続いて財務省が強力な円買い介入を実施したことで、どうにかドル円の一過性の上昇を食い止めています。ただ、需給面からの円売りニーズが下値を支えて、なかなかドル円が下がらない状況が続いています。
過去、当局の介入は「短期的には効果があるが、中期的には効果はない」と指摘されるように、相場のトレンドを変えることはありません。 ただ、超長期で考えると1995年の超円高時期の円売り介入、2003-4年の溝口介入と結果的に効果を示したと言えます。こういった介入は全て「円売り介入」であって、自国通貨である円であれば無尽蔵に介入が可能ですが、他国通貨である「ドル売り」介入には限界があると言えます。
そこで「ドル売り」介入の原資となる日本の外貨準備の状況を見てみましょう。
以下は直近介入前の2022年からの外貨準備と「円買い介入」の状況をプロットしたチャートです。

2022年の介入後外貨準備はある程度増額しています。また、2024年も959億ドル程度の介入を実施しましたが、それほど外貨準備額は減少していません。若干決済の時差やスワップ取引などを利用していた場合、増減の具体的な要因は把握できませんが、外貨準備のほとんどが米国債で運用されています。つまり、「円売りドル買い介入」を実施しない場合でも、米国債からの運用益で外貨準備は増加します。これはざっくりとした計算ですが、もし年2%の運用利回りと仮定した場合で、毎年200億ドル程度、3%なら300億ドル程度外貨準備が増える計算になります。2022年の介入額は約426億ドル、2024年は959億ドルで、これを短期で続けながら1兆ドルレベルを維持するのは難しいとしても、この運用収入分を考慮すれば、まだ「円買い介入」の余地はあると思います。
一方介入レベルに関しては、「急激な変動を避けるため」と言っても、財務省や財務官がどういうレベル感や論理でタイミングを決めているか知る由もありません。ただ、実際の介入実績から2022年は恐らく150円の防衛、2024年は160円の防衛が主眼となっているように感じられます。そうたびたび出来るわけではありませんが、少なくとも次の170円は間違いなく介入してくるでしょう。問題は、次に160円をトライした場合でも、再び介入してくるのか、大きなポイントとなりそうです。(個人的には160円は再び防衛ラインだと思います)
実際この点に関しては、ある意味グレーだと思いますが、少なくとも2025年も円安が一過性に進んだ場合も、安易に上値を追いかけるのは避けておいた方が良いでしょう。近年「円買い介入」が実施された場合、一気にドル円相場は、4-5円の円高が進んでいます。あくまでこういったタイミングで円を売る方が、メリットが大きいことは覚えておいてください。
【ドル円の季節性】
次にドル円相場の季節的な動きを見てみましょう。
2019年から2024年までの四半期ごとの動きを2019年の1月、4月、7月、9月の各期のオープン・レートを基準に、各年のレートを調整してプロットしたものです。

まず、1-3月の季節性ですが、通常この時期は、3月末の本邦の決算に向けて、レパトリの円買いが出易い時期です。ただ、最初の黄色いゾーンで、赤い矢印で示した位置のように、2月には一時的に円安になるケースが度々見えています。この要因としては、多く外債に投資する生損保などの機関投資家は、購入した債券の為替差損を避けるために、保有外債に為替ヘッジをかけています。「為替ヘッジ」とは先物のドル売りですが、3月の決算を控えて、こういったポジションの調整的なドルの買い戻しを行います。その動きが2月に円売りに繋がっているようです。
また、一番右の黒い矢印の部分に注目して下さい。期末には、決算に絡めて様々なフローが出ますが、外貨資産の評価を高めるために、例年ドル高に持って行こうとする動きが出易いようです。3月月末の当日は、一時的な円安に注意しておきましょう。
次に4-6月期ですが、この時期は通常、機関投資家が新年度に向けた外債投資の準備を始める時期です。

基本は円安気味で見る時期ですが、ただ、日本のゴールデン・ウィークの時期を見て頂くと、相場が案外荒れた時期が目立っています。過去はこの時期に輸出企業が上値に輸出予約を入れて、休暇に入るケースが多く、ドル円の上昇を抑える要因となっていました。ただ、現在は日本の貿易黒字が減少していることで、こういった影響はあまりないようですが、この時期海外の投機筋が、本邦の不在を狙って、仕掛け的な動きを強めることが要因となっています。どちらに仕掛けて来るかは、その時の状況次第ですが、少なくともゴールデン・ウィークの時期の荒れた動きには注意しておきましょう。
7-9月期は、やはり夏場のホリデー・シーズンが焦点となります。

相場の閑散期ですが、夏場は一時的に急速に円高が進むケースが散見されています。過去は8月の中旬に米国の30年物国債の償還が集中したこと、9月中間決算に向けて、45日前に投資信託などの益出しなどが円買いの一因と指摘されていました。現在は米国債の償還期が分散されていることで、直接的な影響は減少しているようです。近年では、4月以降に円売りが拡大するケースが多く、夏休みを控えて、7月に早々と利食いが出るケースが見て取れています。アノマリー的には「高い確率」があるので、十分注目しておきましょう。ただ、逆説的には、この時期の急速な円高は、絶好の円の売り場となるケースが多いことも覚えておいてください。
最後に10-12月ですが、例年米国のレイバー・デー明けから、夏休みで休暇を取っていたファンド・マネージャーやディーラーが、仕事に復帰することで、相場が動き出す時期です。基本は円安に進み易い時期です。

これは年末に向けて、世界的にドル資金需要が高まることが一因です。ただ、注意はこういった思惑で例年事前から円安が拡大すると早ければ11月後半、少なくとも12月前半には、クリスマス休暇もあって、利食いに押されるケースが多いことは、覚えておいてください。
【円インデックスからの想定】
それでは「円インデックス」からの相場の想定をしてみましょう。これはクロス円を総合して、一定の基準で個人的に算出している指数です。価格帯はドル円のレートに似ていますが、全く違うもので上方が円安、下方が円高を示しています。

当然ドル円に近い波動を示していますが、この価格も2012年6月の75.17を最安値ポイントに138.92まで上昇しています。チャンネルの波動からは、「B-C」の40.73幅を、「D」の87.64から上げた128.37が当初のターゲットでしたが、これを威ともせずに上昇、「E」の138.92まで拡大しました。この数値は不透明ですが、可能性としては「A」から「B」までの下げ幅となる50.61を「D」から上げた138.25との合致性ぐらいしか見つかりません。
これはテクニカル的に整合性が不透明ですが、少なくとも下段に示したスロー・ストキャスティクスは、買われ過ぎから反転下落していることは注目で、「E」が高値となる可能性を示唆しています。ただ、オシレーター系の指標は、ダイバージェンスという「騙し」の可能性もあって、あくまで現状の高値が維持されて、ネックラインなる121.34-61を割れて下落が確定する形です。その場合のターゲットは「C」の高値115.90となります。
一方上値は132.34を越えるケースは強気ですが、ただそれでも138.32が押さえる状況が続いて、しっかりとレジスタンス形成できれば、上昇とは言えませんが、138.92を越えると、青天井的な上昇となる形です。
それでは円インデックスから、今後動いた場合のドル円やクロス円のレベルを想定してみましょう。
12月13日の終値となる円インデックスの129.01を基準として、上値(円安)の場合、130.00の節目、132.34戻り高値、138.92の最高値まで上昇するケース、下値(円高)の場合、125.50の直近安値、ネックラインとして121.50(ざっくりと121.64-41の中心)、ネックラインを割れた場合のターゲット116.00で計算しています。なお、値ベースからの算出ですので、価格は前後50BPのブレは発生する可能性があります。

これから想定されるとドル円の基本レンジの149.45-154.81から、上値は157.60を越えて来ると165.43が再ターゲット。下値は144.69を割れて来ると138.14がターゲットなることが想定されます。そうなると50BPのブレを勘案すると2025年のドル円の想定レンジは、144円から158円ぐらいが中心となるか注目しましょう。
【テクニカル面】
テクニカル面からは、1989年からの超長期のドル円相場の月足チャートを見てみましょう。

ドル円相場は、1990年の160.35の高値から、2011年10月の75.31まで下落後、2022年10月には、160.35の高値と、147.66や125.86の高値を結んだレジスタンスを越えて、151.95まで急反発しました。ただ、この位置から127.23まで急落。チャート形状から「E」の75.31をボトムとして、「C」と「G」をアームとした「リバースH&S」が一旦確定したと見られました。
ただ、下値は「D」と「F」のネックラインが逆サポートして、更に反転がこの「G」の高値を超えて、161.95まで上昇する形からは、このリバースH&Sが崩れた形となっています。2024年の相場見通しもこれを前提に見通しを述べていますが、これが全く誤った形で、そうなると140円前後が今後も維持されると、更なる上昇と見るしかない形となります。その場合161.95を越えると次のターゲットは、1978年の安値177.06、更には1981年の安値199.06となります。
強いて上げ止まりの可能性を言えば、日柄からの判断となりますが、「C」の高値から「E」安値の期間が、13年2ヵ月ですので、次の「E」からの次の同期間が、2024年12月となりますので、もし、この12-1月にこのトップが維持され続け、更に140円前後のネックラインを割れるなら相場の天井を示唆する可能性が残っていることは、留意しておいてください。
次により近い2011年からの月足チャートをみてみましょう。

75.31の歴史的な安値から125.86まで反発後、102.59が下値を支えてサポート形成から、151.95の高値、127.23を支え、161.95まで上値拡大しています。
エリオット的な波動からざっくりと見れば、75.31から125.86を第1波、125.86から102.59を第2波、102.59から151.95を第3波、151.95から127.23を第4波とするなら、現状の上昇が第5波の渦中にあることは意識してください。
また下段に表示したスロー・ストキャスティクスが、買われ過ぎから反転下落しています。ダイバージェンスの可能性はありますが、上値は161.95を中心に、151.91や156.75がトリプル・トップとして意識されるなら上値つきの可能性が高まります。
こういった面を考慮すると総合的には上値付きと考えるのが妥当に見えます。ただ、前述の通り、今後12月から1月の間に161.95を越えないことが必要です。一方で下落トレンドがスタートするためには、ネックラインとなる140.25-139.58を割れるケースが必要です。その場合の下値のターゲットは、127.23の戻り安値から125.86の過去の戻り高値となります。
【予想レンジと戦略】
それでは、以上を踏まえてドル円相場の2025年の見通しと戦略についてお話します。
2025年の年間想定レンジをざっくりと140円から160円とします。基本戦略は、このレンジでの逆張りとなります。
≪2025年の注意点≫
・ビットコインの暴落、または米国の不動産市況の悪化を背景としてバブルがはじけるケース
・トランプ次期政権を睨んで荒れた展開となる可能性
・テクニカル的には、ドル円は上値を既につけていると考えますが、161.95の高値を超えてしまうとこの限りではありません(特に12-1月期に上抜けるなら注意)
・円高になるためには、①原油価格の下落などを背景に、日本の貿易収支が改善する②日米金利差が大幅に縮小する③トランプ政権に大きな失望が出る④世界的に株価が調整局面に入る⑤ウクライナや中東情勢が更に混迷を深める(プーチンが戦術核を使う)が想定されます、こういった局面ではドル円の買いは厳しい状況になるかもしれません
・160円前後または161.95を守るために、再度円買い介入が入ると考えています、超えても170円では介入してくると思います
≪季節性を考慮した具体的な戦略≫
それでは、ドル円の季節性を鑑みながら、テクニカルを中心に、具体的な戦略を提案させて頂きます。ただ、前項の注意点にある状況変化があった場合は、この限りではありません。
年初はトランプ新大統領の就任式を睨んで、戻り売り場を探します。ストップは162円越えとなりますので、できるだけこれに近いレベルが良いでしょう。もし、超えた場合、テクニカル的には順張りとなりますが、レベル感的には非常に危険です。特に円買い介入を警戒すべきです。
この売り戦略は、2月前半には、しっかりと利食いましょう。また、その後に調整的な下落があれば、3月末の決算期を睨んで、押し目買いが検討されます。または4月以降から押し目買い場を探すのも良いでしょう。レベル的には、140-145円があれば理想的です。この買いのストップは、2024年の安値139.58割れとなります。もし、介入が入って下げる局面があれば、常に買いの好機と考えましょう。円買い介入が入った場合、通常4-5円は下落しますので、その点も考慮しましょう。
ただ、こういった買いも直近数年の流れから、7月にはしっかりと利食いましょう。ここも大きく下げれば買い場となりますが、夏場は保合が続くことは留意しておきましょう。
9月以降は例年、年末に向けて円売りとなり易いですが、現状この時期はまだ何も状況を想定が出来ませんので、戦略をお話することはできません。ただ、レベル的に140-160円レンジが続いているなら、逆張り戦略は継続となります。ただ、今度140円をクリアに割れるケースには注意しましょう。その場合でも130-135円などは買いが入り易いと思いますが、ただ、その場合は本当の意味で上値が重くなるでしょう。しっかりと反発があれば、利食いながら対応することを検討しましょう。
以上、一応テクニカルやファンダメンタルズからシナリオをたてましたが、ひとつの例として考えてください。この通りとなるほど、相場は簡単ではありません。あくまで私個人の35年来の経験則から想定したイメージ的なものですので、ご理解頂ければ幸いです。