メキシコペソ円-2024年相場予想と戦略-

FRBとメキシコ中銀の利下げも、引き続き日墨金利差が支える?

※本記事は2023年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

【2023年のドル円相場を振り返って】

 2023年のメキシコペソ円相場は、2022年に続いて、再び大きく円売りが拡大しました。

 年初から、前年の財務省の円買い介入の影響に加えて、黒田日銀総裁の任期満了の絡めた日銀総裁人事の思惑や、メキシコ中銀が2021年6月から続けてきた政策金利の据え置きを決定したことで、3月20日に年間安値となる6.798まで下落しました。ただ、新たに総裁に就任した植田氏が、最初の会合以降、しぶとく金融緩和政策を維持することを表明し続けたこと。加えて、メキシコでは、自動車産業中心に経済の好調が続いたことで、その後中銀がインフレ率の安定を受けて、11.25%で政策金利の据え置き姿勢を続けるも、8月28日には、8.876と年間の高値まで上昇しました。

 その後は、若干揉み合い気味が続きましたが、8.08で下値が支えられ、9月のFOMCで、2024年のFF金利見通しを、6月時点の4.6%から5.1%に一気に0.50%まで引上げられました。これを背景に、米10年物国債利回りの5%に迫る上昇や、ハマスのイスラエル侵攻に端を発した中東情勢に対する懸念による原油価格が年間高値をつける動き、加えて、ドル円相場が2022年の高値151.95に迫る151.91の年間高値まで上昇したことで、再度8.769の高値まで上昇しました。しかし、その後は、植田日銀総裁が、今年最後の金融政策決定会合を前に、国会において「年末から来年にかけて、よりチャレンジングになる」との発言したことで、再び早期の金融政策変更の思惑が高まったこと、また、今年最後のFOMCでは、政策金利が据え置かれ、加えて2024年のFF金利見通しが、再び6月時点の4.6%に引き下げられたことがサプライズなり、12月14日には、ドル円相場が140.97まで売りに押されたことで、メキシコペソ円も8.124まで調整して、2023年の取引を終了しようとしています。

【2024年の主な材料】

 以下が現在、知り得る2024年のイベントや材料です。注目度の高いものは赤字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更される可能性があることは、ご了承ください。

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2024年は、米国の大統領選挙が、大きな波乱要因となるのか注目となりそうです。

 米大統領選に関しては、トランプ元大統領の再立候補が話題となっています。ただ、前回の大統領選挙に絡めた自身の疑惑に関連して、多くの告訴を抱えています。また米憲法修正第14条によって、一部の州で「大統領選出馬の権利がない」との判決も出ています。裁判自体は長期に渡ることで、大統領選まで時間稼ぎが可能でしょうが、もし、こういった裁判で、次々に有罪が確定した場合、7月の共和党の全国大会に向けて、予備選を勝ち抜けるかは不透明感が残りそうです。また、そうでなくても、もしトランプ大統領が再び大統領に返り咲くなら、バイデン政権の政策を全て「ちゃぶ台返し」する可能性が高く、その場合恐らく世界の政治や経済、金融市場に大きな混乱を招く可能性高いことは、留意しておきたいと思います。

 一方バイデン大統領も次男のハンター・バイデン氏の問題で、共和党が同大統領の弾劾裁判に向けて動いています。また、高齢であることもあって、健康問題も懸念として残りそうです。つまり、夏の全国大会に向けて、両氏が候補者としての立場を維持出来るのかは、現状は全くの不確実です。その場合、次の候補者次第となるでしょうが、現状米国の大統領選の結果を占うことは非常に難しく、特に金融市場においては、この問題に関して、2024年を通して、常に経過を確認しておくことは重要となりそうです。

 また、台湾総統選、ロシア大統領選、9月の岸田首相の任期などの政治的日程が、予定されていますが、台湾の総統選で与党が勝利しても、中国が軍事行動に出る可能性は低く、プーチン大統領の再選は揺ぎ無く、為替・金融市場に大きな影響を与えることはなさそうです。ただ、直近米国の支援が止まる可能性が指摘されているウクライナ情勢では、今年も混戦が続く可能性が高いと思われますが、もし何かの政治的な動きが出て、停戦や終戦に向かう兆しが見えた場合、過去2年のエネルギーや商品市況に、大きな巻き戻しの動きが出るかもしれません。その場合、ユーロ相場に大きな動きが出る可能性があることは注意しておきましょう。

 一方金融市場では、5月にスタートするNY株式の決済の短縮化が、相場の波乱要因となるとの指摘が出ています。現状2営業日後に決済する売買代金を、翌営業日に決済を前倒しするというものですが、世界的な市場では、まだ2営業日後の決済が主流です。為替市場も、2営業日後に決済されますが、株式の取引に伴う為替ヘッジのリスクと絡めて、機関投資家やファンドなどの対応が遅れているようです。一部でこの変更によって、流動性のリスクも指摘されており、金融市場に混乱が生まれる可能性に注意しておきましょう。

 その他、今年も大きな地震や自然災害、ガザの問題などいろいろ自然・地政学リスクが、市場の混乱につながっています。2024年も温暖化の影響など、何が起きるのかわかりません。こういった事象は突発的に起こることで、準備することはできませんが、常に、こういったリスクも念頭に入れて、相場に臨む姿勢を維持しておいた方が得策もしれません。

【2024年の注目点】

 2023年の相場展開を踏まえて、2024年の注目点をまとめてみました。

  • FRBは本当に2024年早々と利下げに転じるのか?
  • メキシコ中銀の政策スタンスは?
  • 日銀の政策転換が遂に実現するのか?
  • 墨日金利は大きく縮小しない

〇 FRBは本当に2024年早々と利下げに転じるのか?

 FRBは、2022年3月からの利上げ姿勢を、遂に変更しました。

 2023年6月には、それまで10会合連続で引き上げて来た政策金利を据え置き、7月には0.25%の再利上げを実施するも、9月に再度政策金利を据え置きました。この時に引き上げたFF金利の誘導目標5.25%から5.50%が、ターミナル・レートになるわけですが、ただ、この時の会合では、FF金利見通しが、6月時点の4.6%から5.1%に一気に、0.50%引き上げられたことで、米10年物国債利回りが、5%に迫る上昇となったことが、FRBの懸念につながったのでしょう。この時FRB要人からは、次々と米長期金利の上昇スピードに対するけん制発言続いたことは、象徴的な事実となっています。

 最終的には、12月のFOMCでも政策金利を5.25%から5.50%に据え置き、加えてドット・チャートにおける2024年のFF金利見通しを、6月と同様に4.6%まで引き下げました。結局9月の見通しの引き上げが、全く余分となった形ですが、FOMCのスタンスとしては、確かに今後も経済データー次第としながらも、政策金利の引き上げを一旦終了し、2024年としては、利下げのタイミングが視野となって来るでしょう。パウエルFRB議長も、12月の記者会見で「きょうの会合で利下げのタイミングを協議した」とはっきりと述べています。

 さて、こうなってくると市場は騒がしくなってきます。特にNY株式市場は、2024年3月にも、利下げスタートとクリスマスを前に、過去最高値を更新する動きとなっています。

 しかし、この流れは若干行き過ぎではないかと思われます。

 以下、1999年からの米国の政策金利の推移をみてみましょう。

 今回の利上げが、サブプライム・リーマンショックの時期と同等レベルまで引き上げられたことは、興味深いですが、やはり利下げは、あくまで経済の急速な悪化という事実が必要です。現状の米国の景況感を見る限りは、何かの金融ショックで起きない限り、早期に利下げに踏み切る可能性は低いと言えるでしょう。

 また、FOMCの過去の傾向としては、政策の転換も必ず6か月以上の期間を置いています。加えて利上げも利下げも開始すると一定期間これを継続するケースが多いようです。そうなると現状FOMCが来年3回の利下げを想定している訳ですから、もし、3月から利下げを開始した場合、来年3回の利下げで済むことはなさそうです。一応順当な対応としては、その時の経済状況次第としても、早くても来年夏以降利下げに転じると見るのが妥当な見通しと言えそうです。そうなると米国の早期の利下げの見込んだドル売りは、時期尚早ではないかと考えらえます。

 加えて米長期金利の動向もチェックしておきましょう。以下は米国10年物国債利回の月足チャートです。

 米10年物国債利回りは、4.997%まで上昇も一旦トピッシュな上ヒゲをつけています。下段のスロー・ストキャスティクスも、上昇し過ぎ(売られ過ぎ)のレベルにあって、一旦ピークをつけていることは間違いなさそうです。ただ、調整があっても、3%から3.25%レベルは、サポーティヴな位置であって、現状の水準からの更なる低下は限界がありそうです。そうなると米長期金利の低下を背景としたドル売りも、大きく強まることは無さそうです。

 以下が2024年度のFOMCに関連する予定日です。

 FOMCの金融政策の行方は、世界の金融経済の大きな影響を与えることで、パウエルFRB議長の発言や例年8月に開催されるジャクソンホール会議と合わせて、2024年もこの日程をしっかりと押さえておいてください。

2024年FOMCの日程(議事録公表日)

01月30日-31日(02月21日)*メンバー入替

03月19日-20日+FRBスタッフの経済見通しとFOMCメンバーのFF金利見通し公表(04月10日)

04月30日-5月01日(05月22日)

06月11日-12日+FRBスタッフの経済見通しとFOMCメンバーのFF金利見通し公表(07月03日)

07月30日-31日(08月21日)

09月17日-18日+FRBスタッフの経済見通しとFOMCメンバーのFF金利見通し公表(10月09日)

11月06日-07日(11月27日)

12月17日-18日+FRBスタッフの経済見通しとFOMCメンバーのFF金利見通し公表(01月08日)

〇 メキシコ中銀の政策スタンスは?

 メキシコ中銀は、インフレの高騰を受けて、2021年6月の4%から2023年3月に、11.25%まで政策金利を引き上げましたが、その後政策金利を据え置き、現在まで継続しています。12月のメキシコ中銀の声明では、「金利はしばらくの間現在の水準に維持する必要がある」、「2023年第4四半期のインフレ率は4.4%、2024年第4四半期のインフレ率は3.5%になると予想」と、今後のインフレの低下を想定しています。 実際メキシコの消費者物価指数は、11月に4%前半まで落ち着きを見せています。中銀のインフレ率の目標は「3%±1%」ですが、今後も消費者物価指数の推移次第であるものの、一方でメキシコは、隣接する米国の経済と密接な関係をもっていて、メキシコ中銀は、総じてFRBの金融政策に追従することが多いことで知られています。FRBは、12月の今年最後の会合において、2024年は、3回のFF金利の引き下げを想定しています。一部市場では、2024年初めまでは現状の金利水準を続けると想定していますが、12月18日、メキシコ中央銀行のロドリゲス総裁は、「インフレは大きく鈍化したが、慎重を期す必要がある。金利を下降調整する際は緩やかなものになるとみている」としながらも、「2024年第1・四半期に利下げを検討する可能性がある」と述べています。今後もデータ次第ですが、想定外に早い利下げが実施される可能性には留意しておきましょう。

 メキシコ中銀は、年8回の会合を、2、3、5、6、8、9、11と12月に予定しています。ただ、現在はまだ詳細の日程が公表されていません。

  来年もメキシコ中銀の金融政策が、メキシコペソ円相場の、大きな手掛かりとなることで、FOMCと合わせて、2024年も金融政策決定会合の日程をしっかりと押さえておきましょう。

〇 日銀の政策転換が遂に実現するのか?

 2023年は、日本の30年にわたるデフレ経済から脱却したことで、日銀の金融政策の転換が、大きなマーケットの材料となりましたが、実際新たに就任した植田総裁は、YCCの上限撤廃などの一部変更を実施するも、結局2023年度中、本格的な政策変更に踏み切ることはありませんでした。

 一時植田総裁の発言に、期待感を持つ動きもありましたが、今年の最後の会合では、「我が国の景気は緩やかに回復している」としながらも、「経済・物価を巡る不確実性は極めて高い」、「粘り強く金融緩和を継続していく」として、「賃金から物価への波及、サービス価格への動向を見たい」と今後も慎重姿勢を続けそうです。

 ただ、実際の物価の動きを見る限りは、特に円安の影響が強く、日本がコストプッシュ・インフレに晒されていることは明らかな事実です。2024年もこの円安が続けば、引き続き物価が高止まりすることは間違いないでしょう。

 ではなぜ日銀は、政策を動かせないか?

 日銀や人々がデフレ慣れしていることも、大きな要因の一つですが、加えて、これは憶測ですが、植田総裁の過去の発言からは、「拙速な引き締めで物価目標が達成できないリスクの方が大きい」としています。過去自身が速水元日銀総裁時代に、審議委員を務めていた時期、速水日銀の利上げが、景気の腰折れにつながったことへの悪いイメージが残っていて、現状の日本経済においても、自身の政策転換が、再び景気の腰折れにつながることを恐れているのではないかと疑ってしまいます。通常金融政策は、「フォワード・ルッキング=将来の見通し」によって政策運営されますが、来年の春闘で、順当に賃上げが実施されるのを確認するまで、政策変更はないのではないでしょうか。

 そうなると政策が変更されるのは、早くても来年の4月会合以降であり、その場合も「マイナス金利の解除」、「YCC政策の撤廃」が限界で、その後も、長くデフレにつかり切った日本経済が、政府の減税策を受けても、強い上昇圧力をみせる可能性は低く、年内の「利上げ」に踏み切る可能性は低そうです。

 それでは、日本の長期金利動向も見ておきましょう。

 10年物国債の利回りは、3回のYCC政策の上限の変更で、一時1%に迫るレベルまで上昇しましたが、テクニカル的にははっきりと上ヒゲを出しています。下段のスロー・ストキャスティクスも、既に上昇し過ぎ(売られ過ぎ)の位置にあって、来年もこの1%を超えることはなそうです。一方下方では、流石に0.55%のそれ以前の高い位置は逆サポートされそうです。来年の日本国債の利回りとしても、0.55%から1.00%での推移が限界となりそうです。

 ただ、2024年も、長らく市場から全く注目を集めなかった日銀金融政策が、大きな注目となりそうです。、以下は2024年の日銀金融政策決定会合や議事録の公表日です。しっかりと押さえておきましょう。

日銀金融政策決定会合(議事録公表日)

01月23日+展望リポート公表(03月25日)

03月19日

04月26日+展望リポート公表(06月19日)

06月14日(08月05日)

07月31日+展望リポート公表

09月20日

10月31日+展望リポート公表

12月19日

〇 日墨金利差は大きく縮小しない

 以下は、メキシコ10年物国債利回りと日本の10年物国債利回りと、メキシコペソ円をプロットした2006年からチャートです。

 リーマンショックの時期、2017年から2021年には、連動性が見えていませんが、総じて連動する姿が確認されます。

 2024年は、日銀の政策修正が確実視されています。一方メキシコ中銀は、第1四半期以降、利下げを開始する可能性が高く、日墨金利差は現状レベルより縮小する可能性が高いでしょう。その場合、金利差と連動性の高いメキシコペソ円も、現状の高値から一定の調整的な下落が実現する可能性が高いと見られます。ただ、日銀に関しては、政策金利をゼロ金利にも戻しても、更に金利を引き上げる可能性は低く、もし、日墨金利差が縮小しても、減少幅は限定されるとみておきましょう。

【テクニカル面】

≪ドルメキシコペソ≫

 テクニカル面からは、メキシコペソ円を構成するドルメキシコペソ相場の月足をチェックしておきましょう。

 ドルメキシコペソは、25.7895の高値示現後は、16.6221まで下落しました。この位置は9.8560からサポートの位置で、下段のスロー・ストキャスティクスも売られ過ぎから反転気味となっていて、この位置が維持されると堅調で、一定の反発も想定されそうです。ただ、もし、維持でいない場合、過去の高値圏となる14.5992から15.5990が視野となりますが、維持できるかは不透明です。割り込むと再度11.4841-11.9366などもターゲットとなるでしょう。

 一方上値は、18.4674の戻り高値が押さえると弱く、超えるとネックラインとなる19.5476-19.59844が視野となりますが、抑えると上値追いは厳しいでしょう。20.0000のサイコロジカルを超えて、21.0534が視野となりますが、この位置にはレジスタンスやファン・ラインが控えていて、上値を抑える可能性が高そうです。このリスクは、23.2294を越えるケースで、その場合25.7895が最視野となりますが、歴史的な高値であって、上抜けは不透明となります。 

 従って、ドルメキシコペソは、押し目買いが有効と考えます。2024年の想定レンジを、サポートが維持される前提で、17.0000から21.0000とします。ただ、維持出来ないケースでは、15.0000から20.0000が想定レンジとなります。

≪ドル円≫

 次に1989年からの長期のドル円相場の月足チャートを見てみましょう。

 ドル円相場は、1990年の160.35の高値から、2011年10月の75.31まで下落後、2022年10月には、160.35の高値と、147.66や125.86の高値を結んだレジスタンスを越えて、151.95まで急反発しました。

 特にこのチャートで注目して頂きたいのは、チャート形状から「E」の75.31をボトムとしたリバースH&Sを形成していることです。また現状は、このショルダー部分のネックラインとなる「D」と「F」をクリアして、151.95の上ヒゲで、アーム部分「G」の形成を完了しています。

 これを前提とすると、チャート形状の観点からは、75.31の安値を基準に、ロールシャッハ・テストのように、左右対称の動きをすることが、2023年の相場では、期待されていました。もし、その通りであれば、再び「J」の動きを「K」で繰り返し、「B」と同様に「I」の位置まで相場が下落して、その後再び「A」の160.35方向を目指し「I」を完了するというが想定です。

 ただ、2023年の相場は、「D」と「F」のネックラインを割れることはなく、再度高値を目指す動きに留まりました。つまり、前述の前提が崩れているわけですから、理想的なリバースH&Sは、実現しなかったという事です。

 そうなると次の見方は、あくまで昨年のレンジである127.23と151.95をどちらが先にブレイクするかで方向感が決まると考えざるを得ません。もし、2024年の相場が、151.95を越えて行くなら160.35の高値を目指す動きとなり、一方127.23を割れて、更にネックラインとなる「D」と「F」を割れるなら、「H」方向への調整リスクとなります。ただ、ファンダメンタルズ面を考えると、2024年に、そこまでの円高が再燃するリスクは、想定することは難しく、「D」と「F」のネックラインさえ維持されるかもしれません。あくまでこういった位置を割れて、120円程度までの下落が目途となりそうです。

 従って、2024年のドル円の想定レンジを130.00から150.00とします。

≪メキシコペソ円≫

 以下は、2007年からのメキシコペソ円の月足チャートです。

 メキシコペ円は、11.512から下落が4.232まで拡大も、これを維持して反発が8.786まで拡大しました。ただ、この位置は2014年11月の高値圏であり、サイコロジカルは9円を前に、上げ渋りを見せています。また、下段のスロー・ストキャスティクスも買われ過ぎから反転下落を示していて、今後調整リスクが高そうです。あくまでこの高値からサイコロジカルな9円を超えて、10円方向への上昇期待で、その場合も10.991や11.512の高値を前に売りが出易そうです。

 下値は、サポートからは6.377から6.660ゾーンが維持されると堅調そうです。この位置は丁度4.232から8.786のフィボナッチ・リトレースメント50%の6.509と一致する位置ですので、買いが入り易そうです。ただ、オーバーシュート気味には、6円のサイコロジカルまでの調整リスクはありますが、これも維持されると更に突っ込みは不透明です。ただ、割れると5.718や5.025、4.636から4.795ゾーンまで視野となりますが、維持では良いですが、リスクは最安値の4.232を割れるケースで、その場合ポイントがほとんど見えなくなります。

≪マトリックス・チャート≫

 それでは、ドルメキシコペソ相場とドル円相場の想定レンジから作成したマトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を確認しておきましょう。

 ドルメキシコペソの2024年の想定レンジを17.0000~21.0000、ドル円を130.00~150.00としましたので、ここから算出されるメキシコペソ円の最大想定レンジは6.190から8.824となります。上限がほぼ現在の高値と合致していることは注目されます。

【予想レンジと戦略】

 それでは、以上を踏まえてメキシコペソ円相場の2024年の見通しと戦略についてお話します。 一応来年は、過去のような新型コロナウィルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻など、大きな政治・地政学リスクが発生しない前提でお話させて頂きます。

 来年のメキシコペソ円の想定レンジを6.50~9.00とします。

 戦略的な前提としては

  • メキシコ中銀には、FOMCに先んじて、利下げの可能性がありますが、一方で日銀の金融正常化は限られたものになる見通しで、日墨金利差の縮小は限定されると考えます。
  • テクニカル面からドル円の月足のスロー・ストキャスティクスは、まだデッド・クロスしていませんが、日足のダブル・トップなど今後買われ過ぎから反転に向かい易いでしょう。一方、ドルメキシコペソはゴールデン・クロス、メキシコペソ円も、デッド・クロスしており、メキシコペソ相場は、戻り売りが率先されます。

 また、タイミング的な注意点(詳細は、ドル円相場の2024年相場見通しの「ドル円の季節性」をご参照ください)

  1. 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。
  2. ドル円は、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意です。ただ逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。
  3. また、本年は米大統領選が予定されています。夏場に最終候補が決定しますが、思わぬ結果リスク回避となるかもしれないので、注意しておきましょう。
  4. 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。 

 中長期的な、メキシコペソ円の戦略ですが、現状の高値が当面の高値として、慎重に戻り売場を探す形から、下値はまず、7.434-7.653ゾーン、7円前後が維持されると買い戻しながらですが、こういった下落からは戻りが重くなることで、戻りを売りながら、売り回転を利かせるのも一考となります。理想的な利食い場は、6円ミドルですが、こういった位置からは買い下がって、ストップは6円割れとなります。ただ、このような下落が実現した場合、7円や8円が重くなることで、反発があってもしっかりと利食いながら対応しましょう。

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。