豪NZ準備銀行の金融政策の状況次第も、保合が続きそう?
※本記事は2023年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。
【2023年の豪ドルNZドル相場】
2023年の豪ドルNZドル相場は、豪州とNZ準備銀行の金融政策を睨みながらも、大きな手掛かり難もあって、2014年からの保合相場が続いた。
豪ドルNZドル相場は、NZ準備銀行が、2021年10月から早々と2014年7月以来の利上げに踏み切ったこともあって、軟調気味な展開からスタートするも、豪準備銀行は2022年5月から利上げを開始しており、2月と3月の会合で0.25%の利上げを実施したこともあって1.1088まで反発しました。ただ、その後は豪準備銀行が政策金利の据え置きを決定しました。一方でNZ準備銀行が、RBAの利上げ幅を上回る0.50%の利上げを発表したことで、1.0560まで売りに押されましたが、その後NZ準備銀行も政策金利を5.50%で据え置いたことで、再度1.1053まで反発しました。
ただ、夏場以降は、両行が政策金利を据え置いたことで、保合期気味の展開が続きましたが、10月9日の安値1.0625から原油価格が年間高値まで上昇し、豪首相が7年ぶりに中国を訪問したことで、豪中通商問題の一定の明るさが見えるとの期待感もあって、1.0938までは反発しましたが、その後もこのレンジで揉み合いを続けて、年間の取引を終了しようとしてます。
【2024年の主な材料】
以下が現在、判明している来年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定で、変更されることがあります。
リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2024年は、米国の大統領選挙が、大きな波乱要因となるのか注目となりそうです。
米大統領選に関しては、トランプ元大統領の再立候補が話題となっています。ただ、前回の大統領選挙に絡めた自身の疑惑に関連して、多くの告訴を抱えています。また米憲法修正第14条によって、一部の州で「大統領選出馬の権利がない」との判決も出ています。裁判自体は長期に渡ることで、大統領選まで時間稼ぎが可能でしょうが、もし、こういった裁判で、次々に有罪が確定した場合、7月の共和党の全国大会に向けて、予備選を勝ち抜けるかは不透明感が残りそうです。また、そうでなくても、もしトランプ大統領が再び大統領に返り咲くなら、バイデン政権の政策を全て「ちゃぶ台返し」する可能性が高く、その場合恐らく世界の政治や経済、金融市場に大きな混乱を招く可能性高いことは、留意しておきたいと思います。
一方バイデン大統領も次男のハンター・バイデン氏の問題で、共和党が同大統領の弾劾裁判に向けて動いています。また、高齢であることもあって、健康問題も懸念として残りそうです。つまり、夏の全国大会に向けて、両氏が候補者としての立場を維持出来るのかは、現状は全くの不確実です。その場合、次の候補者次第となるでしょうが、現状米国の大統領選の結果を占うことは非常に難しく、特に金融市場においては、この問題に関して、2024年を通して、常に経過を確認しておくことは重要となりそうです。
また、台湾総統選、ロシア大統領選、9月の岸田首相の任期などの政治的日程が、予定されていますが、台湾の総統選で与党が勝利しても、中国が軍事行動に出る可能性は低く、プーチン大統領の再選は揺ぎ無く、為替・金融市場に大きな影響を与えることはなさそうです。ただ、直近米国の支援が止まる可能性が指摘されているウクライナ情勢では、今年も混戦が続く可能性が高いと思われますが、もし何かの政治的な動きが出て、停戦や終戦に向かう兆しが見えた場合、過去2年のエネルギーや商品市況に、大きな巻き戻しの動きが出るかもしれません。その場合、ユーロ相場に大きな動きが出る可能性があることは注意しておきましょう。
一方金融市場では、5月にスタートするNY株式の決済の短縮化が、相場の波乱要因となるとの指摘が出ています。現状2営業日後に決済する売買代金を、翌営業日に決済を前倒しするというものですが、世界的な市場では、まだ2営業日後の決済が主流です。為替市場も、2営業日後に決済されますが、株式の取引に伴う為替ヘッジのリスクと絡めて、機関投資家やファンドなどの対応が遅れているようです。一部でこの変更によって、流動性のリスクも指摘されており、金融市場に混乱が生まれる可能性に注意しておきましょう。
その他、今年も大きな地震や自然災害、ガザの問題などいろいろ自然・地政学リスクが、市場の混乱につながっています。2024年も温暖化の影響など、何が起きるのかわかりません。こういった事象は突発的に起こることで、準備することはできませんが、常に、こういったリスクも念頭に入れて、相場に臨む姿勢を維持しておいた方が得策もしれません。
【2024年の注目点】
2023年の相場環境を踏まえて、2024年の豪ドルNZドル相場の注目点をまとめてみました。
- 豪準備銀行の今後の金融政策
- NZ準備銀行の今後の金融政策
- 商品価格との連動性
- 金利差との連動性
〇 豪準備銀行の今後の金融政策
豪準備銀行は、2022年5月から世界的なインフレの上昇もあって、2023年も利上げを継続し、据え置きする月もありましたが、最終的に11月に0.25%の追加利上げを実施し、政策金利を4.35%まで引き上げて、12月の会合でも据え置きを決定しています。
12月の会合での声明は以下の通り。
「インフレ率を目標に戻すという断固とした決意に変わりはなく、そのために必要なことを行っていく」
「インフレ率を妥当な期間内に目標に戻すため追加引き締めが必要かは、引き続き経済データとリスク評価の進展次第」
「全体として、インフレ期待は引き続きインフレ目標と一致」
「基礎インフレは8月の予測時よりも高く、サービス分野が広範囲にわたって高い」
「労働市場の状況は緩和されているが、依然としてタイト」
「住宅価格は全国的に上昇を続けている」
「見通しには依然として大きな不確実性が残っている」
「海外でのサービス価格インフレは持続的であり、豪州でも同じことが起こり得る」
「中国経済の見通しや海外の紛争の影響に関しては、依然として高いレベルの不確実性が存在している」
豪準備銀行は、2024年末のインフレ率を約3.5%、2025年末には、同行が採用しているインフレ・ターゲットとなる2-3%の上限に達すると予想していますが、これを見る限り、ひきつづき警戒感を残していて、再利上げの可能性もあるかもしれません。
この点は、今後もデータ次第ですが、毎回の会合、声明や議事録の内容をチェックしながら、豪ドルNZドル相場の展開を見て行く形となりそうです。
以下が2024年の豪州準備銀行の政策金利公表予定です。(議事録は公表日)
02月06日(02月20日)
03月19日(04月02日)
05月07日(05月21日)
05月02日(05月16日)
06月18日(07月02日)
07月04日(07月18日)
08月06日(08月20日)
09月24日(10月08日)
11月05日(11月19日)
12月10日(12月24日)
〇NZ準備銀行の今後の金融政策
NZ準備銀行は、2021年10月から利上げを継続しましたが、2023年5月の0.25%の利上げを最後に、その後は政策金利を5.50%で据え置いています。
11月最後の会合の声明は、以下の通り。
「インフレ率は依然として高すぎるため、当委員会はインフレ圧力の継続を警戒」
「経済成長は年初の予想を上回っているが、依然としてトレンドを下回っており、さらに減速する可能性が高い」
「インフレ圧力が予想以上に強まれば、政策金利はさらに引き上げられる必要があるだろう」
「内需がさらに強まれば、追加的な金融引き締めが必要になる可能性が高い」
「インフレ率は2024年後半までに目標範囲内に低下すると予想」
「金利見通しでは来年の利上げがあるリスクが高まっていることを示している」
「金利見通しでは2025年半ばまで利下げがないと予想」
また、オアNZ準備銀行総裁の発言は以下。
「今回の会合では利上げについて議論した」
「我々は来年まで金利を維持することに固執してきた」
「予想では金利に上昇バイアスがかかっているが、まだ決定事項ではない」
「インフレに対するリスクはまだ上向き」
こちらも豪州準備銀行同様に、警戒感を残す形です。特別なことはありませんが、今後もデータ次第で、利上げするリスクは残っています。
2024年も毎回の会合、声明や総裁発言をチェックしながら、豪ドルNZドル相場の展開を見て行く形となりそうです。
(2024年のNZ準備銀行政策金利公表予定)
02月28日+オア総裁会見
04月10日
05月24日+オア総裁会見
07月10日
08月14日+オア総裁会見
10月09日
11月27日+オア総裁会見
〇 商品価格との連動性
豪ドル相場は、商品価格と連動性が高いことが知られています。
そうなると豪ドルNZドル相場にも一定の影響があるので、注目しておきましょう。
以下は、商品市況を総合的に判断するCRBインデックスと豪ドルNZドル相場の動向です。
1998年からの月足チャートですが、総じて2000年前半は連動性が低いですが、リーマン・ショック前後は上下にブレるも、その後は連動性が高い形となっています。ただ、現在もロシアのウクライナ侵攻が混迷、一方中東情勢の不安などから、商品価格は堅調を維持しています。2024年もこの状況がどう変化するかチェックしながら、豪ドルNZドル相場の動向を見ておくのが良いでしょう。
そうなると今後CRBインデックスが、どういった動きとなるか、確認しておくのが良いでしょう。以下は1995年からのCRBインデックスの月足チャートです。
2008年に473.97ドルの高値を付けた後は、調整が続いていましたが、一応101.48ドルで歴史的な底値圏をつけて反発が、レジスタンスを上抜け、329.59ドルまで上昇しましたが、現状は更なる展開となっていません。
直近の動きからは、253.85ドルから290.29ドルの次の展開が焦点ですが、一応下段のスロー・ストキャスティクスは未だ下落傾向を見せています。上値はこの290.29ドルからレジスタンスとなる300ドル前半が押さえると弱い形です。この位置は473.97ドルから101.48ドルの下落の50%となる287.73とほぼ合致する位置で、重要なポイントです。ただ、329.59ドルを超えると370.72を再度目指す動きとなりそうです。
一方下値は、253.85ドルを割れると206.95ドルの過去の戻り高値方向への調整となりますが、この位置は直近101.48ドルから329.59ドルへの反発の50%となる215.54ドルに合致、更に200ドル割れは過去のネック・ライン的な位置です。こちらは、下落があっても下値を支えられそうです。
こういった面を見ると、短期的にCRBインデックスは、200ドル方向への調整リスクが高そうです。その場合豪ドルNZドル相場では、短期的に売りが先行するリスクも注目しておきましょう。
〇 金利差との連動性
以下は、豪10年物国債利回りとNZ10年物国債利回りの金利差と豪ドルNZドルを比較したチャートです。
過去、比較的連動してきましたが、2016年中盤からは、豪金利高が拡大しているにも関わらず、豪ドルNZドル相場は安値圏で放置される動向が続いていました。この要因に関しては不透明ですが、この時トランプ元大統領のよって、関税強化などで対中政策を強化したことが、中国と関係の深い豪州経済にマイナスの影響を与えるとの見方が影響したようです。
ただ、現在は総じてこういった影響は薄れていて、再び両国の金利差に連動を始めているようです。また、2024年は、豪準備銀行とNZ準備銀行の金融政策も、ドラスティクな利上げは行われないでしょう。そうなると再びこの金利差に注目して、対応してみるのも良いかもしれません。
【テクニカル面】
≪豪ドル米ドル≫
まず、豪ドルNZドル相場を形成する、豪ドル米ドル相場の月足からチェックしておきましょう。
豪ドル米ドル相場を大きく見ると0.4775の史上最安値からの上昇が、1.1083で史上最高値をつけた後は、0.5510で下ヒゲを描いて、現状は反発的となっています。ただ、戻りも0.8008で抑えられて再調整気味です。
特にこの0.8136-と0.8008がダブル・トップ気味となっていることは注目で、恐らくですが、フィボナッチ・リトレースメント(0.4775-1.1083と0.5510-1.1083)のほぼ半値の位置と合致していることの影響かもしれません。直近レジスタンスからは、0.7284が押さえると弱い状況が続きそうです。こういった位置から0.7662の戻り高値、ダブル・トップを超えて強気となり、0.8854から8.6661、0.9505を越えて、パリティが再視野となる形です。
一方下値は、下段のスロー・ストキャスティクスが反転上昇気味で、0.6171-0.6270の戻り安値圏、サイコロジカルな0.60前後が支えると長期サポートからも堅調が想定されます。リスクはこれを維持出来ずに、0.5510の安値を割れる形となります。
従って、2024年の豪ドル米ドル相場は、一定の上昇期待で、想定レンジを0.6000から0.8000とします。
≪NZドル米ドル≫
次に豪ドルNZドル円相場を形成する、NZドルの対ドル相場を月足からチェックしておきましょう。
最安値の0.3898からの上昇を、0.8842と0.8838でダブル・トップをつけて、その後の下落が0.3898と0.4895の安値から結んだ長期のサポートを割り込み0.5469の安値まで下落もこれを維持して反転しました。ただ、この上昇も0.7465で抑えらえてレジスタンスを形成、0.5512まで再下落となっています。
ただ、モメンタムを示す下段のスロー・ストキャスティクスは、売られ過ぎからの反転をどうにか維持していて、若干不透明ですが、0.5774や0.5512を維持出来ると、一定の反発期待となります。ただ、0.5464を割れると再度0.4895を目指す動きとなり易いでしょう。
一方上値は0.6538が押さえると弱く、超えて0.70をしっかりと超えることができれば、0.7035-0.7316ゾーンの戻り高値、0.7465や0.7558を越えて、0.7745の戻り高値、0.7889-0.8035の窓の下限、0.8311-0.8535の窓の上限が視野となりますが、上抜けは不透明です。特に0.8842と0.8838のダブル・トップを基準としたショルダー・トップからは、0.8215が上値を抑える可能性も残っています。あくまで、0.8842と0.8838でダブル・トップを越えて、強い上昇期待となりそうです。
従って、NZDドル/ドル相場も一定の反発期待となりますが、来年の想定レンジを、0.5500から0.7000とします。
≪マトリックス・チャート≫
以下は豪ドル米ドル相場とNZドル米ドル相場の想定レンジから、マトリックス・チャートです。
豪ドル米ドルの想定レンジを0.6000~0.8000、NZドル米ドルの想定レンジを0.5500~0.7000としましたので、これから算出された豪ドルNZドル相場の最大想定レンジは、0.9286から1.2909となりますが、広すぎることから、1.0076から1.1780を適正レンジとして想定します。
≪豪ドルNZドル≫
次に豪ドルNZドル相場ですが、直近の月足からテクニカルをみてみましょう。
2020年の3月の0.9994の安値は、コロナウィルスのリスク回避で、世界的に株価が急落した時の動きですので、オーバー・シュートと見なすと、総じて1.1680と1.1490の高値と、1.0020から1.0277での保合相場が続いています。
このレンジの中、下段のスロー・ストキャスティクスが現状下落傾向であり、1.1053-1.1088が押さえると弱い形で、超えても1.1100から1.1300のサイコロジカルが押さえると上値追いは出来ません。あくまで1.1490や1.1680を越えて、強気となる形です。
一方下値は、現状の1.0560の戻り安値が維持すると強いですが、割れると順次1.0471、1.0277、サイコロジカルな1.0000から1.0200ゾーンが視野となりますが、維持されるとレンジ相場が続きそうです。あくまで歴史的な0.9994の安値を割れて、相場は未知の世界に入る形です。
【予想レンジと戦略】
それでは以上を踏まえて、豪ドルNZドル円相場の来年の見通しと戦略についてお話します。一応来年は、過去のような新型コロナウィルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻など、大きな政治・地政学リスクが発生しない前提でお話させて頂きます。
来年の豪ドルNZドル円相場の想定レンジを1.0000から1.1500としました。
次に戦略の前提としては
- 基本は、来年も保合が続き前提となります。
- また、NZ準備銀行と豪準備銀行の政策金利の差は、大きく開く可能性は低そうですが、両行の政策方針に、はっきりと方向感に差が出てくるなら、逆張り戦略は放棄しましょう。
- NZ金利の方が高い状況が続くとしても、原油などの商品価格の堅調な動きが、豪ドル相場を支える。
- 注意点としては、オセアニア圏は、地政学リスクで資金の流入が続いていますが、一方で自然災害のリスクには注意です。豪州では、過去山火事や干ばつ、洪水などの自然災害が多発しています。一方NZは、やはり近年高まっている火山噴火や地震のリスクです。ただ、もし、大きな地震が起きても、義援金が集まる可能性やNZ国内からのレパトリのNZドル買いが出易く、NZドルを売るのは避けておいた方が良いでしょう。
- またオセアニア通貨は、7月の新財政年度のスタート期に、トレンドが変わるリスクがあることは、留意しておいてください。
基本的な中期スウィング・トレードの戦略は、諦め顔の逆張りです。短期なら別ですが、中途半端な位置を避けて、あくまで深めの押し目があれば、ストップを0.9994において、慎重に買い下がって、反発ではしっかりと利食う形です。特に直近レンジの半値1.0742の±0.0300ゾーンが押さえると利食いながら、一気に超えても1.1053-1.0188ゾーン、更に1.1490-1.1680ゾーンを前に、利食いや売り狙いで、ストップも1.1490-1.1680越えで、この売りのターゲットは同様に、1.0742の±0.0300ゾーンが維持されると利食いながら、割れて下値は、前述の買いと同様のレベルではしっかりと利食いましょう。
また、もしパリティを割れる動きがあった場合、歴史的な安値圏で、ポイントが絞り込みづらいですが、豪州とNZの関係からは、一過性に終わる可能性も高く、その場合もベンチャー気味ですが、買いから入ってみるのも面白いかもしれません。ただ、これも反発があれば、しっかりと利食っておきましょう。
※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。