カナダドル円-2021年相場予想と戦略-

逃避通貨的側面も、原油価格次第か?

【2020年のカナダドル円相場を振り返って】

 2020年のカナダドル円相場は、新型コロナウイルスの悪影響や原油価格の下落で、一時大きく下落するも、その後の原油価格の立ち直りや金価格が史上高値を付ける上昇となってことで、年間を通じて堅調な展開で終了しました。
 年初は、米中通商協議第1弾の署名が行われたことで、通商交渉に対する懸念が和らいだこと、NYダウが一時史上高値を更新するなどリスクオンの展開から、カナダドルは、84.75の2020年度中の高値をつけるも、新型コロナウイルスの感染拡大で、世界各国で緊急事態が宣言、ロックダウンが実施されたことで世界的に株式市場が急落。ドル円相場が、3月9日に101.19まで急落、ドルカナダ相場が1.4653まで上昇したとで、73.82の年間安値まで下落しました。
その後は、FOMCや世界の中央銀行が利下げや資産買い入れなどの金融緩和策を発表、カナダ中銀も、2015年7月以来の利下げを実施。3月4日、3月13日、3月27日と立て続けに誘導目標金利を0.25-0.75%まで引き下げたことなどから、株価が下げ止まりをみせて、徐々に新型コロナウイルスに対しての警戒感が薄れたこともあって相場は反転に転じました。
ただ、4月20日には、経済に悪化による需要不足の懸念から、原油先物価格が歴史上初めてマイナス価格まで下落、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近5月物の清算値が、1バレルマイナス37.63ドル、前日から55.9ドル下落、カナダドル円相場も74.77の2番底まで調整しました。その後原油の下落が一過性に留まり、40ドル台まで回復したことで、カナダドル円も81.91の2番高値まで反発しました。
夏場は、金価格がリスク回避の動きで2074ドルの史上高値を更新したこと、原油価格が40ドル台で比較的堅調に推移したことなどが下値を支えましたが、秋口には、新型コロナウイルスの感染が、欧米で再拡大したこと、米国の大統領選を睨んで、トランプ大統領が、カナダ産アルミニウムの追加関税を示唆したことで、ドルカナダ相場が、年間安値となる12688まで下落するも、一方でドル円相場が軟調な推移を続けたことなどから、ほぼ77円台から82円で揉み合いを続けて終了しました。

【2021年の主な材料】

以下が現在、判明している今年のイベントや材料です。注目度の高いものはマーカーで表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更されることがあります。

01月01日:ポルトガル・EU議長国就任
01月05日:米ジョージア州上院議員決戦選挙
01月06日:米大統領選における選挙人投票結果開票(上下院合同会議)
01月16日:独キリスト教民主同盟党(CDU)党首選挙
01月18日:日本・通常国会、アジア金融フォーラム(香港、19日まで)
01月20日:米大統領就任式
01月24日:ポルトガル大統領選挙
01月25日:ダボス会議(29日まで)
01月XX日:米大統領・一般教書演説(26日頃?)、IMF・世界経済見通し公表

02月XX日:米大統領予算教書・経済報告書公表
02月20日:米パリ協定復帰
02月27日:G20財務相・中央銀行総裁会合

03月XX日:中国第13期全国人民政治協商会議第4回全体会議、第13期全国人民代表大会第4回全体会議(北京)
03月14日:独バーデン・ビュルテンベルク、ラインラント・プファルツ州議会選挙
03月17日:オランダ下院選挙
03月25日:東京オリンピック・聖火リレー開始(最終的オリンピックの開催可否を決定?)
03月26日:米通商代表部・外国貿易障壁報告書公表
03月XX日:バイデン政権・気候サミット開催、ECBパンデミック緊急購入プログラム期限

04月07日:G20財務相・中央銀行総裁会合(8日まで)
04月09日:IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
04月XX日:国連・世界経済状況予測公表

05月06日:英地方議会選挙(ウェールズ、スコットランド)、英ロンドン市長・ロンドン議会選挙
05月19日:欧州復興開発銀行年次総会(アルメニア・エレバン、20日まで)
05月25日:世界経済フォーラム特別年次会合(シンガポール、28日まで)
05月XX日:G7サミット(英国)、米財務省・半期為替報告書公表

06月06日:独ザクセン・アンハルト州議会選挙、メキシコ連邦下院議員・州知事選挙、イラク国民議会選挙(予定)
06月18日:イラン大統領選挙(予定)
06月28日:G20外務相会合(イタリア・マテーラ、29日まで)
06月30日:IMF・世界経済見通し公表
06月XX日:フランス地域圏議会選挙・県議会選挙、世界銀行・世界経済見通し発表、WTO閣僚会議(カザフスタン・ヌルスルタン)、OPEC総会

07月01日:オセアニア圏・新会計年度開始、スロベニア・EU議長国就任
07月09日:G20財務相・中央銀行総裁会合(イタリア・ベネチア、10日まで)
07月23日:東京オリンピック開催(8月8日まで)、中国共産党結党100周年
07月31日:米債務上限の適用停止期限
07月XX日:中国北戴河会議、IMF・改訂版世界経済見通し発表

08月24日:東京パラリンピック(9月5日まで)
08月XX日:カンザス連銀シンポジウム(ジャクソンホール)

09月05日:香港立法議会選挙
09月13日:ノルウェー議会選挙
09月19日:ロシア下院選挙・統一地方選挙
09月26日:独連邦議会選挙、英国労働党大会(ブライトン。29日まで)
09月30日:菅自民党総裁任期満了、独議会・任期満了
09月XX日:東方経済フォーラム(ウラジオストク開催)、中国一帯一路サミット、メルケル首相退任、仏2022年政府予算案・社会保障会計法案発表

10月01日:ドバイ万国博覧会(2022年3月31日まで)、米新会計年度開始
10月15日:IMF・世界銀行年次総会(ワシントンDC、17日まで)、G20財務相・中央銀行総裁会合(ワシントンDC、16日まで)
10月XX日:英国保守党大会(バーミンガム)
10月21日:衆議院議員・任期満了
10月24日:アルゼンチン中間選挙
10月XXX:カナダ・ヌナブト準州選挙
10月30日:G20首脳会合(ローマ、31日まで)
10月XX日:中国共産党中央委員会全体会議(5中全会)

11月01日:国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(英グラスゴー、12日まで)
11月XX日:APEC閣僚・首脳会議、カナダ・ユーコン準州選挙
11月29日:スイス国民議会議長・全州議会議長選挙
11月XX日:米財務省・半期為替報告書公表

12月08日:スイス連邦大統領・連邦副大統領選挙
12月XX日:中国・中央経済工作会議
12月XX日:OECD経済見通し公表、OPEC総会

【2021年の注目点】

 2020年の相場環境を踏まえて、2021年のカナダドル円相場の注目点をまとめてみました。
・ カナダ経済
・ 原油や金価格との連動性
・ カナダ中銀のスタンス

〇カナダ経済

 カナダは、世界でロシアに次ぐ2番目の面積を持ち、天然資源も多く埋蔵されています。世界的にも裕福な国のひとつで、古くからG8先進国のひとつとなっています。
 経済の中心はサービス業ですが、製造業でも自動車産業・航空機産業などが盛んで、鉱物資源としては、オイルサンドはサウジアラビア、ベネズエラに次ぐ世界第3位の埋蔵量を誇り、金、ニッケル、ウラン、鉛、カリウムなどが主に採掘されていますが、ウランは世界第1位の産出量です。また、広大な土地を有していることから、林業も盛んで、カナダの材木がないと米国の住宅が建たないとも言われています。
 1990年代前半までは、経済的混乱がありましたが、1997年以降は、失業率が低下し順調に回復を続けています。また、地政学リスクが低く、高格付けが維持されており、過去においては、高金利・資源国通貨として、本邦の投資家からの投資ニーズも旺盛でした。
ただ、トランプ大統領が、NAFTAからの離脱を表明、経済面での懸念が高まりました。ただ、これも「USMCA(新NAFTA)」が、発足したことで一定の安心感となっています。また、昨年トランプ大統領が、一時カナダ産アルミニウムに追加関税を示唆しまたが、これも新たに大統領となるバイデン氏が、対カナダ政策で強硬姿勢を示す可能性は低く、問題は大きくならないでしょう。
ただ、新型コロナウイルスの問題は深刻です。ワクチンが開発されたといっても、普及には時間がかかりそうです。そうなると世界的な経済の回復も遅く、原油価格の需要は、環境問題もあって、大きく上昇することは難しいと考えるとカナダドル相場の上昇も、あまり強いものとはなりそうもありません。

〇原油や金価格との連動性

 カナダは、資源が豊富な国です。その中でも、オイルサンドは世界第3位の埋蔵量を誇そっています。そのため、原油価格に経済が大きく影響を受けることで、カナダドル相場も連動性が高いことで知られています。
以下の2つのチャートは、カナダドルの対ドルとカナダ円相場の動きを、原油価格と比較したチャートです。
 ご覧のように、カナダ円は、若干円相場が絡むので、リスク回避には弱いですが、連動性が非常に高いことが良くご理解頂けると思います。

 そうなると今年のカナダドル円相場も、原油価格の動向で左右されることが多くなりそうです。現在の減産政策が、今後も続くか、年2回開催されるOPEC総会などには注目しておきましょう。

では、一方で原油価格の動向はどうでしょう。
 以下は、2000年からの原油価格の月足チャートです。
 2006年に147.27ドルの高値示現後は、軟調気味な展開を続けています。
 ただ、昨年4月の動きは行き過ぎとしても、今後戻ってもピンクで囲まれた50ドルから60ドルは、テクニカル面からレジスタンスも控えており、上値を抑えられる可能性が残っています。ただ、66.60-65の戻り高値圏を超えると、76.90の高値を目指す可能性がありますが、それでも中長期的に環境問題から二酸化炭素の排出制限など、各国がクリーン・エナジー政策を推進しています。大きく需要が伸びるとは考えられず、投機的な動きはあっても、かつてのような100ドルなどを期待するのは難しいでしょう。
 ただ、一方でモメンタムが反転気味となっていることで、下値も33.64ドルなどが支えると堅調が想定されます。当面40-60ドルぐらいで揉み合いが続くと見ています。
 そうなるとカナダドル相場の更なる上昇もあまり期待しない方が良いのかもしれません。

 一方で鉱物の代表としての金価格とカナダドル相場の動きを見てみましょう。 
 以下は、2000年からのNY金のスポット価格とカナダドルの対ドル相場の推移を比較したチャートです。ご覧のように過去は比較的連動性が高かったですが、2019年頃から、非連動が強まっています。金価格が大幅に上昇した影響ですが、恐らくこの時トランプ米大統領が、貿易赤字問題などから、諸外国に関税強化策を始めた時期と重なります。また特に中国に対しては厳しい関税政策を仕掛けたことで、一時「第2の冷戦」とまで指摘される事態まで米中関係が悪化しました。こういった面で、リスク回避資産として、金が大きく買われた影響のようです。
 従って、現在はあまり金価格の動きをカナダドル相場の見通しに利用するのは難しいでしょう。 

 また金価格と原油価格の動向もチェックしておきましょう。
 こちらもご覧のように過去一定の連動性がありましたが、2014年から、非連動の動きを強めています。
 これはその前年となる2013年頃から、日本では40度以上の猛暑が続き、世界的に台風や竜巻、集中豪雨による洪水など自然災害が多く発生したことで、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の問題が、大きくクローズアップされた時期です。2015年12月には、フランスのパリで、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催され、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定、「パリ協定」が締結されました。
 こういった影響が原油価格の下落要因となって、丁度2016年の1月に、ドルカナダ相場が、1.2690の高値(カナダドル安)をつけていることとも符合するようです。
 つまりこちらからも金価格の上昇は、カナダドル相場の押し上げに寄与しないと思っておいた方が良さそうです。 

〇カナダ中銀のスタンス

 現在カナダ中銀は、政策金利の誘導目標を、歴史的な低水準である0.25%から0.75%としています。
 カナダは、2000年頃に5.75%という高い政策金利の時期はありますが、元来オセアニアや英国より、低金利国です。ただ、政治や地政学リスクが低いことで、比較的投資が集まっていました。また2009年のリーマンショックの時でも、現在の0.25%が最低水準です。今後の経済の状況次第ですが、更に政策金利をゼロ金利まで引き下げる可能性は低そうです。一方で日銀も、日本のデフレからの脱却は難しく、当面現在のマイナス金利政策を続けるでしょう。そうなると今年は金利差が相場に影響を与える可能性は低そうです。

また、以下はカナダと日本に金利差とカナダドル円相場を比較したチャートです。近年は、金利差との連動が薄れており、円の高い状況が続いています。もし、カナダが金利を引き上げ始めても、カナダドル円のサポート要因となる可能性は低そうです。

【テクニカル面】

テクニカル面からまず、カナダドル円を構成するドルカナダ相場(カナダドルの対ドル相場)の長期月足をチェックしておきましょう。
 上値は1.4690と1.3668でダブル・トップをつけて調整気味です。特に上昇を支える一段目のチャンネルを下方ブレイクしています。モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスも、下落傾向を続けています。既に上値は1.30前後のネック・ラインが抑えると相当弱く、超えても1.33657-1.3451ゾーン、1.3646-1.3801、更にサイコロジカルな1.40では売りにさらされ易そうです。
 一方下値は、現状の安値1.2630は、一応過去の最高値1.6188から0.9059への下落の50%の位置で支えています。この位置が維持されると追いかけて売るには厳しいですが、しっかりと割れると1.2527、1.2250の戻り安値がターゲットとなります。また1.2062の下ヒゲまで割れるとサイコロジカル1.20前後がターゲットとなりそうです。
 ただ、この位置は0.9059や0.9405から1.4690の上昇の50%レベルが、1.1875-1.2045ゾーンに控えています。一旦支えられると強い位置となりそうです。このリスクは1.1598の上昇がスタートした位置を割れるケースです。
従って、ドルカナダの今年の想定レンジを、1.20~1.30としておきますが、上値は1.32ぐらいまではあるかもしれません。

次にドル円相場も見ておきましょう。まず長期の月足です。
 1989年の163.65の高値からのチャートですが、上値は147.66、145.86できっちりとレジスタンスに抑えられて、現状このレジスタンスは、115円前後にあると考えらえます。今後もこういった位置が抑えると弱い状況が続きそうです。
 特に長期のエリオット波動からパターンを想定すると、
第1波=163.65-79.75
第2波=79.75-147.66
第3波=147.66-75.31
第4波=75.31-125.86
第5波=125.86- ?

となります。現在は、最後の第5波の下落過程にありますが、その場合第3波の安値となる75.31を将来的に割り込むという想定が基本となります。ただ、第5波が短くなる可能性があること。また超長期ですから、そういった下落が実現するとしても、まだまだ先となる可能性もあることは、留意しておいてください。
また、オレンジの安値で示した101.25、101.67、99.02の安値は、一種のネック・ラインを形成しています。今後下げてもこの99.02-101.67ゾーンは、一旦支えられる可能性が高いと考えられます。このレベルが維持されると下落は、直ぐに進みませんが、ただ割り込んだ場合、75.31の安値から結ばれた最終サポートの位置となる95円前後がターゲットとなります。この位置もサポートが控えていますので、下げ止まる可能性が高いです。ただ、更に割り込むなら85-90円ゾーンまでターゲットとなります。
また、こういった円高では、一部に当局の市場介入を警戒する話が必ず出ますが、ただ、今回の円高のスピードが総じて鈍いこと。また円独歩高ではなく、ドル安であることを考えると米国から市場介入のコンセンサスを得ることは難しいでしょう。個人的には、このレベル程度なら市場介入は出来ないと思います。

 次により短期の月足チャートを見てみましょう。
 こちらは110円前後がレジスタンスとなっています。前のチャートと合わせても、110-115円は引き続き上値を抑える位置となりそうです。
 一方下値は下落チャンネルの下限と、75.31のサポートがクロスする95円前後が、一定のターゲットとなりますが、この位置は、フィボナッチ・リトレースメント(75.31から125.86)の61.8%の94.62と合致する位置です。100円のサイコロジカルを前にした50%の100.58や100円をしっかりと割り込むなら、こういった下落の可能性があることは注意しておきましょう。ただ、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスの力が弱く、下落には、相当時間がかかりそうです。今年もじりじりとした相場展開が続きそうですが、一応今年の想定レンジを100.00~110.00とします。  

 加えてドルカナダとドル円の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を作成しています。
 ドルカナダのコア・レンジを1.2000~1.3000、ドル円を100.00~110.00としましたので、これから算出されるカナダドル円の最大想定レンジは76.92~91.67となります。

 それでは、最後にカナダドル円の月足を見てみましょう。
月足チャートからは、106.49を高値に大きなH&Sの形を形成しています。
 価格帯がぴったりとまっていませんが、左肩は94.30から72.16,右肩は元来93.26から74.80で形成されていましたが、昨年3月の下落が長期サポートを割り込んだことで73.82まで拡大しました。これでレンジの下方ブレイクが発生したことになりますが、更に下落は進んでいません。一応騙しの動きと認定するしかありません。
また左肩は、約47カ月の動きとなっていますが、右肩は既にこの期間を14カ月経過しています。H&Sのパターンからは、同期間となることになりますが、超えていることで、若干H&Sと言えるかは不透明です。ただ、未だ一応レンジの範囲の動きに留まっていますので、次のこのレンジのブレイクまでは、大きな方向感は出ないでしょう。
ただ、短期的には、106.46からのマイナー・レジスタンスに近づく動きとなっています。この位置は82円前半で、現在は上抜けているかどうか微妙ですが、少なくともしっかりと超えると84.74-85.23の戻り高値圏が視野となりますが、最終レジスタンスがこのレベルに控えています。今年このレベルを目指す動きとなるか注目ですが、ただ、上値を押さえてしまうと更に上昇は出来ません。あくまでこういった位置を超えて、86.24-86.98、90円方向への上昇期待ですが、当面右肩の上限となる91.54-58や93.26を超える展開は想定しない方が良さそうです。
一方下値は、77.63-78.23の戻り安値圏が支えるとスロー・ストキャスティクスの反転上昇からも強く、割れても75円前後はサポーティヴです。リスクは、73.82、72.16や68.40を割れるケースです 

【予想レンジと戦略】

 それでは、以上を踏まえて、ドルカナダ円相場の今年の見通しと戦略についてお話します。
 ただ、あくまで新型コロナウイルスの感染が、最悪の事態まで再拡大しないことを前提としています。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ファンダメンタルズ面での比較は、為替市場であまり意味をもたなくなっています。世界が正常に戻るまでは、こういった状況が続くでしょう。従ってテクニカル面を中心に、2021年の戦略を考察しています。  

前述のマトリックス・チャートからは76.92~91.67と若干高い算出結果です。特に上値が高いですが、下値は前述の77.63-78.23の戻り安値圏と合致するようです。従って、今年のカナダドル円の想定レンジの基本を75.00~85.00としますが、77円が下値を支える動きでは、77.00から87.00のレンジの可能性もありそうです。

基本的に、戦略は、カナダドル円は、地政学リスクも低く、リスク回避的な面もあって、押し目買いですが、注意しなければならない点は、
① 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。
② 堅調な株価が続いていますが、5-6月に株価にピークが訪れる可能性が、アストロ的に指摘されています。アノマリー的にも「セル・イン・メイ」が意識される時期です。くれぐれも株価の動向には注意して対応しましょう。 
③ 夏場は、基本揉み合い気味の展開となり易いですが、8月中旬に例年一時的な円高となるケースが散見されることで、油断しないようにしておきましょう。
④ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期の動きには逆張りで向かわないようにしましょう。 

具体的には、77円、75円方向への調整での買い下がりです。ストップは73.82の戻り安値割れで、ただ、原油価格が大きく上昇しない前提では、総じて保合な感じの相場が続くかもしれません。85円前後が抑えると利食いで、超えても87円前後では利食いを優先しましょう。またこういった位置では売りも検討できそうです。ただ、その場合も75-80円などは利食っておいた方が良いかもしれません。