スイスフラン円-2024年相場予想と戦略-

スイス中銀と日銀の金融政策、スイスフラン介入が継続するのか?

※本記事は2023年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

【2023年のスイスフラン円相場を振り返って】

 2023年のスイスフラン円相場も、地政学リスクや中銀のスイスフラン介入が続き、2022年からの上昇を継続しました。

 年初は、前年の財務省の円買い介入の影響に加えて、黒田日銀総裁の任期満了の絡めた日銀総裁人事の思惑で、1月3日に年間安値となる137.41を付けました。その後、3月にスイス中銀が0.50%の利上げを発表したことで、147.62まで上昇した後、スイス銀行の破綻に伴う混乱や米地銀2行の破綻などがリスク回避の動きで、140.24まで調整しました。しかし、植田氏が新総裁就任後の最初の会合において、市場の期待を裏切る形で、強く金融緩和政策を維持するスタンスを表明したことから、その後はじり高を続け、8月30日に166.60の高値まで上昇しました。ただ、9月にスイス中銀は、2022年6月から続けてきた利上げを停止しました。10月3日に159.92まで売り込まれましたが、9月のFOMCにおいて、2024年のFF金利見通しが、6月時点の4.6%から5.1%に一気に0.50%、サプライズ的に引き上がりました。その影響もあり、米10年物国債利回りが、5%に迫る強い上昇を示現し、ドル円相場が、2022年の高値151.95に迫る151.91のまで再上昇したことで、スイスフラン円相場も、170.54の年間高値をつけました。

 ただ、これも植田日銀総裁が、国会において「年末から来年にかけて、よりチャレンジングになる」との発言し再び早期の金融政策変更の思惑が高まったこと。また、今年最後のFOMCでは、政策金利が据え置かれ、加えて2024年のFF金利見通しが、再び6月時点の4.6%に引き下げられたことがサプライズなり、12月14日にドル円相場が140.97まで急落しました。その結果、スイスフラン円相場も、162.18まで値を下げましたが、現状はこの位置を維持して、堅調なレベルで年末の取引を終了しようとしています。

【2024年の主な材料】

 以下が現在、知り得る2024年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので、変更されることがあります。

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2024年は、米国の大統領選挙が、大きな波乱要因となるのか注目となりそうです。

 米大統領選に関しては、トランプ元大統領の再立候補が話題となっています。ただ、前回の大統領選挙に絡めた自身の疑惑に関連して、多くの告訴を抱えています。また米憲法修正第14条によって、一部の州で「大統領選出馬の権利がない」との判決も出ています。裁判自体は長期に渡ることで、大統領選まで時間稼ぎが可能でしょうが、もし、こういった裁判で、次々に有罪が確定した場合、7月の共和党の全国大会に向けて、予備選を勝ち抜けるかは不透明感が残りそうです。また、そうでなくても、もしトランプ大統領が再び大統領に返り咲くなら、バイデン政権の政策を全て「ちゃぶ台返し」する可能性が高く、その場合恐らく世界の政治や経済、金融市場に大きな混乱を招く可能性高いことは、留意しておきたいと思います。

 一方バイデン大統領も次男のハンター・バイデン氏の問題で、共和党が同大統領の弾劾裁判に向けて動いています。また、高齢であることもあって、健康問題も懸念として残りそうです。つまり、夏の全国大会に向けて、両氏が候補者としての立場を維持出来るのかは、現状は全くの不確実です。その場合、次の候補者次第となるでしょうが、現状米国の大統領選の結果を占うことは非常に難しく、特に金融市場においては、この問題に関して、2024年を通して、常に経過を確認しておくことは重要となりそうです。

 また、台湾総統選、ロシア大統領選、9月の岸田首相の任期などの政治的日程が、予定されていますが、台湾の総統選で与党が勝利しても、中国が軍事行動に出る可能性は低く、プーチン大統領の再選は揺ぎ無く、為替・金融市場に大きな影響を与えることはなさそうです。ただ、直近米国の支援が止まる可能性が指摘されているウクライナ情勢では、今年も混戦が続く可能性が高いと思われますが、もし何かの政治的な動きが出て、停戦や終戦に向かう兆しが見えた場合、過去2年のエネルギーや商品市況に、大きな巻き戻しの動きが出るかもしれません。その場合、ユーロ相場に大きな動きが出る可能性があることは注意しておきましょう。

 一方金融市場では、5月にスタートするNY株式の決済の短縮化が、相場の波乱要因となるとの指摘が出ています。現状2営業日後に決済する売買代金を、翌営業日に決済を前倒しするというものですが、世界的な市場では、まだ2営業日後の決済が主流です。為替市場も、2営業日後に決済されますが、株式の取引に伴う為替ヘッジのリスクと絡めて、機関投資家やファンドなどの対応が遅れているようです。一部でこの変更によって、流動性のリスクも指摘されており、金融市場に混乱が生まれる可能性に注意しておきましょう。

 その他、今年も大きな地震や自然災害、ガザの問題などいろいろ自然・地政学リスクが、市場の混乱につながっています。2024年も温暖化の影響など、何が起きるのかわかりません。こういった事象は突発的に起こることで、準備することはできませんが、常に、こういったリスクも念頭に入れて、相場に臨む姿勢を維持しておいた方が得策もしれません。

【2024年の注目点】

 2023年の相場環境を踏まえて、2024年のスイスフラン円相場の注目点をまとめてみました。

  • スイス中銀の金融政策
  • 日銀の政策変更が遂に実現するのか?
  • スイス中銀のスイスフラン介入は続くのか?
  • スイス日金利差との連動性
  • ユーロ円との連動性

〇 スイス中銀の金融政策

 スイス中銀は、原油・資源価格の上昇を受けた国内物価の上昇を受けて、2022年6月に、2007年9月以来の利上げに踏み切りました。それまで▲0.75%から▲0.25%としていた政策金利を2023年6月に1.75%まで引き上げ、現在は、物価指数の低下を受けて、据え置きを続けています。

 ただ、12月最後の金融政策発表後の声明では、「インフレ圧力はわずかに低下したが、不確実性は依然として高い」、「インフレが中期的に物価安定と一致する範囲内にとどまるように、必要に応じて金融政策を調整する」とし、ジョーダン総裁は、「インフレは今後数カ月で上昇する可能性がある」、「インフレの上振れと下振れリスクの評価はバランスがとれている」と述べています。確かに今後もインフレの状況次第ですが、為替レートの状況にもよりますが、警戒感を残していることで、再利上げの可能性は排除しない方が良さそうです。

 以下は、2024年のスイス国立銀行の政策金利の公表日です。声明や会合後のジョーダン総裁の発言なども注目しておきましょう。

03月22日

06月20日

09月26日

12月12日

〇 日銀の政策変更が遂に実現するのか?

 2023年は、日本の30年にわたるデフレ経済から脱却したことで、日銀の金融政策の転換が、大きなマーケットの材料となりましたが、実際新たに就任した植田総裁は、YCCの上限撤廃などの一部変更を実施するも、結局2023年度中、本格的な政策変更に踏み切ることはありませんでした。

 一時植田総裁の発言に、期待感を持つ動きもありましたが、今年の最後の会合では、「我が国の景気は緩やかに回復している」としながらも、「経済・物価を巡る不確実性は極めて高い」、「粘り強く金融緩和を継続していく」として、「賃金から物価への波及、サービス価格への動向を見たい」と今後も慎重姿勢を続けそうです。  ただ、実際の物価の動きを見る限りは、特に円安の影響が強く、日本がコストプッシュ・インフレに晒されていることは明らかな事実です。2024年もこの円安が続けば、引き続き物価が高止まりすることは間違いないでしょう。

 ではなぜ日銀は、政策を動かせないか?

 日銀や人々がデフレ慣れしていることも、大きな要因の一つですが、加えて、これは憶測ですが、植田総裁の過去の発言からは、「拙速な引き締めで物価目標が達成できないリスクの方が大きい」としていています。過去自身が速水元日銀総裁時代に、審議委員を務めていた時期、速水日銀の利上げが、景気の腰折れにつながったことへの悪いイメージが残っていて、現状の日本経済においても、自身の政策転換が、再び景気の腰折れにつながることを恐れているのではないかと疑ってしまいます。通常金融政策は、「フォワード・ルッキング=将来の見通し」によって政策運営されますが、来年の春闘で、順当に賃上げが実施されるのを確認するまで、政策変更はないのではないでしょうか。

 そうなると政策が変更されるのは、早くても来年の4月会合以降であり、その場合も「マイナス金利の解除」、「YCC政策の撤廃」が限界で、その後も、長くデフレにつかり切った日本経済が、政府の減税策を受けても、強い上昇圧力をみせる可能性は低く、年内の「利上げ」に踏み切る可能性は低そうです。

 それでは、日本の長期金利動向も見ておきましょう。

 10年物国債の利回りは、3回のYCC政策の上限の変更で、一時1%に迫るレベルまで上昇しましたが、テクニカル的にははっきりと上ヒゲを出しています。下段のスロー・ストキャスティクスも、既に上昇し過ぎ(売られ過ぎ)の位置にあって、来年もこの1.0%を超えることはなそうです。一方下方では、流石に0.55%のそれ以前の高い位置は逆サポートされそうです。来年の日本国債の利回りとしても、0.55%から1.00%での推移が限界となりそうです。

 ただ、2024年も、長らく市場から全く注目を集めなかった日銀金融政策が、大きな注目となりそうです。以下は2024年の日銀金融政策決定会合や議事録の公表日です。しっかりと押さえておきましょう。

日銀金融政策決定会合(議事録公表日)

01月23日+展望リポート公表(03月25日)

03月19日

04月26日+展望リポート公表(06月19日)

06月14日(08月05日)

07月31日+展望リポート公表

09月20日

10月31日+展望リポート公表

12月19日

〇 スイス中銀のスイスフラン買い介入は続くのか?

 過去、スイス中銀は、輸出振興の意味で、スイスフラン高を避けるためにスイスフラン売り、ユーロ買いの介入政策を継続的に実施していました。ただ、一転2022年からスイスフラン高が、輸入物価を押し上げることを懸念して、スイスフラン買いの市場介入に、為替政策を100%政策転換しています。

 しかしながら、12月14日のスイス中銀の会合後、ジョーダン・スイス総裁は、「SNBはもはや通貨売りに注力していない」と述べています。

 一方市場では、スイス中銀のスイスフラン買い介入は、輸入物価の上昇を抑えるために、また、、将来のスイスフラン高による為替差損を回避すべく、過去スイスフラン売りで積み上がった負の遺産となる外貨準備高を削減のために、スイスフラン買い介入を対ユーロ中心に行ってきたと指摘しています。その結果、昨年末8000億スイスフラン相当近くあった外貨準備高が、下の図のように足元では、6000億スイスフラン台まで減少してきています。また、これが逆効果となって、スイス中銀は、2年連続での大幅な為替差損を計上する見通しとなっています。依然として巨額の外貨準備高を抱えていることから、2024年も為替差損を回避すべく継続的に対ユーロ中心にスイスフラン買い介入を継続する公算が高いと見られています。 

 これが続くと2024年もスイスフラン高をサポートする可能性がありますが、ただ、あまり鵜呑みにするのは危険かもしれません。 

 過去スイス中銀は、2015年に、それまで「対ユーロで1.2を割り込むような下落があれば永続的に介入を行う」としていた政策を突然放棄しました。ユーロ・スイスフラン相場が一気に41%暴落した「スイスフラン・ショック」を起こしています。この時事前に全くアナウンスがなく、市場が大混乱となりましたが、特にドラスティクな政策で有名なスイス中銀ですから、いつスイスフラン買い介入を停止するのか、油断がなりません。スイスの物価の情勢もあるでしょうが、単純にスイス中銀のスイスフラン買いが、相場を支えてくれるとの安易に見るのは危険かもしれません。

〇 スイス日金利差との連動性

 それでは両国の金利差とスイスフラン円相場の比較をみてみましょう。以下のチャートは、2006年からの両国の10年物国債利回り差とスイスフラン円相場の推移です。 

 2014年までは、リーマンショックによるリスク回避志向の時期ですが、比較的両国の金利差に、スイスフラン円相場は連動した動きとなっています。ただ、2014年から2016年は、この連動性が全く機能していません。この要因は、一概には言えませんが、恐らくアベノミクスによる日本の景気拡大やトランプ政権で強まったリスク回避の動きが、相場に影響を与えている可能性がありそうです。また直近では、スイス中銀のスイスフラン買い介入が大きな影響を与えていると見られます。スイス中銀が介入を止めれば、またぞろ金利差に連動する展開も想定されます。その面では、スイスフラン円の下落リスクは、低くないのかもしれません。

〇 ユーロ円との連動性

 スイスフラン相場は、ユーロ諸国に囲まれていることもあって、特にユーロ相場と連動性が高い通貨ペアとなっています。

 以下のチャートは、2000年からのスイスフラン円相場とユーロ円相場を比較したチャートです。乖離のレベルは、その時々の地政学リスクの状況で異なります。また、現在は、スイス中銀のスイスフラン買い介入によって、スイスフラン円の方が高くなっていますが、総じて同調する展開が続いています。

 そうなるとスイスフラン円相場は、ユーロ円相場を参考にトレードしても良さそうです。

 では、以下のユーロ円相場の月足チャートを見てみましょう。

 ユーロ円相場は、169.97の史上高値示現後は、94.12で下値を支えて、その後は149.79の高値から109.57まで値を下げた後、114.41でサポートを形成、2020年以降は堅調な上昇を続けています。

 ただ、上値は、歴史的な高値169.97を目指す動きの中、直近では164.30で高値を付けて調整気味です。この位置で上昇が止まったことは、テクニカル面では、特別要因が見つからないことで、上値付きかは断定できません。ただ、既に下段のスロー・ストキャスティクスは、買われ過ぎから反落気味となっており、今後もこの高値が上値を抑えると、スロー・ストキャスティクスのデッド・クロスへの転換から、下値を目指す動きがありそうです。 下値は、114.41の安値からのサポートと横足から目途を確認していきますが、まずは、①のサポートと重なる148.41-149.79ゾーン、これが維持されると強い形が続きますが、維持でいない場合は、次の②のサポートからは、137.50-141.06ゾーンがターゲットとなります。またこういった位置は維持されると可能性が高そうです。リスクは、134.13-137.39などを割れるケースで、その場合は、ざっくりと130円を目指すリスクも残りそうです。

 そうなると2024年のスイスフラン円も、上値追いは厳しいでしょう。買い戦略はあくまで、押し目を待つほうが得策となりそうです。

【テクニカル面】

≪ドルスイス≫

 テクニカル面からまず、スイスフラン円を構成するドルスイス相場の長期月足をチェックしておきましょう。

 ドルスイスは、1.0328-1.0344-1.0237-1.0148が上値を押さえて、下値は一時の下ヒゲはあるも、0.8700-0.9071-0.9188-0.8758が支えるレンジを相場を長らく維持してきました。ただ直近ではこの下限を下回り、0.8553の安値まで調整しています。 下段のスロー・ストキャスティクスも、再下落の可能性が示唆されており、現状の相場が下げ待ったとは言い切れないようです。

 上値は、既に0.9244や0.9244から0.9462の戻り高値の半値となる0.9353が押さえると弱く、超えても0.9244の戻り高値から0.9462-72の戻り高値圏、これは丁度0.8700と1.0344の高値の50%の位置となる0.9522に相応しています。過去の長いレンジの半値位置となることで、これが今後も上値を抑えると上昇は期待薄でしょう。あくまでこういった位置を超えて、強気になりますが、それでも過去の前述の高値圏では、上値を押さえられるでしょう。

 一方下値は、この0.8553の安値を割れると、過去には下ヒゲしかなく、ポイントが見えづらくなりますが、恐らく青いファンラインと最終サポートの位置がターゲットとなる見通しで、その位置はだいたい現状の推測では、0.8300前後かと思われます。しかしながら、既にスロー・ストキャスティクスも売られ過ぎ圏にあって、維持出来ると更に調整は進まない見通しです。リスクは、サイコロジカルは0.8000も維持出来ない場合、想定は難しいですが、過去の0.7406や0.7072の下ヒゲがターゲットとなる形です。 

 従って、ドルスイスの今年の想定レンジを一応0.8350から0.9350とします。

≪ドル円≫

 次にドル円相場も見ておきましょう

 ドル円相場は、1990年の160.35の高値から、2011年10月の75.31まで下落後、2022年10月には、160.35の高値と、147.66や125.86の高値を結んだレジスタンスを越えて、151.95まで急反発しました。

 特にこのチャートで注目して頂きたいのは、チャート形状から「E」の75.31をボトムとしたリバースH&Sを形成していることです。また現状は、このショルダー部分のネックラインとなる「D」と「F」をクリアして、151.95の上ヒゲで、アーム部分「G」の形成を完了しています。

 これを前提とすると、チャート形状の観点からは、75.31の安値を基準に、ロールシャッハ・テストのように、左右対称の動きをすることが、2023年の相場では、期待されていました。もし、その通りであれば、再び「J」の動きを「K」で繰り返し、「B」と同様に「I」の位置まで相場が下落して、その後再び「A」の160.35方向を目指し「I」を完了するというが想定です。

 ただ、2023年の相場は、「D」と「F」のネックラインを割れることはなく、再度高値を目指す動きに留まりました。つまり、前述の前提が崩れているわけですから、理想的なリバースH&Sは、実現しなかったという事です。

 そうなると次の見方は、あくまで昨年のレンジである127.23と151.95をどちらが先にブレイクするかで方向感が決まると考えざるを得ません。もし、2024年の相場が、151.95を越えて行くなら160.35の高値を目指す動きとなり、一方127.23を割れて、更にネックラインとなる「D」と「F」を割れるなら、「H」方向への調整リスクとなります。ただ、ファンダメンタルズ面を考えると、2024年に、そこまでの円高が再燃するリスクは、想定することは難しく、「D」と「F」のネックラインさえ維持されるかもしれません。あくまでこういった位置を割れて、120円程度までの下落が目途となりそうです。

 以上を勘案して、ドル円相場の2024年の想定レンジを130.00から150.00とします。

≪スイスフラン円≫

 それでは、最後にスイス円の月足を見てみましょう。

 スイスフラン円は、過去58.80の安値から2015年の1月のスイスフラン・ショックで、一時155.37の歴史的高値を示現しましたが、流石にこれは大きな上ヒゲで終わっています。その後、下値を102.00や106.66で支えて、現在は170.59の歴史的高値を更新する動きとなっています。この波動を見ると

第1波=58.80から105.06

第2波=105.06から74.69

第3波=74.69から134.60(155.37)

第4波=134.60から102.00

第5波=102.00から170.53

となりますので、現状次のABCの動きは不透明ですが、下段のスロー・ストキャスティクスも、買われ過ぎで反転下落を示していて、第5波の高値つけた可能性が高そうです。

 そうなるとどこまで調整できるかが焦点ですが、まず、それ以前の高値151.49が維持されると相当強い形ですが、割り込むなら137.44の戻り安値から134.60の第3波の高値が視野となります。この位置は波動的に5波の102.00から170.59の上昇のフィボナッチ・リトレースメント50%となる136.30とも整合性のある位置です。下落しても一定の下げ止まりをみせそうです。リスクは、これを維持出来ない場合ですが、その場合も前述のフィボナッチ・リトレースメントの76.4%と合致する118.56-119.18ゾーンなどは良いターゲットとなりそうです。  また、更なる調整は不透明ですが、もし割れても戻り安値の106.66から第1の高値の105.06、第4波の安値102.00は当面維持されると見通しです。

≪マトリックス・チャート≫

 加えてドルスイスとドル円の想定レンジから作成したマトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)も参考にもみておきましょう。

 ドルスイスのレンジを0.8350から0.9350、ドル円を130.00から150.00としましたので、これから算出されるスイスフラン円の最大想定レンジは、少し広すぎですが、139.04から179.64となります。

【予想レンジと戦略】

それでは以上を踏まえて、スイスフラン円相場の来年の戦略についてお話します。

 また一応来年は、過去のような新型コロナウィルスの感染拡大やウクライナの情勢の勃発など予測不能な事態が発生しない前提でお話させて頂きます。

来年のスイスフラン円の想定レンジの基本を136.00から170.00とさせて頂きます。少し広いレンジとなりすが、スイスフラン円の直近の動きが大きいだけに、これぐらいの余裕を見ておきます。

次に戦略の前提としては

・スイス中銀は、利下げも利上げの両方の可能性がありそうです。一方、日銀の金融正常化は、限定的になり易く、あくまでスイス中銀の金利に注目した対応となりそうです。

・スイス中銀は、一応スイスフラン買いの介入を継続すると見ますが、思わぬ状況で、梯子を外される可能性には、最大の注意を払っておきましょう。

・テクニカル面からは、スイスフラン円の月足のスロー・ストキャスティクスは、デッド・クロスが見えています。一方ドル円は、まだその兆候がはっきりとしてませんが、下落がみえれば、同様にデッド・クロス入りするでしょう。従って、突っ込み売りは出来ませんが、慎重に戻り売り場を狙うのが得策と見ています。

・注意点としては、やはりウクライナ情勢を含めた政治・地政学リスクです。スイスフランは、こういったリスクに敏感に反応しますので、もし、こういったリスクオフが発生した場合は、安易にスイスフランを売らないようにしましょう。

また、タイミング的な注意点は(詳細はドル円の「2024年相場見通しのドル円の季節性」をご参照ください)

  1. 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。
  2. ドル円は、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意です。ただ逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。
  3. 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。

 基本的なスイスフラン円の中長期のスィング・トレードの戦略は、戻り売り戦略となります。現状ある程度下げていますので、追いかけて売るのは避けて、しっかりと170.59の高値越えをストップに、戻りを待って売場を探しましょう。オーバーシュートの可能性を考慮するなら、180円越えで、じっと耐える形となります。

 ターゲットは、まず、151.49が維持されると利食いながらの対応となりますが、その場合も、戻りを待って売り直して、売り回転を利かせることも一考となります。もし割れてくれれば、140円のサイコロジカル、更に134.60-137.44ゾーンは、絶好の利食い場となり、また買い戦略も検討する位置となります。この買いのストップは、130円割れなどで対応する形で、ターゲットは、151.49が逆にレジスタンスとなるなら利食いを優先しましょう。また、これは想定するのは難しいですが、更に割れても118.56-119.18ゾーンは、買い直し場となりそうですが、この場合は、134.60-137.44ゾーンが利食い場となります。

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。