
■政策金利の軌跡
米国の中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)は3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%、5月のFOMCで0.50%の利上げを実施しました。米国の政策金利はフェデラルファンズ・レート(略してFFレート)です。
FFレートの先物はデリバティブ取引所CMEに上場されており、その取引実勢価格からトレーダーたちがどのくらいの確率で利上げが起こると予想しているかを逆算する方法があります。その計算結果はCMEのウェブサイト、「CME FedWatch」に公表されています。
これを書いている2022年5月26日現在、市場は次のような利上げシナリオを織り込んでいます。
FOMC | 利上げ幅 | 政策金利 |
2022年6月15日 | 0.50% | 1.25~1.50% |
2022年7月27日 | 0.50% | 1.75~2.00% |
2022年9月21日 | 0.25% | 2.00~2.25% |
2022年11月2日 | 0.25% | 2.25~2.50% |
2022年12月14日 | 0.25% | 2.50~2.75% |
2023年2月1日 | 0.25% | 2.75~3.00% |
2023年3月15日 | 据え置き | 2.75~3.00% |
つまりFRBは来る6月と7月のFOMCでは5月と同様大胆な0.50%の利上げを実施するけれど9月以降は利上げ幅を小刻みにし、来年の3月までには利上げを完了するというシナリオです。
これは5月25日に公表された連邦公開市場委員会議事録に書かれていた「目先はきびきび利上げすることで将来金利政策の自由度を確保する」という委員会の意図にほぼ沿ったシナリオだと言えるでしょう。
■FRBのシナリオ通りになるために必要なこと
このようなFRBの描いているシナリオが実現するためには消費者物価指数の上昇が明らかに頭打ちとなりインフレが鎮静化の方向へ向かうことが大前提となります。
消費者物価指数は3月の8.5%から4月は8.3%へと騰勢を緩めています。しかしひと月だけでは「新しいトレンドが出た」という風には即断できません。今後もっとハッキリと物価の上昇率が下がってくる必要があるのです。
■株式市場の反応
春先の株式市場はFFレートの先物が断固とした度重なる利上げを織り込んでいたのとは裏腹に、やや慢心を感じさせる水準でした。
しかし株式市場の下落にもかかわらずFRBが市場に対して優しいコメントを投げかけることを全然しなかったので株式の投資家は(FRBは本気でインフレを抑え込みに来るぞ)と身構えています。つまり楽観論が後退したのです。
債券の投資家が考えている事と株式の投資家が考えている事の間の乖離がだいぶ埋まってきたということは株式のリスクがやや後退したと評価できるでしょう。しかし株安が実体経済に与える悪影響がでてくるのはまだこれからです。
また消費者物価指数の上昇が今後明らかに鈍化の兆しを見せなければアグレッシブな利上げがずっと続くことを意味し市場参加者は慌てると予想されます。