トランプ政権が誕生すると長期金利、ドル円、株式市場はどうなる?

TCJA延長がいまハッキリしている来年のトランプ政権の課題

11月5日の総選挙で勝ったトランプ氏は今、閣僚の人選中です。来年1月にトランプ政権が始動すると関税や外交などの政策に大きな変化が出ると予想されます。しかし現時点でハッキリしていることは「とりあえず前回トランプが大統領だった時に成し遂げた偉業である減税雇用法案(TCJA)が、いまは5年間の期限付きの時限法案であり、2025年末に終了してしまうので、それを恒久化する!」ということにまず取り組むということです。

TCJAが成立した経緯

米国では大型の減税法案が成立することは稀で、2017年のTCJAより以前にガッツリと減税が議論されたのはロナルド・レーガン大統領の時代まで遡らないといけません。言い換えれば30年か40年に一度、あるかないかという出現頻度の少ないイベントなのです。

TCJAは2017年にトランプ政権が発足してほどなく草案の作成がスタートし、根回しの後、議会での審議は11月から開始され、最終的に12月20日に上院と下院両方で可決され、12月22日にトランプ大統領が署名して成立しました。

債券市場の動き

当初はこのような大型法案が成立する保証はなかったので、債券市場は懐疑的であり、長期金利は一進一退でした。しかし年末にかけて税制改革が経済成長を後押しするという期待から長期金利は上昇しはじめました。

そしてTCJA成立後はそれが大規模な減税を含んでいたため財政赤字拡大への懸念から長期金利が上昇しました。

ドル円の動き

次に為替ですが長期金利と同じように2017年を通じて一進一退でした。しかし法案が成立した後からは大方の市場参加者の予想とはウラハラにドル安の展開となりました。ひとつには「この材料は織り込み済み」という材料出尽くし感が出たことが指摘できます。加えて減税により財政赤字が拡大するという懸念からドルに下落圧力がかかったのです。

株式市場の動き

株式市場は金利、為替とはやや違う展開であり、2017年を通じて堅調に推移しました。

まとめ

来年早々トランプ政権が誕生すると、時限法案が失効する前に急いでTCJAを延長、恒久化しなければいけません。それは2017年にこの法律が成立したときと同じ立法過程を今回も経る必要があることを意味します。前回と今回の大きな違いは法人税率を15%へ引き下げるという点でしょう。それを除けば前回と同じような展開になることも想定に入れておく必要があります。その場合、法案成立後に長期金利が上昇、為替はドル安に転じた点は忘れたくないと思います。