南アフリカランド円-2025年相場見通しと戦略-

南ア経済や政治の動向次第も南アの高金利が支える?

※本記事は2024年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

2024年の南アランド円相場を振り返って】

  2024年の南アランド円相場は、乱高下があったものの堅調を維持する形となりました。

年初は7.59円を安値にスタート。新NISA制度スタートによる株価の上昇期待もあって、円がじり安の展開となりました。日経平均株価はバブル期の最高値38915円を超えて、4月19日には41087円の高値を示現しました。3月の日銀金融政策決定会合で、政策金利を0.10%引き上げマイナス金利から脱出。量的緩和策の解除の方針も示されましたが、同時に利上げを急がない姿勢が強調されたこともあって、4月29日にドル円相場が160.17の高値をつけ、南アランド円相場も8.51円まで上昇しました。

ただ、ゴールデン・ウィークを前に、円安に懸念を強める財務省が、4月29日と5月1日の2日間で、9兆8千億円相当の強力な円買い介入を実施したこともあって、5月3日にはドル円が151.86まで下落。南アランド円に対する影響は限定され5月22日に8.67円まで上値を拡大しましたが、南ア総選挙で与党ANCが過半数割れ。統一政府樹立となり、ラマポーザ大統領の再選は実現しましたが、南アランド円は、8.19円まで一時下落しました。しかしながら、このレベルでは、本邦輸入勢や投機筋からの値ごろ感の円売りも強く、米財務省が半期為替報告書で、日本を再び「監視国」に認定したことで市場介入に踏み切り難くなるとの見方が強まりました。

6月のFOMCでは政策金利が据え置かれるも、FOMCメンバーのFF金利見通しが、前回の年内2回利下げ見通しから1回に後退。7月3日には直近高値を超えて、ドル円が161.95まで高値を更新、南アランド円も2024年の高値となる8.98円まで上昇しました。

しかしその後、円安に懸念を示す神田財務官が自身の退任を控えた7月11-12日に、再び5兆5千億円規模の円買い介入に踏み切ったこと。7月31日の日銀金融政策決定会合での利上げ思惑や米7月雇用統計が弱い結果となり、米国の景気後退懸念が高まったこと。日経平均株価が過去最大の下げ幅となる前日比で4753円の下落となったことなどがリスクオフの動きを誘発、8月5日にはドル円が141.70まで売り込まれ、南アランド円も、2024年の安値となる7.60円まで急落しました。

株価の急落に批判が高まったことで、内田眞一日銀副総裁が、「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要」、「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と発言したことが安心感を誘い、日経平均株価が大きく反発、ドル円も8月15日には149.39、南アランド円も8.31円まで反発しました。しかし米労務省が、2024年3月末までの一年間の非農業部門雇用者数の数値を大幅に下方修正、FOMCでの更なる利下げの思惑が高まったことで、9月16日にはドル円が139.58と2024年の安値まで下落。南アランド円も南ア中銀が利下げ姿勢を継続したこともあって、7.86円まで再下落しました。

その後は年末に向けて再び本邦実需筋の円売りニーズ、自民党の総裁選や米大統領選に対する思惑もあって、日本の長期金利が上昇基調を強めるも、米国の大統領選挙では、接戦が伝えられていたトランプ氏が大差をつけて勝利。米上下院も共和党が、過半数を上回り「トリプル・レッド」が実現したことで、「トランプ・トレード」期待が強まり、ドル円が156.75まで反発、南アランド円も8.87円まで買い戻されました。ただ、トランプ氏が、自身のSNSで、中加墨に加えて「われわれは、これらの国々が新たなBRICS通貨を創設することもなく、強力な米ドルを代替する通貨を支持することもないという確約を求める。さもなければ、100%の関税を課し、素晴らしい米国での販売にさよならを告げることになるだろう」と述べたことが上値を抑え、現状(12月13日現在)は、調整気味の展開となっています。

2025年の主な材料】

以下が現在、知り得る2025年のイベントや材料です。注目度の高いものは赤字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更される可能性があることは、ご了承ください。 

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、やはり年初から大注目となるのは、1月20日からスタートするトランプ次期政権です。トランプ氏は、既に追加関税など多くの発言をしていますが、就任当日から多くの「大統領令」に署名する見通しです。その内容次第では、市場を大きく混乱させることは間違いなさそうです。トランプ氏の政策に関しては後述しますが、2025年の相場を考える上で、特に注意を払っておく必要があるでしょう。

 また、2024年は「選挙の年」でしたが、2025年にはあまり大きな選挙はありません。ただ、ショルツ独首相の連立政権が崩れたことで、2月には独連邦議会選挙が、前倒しで実施されます。2024年世界各国で与党勢力がことごとく選挙で敗退しています。この潮流は止まりそうもありません。保守派与党のキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)が大敗するようなら、大きな混乱を招きそうです。その場合ユーロ相場の圧迫要因となることは留意しておきましょう。 

 一方日本では、7月に参議院選挙と東京都議会選挙が行われます。都議会選挙の影響は直接的にはありませんが、昨年の解散衆議院選挙では、裏金問題などから自民・公明両党が過半数を割れたことで、日本の政局も混乱しています。一部では衆参同時選挙の可能性も指摘されていて状況次第では、再び自公連立が過半数を維持できない可能性もありそうです。その場合石破総理の総理存続も難しくなりそうです。金融面では政局不安が、株価に悪影響を与えるでしょう。為替に対する影響は不透明としても、通常なら株価の下落がリスク・オフの円買いにつながる可能性を考慮しなければなりません。ただ、もしこれが株安、債券安、円安と「トリプル安の日本売り」に繋がるなら大惨事となりそうです。2025年は日本の政局にも注意を払っておきたいと思います。

 その他では、1月から再び米国の債務上限の期限を迎えます。この問題は、12月13日現在あまり話題となっていませんが、恐らく年内に延長され直ぐには問題にならないでしょう。ただ、2025年初頭には再び大きくクローズ・アップされる可能性があり、問題が長引けば米国債の格下げのリスクとなります。毎年のことで若干食傷気味の話題ですが、特に2025年はイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」がスタートします。「小さい政府」を目指す共和党が、本当に米国の財政問題を解決できるのか、それとも混乱につながるのか注視しておきましょう。

 また、欧州関連では、7月からブルガリアが、通貨ユーロを導入する予定を表明しています。現在の情報ではまだ確定しているわけではありませんが、もし今後決定するようなことがあれば、ユーロを取引する場合には注意が必要です。EUの参加国が、新たにユーロを導入する場合、導入日に一気に通貨が変更されます。ブルガリアの場合、元来2025年から予定されていましたが、7月1日に一旦延期されたようです(過去の通例では1月1日に導入するのが基本)。その場合6月末のコンバージョン・ファクター(交換率)によって、一気にブルガリア内の資産・負債が、ブルガリア・シフからユーロに代わります。つまり、ブルガリアの企業や個人などは、この変更によって大きな為替リスクを負うことになります。当然それを避けるために、事前にヘッジしようとうする行為が自然に行われると思います。つまり、ユーロ・シフ相場では、7月に近づくにつれてユーロ買いが増加しユーロを押し上げる形になります。

 近年では、エストニア(2011年)、ラトビア(2014年)、リトアニア(2015年)、クロアチア(2023年)の導入時に、国の規模により影響度は限られますが、このような傾向がユーロ相場の動きに見えています。まだ2026年からの導入となる可能性がありますが、どちらにしても、もし決定された場合のユーロの動きにも注目しておきましょう。

加えて、近年では年初から大きく世界を変えるような事件や事象が起きています。2020年にはパンデミック、2022年はロシアのウクライナ侵攻、2024年は元旦から能登半島地震、年央からはイスラエルのガザ侵攻など金融市場に大きな影響を与える「リスク」が発生しています。2025年もそのような「ブラック・スワン」が起きるかは誰にもわかりません。起きて欲しくはないですが、奇しくも2025年はアストロ的に、太陽の黒点数がピークに達します。以下のチャートをご参考頂きたいのですが、太陽の黒点の数は、約11年周期で増加・減少を繰り返しています。そして増加のピークと減少のピーク時(半期)には、ぴったりではありませんが、過去ドル暴落、ブラック・マンデーやリーマン・ショックなど多くの金融ショックの発生と重なっています。これが2025-26年にピークをつけて、2031年まで減少過程に入ります。

特に黒点のピーク時は、太陽内で水爆の100万個分相当の爆発が発生し、太陽フレアによる電磁波が地球にも大きな影響を与えるとされています。それが地球を回る衛星を破壊・損失させたりすれば、GPSや通信、インターネット回線や携帯端末に過大な影響を与えるかもしれません。それが世界的に発生した場合、どういった混乱となるか恐ろしい気がしますが、特に金融関連で考えるとインターネットやコンピューターを取引の基盤としている「仮想通貨取引」に大きな影響を与えるかもしれません。それでなくても異常な高値となっていて危険ゾーンにあるような気がしますが、2024年10万ドルを超えたビットコイン相場が暴落でもすれば、その影響は世界的な資産クラッシュの動きにつながりそうです。

またこれは蛇足ですが、日本の干支をベースとした相場格言に、「辰巳天井」という言葉があります。これは辰年と巳年の間に株価が大きなピークをつけて、下落相場に転換するというものです。日本の格言が米国や海外株式市場でも適応されるかは疑問も多いですが、辰年の2024年のNYダウやナスダック指数、日経平均株価の歴史的な高値更新やこの黒点のピークと合わせて考えると2025年、大きな金融ショックが起きる可能性も捨てきれません。悲観的過ぎるかもしれませんが、少なくとも近年は、温暖化の影響もあってか、自然災害、加えてウクライナや中東紛争などの世界的な軍事紛争が続き、自然・地政学リスクが市場の混乱につながっています。2024年7月13日に起きたトランプ氏の暗殺未遂と共に考え合わすと、トランプ氏が神がかり的に生還し、更に大統領選で勝利するという運命の不思議が、2025年以降の世界の分かれ目となるのかもしれません。

あくまで個人的な妄想ですから、信じて頂く必要はありません。それでなくとも、自然災害や紛争、金融リスクは突発的に起こることで、準備することはできませんが、常にこういったリスクも念頭に入れて、相場に臨む姿勢を維持しておいた方が得策かもしれません。

2025年の注目点】

 2024年の相場環境を踏まえて、2025年の南アランド円相場の注目点をまとめてみました。

・トランプ大統領の政策は実現するのか?

・南ア準備銀行の金融政策

日銀はどこまで利上げするのか?

南ア・日金利差との連動性は?

薄れる金価格との連動性

〇 トランプ次期大統領の政策は実現するのか?

 トランプ氏は大統領当選前から、様々な発言をしています。どこまで本気でやるつもりなのかは分かりませんが、一応現在彼が掲げている政策を以下にまとめてみました。

1. 移民政策:不法移民の強制送還、「出生地主義」の廃止

2. 経済政策:トランプ減税の延長または恒久化、法人税の引き下げ、 全ての輸入品に10~20%の関税、中国からの輸入品には最大60%の追加関税、CHIPS法に否定的

3. 外交政策:ウクライナへの支援縮小、NATO加盟国の負担増・必要に応じて米国の関与の見直し

4. エネルギー政策:「国家エネルギー会議」を新設、化石燃料の推進や輸出の後押し、再生可能エネルギーへの移行を遅らせる

5. 環境問題: パリ協定からの離脱、IRA法の見直し(EV補助金の廃止など)

6. 教育政策:教育省の廃止、教育政策の管理を州や地方に委譲

7. 社会政策:連邦レベルでの中絶禁止法案に対する拒否権行使、中絶の権利は各州が決定すべき、LBGT+Qの権利に関するプログラムの廃止

8.「政府効率化省(DOGE)」の新設:連邦政府の規制撤廃、行政部門の縮小、歳出削減

 特に米上下院の共和党勝利で、「トリプル・レッド」となったことで、トランプ次期大統領が掲げる政策が実現し易くなるとの見方が主流です。ただ、実際一部の共和党議員は、CHIPS法やIRA法の見直しに否定的とされています。この「トリプル・レッド」も実際は、2025年の補欠選挙によって変わる可能性が残っています。まだ盤石とはいえないことは、考慮しておきましょう。

 この中で特に、金融市場に大きな影響があると思われる3つの課題に関して、注目されるポイントを見ておきましょう。 

≪ウクライナ問題≫

 トランプ次期米大統領が、2025年2月で3年目に突入するウクライナ戦争の終結に向けて元陸軍中将のキース・ケロッグ氏をウクライナ・ロシア特使に指名しました。彼が提唱する和平交渉案は以下の通りです。

1.停戦によって前線を凍結、非武装地帯を設置

2.停戦後は、英仏独軍などが治安維持のため非武装地帯を管理

3.ウクライナのNATO加盟を10年間延長

4.和平協定の締結に伴い、ロシアに対する経済制裁を段階的に解除

5.ウクライナに対する軍事援助と安全保障の継続

6.ただしウクライナが拒否した場合軍事援助の打ち切りもある、一方ロシアが拒否した場合、米国はウクライナ支援を強化する

 これを両国が受け入れるかは不透明ですが、既にトランプ氏は2025年12月7日、ノートルダム大聖堂の再開式典において、マクロン仏大統領の仲介で、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談しています。一部にここで一定の合意があったとの可能性も指摘されています。

 特にトランプ次期大統領は、以前から「就任後24時間以内にウクライナ戦争を終結させる」と発言しています。ロシアと水面下で交渉が進んでいる可能性もあって、これが本当に実現すれば、トランプ次期大統領の「MEGA」の実現に大きな支援となり、ノーベル賞受賞の期待感にもつながりそうです。

 その場合金融市場はどういういった反応を示すでしょう?

 当然株価などは好感すると思われますが、ドルが買われるかはわかりません。ウクライナ戦争での懸念が、過去3年上値を押さえていた欧州通貨、特にユーロ、スウェーデン・クローナ、ノルウェー・クローネ、ポーランド・ズロチなどの対ドルでの買い戻しにつながる可能性で見ています。また、原油や金には利食いが出てくるでしょう。

 ただ、個人的には簡単ではないと考えています。トランプ氏は、プーチン露大統領と仲が良いとしていますが、彼はもっとしたたかです。ロシア国民はこれまで大きな犠牲を払っており、簡単に許すとも思えませんし、経済制裁の段階的な解除がされるとしても、得るものは少ないでしょう。ともかく、プーチンがカギを握ることを考えると、交渉の決裂の可能性は考慮しておきたいと思います。

≪トランプ氏が主張する関税強化策≫

 「タックス・マン」を自称するトランプ氏は、既に大統領選での勝利後、早々と「メキシコとカナダからの全ての輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加関税を課す」と表明しています。以前は「全世界からの輸入に一律10~20%、中国には100%の関税を課す」と述べていて、若干数字的に矛盾があるようです。

 これは米国の関税に関しては、通商法や通商拡大法の規定があって、議会での決定がなければ、トランプ次期大統領の一存だけでは変えることはできません。トランプ大統領第1期の時も、就任後直ぐには追加関税は実施できませんでした。ただ、この「メキシコとカナダの25%、中国に10%の追加関税」に関しては、米国で大きく問題となっている「フェンタニル」という麻薬密輸に関して、十分な措置が講じられていないという「国家安全保障上」の理由を適応することによって、直ぐに実施出来る料率のようです。その場合はやはり、当該通貨に売りが強まる可能性には注意が必要となります。

 ただ、「全世界からの輸入に一律10~20%」の追加関税となると、話は複雑となりそうです。北米では、北米通商条約(NAFTA)を2018年に「USMCA」に切り替えています。既に世界的には、様々なFTAやFAが締結しており、自由貿易の流れが強まっていることや、実際追加関税によるコストは、米国民が負担することになります。トランプ氏は、あくまで「ディール的な駆け引き」として利用している可能性もあって、2025年早々この問題に大きな懸念を持つ必要はないようです

≪「政府効率化省(DOGE)」の行方≫

 トランプ次期米政権で政府外の助言機関として、実業家のイーロン・マスク、ビベック・ラマスワミ両氏が主導して2025年から発足します。 

 この「DOGE」の役割は、連邦政府の規制撤廃、行政部門の縮小、歳出削減の3本柱として、少なくとも年間5000億ドル(約77兆7千億円)の歳出削減を目指します。また国際機関への拠出金を削減し、政府機関の余剰人員を減らすために民間企業への転職を促す方針も明らかにしていて、ホワイトハウスの行政管理予算局(OMB)とも連携し、建国250周年を迎える2026年7月までに一連の改革を行う計画です。

 米国の財政赤字が巨額であることを考えると実際にこういった削減が実現できれば、米経済に良い効果を与えることになるでしょう。ただ、一方で中央政界の既得権益層からは大反対が起きる可能性が高く、米国の分断と2極化を拡大させ経済社会的な大きな混乱の要因となる可能性にも注意が必要です。

 以上簡単にまとめてみましたが、現状市場で考えらえている「トランプ政権→景気の過熱→インフレ→ドル高・株高」という「トランプ・トレード」シナリオもあまり期待を強めない方が良いかもしれません。その面では、関税強化策や政府効率化省の問題は、先行きの長い話として、直ぐに影響は見えないでしょうが、就任時に本当にトランプ次期大統領が、ウクライナ戦争を終わらせることが出来るかは大きな注目です。

実現できるなら政権の評価や威信は高まるでしょうが、もし失敗するようならトランプ次期政権の失望に変わりそうです。こういった面に関しては、相場がどういった反応を示すかは不透明ですが、トランプ氏は態度をころころ変えることも多く、第1期トランプ政権の時と同様、2025年も荒れた相場展開となる可能性に注意して対応するのが良いかもしれません。

〇 南ア準備銀行の金融政策

南ア準備銀行は、2021年11月の会合で、それまで最低水準としていた3.5%の政策金利を、3.75%に引き上げ後、2023年7月の会合では、物価見通しが落ち着いたことで、それまで8.25%まで引き上げた政策金利を据え置き、2024年9月には、0.25%の利下げを実施、11月にも0.25%の利下げを発表、現在は政策金利を7.75%としています。

11月最後の会合では、クガニャゴ南ア準備銀行総裁は、「保護主義の高まりが貿易や物価に打撃を与える可能性」、「4.5%のインフレは低いインフレではない」、「環境は不透明、注意が必要」として今後の政策金利の変更に警戒感を示しています。

それでは、南ア政策金利と消費者物価指数の状況をチェックしておきましょう。

 

 一時前年同月比で7.60%まで上昇していた消費者物価指数は、南ア準備銀行がインフレ・ターゲットとする3-6%の下限に到達しています。単月では若干不透明ですが、今後も落ち着きが見えれば、利下げの継続は可能なようです。

 それでは景況感を見る上で、製造業PMIの状況もチェックしておきましょう。

 南アの製造業PMIは、上下の振れが激しいですが、一応現在は景気の分水嶺となる「50」を挟んだ動きに留まっています。 

南ア経済としては、2023年の実質GDPは0.7%と前年から減速、2024年に入っても、第3四半期に過去最悪の干ばつの影響で、農業生産が大幅に減少し、GDPが予想外の前期で0.3%の減少を記録しました。

 一方でビジネス信頼感には改善の兆しが見られ、2024年11月には、観光客数の増加や貴金属価格の上昇、自動車販売の増加により、ビジネス信頼感指数は118.1に上昇し、前年同月比で最大の伸びを示しています。

 しかしながら、電力供給の不安定さや物流の問題、高い失業率など構造的な課題は依然として存在しており、経済成長の足かせとなっています。新たな連立政府はこれらの問題に対処するための改革を進めていますが、持続的な成長を実現するには時間がかかると見られています。

 トランプ次期政権発足後で、中銀のスタンスは警戒感を残しそうです。

以下は、2025年の南ア準備銀行理事会及び政策金利公表予定です。1月から奇数月で、年6回開催されます。

≪南ア準備銀行政策金利公表≫

01月30日

03月20日

05月29日

07月31日

09月18日

11月20日

〇 日銀はどこまで利上げするのか?

 2024年は、日本が30年にわたるデフレ経済から脱却したことで、遂に3月の日銀会合で、マイナス金利から政策金利を0.10%引き上げ、量的緩和策の解除、YCCやETF購入の停止を表明しましたが、7月に政策金利を0.25%まで引き上げた後は、現状(12月13日現在)据え置きを続けています。12月の会合で政策金利を引き上げるか注目ですが、リポート作成時では、「トランプ政権の誕生で米経済の先行きに不透明感が高まっているうえ、春闘の賃上げ動向を確認したい考えで、利上げを急ぐ必要はないとの判断に傾きつつある」、「消費者物価は前年比で、2025年度以降は2%に届かない可能性がある」として未だ政策金利の引き上げを躊躇しているようです。

以下日本の2013年からの全国総合物価指数のチャートをご覧ください。

 このチャートは、2020年を基準とした物価の動向を「インデックス」で示したチャートです。通常物価を見る場合に、前年比で判断するのが基本です。現に日銀も「物価が2%で安定的に推移するまで金融緩和を継続する」としていました。しかしながら、この見方の場合、既に前年の物価が上昇していると翌年同月の物価は、あまり上昇していない形に見えます。これを以下のチャートのように、「インデックス自体」で見ると様変わりします。

 2022年までデフレ状態が続いていましたが、黒田総裁の任期最後の1年前から、物価はレンジ・ブレイクしている形が見えると思います。一方政策金利の方は、植田総裁就任後1年を経てやっと引き上げに変わっていますが、この出遅れ感は異常です。

12月20日現在、日銀は、トランプ次期政権の不透明感や春闘の賃上げの情報を待ちたいと政策金利を据え置いています。ただ、円安が続くと日本の物価の上昇は続きそうです。2024年、電気代や水道代、10月には郵便料の引き上げが実施されました。また2025年にはJRが平均で7.8%の運賃の値上げを予定しています。最低でも政策金利が0.50%や0.75%程度への引き上げはあると思います。特に交通費の上昇は、全ての物価に影響を与えそうです。

以下が2025年の日銀金融政策決定会合や議事録の公表日です。日銀の政策の行方が、2025年のドル円相場を左右するでしょう。しっかりと押さえておきましょう。

日銀金融政策決定会合(議事録公表日)

01月24日+展望リポート公表(03月25日)

03月19日(05月08日)

05月01日+展望リポート公表(06月20日)

06月17日(08月05日)

07月31日+展望リポート公表(09月25日)

09月19日(11月05日)

10月30日+展望リポート公表(12月24日)

12月19日

〇 南ア・日金利差との連動性は?

 金利面から考察した南アランド円相場との関連性も見ておきましょう。

 以下は南アの政策金利と南アランド円相場を比較したチャートです。

 通常円相場は、比較的金利差に連動することが多いですが、202年から2007年、現在も連動性から比較的離れています。2000年台前半は、一種の投資ブームが沸き起こった時期です。ただ、リーマン・ショック後は連動と言えば連動ですが、南アが政策金利を引き下げる流れの中、低下傾向で連動しています。現在はインフレの上昇で若干下支えしていますが、政局不安が上値を抑えています。

「高金利」というだけで、ファンダメンタルズを無視して投資すると、新興国通貨などは思わぬリスクに晒されることもあります。しっかりとこのような面も考慮して投資を御検討ください。

〇 薄れる金価格との連動性

 南アフリカは、金、ダイヤモンド、プラチナなど鉱物資源が豊富ですが、特に金は世界の産出量の半分を占めています。以下は金価格と南アランドの対ドル相場のチャートです。

南アランドは、資源国通貨として有名ですが、2005年から2008年は、リーマン・ショックの影響や、それまで12%まで引き上げていた政策金利を大幅に引き下げたことなど、対ドル相場へ悪影響を与えています。

2009年から2018年は、総じて連動している形が見えていますが、直近では連動性が全く見えていません。特に金価格の上昇に南アランドの上昇が追いついていないようです。通常こういった連動性は、平常時に連動し易く、「緊急時=リスク回避」の動きの時は、連動し難くなるという傾向があります。

2018年以降は、米国のトランプ大統領が、中国の大幅な貿易黒字に懸念を示して、対中圧力を強めた時期です。一部での「第2の冷戦」とまで囁かれるほど緊張が強まりました。この時期から金価格の独歩高が進んでいます。また、新型コロナウィルスの感染、ロシアのウクライナ侵攻とインフレの急騰と、リスク回避資産として金の需要が高まったようです。

そうなると2025年からまたトランプ第2政権がスタートすることもあって、今後も地政学リスクの落ち着き、インフレの鎮静化が見えない場合、南アランド相場が、金価格に連動する可能性は低いのかもしれません。

【テクニカル面】

≪ドル/南アランド≫

テクニカル面からまず、南アランド円を構成するドル/南アランド相場の長期月足をチェックしておきましょう。

 ドル/南アランド相場は、2011年頃から延々に堅調に推移しています。ズマ前大統領のやりたい放題の政策に対する国民の不満が高まったころから、特に上昇基調を強めています。一旦ラマポーザ大統領に対する期待感から17.2443から売り戻しも入っていますが、逆に期待感が強すぎたせいでしょうか、11.5028を安値に、ラマポーザ大統領就任直後から再び上昇を強め、新型コロナウィルスの感染拡大によるリスク回避の動きで、19.3365の高値をつけた後、13.4083まで再下落しました。ただ、ロシアのウクライナ侵攻後、世界的なインフレの高まりからFOMCが利上げ姿勢を強めたことで、19.9201と歴史的な高値をつけました。

ただ、2024年後半からFOMCが利下げ姿勢を示したことで調整気味となっています。

 波動的には、

第1波=6.5520→17.2443

第2波=17.2443→11.5028

第3波=11.5028→19.3365

第4波=19.3365→13.4083

第5波=13.4083→19.9201

 一旦19.9201で第5波の高値をつけた可能性が高まっています。ただ、第5波の高値付き後のABC下落の動きが、通常のようにはっきりとしていませんので、歴史的な高値圏にあって断言はできません。

今後はこの高値からのレジスタンスが上値を抑える展開となるか注目しましょう。

上値は、19.0000のサイコロジカルが押さえるとレジスタンスが有効です。19.4068や19.6424の戻り高値が押さえるかは不透明ですが、抑えるなら上値は追えません。あくまで19.9201を越えて、サイコロジカルな20.0000、N波動の検証からは、第3波の上げ幅(7.8337)を第4波の安値13.4083から上げた21.2420、第1波の上げ幅(10.6923)を同様に第4波の安値から上げた24.1006などが想定値として挙げられます。

一方下値は戻り安値として、17.9646から18.6159ゾーンは、ネック・ラインとして維持すると強い形です。ただ、割れると16.1109が視野となりますが、6.5520の安値からサポートとして維持すると、更なる調整は想定できません。リスクはサポートを維持できないケースで、その場合15.1687、14.4461などが順次ポイントとなります。こういった位置の維持は不透明ですが、維持できれば調整は深まりませんが、リスクは第4波の安値となる13.4083割れで、その場合水色のゾーンまでターゲットとなります。この位置にはフィボナッチ・リトレースメント50%の12.7529が控え、下限で第2波の安値11.5028まで調整となりそうです。 

従って、ドル南アランドの2025年の想定レンジを、16.5000~19.5000とします。 

≪ドル円≫

 次にドル円の2011年からの月足チャートをみてみましょう。

 75.31の歴史的な安値から125.86まで反発後、102.59が下値を支えてサポート形成から、151.95の高値、127.23を支え、161.95まで上値を拡大しています。

 エリオット的な波動からざっくりと見れば、75.31から125.86を第1波、125.86から102.59を第2波、102.59から151.95を第3波、151.95から127.23を第4波とするなら、現状の上昇が第5波の渦中にあることは意識してください。

 また下段に表示したスロー・ストキャスティクスが、買われ過ぎから反転下落しています。ダイバージェンスの可能性はありますが、上値は161.95を中心に、151.91や157.93がトリプル・トップとして意識されるなら上値つきの可能性が高まります。

 こういった面を考慮すると総合的には上値付きと考えるのが妥当に見えます。ただ、これも161.95を越えないことが必要です。一方で下落トレンドがスタートするためには、ネック・ラインとなる140.25-139.58を割れるケースが必要です。その場合の下値のターゲットは、127.23の戻り安値から125.86の過去の戻り高値となります。

従って、ドル円の2025年の想定レンジを140.00から160.00とします。

≪南アランド円≫

それでは、最後に南アランド円の月足を見てみましょう。

17.78からの調整も、5.61の安値で下値をつけて堅調に反発しました。ただ、8.98まで上昇も、この位置は長期のレジスタンスで抑えられています。

 上値は、スロー・ストキャスティクスが既に買われ過ぎにあって、8.98を前にレジスタンスが有効となるなら上値は追えません。あくまでこの8.98を越えて、9.30の戻り高値、更に9.87-10.45ゾーンなどが視野となりますが、総じて利食いが入り易いでしょう。更に10.82や11.24を越えるまでは、更に上昇期待は厳しそうで、12.85や13.10を越えて、完全なトレンド転換となる形です。

 一方下値は7.60を前にサポートが維持されると良いですが、維持出来ない場合、スロー・ストキャスティクスの悪化を伴い、ダブル・ボトム的な6.94のネック・ラインを割り込むと相場にはマイナスで、その場合、サイコロジカルな6.50再度6.00が視野となりますが、5.61が守られるか焦点となります。リスクは、歴史的な安値5.61を割れるケースですが、その場合ポイントは絞り込みづらいですが、サイコロジカルな5.50や5.00などまでの下落リスクとなりそうです。

≪マトリック・チャート≫

 以下はドル/南アランドとドル円の想定レンジから作成したマトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)です。

 ドル/南アランドのレンジを17.5000~19.5000、ドル円を140.00~160.00としましたので、ここから算出される南アランド円の最大想定レンジは7.18から9.14となります。

【予想レンジと戦略】

 それでは、以上を踏まえて、南アランド円相場の2025年の戦略についてお話します。

2025年の南アランド円の想定レンジを7.00~9.00とします。

≪2025年の注意点≫

・株価やビットコイン、米国の不動産市況の悪化を背景としてバブルがはじけるケース

・トランプ次期政権を睨んで荒れた展開となる可能性

・ただ、トランプ政権に大きな失望が出るケース、ウクライナや中東情勢が更に混迷を深めるケース(プーチンが戦術核を使うなど)の場合、リスクオフの動きに注意しましょう

・円安が更に拡大した場合、再度財務省から円買い介入が入る可能性があります、ただ、南アランド円に対する影響は限られるでしょう

・クロス円の場ストレートの動き次第では、テクニカル的なポイントと合致するとは限りません、オーバー・シュート的な騙しの動きも留意してください

≪2025年の具体的な戦略≫

  未だスロー・ストキャスティクスのはっきりと下落傾向が見えていないことで、突っ込み売りをする状況ではなさそうです。8.87の戻り高値方向への上昇で売っても、8.98や9.00を越えるなら止める形です。売りのターゲットは、8円前後が維持されると利食いですが、その場合も売り回転を検討するのが良いでしょう。割れるケースから7.60を前に利食い優先で、割れても7.00手前ではしっかりと利食いましょう。また買い戦略は、7.60を前に下げ止まりでは買っても、割れるなら止めて、再度7.00手前での買い下がりで、このストップは6.94割れとなります。こういった買いのターゲットは、その時点での戻り高値が押さえると利食いを優先しましょう。 

また、タイミング的な注意点について、(詳細は、ドル円相場の2024年相場見通しの「ドル円の季節性」をご参照ください)1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと

  • ドル円は、例年アノマリー的に、7月や8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意です、ただ逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも覚えておいてください
  • 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です、この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう 

 以上、一応テクニカルやファンダメンタルズ面からシナリオをたてましたが、ひとつの例として考えてください。この通りとなるほど、相場は簡単ではありません。あくまで私個人の35年来の経験則から想定したイメージ的なものですので、ご理解頂ければ幸いです。