主要通貨見通し(2017/05/10)

【ドル/円】

ドル/円 日足

4月、シリアにはじまり、さらに北朝鮮の地政学的リスクが高まり、当初、リスク回避の円買いが出たものの、特に北朝鮮は日本に近すぎることから、マーケットでもリスク回避の円買いは否定され反発となりました。

テクニカル的に見ると、4月前後から、上下が逆転している「逆ヘッド・アンド・ショルダー」が、ボトムの108円近辺、ネックラインが112円近辺として形成され、5月に入りネックラインが上抜くと、相場は急上昇となりました。

理論的なターゲットとしては、ボトムの108円近辺とネックラインの112円近辺の高低差である4円分をネックラインから上伸することになります。

つまり、112円+(112円-108円)=116円がターゲットとなっていると見ています。

また、月足で見ましても、先月の形状が、「たくり線」となっています。

ドル/円 月足

「たくり線」とは、黒丸内のチャートをご覧頂ければ、一目瞭然ですが、寄り付きと引け値が近く、下ヒゲを長く出したもので、下から相場を押し戻そうとする勢力があることを示し、さらに当面は上昇しやすいことを示唆しています。

ということで、5月に入り、現在陽線となっており、ある意味定石を踏んだ動きをしています。

このようにテクニカル的に申し上げれば、目先は買いの強い状況が続く可能性があります。

ただし、月足をもっと長く見ますと、2015年台の大きな山を形成し、そして昨年いったん下落した後、11月のトランプ氏が大統領選に勝利した後、118円台まで反発した後は、2015年台よりも小ぶりな山を形成しようとしています。

これは、ドル/円によく出現する変形ダブルトップを形成しようとしているものと見ています。

通常のダブルトップは、同じぐらいの山がふたつできて、その麓(ネックライン)を下に割り込むと、トップ(頂上)とネックラインの高低差分下がります。

それに対して、変形ダブルトップは、やはりネックラインを割ると下げやすくなり、その下げ幅は、大きな山とネックラインの高低差分が下がる傾向があります。

現状の状況からすると、ふたつ目の山は、相場が100円近辺に達してやっと形成されるわけで、6月の欧米の中間決算、7月・8月の夏休みを過ぎて、9月の実質的な欧米勢の下期を迎えて、初めて100円を目指すものと見ており、目先は、ふたつ目の山の形成に時間を掛けるものと見ています。

 

【ユーロ/ドル】

ユーロ/ドル 月足

ユーロ/ドルは、2015年2月から、ざっくりと言って、1.0400から1.1500近辺のレンジ相場が続いてきました。

しかし、4月半ば頃から、ユーロ買いが強まっており、欧米の投資家の投資方針が決まってきたものと見ています。

つまり、欧米投資家は、ECBの追加緩和をきっかけに、2014年4月から、ユーロをアンダーウェイト(投資配分を減らす)にし、そしてドルをオーバーウェイト(投資配分を増やす)にしました。

その後、2年あまり、その投資配分を変更せずにいたのが、2年以上も続いたレンジ相場の原因と思われます。

しかし、ここにきて、アロケーション(投資割合)を今度はドルからユーロにオーバーウェイトするよう変更した可能性があります。

その原因は、トランプ米大統領にあるものと見ています。

つまり、4月になってから、シリアそして北朝鮮との緊張が高まっており、その原因が、トランプ大統領の指揮によるところが大きいと言えます。

同じようなことが、過去にもありました。

2001年に大統領に就任したジョージ・ブッシュ氏も、新大統領として、功を急ぎ過ぎたために、イスラム圏にプレッシャーを与えました。

そのために、オサマ・ビンラディン率いるテロ組織であるアルカイダが、反攻に出て、米旅客機をハイジャックして、ニューヨークのワールドトレードセンターや、ワシントンD.C.のペンタゴン(国防総省)に突入あるいは突入を試みました。

このことによって、ブッシュ政権はヒステリー状態となったため、他国は、アメリカに資金を置いておくことは危険と、ドルからユーロへ、大幅に資金移動し、この動きは6年間続きました。

今般の北朝鮮との緊張も、功を急ぐトランプ大統領によって引き起こされており、基本的には、ドルからユーロへ、投資家は資金を移動させるものと見ています。

今のところ、過去2年余りのレンジ相場を上にブレイクしたわけではありませんが、今後のトランプ政権の出方によっては、大挙して資金が移動する可能性は高いものと見ています。

個人的には、上にレンジブレイクした場合は、とりあえず、1.2300近辺を目指す、ものと見ています。

 

【ユーロ/円】

ユーロ/円 月足

目先、ドル/円も底堅く、かつ、ユーロ/ドルもレンジの上限を試すことになるなら、ユーロ/円は一段の上昇をみるものと思われます。

確かに、4月後半、ドル/円で買い、そしてユーロ/ドルでも買いが出たために、ユーロ/円は大きく上げました。

これは、たぶん、リスク回避の対ユーロでの円買いポジションを手仕舞う動きだったと思います。

ただし、ユーロ/ドルに比べればユーロ/円のポジションンの規模は、それ程は大きくはないものと思われ、ほぼこのリスク回避解除の円売りの動きは、ほぼ終わったものと見ています。

したがって、ユーロ/円が上昇するとしても、128円ぐらいと自ずと限度があると思われます。

むしろ、将来的には、ドル/円が下落を再開するとユーロ/円は再び100円方向を目指すものと考えています。