6月のマーケット展望

■ 短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1か月のターゲットは2,700とします。

米国の株式市場は米中貿易交渉の難航を嫌気し、5月第2週から崩れ始めました。その後中国製品に対する関税がそれまでの10%から25%に引き上げられただけでなく、中国を代表するハイテク企業、ファーウェイ(華為技術)に対する輸出規制が発表されています。

これらのことから貿易問題の解決が当初市場参加者が予定していたよりずっと先になるという懸念が台頭しています。

株式市場は関税の引き上げに関してはそれほど懸念していません。なぜなら関税の引き上げはアメリカのGDPを0.2%程度押し下げるにとどまると見られているからです。

しかしファーウェイに対する輸出規制は、同社を顧客としている米国企業の業績見通しに直ぐ跳ね返ってきます。実際、すでに多くの関連企業が今後の業績ガイダンスを引き下げました。

さらにこの問題が長引いた場合は、中国でアメリカ製品のボイコットが起こるリスクもあります。その場合、中国売上比率の高い企業の株は売られるリスクがあります。

6月末に日本でG20があるのですが、現時点ではそれに向けて両国の間で話し合いが進展している様子はありません。

幸い長期金利は米国株にとり支援的な水準まで下がってきています。米国10年債利回りは2.33%です。

向こう12か月のS&P500の一株当たり利益(EPS)に基づいた株価収益率(PER)は16.1倍です。これは過去5年の平均(16.5倍)より割安です。従って米国株式市場が大きく崩れるリスクは低いと思われます。

■ 経済の現況

まず10年債利回りから三か月物Tビル利回りを引いた長短金利差が再び-0.06とマイナス圏になっています。

長短金利差が「0」になると、それはリセッションの前兆だということがよく言われます。

ただ長短金利差が「0」になっても、ただちに株式市場が天井を打ち、景気後退がやってくるというわけではなくて、1年から2年くらいのタイムラグがあります。

つまりこれからは経済指標に神経を尖らせ、絶えずリセッションを警戒しつつ、それでも粘って大部分のポジションを維持するというスタンスであるべきだと思います。

連邦準備制度理事会(FRB)は当分の間米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは現行の2.5%のままで据え置く考えです。

ただ市場参加者は(今年中に一回の利下げがあるかも)ということを織り込み始めています。過去の経験則ではFRBよりも市場参加者の方が正しかったケースが多かったので、利下げというシナリオも頭の隅っこに入れておく必要があるでしょう。

■ 企業業績の現況

今年のS&P500のEPSは168.08と予想されています。また四半期EPS成長率は下のチャートのように推移すると予想されています。

つまり2019年第2四半期が前年同期比成長率のボトムとなり、それ以降はだんだん成長率が加速すると見られているのです。

もちろん米中貿易戦争が企業の設備投資のマインドを悪化させたような場合は上の予想通りの成長率にならないリスクもあると思います。

■ 注目イベント

6月28・29日に日本で開催されるG20は米中のトップが会う好機です。当初はこの機会に米中貿易戦争の問題を一気に解決してしまうのではないか? という希望的な観測が有力でしたが、その後、この観測は後退しています。

■ 注目ETF

トライオートETFは「買い」だけでなく「売り」から入るトレードも可能です。上に述べてきたように今相場は下落基調となっているため「売り」から入るトレード戦略にも注目したいと思います。

具体的にはもし米国の景気がこれから暗転するのであれば、小型株から先に崩れやすいです。その意味で米国を代表する小型株指数であるラッセル2000指数は注目です。銘柄にはiシェアーズ・ラッセル2000ETF(ティッカーシンボル:IWM)があります。

今回の米中貿易戦争はテクノロジー・セクターが焦点となっています。そこでテクノロジー株にフォーカスするのならテクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド(ティッカーシンボル:XLK)というETFに注目です。

同じ発想で、テクノロジー株の占める比率が高いナスダック100指数にも注目できるはずです。銘柄的にはパワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(ティッカーシンボル:QQQ)というETFがあります。

米中貿易戦争は中国株にとっても波乱要因ですのでiシェアーズ中国大型株ETF(ティッカーシンボル:FXI)からも目が離せません。

最後に世界的に景気が鈍化するシナリオでは原油価格も軟化するリスクがあると思います。その場合のトレード対象はWTI原油連動ETF(ティッカーシンボル:USO)になります。

■ まとめ

米国市場は米中貿易交渉の雲行きがおかしくなったことを嫌気して軟調です。目先はすぐに仲直りして合意成立ということにはならない雰囲気です。一方、長短金利差が「0」になるなどマーケットは景気の先行きに関して「黄信号」を灯しています。ここは順張りに徹し、もし相場の地合いが弱いなら売りから入る手もあるかと思います。