12月のマーケット展望

1.短期の相場見通し

S&P500指数の向こう一カ月のターゲットは2750を堅持します。

 ニューヨーク株式市場は10月以降、軟調な展開が続いています。米中貿易戦争、米国の金利上昇、住宅など金利に敏感なセクターで経済活動に鈍化が見られ始めている事、テクノロジー企業、とりわけFAANG(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、アルファベット)に代表されるネット・ハイテク企業の悪決算などがその理由です。

 S&P500指数はチャート的に二番底を確認しつつあります。もしここから上昇できるのであれば10月以降の調整局面を抜け出すことになります。
 その反面、直近の二つの安値を下回るようだとチャート的には悪い格好になります。

 ここはどちらのシナリオが現実のものとなるかしっかり見極めた上で次の作戦を考えたいと思います。

 

2.経済の現況

 米国経済は引き続き好調です。消費はアメリカ経済の7割を占める重要な分野であり、1122日、アメリカはサンクスギビング・デー(感謝祭)でした。その翌日、つまり1123日の金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれる、アメリカで一年のうち一番小売売上高が多くなる日です。この日がクリスマス商戦期間のキックオフの日になります。
 そのブラックフライデーを含む週末の小売売上高は前年比+4.8%でした。これは好調な滑り出しだと言えます。

 一方、金利に左右されやすい住宅販売などには翳りが見えています。
 このためトランプ大統領は連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に対して「金利を上げるな」と強くプレッシャーをかけています。
 パウエル議長は1128日に「エコノミック・クラブ・オブ・ニューヨーク」で講演し「フェデラルファンズ・レートは中立的と考えられる水準よりちょっと下(just below)に来ている」とコメントしました。
 これまでFRBはフェデラルファンズ・レートは中立的と考えられる水準よりまだまだずっと下(long way)だという立場を表明していたので、これはハト派的な意見変更です。
 パウエル議長のこの発言を市場は好感しました。

 

3.企業業績の現況

 米国の企業業績は引き続き良いです。

 ただ2019年のコンセンサスEPS予想は、去年12月に税制改革法案が成立して以降、ずっと伸びる一方だったのが、10月に入ってから逆に下がり始めています。これはEPSの変化率がピークを付けようとしている兆しであり、見逃せません。

 実際、四半期EPS成長率はちょうどいま決算発表シーズンが終わろうとしている2018年第3四半期がピークになると見られています。

 普通、このようにEPS成長率がピークを打つと、すくなくとも半年間は株式市場がモタモタした動きをすると言われています。

 

4.注目イベント

 1219日は今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)です。大方の予想では0.25%の利上げが発表され、フェデラルファンズ・レートは2.5%になると見られています。なお今回のFOMCではFOMCメンバーによる「経済予想サマリー(SEP)」も発表されます。
 実は前回(9月)の「経済予想サマリー」によるとFOMCメンバーは2019年に2.4回の利上げがあると予想していました。しかしその後、10月の株式市場の急落を経て、市場参加者は「2019年は1回しか利上げは無い」と考え始めています。

 つまりFOMCメンバー達が考えている事と市場参加者達が考えている事に大きな隔たりが出来てしまっているのです。
 1219日に発表される「経済予想サマリー」で、FOMCメンバーによるフェデラルファンズ・レート予想がどのくらい下がって来るか? がひとつの注目ポイントになると思います。

 

5.注目ETF

 もし1219日のFOMCFRBがいままでよりハト派的なスタンスを打ち出せばドルは弱くなることが考えられます。その場合、新興国市場が見直される可能性があります。バンガードFTSEエマージング・マーケッツETF(VWO)iシェアーズ中国大型株ETF(FXIなどが関連銘柄になると思われます。

 景気後退が色濃くなった場合は、ディフェンシブ銘柄が注目されます。ディフェンシブとは「不況に強い」という意味です。日用品、飲料、食品など日常生活に密着した銘柄がこれに属します。生活必需品セレクト・セクターETF(XLPが関連銘柄になります。

 景気が急速に悪くなるシナリオでは高利回り債(ハイイールド債)が売られます。従ってiシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF(HYG)を空売りするという手があります。

 もうひとつ景気が悪くなるシナリオでの銘柄のアイデアとして公益事業セレクト・セクターSPDRファンド(XLUを挙げたいと思います。これは電力会社、ガス会社など公共性の強い事業体の銘柄を中心に組み込んだETFで不況に強いと言われています。

 

6.まとめ

 ニューヨーク市場はチャート的にも経済のファンダメンタルズ的にも「踊り場」にさしかかっています。ここで踏みとどまればもう一段高が期待できる一方で、力なく崩れるようであれば株式市場ならびに景気の暗転のリスクもあります。ここは先入観を持たず、じっくりマーケットや経済指標を観察してゆきたいと思います。