2018年6月アメリカのマーケット展望

短期の相場見通し

S&P500指数の向こう一ヶ月のターゲットは2800を予想しています。これは「5月のマーケット展望」で書いた目標価格と同じです。米国株式市場は2月の急落以降三角保ち合いを形成しています。

目先は3月13日につけた戻り高値、2801.9を奪還しなければいけません。これは十分狙えると思います。そう考える理由は株価を決定する最も重要な2要因、すなわち金利と業績の両方がいまアメリカ株にとって有利な動きをしているからです。

まず金利に関してですが10年債利回りはこれを書いている530日の時点で2.85%で推移しています。一時この利回りは3%を超えていましたからそれに比べると幾分低くなりました。株式と金利は競争関係にあります。だから利回りが下がるということは株にとってプラスになります。

次に業績ですが今アメリカ企業の業績はすこぶる良いです。これについては後で詳しく述べます。

このところの株式市場の参加者の懸念事項はスペインの政局の混迷、トルコ、アルゼンチンなど一部新興国の通貨安などです。しかしこと米国株に関する限り、これらの不安材料は「雑音」の域を出ていません。これらの国々は米国にとって重要な貿易パートナーではありません。だからこれらの材料に過剰反応する必要は無いと思います。

経済の現況

米国経済は好調です。613日には連邦公開市場委員会が開催される予定です。今回は米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レート(=略してFFレート)が0.25%引き上げられ、2.00%になると大方の市場参加者が予想しています。

この利上げは既に債券や株式の価格に織り込まれているので、13日に実際に利上げが発表されても大きな波乱は無いと思います。

一方、欧州の経済はやや「中だるみ」の兆候を見せています。このところずっとユーロ高だったのでドイツをはじめとした欧州の輸出企業は苦しい対応を迫られていました。これが景気の息切れの一因を提供していると言えます。

しかし直近では為替はドル高、ユーロ安に振れていますので欧州企業はホッと一息ついていることでしょう。いずれにせよこのまま欧州が景気後退に入ってゆくとは考えられません。

新興国に目を転じると先述のトルコ、アルゼンチンなど一部の国で通貨不安が発生しています。これはそれらの国に固有な問題に起因することで新興国全体が深刻な問題を抱えているとは考えていません。

いまはアメリカが利上げ基調であり、しかも最近になってドル高の傾向が出ているのでクロスボーダーの投資資金が新興国から米国へと還流しやすい状況になっているのです。通貨不安はそれを反映したものだと思います。

ただ新興国の通貨不安が広範に及ぶ経済の不安定化をもたらし、それが先進国へも飛び火するというようなシナリオは今は考えていません。

企業業績の現況

米国の企業業績はすこぶる好調です。

S&P500の一株当たり利益(EPS)は160.45に到達しました。去年のクリスマスの直前、すなわち税制改革法案が成立する前はこの数字が146だったことを考えると随分大幅な上方修正が入ったことがわかると思います。

その結果、向こう12ヵ月のEPSに基づく現在のS&P500の株価収益率(PER)は16.4倍に過ぎません。これは過去5年間の平均16.1倍とほぼ同じです。言い換えれば米国株式に割高感は無いということです。

注目イベント

今月、最も重要なイベントは622日にウイーンで開催される石油輸出国機構(OPEC)総会だと思います。サウジアラビアは30万バレル/日、ロシアは70万バレル/日の増産を提案するだろうと言われています。このところ経済が大混乱しているベネズエラでは原油生産が急減しており、2016年を通じて215.4万バレル/日だった原油生産は4月には143.6万バレル/日に下がったと言われます。つまり70万バレル近く生産が落ち込んでいるのです。

するとロシアが提案する増産は、このベネズエラの分と相殺されると言う風にも考えることが出来るかもしれません。

いずれにせよ世界の原油の需要と供給のバランスは今ちょうど釣り合いが取れておりOPECが増産を発表した場合でも大きな価格の崩れは考えにくいです。むしろ増産のニュースで原油が一回売られた後は、再び騰勢を強めることも可能性としては排除できないでしょう。その場合、原油はかなり面白い展開になると思われます。

注目ETF

いま米国株の物色の中心はFAANG(フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)に代表される大型ハイテク株です。ドルベースでの年初来の世界の主要株式指数の中で最もパフォーマンスが良いのがナスダック総合指数であることからもわかるとおり、いまこのへんの銘柄はリーダーシップをとっています。引き続きこの傾向が継続すると考えるのが自然です。ETFでいえばテクノロジー・セレクト・セクターSPDE(ティッカーシンボル:XLK、あるいはパワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(ティッカーシンボル:QQQ、そしてナスダック100指数の3倍の値動きをするように設計されているプロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(ティカーシンボル:TQQQなどが関連銘柄になります。

またOPECとの絡みではエネルギー・セレクト・セクターSPDE(ティッカーシンボル:XLEに注目してください。また原油そのものに投資するWTI原油連動ETF(ティカーシンボル:USOからも目が離せません。

まとめ

米国株式は方向感に欠ける展開が続いていますが米国の経済のファンダメンタルズは良好であり、米国企業の業績は極めて良いです。欧州ならびに新興国からは不安なニュースも聞こえてきますが今は強気のスタンスを堅持すべきでしょう。