
■短期の相場見通し
S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4190とします。
3月中旬に米国の金融セクターはちょっとした危機に見舞われました。米国債への投資で含み損を出した一部の銀行に対し格付け機関が「もし、それらの米国債を償還まで抱いておくことが出来ない見通しなら含み損の存在を開示すべき」とプレッシャーをかけたからです。
銀行は市民から預金を預かり、それを投資に回している関係で、運用担当者がどんなに投資先を長期で保有するつもりであっても預金者がおカネを引き出し始めればそれに応じなければいけません。今回は正しくその懸念されていたシナリオが起きてしまったのです。
パニックを引き起こした原因は預金者にもあります。それというのも今回危機に瀕した金融機関の預金者は、我々のような庶民ではなく、スタートアップ企業の経営者だからです。つまり裕福層が、彼ら独自の情報ネットワークを通じて得た早耳情報に基づき怒涛の勢いで預金を引き揚げたというわけです。
言い直せば、これはテクノロジー・スタートアップ界隈だけに固有の問題であり、世界の銀行が同じような預金引き出しのリスクに晒されているというわけでは全然ありません。
このメカニズムを良く理解しないと今後の相場展開を読み間違えると思います。
パウエル議長は今回の銀行危機はごく限られた特殊な状況であり金融システム全体がストレスを感じているのではないという意味の答弁を先の連邦公開市場委員会(FOMC)の記者会見で行いました。
そういう理解だからこそ予定されていた通り3月22日は0.25%の利上げに踏み切ったわけですし、次の5月3日のFOMCでも0.25%の利上げを考えていることをシグナルしたわけです。
言い直せばFRBは「平常運転」であり危機管理モードに入っているわけではないということです。
ところが市場参加者は「景気後退か!」という感じで夏以降、FRBがどんどん利下げすることを織り込み始めています。
実体経済はそれほど弱くないので、しつこいインフレが続いている折、そのような偏ったシナリオは逆を突かれるリスクが大きいように感じます。
いずれにせよ足下では銀行に対する不安の収束で株式に取り組みやすくなることが予想されます。私が4月も堅調な相場を予想しているのはそのためです。
■米国経済の現況
3月10日(金)に発表された非農業部門雇用者数は予想20.5万人に対し結果31.1万人でした。3月14日(火)に発表された2月の消費者物価指数は事前予想に一致する前年比+6%でした。
これらのデータポイントから導き出される結論としては「足下の米国経済は底堅く、インフレへの警戒は引き続き怠ることはできない」ということです。
FRBは5月3日に最後の0.25%の利上げを行った後、政策金利をずっと5.25%付近で年末まで維持するとシグナルしています。
言い直せば一握りの地銀の破綻が経済全体に与える影響は限定的と考えているということです。
■企業業績
4月第3週から2023年第1四半期決算発表シーズンが始まります。今回はとりわけハイテク・セクターの決算に注目する必要があるように思います。
いまシリコンバレーは不況の真っ只中で、決算発表にともなう会社側のガイダンスもいちだんと慎重になることが予想されます。
■注目ETF
4月も引き続き稼ぎ時だと思います。そこでSPDR S&P500 ETF(コード:SPY)をロングすることを提案します。ナスダック100指数に投資するパワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(コード:QQQ)も良いです。さらにiシェアーズ・ラッセル2000 ETF(コード:IWM)、ウィズダムツリー欧州ヘッジド・エクイティ・ファンド(コード:HEDJ)、バンガードFTSEエマージングマーケッツETF (コード:VWO)も良いと思います。