アメリカのマーケット展望【2023年5月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4200とします。

3月中旬に起きた一部の銀行の経営危機はその後他行へと広がる事なく収拾しました。しかしその後で実際にどれくらいそれらの銀行から預金が引き出されたのかが明るみに出て、市場参加者は改めて預金流失の規模の大きさをまざまざと見せつけられました。

インフレを退治するため連邦準備制度理事会(FRB)が矢継ぎ早の利上げを繰り返したので、いま米国の短期金利は高い水準になっています。その動きに呼応するカタチで利息が急に上昇した金融商品が散見される一方で、まだ水準訂正が起きていない金融商品も散見されます。

このような凸凹は、金融機関の間での格差を生んでおり、ちょっとした拍子に預金がごっそり移動しやすい不安定な状況を創り出しています。

FRBは今後の金利政策を決める際にこのグラグラした預金が金融システムにもたらすストレスを考慮に入れないといけません。それはFRBの手綱さばきが一層難しく、投資家目線では手の内が読みにくい状況になっていると言えるでしょう。

メインシナリオとしては5月3日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げを行った後、FRBは利上げの手を休め、とうぶん政策金利を5.00~5.25%のレンジに据え置くことが予想されます。

しかし上に述べたような事情もあり、場合によってFRBは臨機応変な対応を迫られる可能性もあります。

これとは正反対のシナリオになりますが、食品・エネルギーといった変動の激しい品目を除外した、いわゆるコア・インフレは、まだまだ高い水準にあるので、FRBが更に利上げを強いられるケースも想定しておく必要があります。

ここまでの話をまとめると金利の先行きは読みにくくなっており、それに呼応するカタチで株式のシナリオに関しても不透明感が増しているということです。

このような対立する相場観に挟まれる格好で株価指数は方向感を失うことが予想されます。

■米国経済の現況

4月7日(金)に発表された非農業部門雇用者数は予想23.9万人に対し結果23.6万人でした。失業率は予想3.6%に対し3.5%でした。平均時給は前年同月比+4.2%でした。

4月12日(火)に発表された消費者物価指数は予想+5.2%に対し、結果+5.0%でした。但しコア指数は+5.6%で2月の+5.5%より加速が見られました。

これらの指標が示唆することは、景気後退を懸念する声が大きいわりに経済は堅調であり、インフレは方向としては収まりを見せつつあるけれど未だしつこく高止まりするリスクがあるということです。

したがってFRBは政策金利を高く維持し、じっくり様子を見極めたいはずです。

■企業業績

いま2023年第1四半期の決算発表シーズンが佳境を迎えています。これまでのところ決算には波乱は少なく、恐れていたほど酷い決算シーズンにはなっていません。このままいけば第1四半期は前年同期比-6%前後のEPS成長率になるはずです。

投資家はこの第1四半期が前年比較で最も悪いボトムとなり、ここから業績は切り返してゆくことを期待しています。

その場合、株式は「見切り発車」的に買われるシナリオもありうると思います。

■注目ETF

5月は強弱観が対立する、難しい相場が予想されます。5月3日のFOMCに先立ち銀行経営に関する悪いニュースが出ないようならFRBはタカ派の決定を下す可能性があるので、ワンポイントでS&P500恐怖指数連動ETN(VXX)をロングする手があると思います。これはハイリスクのトレードになりますので思惑が外れた場合、まんまと思惑通りになった場合、いずれでもFOMC後にサッサと手時舞うべきです。

さて、来るFOMCで「利上げ打ち止め」のハッキリとしたメッセージが打ち出されなかった場合、短期金利はもっと上を目指すことになるので、メガバンクの利ザヤは拡大することが予想されます。従って市場が落胆しマーケット全体が売られたタイミングで金融セレクト・セクターSPDRファンド(XLF)をロングする手があると思います。

FRBがタカ派だった場合、パワーシェアーズQQQ信託シリーズ(QQQ)ARKイノベーションETF(ARKK)テクノロジー・セレクト・セクターSPDEファンド(XLK)をショートするなどのアイデアもあります。