アメリカのマーケット展望【2021年5月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4200とします。


(出典:ヤフー・ファイナンス)

1950年1月以降のS&P500指数の月次平均パフォーマンスを見ると5月は0.2%でした。つまり経験則的には今月は平凡なパフォーマンスになりやすいことが知られているのです。


(出典:ストックトレーダーズ・アルマナック)

振り返ると4月の株式市場は指数こそ順風満帆なイメージでしたが個別株やセクターのレベルではかなり難易度の高い相場でした。

ひところの投資ブームが去り、初心者にとっては儲けにくい相場が到来したということです。

具体的には「ロビンフッド現象」に代表される、個人投資家による腕力相場はすっかり勢いを失ってしまいました。

SPAC(特別買収目的会社)のブームも一巡しました。

EV(電気自動車)、燃料電池、ソーラー発電、ゲノム創薬、フィンテック、機械学習、宇宙開発などの個人投資家がとりつきやすい投資テーマもすっかり輝きを失った観があります。

■米国経済の現況

株式市場にお金が向かわなくなった主な理由は新型コロナワクチンの注射がどんどん捗り、人々が街に出ているからです。

これまでに米国では2.3億回の注射が実施され、国民の42.5%が少なくとも1回目の注射を終えています。

人々が街に出はじめた関係で3月の小売売上高も前月比+9.8%と伸びていますしレストランなどのサービス業での雇用も増えています。

3月の消費者物価指数は前年同月比で+2.6%でありインフレ懸念が台頭しています。たぶんこれは一過性の現象で、手のつけられないしつこいインフレがこれから起きるリスクは低いように思います。ただ投資家の関心がインフレに移っているということは、普通に考えて株式にとってはフレンドリーな環境とは言いにくいです。

■企業業績

いま2021年第1四半期の決算発表シーズンがはじまっており、これまでに全体の4分の1の企業が決算発表を終えていますが、全体として米国の企業業績は好調です。

S&P500利益予想はじりじり上がっています。

(出典:ファクトセット)


実際、上のチャートに見られるように2020年から2021年にかけてはS&P500の一株当たり利益(EPS)が+28%も成長すると予想されており、これは過去最大の成長率です。

■注目ETF

以上の話をまとめると新型コロナワクチンの接種が進み経済が再開し企業業績もすこぶる良いのだけれどインフレ懸念が台頭しているので投資は難しくなっているというのが米国株の現状です。

すると今月はインフレ・ヘッジの役割を果たしそうなETFが注目される可能性があります。
SPDRゴールドシェア(コード:GLD)は金地金の価格に連動することを目指したETFです。金はインフレに強い原資産だと言われています。

次にWTI原油連動ETF(コード:USO)にも注目したいです。このETFはWTI原油先物価格に連動するよう設計されています。

さらにエネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLE)にも注目したいです。同ETFはエクソンモービル、シェブロンなど石油関連銘柄を中心としたETFです。

コモディティ価格が堅調な局面では新興国株式も通常、パフォーマンスが良いことが知られています。バンガードFTSEエマージング・マーケッツETF(コード:VWO)が好適です。

最後に資本財セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLI)もインフレに強いと思われます。