9月18日(水)、2日間に渡って開催されていた米国の政策金利を決定する会合である連邦公開市場委員会(FOMC)が閉会、0.50%の利下げが発表されました。米国が利下げに転じるのは4年ぶりのことです。その意味では米国はいよいよ利下げサイクルに入ったと言えます。これにより米国の政策金利は4.75%〜5.00%になりました。
前回7月のFOMCの後で2回の雇用統計、2回の消費者物価指数の発表があり、それらのデータがおおむね米国連邦準備制度理事会(FRB)が望んでいた方向で入ってきたことからいま引き締め気味に設定されている政策金利をより中立的な水準に戻してゆくのが適切だと判断しました。
言い換えれば今日のFRBの0.50%の利下げは雇用市場に対する不安を反映したものではありません。米国経済はちょうど良い感じで推移しているので、いま物価と政策金利の差が大きく乖離してしまっているのをここで大幅に是正することで早くノーマルな状態到達しようというわけです。
FRBメンバーのコンセンサスも、もっとアグレッシブに利下げしたほうが良いというメンバーが増えました。
今回のFOMCでは経済予想サマリーが示されました。これはFRBメンバーに今後の政策金利と経済の予想をアンケート調査して回り、それを集計したものです。
それによるとフェデラルファンズ・レートに関するメンバーの予想は2024年末が4.4%に下がりました。
仮にこのFRBメンバー予想通りになるのだとすれば年内にあと1回利下げがあるという予想になります。
なお長期でのFFレートはFRBメンバーの考える中立的レートに近似していると考えることができますが、それはリーマンショック後、新型コロナ後の超低金利の時代より高い位置となっています。その理由としては当時は世界の長期金利がマイナスになっている国も散見され、思い切り政策金利を下げてやる必要があったからです。いまはそのような状態でありません。
次にFRBメンバーによるGDPの予想チャートを見ると2024年末のGDPは2%に下がっていますが、他は動いていません。
これはFRBがソフトランディングに成功する可能性が高いとFRBメンバーが考えていることの現れだと思います。
次に失業率を見るとこちらの方は2024年末、2025年末、2026年末がそれぞれ上方修正されました。これはFRBメンバーが失業率を主に心配していることを示唆しています。
普通、失業率が4.4%にまで上がってくるとそこにとどまっていることは稀であり、あれよあれよという間に失業率がもっと増加するのが常です。しかしこのチャートから見る限りFRBメンバーは今回はここで踏みとどまれると考えているようです。
実際、小売売上高、GDP、新規失業保険申請件数、レイオフなどのデータポイントを見る限り、いまは不況が来る兆しは見当たりません。
まとめるとFRBは先制的に物価と政策金利との大きな乖離を大胆に埋めに来る、やや意外な采配を今回見せました。しかしそれはFRBが後手に回っているということではなく、いま良い状態にある米国経済をこのままの状態でキープするための方策だったというわけです。