ジャクソンホール経済シンポジウムで予想されること

8月22日から24日までジャクソンホールで経済シンポジウムが開催されます。パウエル議長は23日朝10時(米国東部時間)に基調演説する予定です。

結論から言えばパウエル議長は9月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で現在の政策金利5.25〜5.50%を0.25%引き下げることをほのめかすと思います。しかしそれ以上の明言は避け、あくまでも利下げという選択肢を確保するだけにとどまると思われます。

ジャクソンホール経済シンポジウム(Jackson Hole Economic Symposium)は、アメリカ合衆国ワイオミング州のジャクソンホールで毎年8月に開催される国際的な経済会議です。このシンポジウムは、カンザスシティ連邦準備銀行が主催しており、1978年から開催されています。

このシンポジウムには、世界中の中央銀行総裁、金融当局者、経済学者、金融市場の参加者が集まり、世界経済の重要な課題や最新の経済政策について議論します。

ジャクソンホールが経済シンポジウムの開催地として選ばれた理由は、当時の連邦準備制度理事会(FRB)議長であったポール・ボルカーが、釣り好きであるという情報を基に、彼の参加を促すために釣りが楽しめるジャクソンホールが選ばれたと言われています。結果として、ジャクソンホールは美しい自然環境と遠隔地という特性があり、これが重要な経済討論をじっくりと行うのに最適な場所とされ、現在もその伝統が続いています。

今年の経済シンポジウムではパウエル議長は大胆で新しい方向性を打ち出さないと思います。その理由は、いまちょうど連邦準備制度理事会(FRB)は、5年に一度行われる政策金利決定枠組み見直しの検討に入ったからです。

前回の見直しは2020年に行われ、この時には「平均インフレ目標」(Average Inflation Targeting, AIT)の導入が決定されました。この枠組みの下では、FRBは一定期間におけるインフレ率が平均して2%になることを目指し、経済が低インフレ状態にある場合には、インフレ率が一時的に2%を超えても許容するという方針を採用しました。

「平均インフレ目標」は失敗に終わったと言えます。なぜならインフレの気配が感じられ始めた初期に徹底的にそれを抑え込むことをしなかったことが原因で米国は高インフレを経験したからです。

(出典;セントルイスFRB)

これはFRBにとってはきまりの悪い失態であり、今後このような過ちを犯さないためにFRBメンバーは慎重になっています。

普通、政策金利決定枠組み見直しには1年くらいの時間をかけるので、まだ始まったばかりの現在の段階で今後の方針に関してあまり具体的な話はできないのです。

その意味で、具体的で明示的なガイダンスを期待する市場参加者は今回のジャクソンホールでは落胆すると思います。