豪ドル円 – 年間見通しと戦略【2019年版】

RBAが利上げスタンスに変わるまで、大きな反発は期待しづらい?

1.豪ドル円の注目点

2019年の豪ドル円相場の注目点としては、以下の通りです。

  • 1-1.米中貿易戦争に対する懸念
  • 1-2.良好な豪州経済
  • 1-3.RBA(豪州準備銀行)の姿勢
  • 1-4.NZドルとの関係

1-1.米中貿易戦争に対する懸念

昨年もトランプ大統領に翻弄された1年となったが、今年も1月から米国と中国との通商問題に絡めた協議がスタートしている。この結果次第では、「米中貿易戦争」が継続するとの思惑が、豪ドル相場を押さえる可能性が高いが、中国の軟化姿勢もあり、3月1日の期限まで、一旦決着がつく可能性でみておきたい。そうなると豪ドル相場を圧迫する懸念が一時的に後退する可能性はあるが、ただ、トランプ大統領の怒りは、あくまで米国の「貿易赤字の拡大している状況」であり、これが改善しないとまたぞろ、トランプ大統領が、強硬な態度を取る可能性が残っている。
 以下が近年の米国の貿易収支の推移を示したグラフだが、トランプ政権に代わって、関税の強化策を取っているが、一時的な駆け込み需要はあっても、オバマ政権時代からみて米国の貿易赤字に改善は全く見えない。米国の赤字は構造的な問題でもあるが、通商交渉が決着しても、実質的に貿易赤字に改善が見えないなら、米国が「為替レートの問題」まで踏み込んで来る可能性が高い。今後も米国の貿易収支の毎月の推移は、最大の注目となるが、赤字の減少が見えないなら、中国との関係に改善は見えず、豪ドル相場の懸念として続きそうだ。 

一方では、昨年10月4日に高値を付けた後、NYダウが大きく下落を強めている。これが世界的な株価に調整圧力を与えており、リスク回避の動きを強めている。
その要因に関しては、不透明感が強いが、NYダウが高値をつける前日の10月3日にペンス副大統領が、中国を強く非難する演説を行っており、これが「第2の冷戦」のイメージにつながって、株価の売り圧力となっている可能性も指摘されている。

また以下のNYダウの1977年からの長期の月足チャートをご参照頂きたい。これは過去に起きた「金融ショック」をNYダウの月足チャートにプロットしたものだが、これを見ると歴史的は10年サイクルで、クラッシュが起きている姿が見える。特にこのクラッシュは、7-9年の年に起きて、その後数年の停滞を招いている。丁度昨年が、その10年に当たる2018年であることを考えると、不思議な感じがするが、テクニカル面から見ると、NYダウの長期のエリオット波動から第5波のピークの位置をつけている可能性があり、現状の高値が当面のトップとなる可能性が高い。そうなるとこの高値を今年超えることはなく、「リーマン・ショック級」のリスクとなる可能性を指摘する声もある。こういった点は不透明だが、本当に米中関係が悪化の一途を辿り、「第2の冷戦」がスタートする年となるなら、今年の豪ドル相場に、明るさは見えないので注意となる。

1-2.良好な豪州経済

豪州の成長率(GDP)は、昨年の7-9月期は、予想を下回り失望感も出たが、4-6月時点までは、108四半期連続で『世界最長の景気拡大』を実現している。 
 軟調な商品市況や住宅市場に若干の懸念が見えるが、雇用環境も良好で、賃金の上昇も想定されている。そういった中、堅調な国内景気に伴う税収増加を背景に、2017年以降は財政収支の改善が顕著となっており、2018年度中にも、財政黒字が達成される可能性が浮上しつつある。
 加えて、本年5月には、総選挙が実施される見込みであり、モリソン政権は、選挙対策のために追加の所得税減税などの財政緩和策を打ち出す可能性が指摘されおり、今年の豪州経済には、明るいムードが漂う可能性がありそうだ。
 そういった中、RBA(豪州準備銀行)は、政策金利の据え置きが続けているが、今年利上げスタンスに転換(大手シンクタンクの予想では、今年の10-12月期が想定されている)できるのかが、豪ドル円相場の最大の注目となりそうだ。 

1-3.RBA(豪州準備銀行)の姿勢

豪ドル相場は、過去高金利通貨で人気があったが、既に1.50%の歴史的な低金利を、豪州準備銀行は26会合連続で据え置いている。

国内では、良好な景気と低インフレのジレンマに直面しており、一方で海外要因としては、中国景気の減速懸念や商品市況の低迷、加えて米中貿易戦争の懸念が、RBAの姿勢を慎重にさせている。ただ、RBAの声明では、「次に政策金利の変更は利上げ」と、少なくともよほど大きな外部要因の変化がなければ、利下げの可能性は低い。今後もRBAがインフレ・ターゲットとしている基調インフレ率が、安定的に2-3%を上回って来るかどうかが今年の豪ドル相場に試金石となる。 

豪州では、4半期ごとに消費者物価指数(CPI)を公表しているが、この結果を丹念に吟味していくことが、豪ドル相場に投資タイミングには重要で、特にRBAが利上げ姿勢に転じた場合、継続して利上げする可能性が高く、また現状米国の利上げ姿勢の変化もプラスとなる。その時が豪ドル円相場の大きな投資チャンスとなることは注目しておきたい。

1-4.NZドルとの関係

豪州経済は、オセアニア圏として、NZとの関係が深い。現状はNZの方が1.75%の政策金利を維持しており、豪ドルを勝っているが、今後も豪ドル相場を左右する意味では、NZ経済やNZ中銀の政策の変化、加えてAUD/NZD相場の行方は、大きな焦点となる。

 ただ、AUD/NZD相場では、豪ドルは過去3年間、歴史的な安値圏で軟調が続いている。たかだか0.25%の金利差で、豪ドルが対NZドルで、これほど弱い状況が続いていることは、不可解な印象が強いが、月足チャートからは、過去5年程度の上昇下降サイクルが有効となっていない。また直近では、安値圏で形成している三角保合いを割り込んでいることは大注意となる。このままでは、最安値圏となる1.0230や1.0020を目指す動きも想定され、今後もこういった面が豪ドル相場を押さえる可能性に留意しておきたい。 

 ただ、同じオセアニア圏において、経済的に、規模の面で豪州が大きく勝ることは明らかであり、状況が改善すれば一定の反転も期待できる。それはやはり豪州とNZの政策金利差の逆転がキーワードとなりそうで、今年そういった展開が見えるなら、対NZドルでも、豪ドルの買いチャンスとなることは覚えて置きたい。

 

2.テクニカル面

テクニカル面で、豪ドル円相場は、2017年の高値90.31を前に、昨年は90円を越えることなく、軟調な展開が続いた。また、直近では、下値を支えていた80円ミドルも割り込み、新年早々一時70.64まで下ひげを描く展開となった。ただ、これは一時的なクラッシュの影響で、更なる下落は不透明だが、ただ、上値はそれ以前の安値圏となる78.55-60が押さえると弱く、78.70-80を越えても、79.25-60、80.15-75、81.20-82.25ゾーンと売りが出易い。あくまで83.90-84.10ゾーンの戻り高値をしっかりと越えないとあく抜け感は出ない。

 一方下値は、72-75円が支えると堅調が想定されるが、70.64の下ひげを割れると70円のサイコロジカル割れのリスクとなることは留意しておきたい。

一方下値は、72-75円が支えると堅調が想定されるが、70.64の下ひげを割れると70円のサイコロジカル割れのリスクとなることは留意しておきたい。

一方月足チャートからは、過去105.44と102.85の高値をダブル・トップとした長期の「H&S」を形成しており、左肩のレンジからは、72-73円の下値圏と90-91円の上値圏の動きが、右肩でも続く形が想定される。今回やっとこの下限に迫る形となっているが、左肩の動きは、過去3年8カ月程度続いていることを見ると、右肩も2019年4月末が、日柄的に注目される。ただ今回の右肩の動きは、80-81円から90-91円の動きが、想定以上長く続いており、前述の右肩の動きが、更に長期化する可能性には留意しておきたい。
ともかく、今回の70.64までの下落は行き過ぎとしても、72-73円ゾーンは、良い買い場の位置となる。リスクは70円などをしっかりと割れるケースで、その場合は60-65円が視野となる。 
一方上値は、それまで支えていた80-81円ゾーンが、逆に押さえると弱い形で、当面72-73円から80-81円ゾーンで、揉み合いを形成する可能性もある。将来的にはあくまで、この80-81円を越える動きから90-91円の再トライとなるが、それでも今年後半の相場展開を睨んでも、よほどの状況改善がなければ、上値の限界とみておきたい。

3.予想レンジと戦略

総合的に、2019年の豪ドル円の相場展開と戦略を考えると、米中が第2の冷戦に突入することがないことを前提に、RBAが利上げスタンスに変わる節目が、豪ドル円の投資チャンスとなる。この時期は現状不透明で、前述の通り四半期の豪州物価指数の推移や毎月のRBA理事会での声明の変化なども注目して対応する必要があるが、こういった面が明らかになるなら、レベル感や時期は別としても買いを検討する形を想定したい。

想定レンジは、72円から81円としておくが、環境がそろえば85円程度まで期待したい。レベル的には、RBAのスタンスの変更が見えないとしても、前述の月足のH&Sを基本に72-73円への下落があれば買い場で、一応70円をしっかりと割れるなら止める形で、ターゲットは80-81円が押さえるなら利食い優先。また超えても85円方向は利食いながら対応したい。

4.2019年豪ドル円の主な材料

 2019年の豪ドル円相場に影響を与えると見られる主な重要材料は以下の通り。また、発表予定やイベントは、現在把握できるものに限っていますが、変更や追加になることもあるので、その点は留意して対応して下さい。(XX日は、日程が未定なもの)