“少なくとも2020年利上げはない?”
【かんたんまとめ】
まず、2020年のNZドル円(ニュージーランドドル円)相場の想定レンジ予想を文頭にて簡単に解説します。
その詳細については、本項以降をお読み頂きたいと思います。
◇想定レンジ
69円~77円
◇売買戦略
69円方向への下落では、買いを狙う。ストップは、67や66.32の安値をしっかりと割れるケース。
買いのターゲットは、73.55-74.42ゾーンが上値を抑えるなら利食い優先。超えても77から79では、しっかりと利食う。
もし66.32を割れて大きく調整する場合、57-58円は、中長期での買い狙い場。50円までは買い下がりの余裕を持って対応を。ただその場合、逆に69円や70円が上値を抑える可能性が高く、反発では利食が無難。
【2019年の相場を振り返って】
2019年のNZドル/円相場は、年初の「フラッシュ・クラッシュ」を受けて、69.14まで急落後は、米中通商協議の合意期待感で76.78まで反発しました。ただ、この位置が年間の高値となります。米中通商協議における合意文書に、中国が不快感を示したことで、トランプ大統領が、次々に対中関税を追加で引上げ、加えてNZ中銀が、政策金利の引き下げに動き年前半は軟調な推移となりました。
◇政策金利の引き下げ
通常は、政策金利を引き下げると、その国の通貨を保有することで受け取れる金利が低下し、通貨の魅力が低下する=その通貨が売られる。という流れが発生します。NZドルが売られると、NZドル安・円高、つまりNZドル/円相場は下方向へと推移すると考えられます。
また、8月には、NZ中銀がこの年2回目となる予想外の0.50%の大幅な利下げに踏み切ったことから、一時ショック的に、年初のフラッシュ・クラッシュでつけた安値を下回る66.32まで下値を拡大しました。ただ、こういった面が、功を奏して、金利の打ち止め感が出たこと、また、年後半に向けては、米中通商協議において、フェーズ1の合意期待が高まったこと、加えて、NZ第3四半期の失業率が4.2%と前期の3.9%から悪化、NZ政府が2020年のGDP見通しを引き下げるも、一方で第3四半期消費者物価や実質GDPが、予想外の伸びを示したことなどから金利先安観が後退、政府が120億NZドル(約8500億円)のインフラ投資の追加拠出を行う計画を公表したことなどから、反発気味に推移する形で、2019年の取引を終了しました。
結局、2019年のNZD円相場は、米中通商協議での混乱が、NZ経済に悪影響を与えるとの見方と、NZ中銀の利下げ姿勢が相場の行方を決定づけた形です。ただ、一方でNZの経済指標は、それほど悪い状況でもなく、主に海外要因が、懸念として意識された形となっています。
2020年もこの2つのポイントが、NZD円相場のキーワードとなりそうです。
【ファンダメンタルズ】
それではファンダメンタルズを見ておきましょう。
〇 NZ経済
NZは、小さな国です。人口は、世界120位、GDPで見ても、50位と新興国通貨取引で人気のあるトルコの18位、南アランドの33位よりも低い位置にあります。
日本と同じ島国ですが、国土は日本よりも小さく、古くからイギリス連邦加盟国として、発展してきましたが、主な産業としては、農業などの1次産業が中心です。
特に畜産業や林業が盛んですが、その他の産業は観光を除いて、畜産物の加工工業が主流で、近年は中国に対する乳製品や畜産加工品の輸出が好調ですが、世界的な大きな企業はありません。NZ証券取引所の上場企業は170社程度しかありません。
また地震国ですが鉱業資源は少なく、一部に豪州と並んで、資源国通貨と勘違いされていますが、これは間違いです。恒常的な経常赤字国で、歴史的に高金利を余儀なくされて来ましたが、市場規模が小さく、過去は、投機の動きに市場閉鎖に追い込まれたこともあります。一方で政治的な安定や地政学リスクの低さから、歴史的に海外から資金を集めてきました。ただ、そのNZも現在のような低金利では、なかなか投資が集まってこないことは、仕方がないのかもしれません。
そこで現状のNZ経済ですが、上のGDPの推移をご覧ください。
1990年台は、6%台と比較的強い経済を示現していましたが、リーマン・ショック以降、海外経済の大きな調整もあって、現状は2%から4%程度の成長に留まっています。
2020年、政府が大型のインフラ投資を実施します。この影響が、実体経済に良い結果を生むのか注目しましょう。
またインフレ率でみても、現状はNZ中銀がターゲットとする1-3%内に留まっています。これは世界的傾向ですので、当然ですが、あくまでインフレ・ターゲット政策に忠実なNZ中銀は、このインフレがターゲットを超えてくるまで、利上げに踏み切ることはなさそうです。2020年以降のインフレ率の推移には、注目しておきましょう。
◇インフレ・ターゲット政策
世界の共通認識として、「緩やかなインフレ」は、安定した経済成長を目指す為に良いものとされています。インフレ・ターゲット政策は政府や中銀がインフレ率に一定の目標を掲げて、通貨量をコントロールすることで緩やかなインフレを誘導します。
① インフレ=物価の上昇に伴い、企業は販売価格の上昇から売上増加が見込まれる。
② その企業に勤める社員の収入が増加し、彼らはその収入を原資にそれまで以上に多くの商品を購入する。
③ 商品が多く売れて企業が儲かる・・・
上のような好サイクルが続くことは、安定した経済成長をもたらすと考えられています。余談ですが、インフレだけが加速して、インフレ率>収入増加率になる場合、ただ労働者の生活が厳しくなるだけで悪い状況です。その為にも、急激なインフレではなく、緩やかなインフレを誘導する必要があります。
また上はNZの貿易収支(対GDP比)のチャートです。
◇貿易収支とは
貿易によって移動した資金の国単位でみた収支を表すものです。
例えば日本の企業が輸入を行う場合、支払先は海外になる為、日本国内の資金が国外に流出し、貿易収支にマイナス寄与します。
リーマン・ショック後は、中国に対する乳製品や畜産品の輸出が、貢献してきましたが、これも中国の景気減速やトランプ政権の対中制裁関税の強化策が悪影響を与えています。
今後も中国経済の行方が焦点です。米中が通商協議において、フェーズ1の合意に至りましたが、追加関税の7割が残されています。今後早々と第2段の交渉に入るとしていますが、中国の国有企業優遇や産業助成金問題、人権問題など中国が譲れない内容も多く、交渉は難航することが間違いないでしょう。トランプ大統領が、2020年の大統領選で勝利するとは限りませんが、それまではトランプ大統領は、関税政策を緩めないと断言しています。米大統領選挙が終わるまでは、本当の意味で、米中が合意に至ることはなさそうです。
そうなると中国経済の依存度が高まっているNZ経済にも厳しい状況が続きそうです。
また、上はNZと日本の10年物国債利回り差とNZD円相場の推移を示したものです。総じて金利差に準じてNZD円相場が動いていることが見て取れますが、恐らく日本の金利は、当面大きく変化することはないでしょう。そうなるとNZ中銀が、2020年のどういった金融政策を実施するかが、相場の大きな焦点となります。
◇10年物国債利回り差とは
為替レートの決定において、「金利」は外せない要素となります。
金利が高い通貨と低い通貨では、それぞれに付される金利が異なります。その金利差は通貨の交換レート、つまり為替レートで調整されるのが原則です。
NZドル/円の場合、金利水準はNZドル>円となる為、為替レートが金利差のみで決定されると仮定する場合、以下の動きとなると考えられます。
・金利差が拡大=NZドル高・円安
・金利差が縮小=NZドル安・円高
では、NZの政策金利の推移を見てみましょう。
NZの政策金利は、2000年台初頭は、8%の高金利までありましたが、その後は、リーマン・ショック、欧州信用不安などを経て、インフレ率の2%割れなどから、現在は1%と歴史的な低水準に留まっています。
NZ中銀は、昨年11月の会合で、政策金利を据え置きましたが、中銀の声明では、「必要なら一段の緩和を実施する」、「金利を低水準に維持することは、インフレ・雇用目標の達成に必要」、またオアNZ準備銀行総裁も、「必要であれば追加の金融緩和を行う」、「現時点で行動する緊急性はない」、「当面の間、低金利を維持する必要」と述べています。
2020年の経済指標の状況次第ですが、中国経済は年初から新型肺炎の悪影響が指摘されています。そうなると良くて政策金利を長く据え置くか、予防的には、0.50%ぐらいまでの利下げの可能性が残っていることは、留意しておきましょう。
〇 以下が、現在把握できている2020年のNZの主な予定です。
物価指数の推移や理事会の声明に注目して対応しましょう。また求心力が低下しているアーダーン政権は、9月19日に総選挙の実施を発表しました。ただ、選挙が為替市場に与えるインパクトは少ないと考えらます。
01月24日:NZ第4四半期消費者物価指数
02月05日:NZ第4四半期雇用統計
02月12日:NZ中銀政策金利公表
02月20日:NZ第4四半期生産者物価指数
02月24日:NZ第4四半期小売売上高
03月19日:NZ第4四半期GDP
03月25日:NZ中銀政策金利公表
04月20日:NZ第1四半期消費者物価指数
05月13日:NZ中銀政策金利公表
06月24日:NZ中銀政策金利公表
08月12日:NZ中銀政策金利公表、
09月19日:NZ総選挙
09月23日:NZ中銀政策金利公表
11月11日:NZ中銀政策金利公表
〇 日本経済
NZD円は、ドル円相場の影響を大きく受けますので、日本経済の状況もチェックしておきましょう。
日本経済は、昨年の消費増税にも、事前に政府がポイント還元などの対策を打ち出したことで、一部改善が見えています。IMFや日本銀行も成長率の見通しを引上げました。2020年は東京オリンピックも控えていることで訪日外人の増加など、一定の期待感が景気を支えるとの見方となりそうです。
ただ、海外要因としては、米中通商協議は、フェーズ1の合意署名が行われましたが、未だ対中追加関税の7割が残されています。中国は、産業補助金や人権問題など、受け入れ難い要求を米国から受けています。両者の壁は厚く、一部米国の大統領選が終わるまで、完全な合意の可能性は難しそうです。そうなると中国経済の急速な回復を想定することも出来ず、日本経済にも悪影響を与えそうです。
また、イランや北朝鮮など、核問題に端を発した地政学リスクの問題は、偶発性が高く、想定することは困難ですが、2020年もこういった懸念が続く限り、ほぼ100%輸入に頼っている原油や天然ガスの価格上昇が続いた場合、日本の景気にはマイナス面が強そうです。6月9日と12月に開催されるOPEC総会合わせて、最大の注意を払っておきましょう。
◇地政学リスク
特定の国や地域が抱える政治・軍事・社会的な緊張の高まりから、世界経済の先行きが不透明なものとなり、関連性のある商品の価格を変動させるリスクのことを指します。
武力衝突などが勃発すると、その地域に対する投資や経済活動の先行きが不透明となり、投資資金の引き揚げに繋がる場合があります。
加えて、上の日銀が四半期毎に公表する日銀短期経済観測のチャートをご覧ください。
日本の景気は、バブル崩壊後、回復過程にあっても、大企業の製造業・非製造業の現況指数(DI)は、25から26に達するとほぼピークをつけています。今後すぐにとは言えないまでも、2020年6月末には、消費増税対策で実施したポイント還元が終わること、歴史的には、オリンピック終了後は、景気が反動的に減速する傾向があることを考えると、日本経済が強い回復を見せる可能性は低そうです。その面では、2020年も日本銀行の低金利政策は、続かざるを得ないでしょう。金利面からは、円相場の上値の重い状況が続きそうですが、こういった面が、2020年もNZD円相場の下値を支えると見ています。
【テクニカル】
それでは、テクニカル面からNZD円を構成するNZDドル相場とドル円相場を月足からみてみましょう。
〇 NZDドル相場
NZDドル相場は、2011年の0.8842と2014年の0.8838でダブル・トップを形成後、調整を続けていますが、現状は2019年10月につけた0.6205の安値が、2000年の0.3898の安値からのロング・ランのサポート・ラインに支えらえています。また、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスも売られ過ぎゾーンで、どうにか反転の兆しが見ています。日足ベースのサポートからは、0.63-0.65ゾーンが支えることが出来れば堅調が想定されます。
◇スロー・ストキャスティクスとは
相場の買われ過ぎ・売られ過ぎを判断する分析手法。「Slow%K」と「Slow%D」の2本のシグナルからなるテクニカル指標。
Slow%Kは、過去の一定期間における高値・安値の間で、直近の終値がどのくらいのところに位置しているのかを表す。
Slow%DはSlow%Kの移動平均線です。
ただ、こういった位置が出来ずに、0.6205や0.6135の安値を割り込むと、下落がサイコロジカルな0.60や0.55、更に2009年の安値となる0.4895を目指す動きとなることは、留意しておきましょう。
◇サイコロジカルとは
「心理的な」という意味です。サイコロジカルラインというテクニカル指標もありますが、ここでは「心理的に意識されやすい価格帯」という意味で用います。
キリの良い数字の価格は、時にサポートやレジスタンスとして機能することがあります。投資家の多くはその数字を強く意識する為、その価格帯付近では取引が活発になる傾向があり、明確にその価格を抜けた場合は、次の節目へと意識が移る過程で、値が大きく動く場合があります。
一方上値は、まず、0.6756の高値を抑えると弱いですが、超えて0.6970から0.7071の上値が視野となりますが、レジスタンスから売りが出易い位置です。あくまで0.7560の2017年の高値を超えることが出来て、0.8036-0.8535がターゲットとなりますが、ただ、ファンラインやダブル・トップのネック・ラインからは、この位置も売りが出易いでしょう。
◇サポート・レジスタンスとは?
・サポートライン
日本語では下値支持線といい、「相場はその水準以降は下落しないだろう」と多くの投資家が意識するラインのこと。その価格帯付近まで相場が下落すると、買いが意識されて相場が上に跳ね返され、安値更新の歯止めとなることがある。
・レジスタンスライン
日本語では上値抵抗線といい、「相場はその水準以降は上昇しないだろう」と多くの投資家が意識するラインのこと。その価格帯付近まで相場が上昇すると、売りが意識されて相場が下に跳ね返され、なかなか高値が更新されない価格帯のことを指す。
従って、2020年の想定レンジをサポートが維持される前提で、0.63から0.70としておきます。また、維持出来ないケースを想定しても、サイコロジカル的に強い0.60から0.70程度で想定しておきます。
〇 ドル円相場
一方ドル円相場ですが、昨年は年間ベースでのレンジが、7円94銭と歴史的な低水準に留まりました。2020年は、米国の大統領選が控えています。動きが激しくなるか注目ですが、ただ、動きが出ても年後半となりそうで、年前半は揉み合いが続くかもしれません。
上の月足チャートをご参照ください。
上値はロング・ランの①レジスタンスを前に上げ渋っています。この位置は、2020年の1月時点で、110.31となりますが、この上抜けの可否は、次の相場展開に重要となります。あくまで超えても112.40、114.55、114.73がターゲットとなりますが、この位置も抑えられるとレンジ相場からの逸脱は難しいでしょう。あくまでこのような上抜けが実現して、強気相場となります。
下値は、一応サポートと104.56、104.87、104.46の②トリプル・ボトムが支えています。
◇トリプル・ボトムとは
トリプル底とも呼ばれる。価格が低値圏にある時、相場の底を抜けずに3度、同水準の底値で跳ね返されたチャートの図を指し、相場の転換点を見極める際に用いられるテクニカル分析手法です。
本文では、3つの底値(トリプルボトム)がサポートライン(下値抵抗線)として相場を支える旨を解説しています。
この維持では引き続き堅調な相場が続くとみられますが、トリプル・ボトムを逆に割り込むなら、大きな下落相場が訪れる可能性に注意しておいた方が良いかもしれません。
また、相場のモメンタムを見る上では、下限のスロー・ストキャスティクスに注目しましょう。現状は、弱気を維持しています。つまりまだ円高リスクが残っている形です。ただ、これも前述の通り、レジスタンスをクリアに上抜けてくれれば、陽転する可能性も残っています。今後もこの動きに注目して対応しましょう。
下値は、サポートから107-108円が支えると堅調が続きます。またもし、割り込む動きがあっても、トリプル・ボトムを前に、105円が維持されると更なる調整は難しそうです。ただ、逆にトリプル・ボトムの下方ブレイクが発生するとスロー・ストキャスティクスも反落を続け、その場合フィボナッチ・リトレースメント(75.31から125.86)の50%となる100.58が、グッド・ターゲットとなります。一応フィボナッチの61.8%=94.62までの下落は、トランプ大統領の選挙での敗北、米中通商協議の完全決裂、FOMCの利下げスタンスへの転換などの悪い状況が重ならない限りは、現状想定していません。
一応2020年のレンジを105円から115円に想定しておきます。
◇フィボナッチ・リトレースメントとは
「フィボナッチ比率」をトレードにあてこんだテクニカル手法です。
「23.6%・38.2%・61.8%・76.4%」という比率を、フィボナッチ比率、または黄金比率と呼びます。多くの投資家がフィボナッチ比率で求められた価格帯を意識する為、相場に影響を与えると考えられています。チャートの高値・安値の間をフィボナッチ比率で区切られたラインを引くことで、サポートライン・レジスタンスラインを判断します。
〇 NZD円相場
NZD円相場は、2014年の高値94.02から調整と継続しています。また、現状はロング・ランのサポートを割れて、更に2009年4月から2012年12月の揉み合いゾーンの上値圏となる68.90-69.37ゾーンも割り込んでいます。これはテクニカル的には、悪いパターンですが、ただ、現状はモメンタムを示すスロー・ストキャスティクスが、売られ過ぎ圏で、反転の兆しを見せ、更に調整は拡大していません。
NZD円相場は、若干形が不揃いですが、豪ドル円同様、94.02をトップとして、57-58円ゾーンから68-69円ゾーンの左肩と70-73円ゾーンから83-84円ゾーンの右肩で、一種の変形的なH&Sを形成しています。
◇H&S(ヘッド&ショルダー)とは
日本語で「三尊」とも呼ばれるチャート形状です。左右にショルダー(肩)、中央にヘッド(頭)があるように見える事からH&Sと呼ばれます。
「三尊天井」は投資の世界では有名なテクニカル指標です。チャート上にこの形が現れる場合、上昇局面から下落局面へのトレンド転換局面と判断されます。
上昇相場の中で、上値をアタックするものの、高値を超える事ができず、アーム(腕)形成部分まで下落してしまう場合、「売り」の判断します。
この右肩の下限を割り込んで下落が拡大していないことは、若干不透明な展開です。一種の騙しの範疇で考えることになりますが、その面では、上値をレジスタンスとして抑えている73.55-74.42ゾーンを上抜けることが出来るか、大きな焦点とまります。
超えることができれば、76.78の戻り高値、更に78.87を上抜けると、サイコロジカルは80円、更に過去に上値を抑えている83.38-83.90などがターゲットとなりますが、現状こういった位置までの上昇は不透明です。
一方下値は、日足のサポートからは、69円から70円ゾーンが維持できると堅調が続くますが、66.94や66.32の安値を割れると相場が崩れ、左肩の下限となる57-58円、更に50円のサイコロジカルや45.09の最安値を目指す動きが想定されます。
従って、一応モメンタムの形からは、サポートとなる69-70円が維持される前提で、2020年の想定レンジを69円から77円としておきます。
【NZ円相場の2020年の見通しと具体的な戦略】
NZD円相場は、クロス通貨であることで、まず、NZDドル相場の予想値とドル円の予想値から推定したラダーチャートを見ておきましょう。
◇クロス通貨
米ドルを通貨ペアに含まない通貨ペアのことを指します。
NZドル/円を買う取引の場合、インターバンクでは、円で米ドルを買い、米ドルでNZドルを買う。という2度の取引を行うことで取引が成立します。そのような通貨ペアのことをクロス通貨と呼びます。また、ユーロ/米ドル・豪ドル/米ドルのように、米ドルが通貨ペアに含まれる場合、1度でその取引を行うことができ、そのような通貨ペアのことを「ドルストレート」と呼びます。
NZDドルの想定レンジとなる0.60から0.70とドル円の105円から115円で算出しています。このケースでは、2020年の最大NZD円のレンジは、63.00から80.50となりますが、これは極端なパターンとなります。
一応NZD円を69円から77円で想定しましたが、そうなるとNZD円が77円まで上昇するためには、NZDドルが0.67-0.70ゾーンにあって、ドル円が110円から115円に上昇する必要があります。一方69円に下落するには、NZDドルが0.63から0.65ゾーンで、ドル円が106-110円ゾーンに位置する形となります。
一応、ご参考としてください。
また、NZD円の2020年の戦略としての注意点は、
・3月末までは、本邦の決算に絡めてレパトリの円買いが出易く、NZD円では、若干上値を抑える要因になる。
◇レパトリとは
レパトリエーションの略。海外にある資金を自国に戻すことを指します。
日本の生損保等(機関投資家)は保険金の原資を外貨建てで運用しています。災害などが発生すると運用資産を換金・円転して保険金として支払う準備を行わなければいけません。その際の資金の流れが外貨売り・円買いであり、円高圧力の一つの要因と言われます。
・ただ、NZ中銀が予防的利下げに踏み切った場合に、金利に打ち止め感が出るなら、そのタイミングは一定の買いの狙い目となる。
・夏場は、例年相場が揉み合い入りする可能性が高く、あまり手を出す時期ではありませんが、年後半に向けて、例年円安気味推移する傾向があり、この時期に大きめの押し目を作ることがあれば、一定の買い狙い場となります。
・秋口は、米国の大統領選挙を睨んで、相場が思惑的に激しく動く可能性に注意となりますが、もし民主党候補の有利が伝わった場合、政策の不透明感や株価の調整を受けて、ショック的な円高になる可能性があることは、注意しておきましょう。
・テクニカルからは、NZDドルのモメンタムは下げ止まりを予想していますが、一方でドル円は、まだ円高リスクが残っています。2020年のNZD円相場は、レンジ的な動きに留まると見ていますが、一時的な調整の可能性が残っていることは、留意しておいてください。
それでは、今までの話をまとめて、2020年のNZD円相場の戦略を考えてみましょう。
想定レンジを69円から77円として、69円方向への下落では、買いを狙います。ストップは、67円や66.32の安値をしっかりと割れるケースです。 この買いのターゲットは、73.55-74.42ゾーンが上値を抑えるなら利食い優先で、超えても77から79円では、しっかりと利食っておきましょう。
また、もし66.32を割れて大きく調整する場合、57-58円は、中長期での買い狙い場となります。流石に45円の安値までの調整には、リーマン・ショック級の問題が発生いないと難しいと思われます。50円までは買い下がりの余裕を持って対応しましょう。ただ、その場合、逆に69円や70円が上値を抑える可能性が高く、こういった反発では、利食っておいた方が無難でしょう。