アメリカのマーケット展望【2020年7月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1か月のターゲットは3100を堅持します。

米国ではいま新型コロナウイルスの第2波がフロリダ、テキサス、アリゾナ、カリフォルニアの各州を襲っています。6月26日(金)の陽性者数は4万5千人でした。これは過去最高です。

このためテキサスやフロリダでは一度再開したバーやレストランでアルコール類を販売することを禁止すると発表しています。

今回の感染が前回と違う点は若者の陽性者数が増えている点だと思います。老人は一度新型コロナウイルスに感染すると症状が重篤化しやすいのでなるべく外出を控えています。

第2波の到来は折角これから経済が上向くと思われていた矢先の事であり、市場参加者の落胆を誘っています。

■経済の現状

米国経済は新型コロナウイルスによる急激な落ち込みからV字型の回復を見せるかと思われていましたが、ここへきてむしろW型になるのでは? という懸念の声が聞こえてきています。

航空会社、ホテル、レストランなどの売上高は未だ本格回復とは程遠い状況です。

新規失業保険申請件数も高止まりしています。

いまのところ不景気は銀行の経営を脅かしていません。先日発表された連邦準備制度理事会(FRB)のストレステストの結果もアメリカの銀行が概ねいま我々の眼前にあるリスクに対して十分な自己資本を備えていると判断しています。但し将来の焦げ付きの増加に備えて今体力を温存しておくべきと考え、FRBは銀行に対し第3四半期中は自社株の買戻しを中止するように求めました。また四半期配当も第2四半期に払い出した実績を超える額を支払ってはいけないという方針を打ち出しています。

7月25日前後に失業保険に上乗せされている支援金の支給がSTOPする予定です。これは毎週600ドル、一か月に2400ドルという手厚い保護であり、これが終了すると途端に家賃や自動車のローンが払えなくなる消費者が多いだろうと言われています。

いま議会が先の2.2兆ドルの景気刺激策(いわゆるCARES Act)の第2弾となる景気支援法案を審議していますが、それに時間がかかれば市場参加者の不安は増大するでしょう。

■企業業績

S&P500指数の今年の一株当たり利益(EPS)は126.86です。

向こう12か月のEPSに基づいた現在の株価収益率(PER)は21.7倍です。

なお2020年第1四半期の決算発表シーズンで来期以降のガイダンスを示した企業は全体の僅か49%程度であり、それは今後のEPS予想が極めて信頼性に乏しいことを示唆しています。

■注目ETF

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)はこのような不透明な先行きに配慮していま政策金利を0~0.25%という極めて低い水準を維持しています。ゴールドには利子や配当がつかないため市中金利が高いときには不利だと一般に理解されています。しかし現在のような実質ゼロ金利の環境下においては逆に魅力が増します。金地金の値動きをトレースするETFとしてSPDRゴールドシェア(GLD)があります。ゴールドは過去最高値にもう少しで手が届く水準まで買われてきており目が離せないと思います。

もし新型コロナウイルスの第2波が酷いことになってそれを嫌気しマーケットが急落するような局面ではDirectionデイリー米国金融株ブル3倍ETF(FAS)を売り建てるというトレードの仕方があると思います。とりわけ現在失業保険に上乗せされている毎週600ドルの手当てが7月25日で終了し、延長されないシナリオではクレジットカードや自動車ローンの支払い遅延が増えることが予想されます。その場合、銀行株は焦げ付き増加懸念から売りプレッシャーを浴びることが予想されます。なお同じ銀行株を売り建てる場合でもレバレッジをかけたくないと考える人は金融セレクト・セクターSPDRファンド(XLF)を売り建てすればよいと思います。

3月23日から始まった今回の相場の戻り局面では資本財セクターの値動きの悪さが目立っています。景気がもう一度つんのめるシナリオでは資本財セレクト・セクターSPDRファンド(XLI)がアンダー・パフォームする可能性が高いです。したがってこれを売り建てる戦略が考えられます。

同じことはエネルギー関連企業にも言えます。エネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLE)は原油価格が軟調になる場合、下落しやすいです。