■短期の相場見通し
S&P500指数の向こう1か月のターゲットは2850を維持します。
S&P500は2月19日の高値3393.52から3月23日の安値2191.86まで1201.66ポイント下落しました。それを2で割ると600.83です。つまり「半値戻し」の水準は2191.86+600.83=2792.69です。既にS&P500指数はこの半値戻しを達成しています。このことは米国株式には反発力が残っていることを示唆します。ですから今年の年末までにS&P500が過去最高値を更新することも夢では無いと思います。
その反面、ここまでの戻りは連邦準備制度理事会(FRB)のなりふり構わぬ緩和と議会による大型の景気支援策などに助けられた動きだと理解すべきです。決して実体経済や企業業績が良いからではありません。
市場参加者は「近く外出禁止令が解除される!」ということを囃して株式の上値に手をつけています。しかし外出禁止令が解除されたからといって人々の暮らしが新型コロナウイルス以前の状態に戻るという保証はありません。
市場参加者は景気がV字回復すると考える人と愚図愚図した展開を予想する人に分かれています。
唯一市場参加者のほぼ全員の意見の一致が見られるのは、本当に皆が安心して日常生活に戻れるためにはよいお薬やワクチンの登場が待たれるということです。治療薬・ワクチンに関しては楽観論が広がっていますが有望だと思われた薬が次々に却下されれば失望を招く可能性があります。
■経済の現況
新型コロナウイルスで人々が外出を控え始めた3月21日の週からこれまでの5週間で新規失業保険を申請した人の数が累計で2645万人にのぼりました。
これは単純に考えて米国の労働人口の16%が失業している状態だと言えます。過去に米国で失業がこれほど酷かったことは1930年代の大恐慌時代を除いてありません。従って今後の経済の見通しに関し余り楽観的なシナリオだけを信じず、どちらに転んでも良いようにバランスの取れた大局観を持つべきだと思います。
■企業業績
いま2020年第1四半期決算発表シーズンが始まったところですがコンセンサス予想はスルスル下がってきています。
通年のEPS予想は137.98です。
つまり今年は去年に比べて明らかに「ダウンイヤー」になるということです。なおこのコンセンサス予想はまだつるべ落としに下がっている最中なので最終的にはもっと悪い数字になることが予想されます。
多くの企業は新型コロナウイルスにともなう先行き不透明感から今年のガイダンスの提示をやめてしまっています。つまりアナリストは業績の予想を立てることがとても難しくなっているのです。
このような場合、コンセンサスEPS予想の信頼度は低下するのでそれに対して投資家が支払っても良いと考える株価収益率(PER)は下がると考えるのが自然です。
■注目ETF
いま世界は不景気です。この厳しい環境に適合したETFは不況でも売上高が余り減らない生活必需品のETFです。生活必需品セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLP)がそれに相当します。
同じく不況に強いのが公益事業セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLU)です。このETFは電力会社、ガス会社、水道企業などを組み入れています。
連邦準備制度理事会がどんどん金融緩和をしているということはゴールドに投資家の注目が集まることを意味します。SPDRゴールドシェア(コード:GLD)は金価格の動きを反映するようにデザインされています。
景気後退局面初期では小型株がアンダー・パフォームすることが知られています。すると売り候補としてiシェアーズラッセル2000ETF(コード:IWM)が考えられます。
また市場全体が軟調な地合いになった場合にはSPDR S&P500 ETF(コード:SPY)を売り建てることも検討に値すると思います。