アメリカのマーケット展望【2020年2月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう一か月のターゲットはこれまでの3,250を3,350へ引き上げます。

中国の武漢から発生した新型コロナウイルスで世界の株式市場は調整しました。これは米国株も例外ではありません。

今回の新型肺炎は中国経済ならびに中国からのインバウンド観光に依存する周辺国の経済にはある程度悪影響を及ぼすと考えられます。

また中国における経済活動の鈍化は中国に対して素材やエネルギーなどを供給している国々にもコモディティー価格の下落などを通じて打撃を与えることが懸念されます。

しかし米国の場合、GDPの70%を構成している消費は主に国内の雇用や賃金の動きに左右されます。いま失業率は3.5%と極めて低い水準にありますし賃金もゆっくりではありますが着実に上昇し始めています。それらの要因を背景として米国の消費者のマインドは堅調です。

このことから新型コロナウイルスが米国経済に与える影響は軽微だと考えます。

新型コロナウイルスのニュースが出て以来、原油価格は急落しています。これはガソリン価格も押し下げることになると思います。実際、1月29日の全米平均ガソリン価格は2ドル50セントでした。これは一月前の2ドル57セントより7セント安いです。

過去を遡ると、米国ではガソリン価格が消費者物価全般よりも早いペースで急騰した場合、不況の引き金になることが多かったです。過去に不況のあった1980年、1990年、2001年、2008年のいずれの場合も、それが当てはまっていることが下のチャートから読み取れます。

(作成:広瀬氏)

すると今は逆に新型コロナウイルスでガソリン価格が下落しているわけですから、これが引き金となって米国が不況に陥るというのは少し理屈に合わない説明だと言えるでしょう。

■経済の現況

米国経済は好調です。GDP成長率は約2%を達成できると思われます。失業率は3.5%と歴史的に低い水準です。賃金の上昇も、やや衰えが見えているとは言え、依然高水準です。

(作成:広瀬氏)

インフレ率は連邦準備制度理事会のターゲットである2%に限りなく近い水準に固定されています。つまりこの面でも異変は無いのです。

■企業業績

S&P500指数の一株当たり利益は2019年が162.14ドル、2020年が177.41ドル、2021年が196.18ドルと見込まれています。つまりEPSは順調に伸びると予想されているのです。

1月24日に時点でS&P500採用銘柄の17%が決算発表を終え、そのうち73%がEPSでコンセンサス予想を上回りました。また売上高で67%がコンセンサス予想を上回っています。これはいずれも例年の平均よりも良い結果です。言い直せば、これまでのところ決算発表シーズンに異変は見られないということです。

■注目イベント

目下のところ中国の武漢で発生した新型コロナウイルスがどのような伝染を見せるか? ということから目が離せません。

■注目ETF

もし新型コロナウイルスの猛威が衰えを見せず、逆に伝染が加速するようなシナリオではNEXT FUNDS日経ダブルインバース上場投信(コード:1357)が注目されると思います。このETFは日経平均の変動率に対してマイナス2倍の動きになるように設計されています。

あるいはiシェアーズ中国大型株ETF(コード:FXI)を売り建てすることにより中国市場の下げを取ることも出来ると思います。

投資家がリスク回避している局面では物色がゴールドに回る可能性があるのでSPDRゴールドシェア(コード:GLD)を買い持ちするという手もあるかもしれません。

新型コロナウイルスが猛威をふるった結果、世界経済が鈍化するなら原油の消費にも影を落とすのでWTI原油連動ETF(コード:USO)を売り建てることも出来るでしょう。

逆に「新型コロナウイルスは早期に終息する」という考えならばプロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(コード:TQQQ)を買うことでナスダックのリバウンドを取ることも一案です。