アメリカのマーケット展望【2019年12月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1か月のターゲットはこれまでの3050を3180へ引き上げます。

上のチャートからもわかる通り、米国株式市場はやや上昇局面が長く続き過ぎ、小休止が欲しいところです。しかし相場の基調は強いと考えるべきでしょう。

その第一の理由として11月から来年の4月にかけてはアノマリー的に米国株が強い季節だからです。

すると現在は12月なわけですから、まだまだ今は相場から降りてしまわない方が得だということがわかります。

■経済の現況

米国経済は安定的に拡大しています。

10月30日の連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利が0.25%引き下げられましたが、それと同時に「これで利下げは打ち止めにする」ということが明快に打ち出されました。これはFRBが3回におよぶ小刻みな利下げによりソフトランディングの演出に成功したことを宣言したのと同然です。

株式市場にとって一番怖いシナリオは中央銀行の度重なる利下げにもかかわらず、まるで心臓が止まった患者のように経済が全く反応しないような状況です。今回は明らかにそういう危機的状況とは程遠く、すでに米国経済はぐいぐいと成長してゆける兆しをいたるところに見せています。

ところでパウエル議長は「現在の米国経済の状況は1995年と似ている」ということを繰り返し言っています。1995年は株式を買うタイミングとしてはとても良い年でした。ダウ工業株価平均指数は1995年が+33.5%、1996年が+26.0%、1997年が+22.6%、1998年が+16.1%、1999年が+25.2%でした。つまり「3回の利下げの後、これで利下げは打ち止めにする」というのは株式市場の大相場の号砲が鳴り響くキッカケだったのです。

もちろん、今回があの時と同じになるというきまりはありません。ただソフトランディングの演出に成功したということは、それ自体、たいへん株式市場にとって良い事なのです。

■企業業績

これまでにS&P500採用銘柄の96%が第3四半期決算の発表を終え、75%の企業がEPSで、59%の企業が売上高でそれぞれ予想を上回りました。これは過去5年の平均よりも良い数字であり、企業業績に変調は見られないことを意味します。

次に今後の四半期決算の変化率のトレンドですが、今回の第3四半期決算をボトムとして、これからだんだん加速してゆくことが予想されています。

■注目イベント

12月15日に消費財を中心とする中国からの輸入品に対し新しい関税が導入されます。いま行われている米中貿易交渉では「とりあえず12月15日に開始される分の関税に関しては見合わせよう!」ということが双方の努力の争点になっています。

米中貿易交渉第1ラウンド合意は、「12月15日に導入される関税だけは回避する」というような、極めて小さな合意にとどまる可能性があります。しかしいま重要なのは米中両国がどんなに小さくても何らかの合意に到達できるということを示すことなのであって、「全面解決!」は誰も期待していません。

第1ラウンド合意の調印は1月24日にスイスのダボスで開催される国際経済フォーラムが舞台となる可能性があります。

■注目ETF

例年12月にはタックスロス・セリングという現象が見られます。これはその年に株式投資して儲かった銘柄を利確し、沢山実現益が出た場合、米国の税制ではそれをお給料などの他の収入と合算し、総合課税されるため、あまりに巨額の実現益が出た場合、適用税率が跳ね上がるリスクがあり、それを避ける意味で含み損になっているポジションをこの際処分し、実現損を出すことで実現益と相殺する操作を指します。

タックスロス・セリングのピークは12月15日頃です。

小型株ほどタックスロス・セリングの標的になりやすいことが過去の経験則で知られています。米国を代表する小型株指数はラッセル2000指数です。トライオートETFではiシェアーズ・ラッセル2000ETF(コード:IWM)という銘柄になります。

つまり12月15日を過ぎたあたりでこのETFをロング、すなわち買い持ちにするというトレーディング戦略が考えられるわけです。

年末年始はテクノロジー株が買われる場合も多いです。そこで同様の戦法として12月15日を過ぎたあたりでテクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLK)を買うというアイデアもあります。

もし、もっとアグレッシブに行きたいのであればプロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(コード:TQQQ)があります。これはナスダック100指数の変動率の3倍の動きをするように設計されています。

12月はクリスマス商戦期間でもありますので一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLY)が注目されるかもしれません。

最後にもし米中貿易交渉第1ラウンド合意が成立するシナリオではiシェアーズ中国大型株ETF(コード:FXI)も注目されると思います。

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