アメリカのマーケット展望【2019年11月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1か月のターゲットはこれまで通り3050を堅持します。

S&P500指数は10月最終週にこれまでの高値、3027.98を超え、過去最高値を更新しました。
このような場合、新値を買う目先筋の買い物が殺到することが多いです。

しかし熱狂はいずれ醒め、株価は反落することが常です。その場合、これまでの上値抵抗線(レジスタンス)が、今度は一転して下値支持線(サポート)になるというのがテクニカル分析の教科書に書いてあることです。
つまり今は教科書通り3027.98まで下押し、そこで下げ止まるか? をまず確認すべき局面なのです。

もしそこで下げ止まることが出来れば、相場はもう一段高する展開が予想されます。機関投資家が大挙して参戦するのも、このようなサポートの確認が済んだ後です。
なお11月から来年の1月にかけては例年、米国の株式市場が季節的に1年で一番強い時期に相当します。したがってムダに弱気になる必要は無いと思います。

さらに長期金利の状態を見ると、米国10年債利回りは1.84%前後で取引されています。これはきわめて株式バリュエーションにとって支援的な水準と言えます。

■経済の現況

米国経済は①ビジネスと②消費者に分けて考えることができると思います。
ビジネスに関しては、経営者のマインドは「うつむき加減」です。

それというのも米中貿易戦争が引き続き先行き不透明な様相を呈しており、不確実性が残る中、経営者は新規投資を控えたいという気持ちが強いからです。
これとは対照的に消費者のマインドは堅調です。折からの低失業率、賃金の上昇などにより消費者は楽観的なムードになっています。低金利で消費者の利払い負担は低くなっていますし、そもそもリーマンショック後、消費者は借金を圧縮したので家計のバランスシートは健全なのです。
消費は米国経済の7割を担っているため、消費が堅調な限り米国経済が不況の淵に沈んでゆくシナリオは考えにくいです。

全体として米国経済は不況に向かって突進しているのではなく、むしろソフトランディング(軟着陸)から再加速へ向かっている印象を与えます。

■企業業績

これまでにS&P500指数採用企業の4割が決算発表を終えています。EPSでは8割の企業が予想を上回っており、売上高では64%の企業が予想を上回っています。これらの数字はいずれも過去5年の平均より良い数字です。
つまり業績的には異変は感じられないということです。

強いて言えば海外売上比率の高い企業が折からのドル高で悪い決算を発表しているのが目立ちます。
なお向こう12か月の予想EPSに基づいて現在S&P500指数は株価収益率(PER)で17倍をつけています。これは過去5年間の平均(16.6倍)より少し割高ですが、我慢できる範囲内と言えます。

■注目イベント

米国と中国はその機会に貿易問題に関し第1段階合意書に調印することを目指してきました。しかし一部には「準備が間に合わないのでその機会には合意書への調印はムリだ」という報道もあります。
ただ合意書にサインしなかったから両国の話し合いが座礁したということではなく、細部を詰めるためにもう少し時間が必要だということだと思います。

米国通表代表は12月28日から課せられる予定となっている中国からの輸入品340億ドル相当に対する関税を、必要があれば延期することを検討していると伝えられています。

■注目ETF

いまはS&P500指数が過去最高値を更新した直後であり、マーケットが変動しやすい局面です。冒頭で述べた通り、目先は上値でオーバーシュートする可能性があります。プロシェアーズウルトラS&P500【S&P500ダブル】(コード:SSO)はS&P500指数の変動率の2倍の値動きになるように設計されたETFであり、短期のトレーディングに適しています。いま新値を追っている局面に素直についてゆくという戦術が考えられますが、その後、ある時点で買いは途切れ、下値をテストしに行く展開になることが予想されます。そしてこれまでの上値抵抗線だった3027.98付近で指数が下げ止まったのなら、もう一度、そこから切り返し、一段高する可能性があります。この2回目のラリーに飛び乗るという方法があると思われます。

これに類似するストラテジーとしてはプロシェアーズ・ウルトラプロQQQ【ナスダック100トリプル】(コード:TQQQ)を使う手もあります。こちらはナスダック100指数の変動率の3倍の動きをするように設計されています。なお普段、我々が見慣れているナスダックの指数はナスダック総合指数とよばれるものです。ナスダック100指数は、そのうちの時価総額の大きい100銘柄に厳選された指数であり、主にトレーディングに利用されます。

もうひとつレバレッジ型のETFを紹介すると、Direcxionデイリー米国金融株ブル3倍ETF【金融株トリプル】(コード:FAS)というETFもあります。こちらは大型金融株から構成されるETFであり、原資産の3倍の値動きをするように設計されています。

上で米国の消費が堅調だという説明をしたわけですが、それを手掛かりに投資するなら一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド【一般消費財株】(コード:XLY)が良いでしょう。これはウォルト・ディズニー、スターバックスなどおなじみの消費関連株を組み込んだETFになります。

もうすこし堅い投資先の方が良いということならば生活必需品セレクト・セクターSPDRファンド【生活必需品株】(コード:XLP)が良いでしょう。最近、業績好調のプロクター&ギャンブルやコカコーラなど、安心感のある銘柄を中心に組み入れています。


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