10月のマーケット展望

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1か月のターゲットは3050を堅持すると思います。


ここ一月ほどの間、株式市場にとって悪い材料が次々に出ました。まずサウジアラビアの石油施設がドローン攻撃に遭いました。次にトランプ大統領に対する弾劾の調査が開始されました。

マーケットはそのようなネガティブなニュースにもかかわらず底堅い展開となっています。

石油施設に対する攻撃に関して言えばサウジアラビアは「9月中に原油出荷は元に戻る」と発表しています。これはやや楽観的すぎる見通しかも知れませんが、復旧が遅れた場合でもサウジアラビアは世界の備蓄拠点に71日分の備蓄があるそうなので、それを取り崩すことで契約義務を果たすことが出来るでしょう。従ってこの材料はもう解決済みと考えて良いと思います。

トランプ大統領の弾劾調査はいまのところ下院司法委員会への調査の指示が出た段階です。したがって下院で票決が行われるかどうかはわかりません。

もし票決ということになれば下院では民主党が過半数を占めているので、弾劾決議が可決される可能性があります。

しかしそれは次に上院に回され、上院でも投票に付される必要があります。上院では単なる過半数ではなくスーパー・マジョリティー、すなわち全議席数の3分の2の賛成が必要となります。これは67票です。現在、共和党が上院の過半数を占めていることを考えれば67票を獲得することはほぼ不可能だと言えるでしょう。

つまりこの件でトランプ大統領が罷免される可能性は低いと考えます。そのため、株式市場はこの材料を無視すると思います。

■経済の現況

まず欧州経済ですが2019年9月23日に発表された9月のドイツ製造業購買担当者指数速報値は41.4と8月の43.5から更に悪化しました。中国向けの輸出が振るわないことが一因です。9月のユーロ圏製造業購買担当者指数速報値も45.6と8月の47から悪化を見ています。

一方、米国経済は、ちぐはぐなデータが出ています。具体的には製造業には陰りが見えているけれど消費は強いということです。

2019年8月のISM製造業景況指数は49.1と景気の拡大・縮小の分かれ目である50.0を下回りました。米中貿易戦争の先行きが不透明なため、経営者のマインドが委縮してしまっているのです。

これとは対照的にアメリカの消費は堅調です。失業率が歴史的に低い水準であること、賃金が着実に上昇し始めていることなどが消費者のマインドを下支えしています。

消費はGDPの70%を占めるため、重要性と言う面からは消費の方が重要と思います。しかし消費はいわゆる遅行指標であり今後の経済の行方に関しては手がかりを提供してくれないと思います。その面では製造業絡みのデータも無視しえないと思います。

■企業業績

S&P500指数の一株当たり利益(EPS)は2018年の実績が161.45、2019年の予想が165.21、2020年の予想が182.47となっています。2019年は大型減税があった2018年ほどEPSが伸びないけれど、一応前年比プラスを確保出来そうです。

2019年9月現在、業績は「踊り場」にさしかかっており、その関係で勢いが失われているけれど、アナリスト達のコンセンサスでは冬から来年にかけて再び成長が戻ってくると予想しています。

なおS&P500指数は向こう12か月のEPSに基づいて17倍で取引されています。これは過去5年の平均値である16.6倍よりやや割高ですが、我慢できる範囲内と思います。

■注目イベント

まず貿易交渉ですが米中は2019年10月第2週から話し合いを再開します。2020年の大統領選挙を前にトランプ大統領は何らかの成果を上げる必要に駆られています。このため局部的で小さな合意が発表される可能性があります。

具体的には中国が米国から農産物を買い付けるのと引き換えに華為技術に対する制裁の部分的解除が発表される可能性があります。

しかし既に発表された関税に関してはそのまま継続される可能性が高いと思います。2019年10月15日には2500億ドル相当の中国からの輸入品に対し関税率が現行の25%から30%に引き上げられます。2019年12月15日には1600億ドル相当の中国からの輸入品に対し15%の関税が課せられます。

一方、トップ会談の可能性ですが2019年10月31日から2019年11月1日にかけてバンコクで開かれるアセアン・サミットでトランプ=習近平会談が実現する可能性があります。あるいは2019年11月16日・17日にチリのサンチアゴで開催されるアジア太平洋経済協力サミットでトランプ=習近平会談が持たれる可能性もあります。

■注目ETF

S&P500指数は過去最高値にあと一歩のところに迫っています。もし高値を更新した場合は、その水準から新しい買い手が参戦してくるシナリオも考えられます。つまり過去最高値圏では株価の動きが速くなる可能性があるわけです。

もしそのようなシナリオになった場合、プロシェアーズ・ウルトラS&P500(ティッカーシンボル:SSO)プロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(ティッカーシンボル:TQQQ)の二つに妙味があるかも知れません。前者はS&P500の値動きの2倍、後者はナスダック100指数の値動きの3倍の値動きが出せるように設計されています。

さらにDirectionデイリー米国金融株ブル3倍ETF(ティッカーシンボル:FAS)も妙味があるかもしれません。

米中貿易交渉に良い進展があった場合、一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド(ティッカーシンボル:XLY)にも物色が回って来る可能性があります。

その反面、貿易交渉が不調に終わるのであればSPDRゴールド・シェア(ティッカーシンボル:GLD)が人気化するシナリオも考えられます。