8月のマーケット展望

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1か月のターゲットは3050とします。

S&P500指数はこのところの上値抵抗線となっていた2950を明らかに破り、新波動に入っています。少なくとも株価指数の面ではこれまでに参戦した殆どの投資家にとって「利が乗っている」状態であることから戻り待ちの売り圧力は少なく、値が伸びやすい状況と言えます。

S&P500指数は向こう12か月の一株当たり利益(EPS)に基づいて株価収益率(PER)で17.1倍で取引されています。これは過去5年の平均である16.5倍に比べると割高です。

しかし世界的な金融緩和トレンドの中にあり市中金利は魅力的な利回りを提供していないため、行き場を失った資金が株式市場へ流れ込む構図となっています。こういう場合、バリュエーションは往々にしてオーバー・シュートすることが多いです。

したがって値ごろ感に対する勝手な思い込みで相場を降りてしまうのではなく、ここは引っ張れるだけ引っ張るべき局面だと思われます。

■経済の現況

世界の経済には明らかに陰りが見えています。とりわけ米中貿易戦争の渦中にある中国と、その中国が主要な輸出先であるドイツ経済の元気の無さが目立ちます。おまけに今年は欧州大陸に熱波が襲っており、降雨も平年より少ない為、ライン川の水位が低下しています。ドイツの輸出産業は製品出荷をバージに頼っており、水位の低下で航行できなくなる恐れがあります。

これらの二つの国における経済の鈍化は、オーストラリア、韓国、インドネシアなど幅広い国々にも影響を及ぼしており、世界の中央銀行が相次いで利下げに踏み切っています。

いまのところ中国を除く世界各国では信用不安は発生していません。しかし中国では一部の企業のデフォルトが伝えられており、注意深くその動向を見守る必要があります。

米国経済は、やや成長の速度が落ちていますが、低失業率を背景に消費は堅調であり、景気が暗転するような兆候は見えていません。クレジットカードの支払い遅延の増加なども見られていません。つまり世界経済を米国がけん引する構図になっているのです。

■企業業績

2018年のS&P500のEPSは$161.48でした。2019年はコンセンサス予想によると$165.64が予想されています。2020年は$184.06です。

7月末までにS&P500に採用されている大型株の44%が決算発表を終えEPSでは77%の企業が事前のコンセンサス予想を上回りました。過去5年の平均は72%です。

売上高では61%の企業が事前のコンセンサス予想を上回りました。過去5年の平均は60%です。

今回の決算発表シーズンで落胆すべき側面としては、これまでに38社が第3四半期のガイダンスを出しており、そのうち28社はネガティブ、すなわちコンセンサス予想を下回る落胆すべきガイダンスを出したということです。これは比率で言えば74%ということになります。過去5年の平均は70%ですので、普段よりも多くの企業がネガティブ・ガイダンスを出したということです。

また米国よりもその他の国々の景気の方が悪いことを反映し、海外売上比率の高いグローバル企業の方が悪い決算を出す傾向が見られます。

■注目イベント

8月2日に非農業部門雇用者数が発表されます。コンセンサス予想は16万人です。6月は22.4万人と強い数字でした。失業率は3.7%が予想されています。

8月第1週には中国の貿易・物価統計が発表されると思いますが中国経済のスローダウンが現在の世界経済の中で最大のリスクとなっていることからこれらからは目が離せません。

■注目ETF

世界の中央銀行が相次いで利下げを発表しています。このような環境ではゴールドが注目されやすいです。その理由はゴールドには利子がつかないので金利上昇局面では他の原資産に対してゴールドは不利だと投資家から判断されやすいことによります。逆に金利低下局面ではゴールドに対する競争がだんだん和らぐと考えられ、他の原資産からゴールドに資金が流入することが期待されるのです。SPDRゴールドシェア(ティッカーシンボル:GLD)は金地金の価格動向を反映するようにデザインされたETFです。

同じく世界的な金融緩和の状況で見直されやすい原資産は新興国株式だと思います。一般にアメリカやヨーロッパの機関投資家は自国の金利が上昇している局面ではおカネを自国へ戻します。なぜなら金利面で自国の原資産の方が有利なことが多いからです。逆に現在のように利下げ局面では国内での運用先に困り、より有利な投資先を求めておカネを海外に振り向ける場合が多いです。その際、新興国へも物色の矛先が向きます。バンガードFTSEエマージングマーケッツETF(ティッカーシンボル:VWO)は新興国の株式市場をまるごと買うETFです。

冒頭で紹介した通り、現在、米国の株式市場は絶好調です。したがって素直にそのトレンドに乗るのであればSPDR S&P500 ETF(ティッカーシンボル:SPY)が手ごろだと思います。

米国の消費がしっかりしているという説明を上でしましたが、一般消費財セレクトセクターSPDRファンド(ティッカーシンボル:XLY)は消費セクターに投資するETFです。

もうひとつ、生活必需品セレクトセクターSPDRファンド(ティッカーシンボル:XLP)というのもあります。こちらはプロクター&ギャンブルやコカコーラなど今好調な銘柄を多く組み込んでいます。