8月のマーケット展望

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう一ヶ月のターゲットはこれまでの2800を改め、2870にします。つまり今年1月につけた高値に挑戦する展開を想定しています。年初来のパフォーマンスを見るとダウ工業株価平均指数が+3.0%S&P500指数が+5.4%、ナスダック総合指数が+12.1%となっており、ナスダックのパフォーマンスが際立っています。

しかし722日の週は決算発表に絡めてフェイスブックFB)、ツイッターTWTR)、インテルINTC)などの株が相次いで急落し、やや変調を感じさせます。これらの銘柄に共通する悪材料のようなテーマは浮かび上がっておらず、あくまでも個々の企業の事情を反映した動きであると解釈すべきでしょう。

 2四半期決算ではFAANG(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、アルファベット)のうち、これまでにアルファベット以外は全て「どこかにケチのつく」決算でした。なおこれを書いている時点ではアップルAAPL)だけが未だ決算を発表していません。『7月のマーケット展望』の中で「ことしはFAANGさえ持っておけば楽勝で株価指数に勝てた」と指摘したわけですが、そのような戦法は今後むずかしくなることを暗示しているように思います。

 悪い決算(=一株当たり利益、売上高、来期以降の会社側の見通しのうち、どれかひとつでもコンセンサス予想を下回るような決算)を出した銘柄に関しては潔く処分することをお勧めします。
 ただ後で述べるようにFAANG以外に視野を広げれば、良い決算を出している企業も引き続きたくさんあります。それらの企業は継続保有するスタンスで良いと思います。

 

■経済の現況

米国経済はすこぶる好調です。727日に発表された第2四半期のGDP(速報値)は前期比+4.1%でした。

 

 

一方、米国10年債利回りは2.955%で推移しており、引き続き心理的に重要な3%以下で取引されています。このことは株式市場にとってフレンドリーな金利環境が続いていることを示唆しています。

 

■企業業績の現況

727日までにS&P500に採用されている企業のほぼ半分が2018年第2四半期の決算の発表を終えました。一株当たり利益でコンセンサス予想を上回った企業は83%、売上高では77%でした。また今年、ならびに来年のS&P500のコンセンサス予想も引き続きじりじり上昇を続けています。

 

 

実際、『7月のマーケット展望』を読み直してみると、上のチャート中、2018年のS&P500利益は160.942019年は176.92でした。つまり今回、どちらもさらに伸びたわけです。そのことを反映してS&P500の四半期EPSの前年同期比成長率も上昇しています。

 

ちなみに『7月のマーケット展望』では2018年第2四半期の成長率は+20.0%、第3四半期は+22.3%、第4四半期は+20.9%でした。

 四半期EPS成長率が前年比で+20%を超えるというのは、たいへん珍しいことです。しかもそれが4期に渡って持続するということは数十年に一度、あるかないかの偉業と言えるでしょう。2018年の企業収益が、上のチャート通り素晴らしいものになるかどうかは、まだ半年残っているので現状では断定できませんが、今年が業績面で凄い年になる可能性についてはしっかりわきまえておく必要を感じます。

 言い換えれば、市場参加者はダウンサイドのリスクを心配している人が多いですが、マーケットが「上振れ」するリスクも同様にあるということです。 

■注目イベント

8月は市場参加者の多くが夏休みを取る時期であり、経済ニュースもやや閑散とするかもしれません。しかし連邦準備制度理事会(FRB)はこの時期に新しい方針を打ち出すことが多いことで知られています。

とりわけ823日から25日にかけてワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀の経済シンポジウムはFRBが新しい考えを市場に対して伝達する重要な機会となっています。

FRBの総資産は現在4.3兆ドルで、当初2020年頃までにこれを3兆ドルくらいまで「自然減」させる計画でした。しかしこの自然減を予定より早く切り上げ、以前FRBがやっていたようにFRBの総資産を一定額で保つ方が良いのではないか? という議論が現在FRB内で起こっています。

 

 

その理由は、そのほうが次に不況が来た際に、より機動的に量的緩和を再開できるからです。つまり「FRBはおもに短期金利の調整を通じて調整を行う」というドグマにこだわる必要はないというわけです。

商業銀行が融資を行う際、FRBはその融資額の一定のパーセントを「準備金」としてFRBに預けることを義務付けてきました。リーマンショック後、FRBは多額の準備を金融機関に要求する代り、準備金に対して金利を商業銀行に支払うことを実行しました。銀行同士が短期の資金を融通し合う際、「金利をどうする?」ということは、次第にこのFRBが準備金に対して支払う金利に準拠するようになっています。すると準備金金利が調整の新しいツールとして使える可能性が出てきているのです。

今回のジャクソンホールのシンポジウムでは、そのような事に関する議論も交わされるのではないかと予想します。

■注目ETF

今年の相場の中心になってきたテクノロジー株は7月末に調整しました。そこでテクノロジー・セレクト・セクターSPDRXLK)、パワーシェアーズQQQ信託シリーズ1QQQ)、そしてナスダック100指数の3倍の値動きをするように設計されているプロシェアーズ・ウルトラプロQQQTQQQ)などが今後どういう動きをするかが注目されます。

これまでの第2四半期決算発表で予想外にポジティブ・サプライズが散見された公益事業にも注目したいです。公益事業セレクト・セクターSPDRXLU)が関連銘柄になります。

また好景気で消費セクターにも投資家は注目しています。一般消費財セレクト・セクターSPDRXLY)が関連銘柄になります。

■まとめ

米国株は一部ネット株の決算の波乱にもかかわらず基本堅調に推移しています。決算も均してみれば引き続き好調です。今年、来年のS&P500のコンセンサスEPS予想はまだじりじり伸びています。長期金利はいまだに低い水準にあり株式にとって支援的です。これらのことから米国株式市場を取り巻く環境が大きく変化したと言う風には考えていません。マーケットは下振れ、上振れ両方のリスクを孕んでいるように思います。これまでの決算発表で意外に強さを見せた公益、一般消費財などのセクターにも注目したいと思います。