7月のマーケット展望

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう一ヶ月のターゲットはこれまで通り2800を予想します。

今年はナスダック総合指数が年初来+9%と好調なのに対しS&P500指数は+2%と冴えません。いわゆるFAANG(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、アルファベット)を買っておけば楽勝で株価指数に勝つことができました。

また大型株と小型株を比べると小型株の好パフォーマンスが印象に残りました。

つまり投資方針さえ間違えなければ、アウトパフォームしやすいマーケットだったのです。実際、今年はアクティブ・ファンドマネージャーがインデックス運用に大きく勝っています。

今月から2018年も下半期に入ったわけですが、先週は1年の折り返し地点に来たということで「大きく勝った銘柄やセクターを売り、割安なものへシフトする」というローテーションが見られました。この傾向が今後も持続するかどうかは大いに疑問です。もしここから米国経済が減速するような兆しが次々に現れればディフェンシブ株へのシフトが起こると思われますし、好景気が続くようならもう一度今年前半の相場展開がぶり返す可能性もあるでしょう。

■経済の現況

そこで足下の経済なのですが、米国経済はすこぶる好調と言えます。613日の連邦公開市場委員会(FOMC)に参加したメンバーたちのコンセンサス予想では今年の米国経済は+2.8%で成長すると見られています。

一方、米国10年債利回りは2.84%付近で推移しており、これは株式に対して支援的な水準と言えます。

景気が強いにもかかわらず長期金利が余り上昇してない理由はインフレに対する投資家の予想が低い水準で安定しているためです。

一方、海外に目を転じると欧州経済は長期拡大局面の「中だるみ」的な様相を呈しています。欧州経済はアメリカよりかなり遅れて拡大局面に入ったこと、またアメリカのような金融引締めは欧州中央銀行は未だ初めてないこと、などから考えて、この「中だるみ」は一時的なものだと思われます。

新興国はドル高で少し「しんどい」局面を迎えています。トルコ、アルゼンチン、メキシコなどは現地通貨が売り圧力に晒されています。これは米国の景気の良さが突出しているので世界の投資資金がアメリカへと還流していることから起こっている現象で、その意味ではドットコム・ブームたけなわの1998年に起きた「アジア通貨危機」、「ロシア・ルーブル危機」当時を彷彿とさせるものがあります。

先月中国人民銀行が人民元に売り介入し、わざと人民元安に誘導したことも注目に値すると思います。中国は現在、不健全融資の問題に取り組んでおり、その関係で景気にやや陰りが見えています。

このような一連の動きで米国外の世界の景気がスローダウンするのであれば、それはいずれ米国経済にも影を落とす可能性があります。ただ現在のメイン・シナリオはこれらのことはいずれも一過性のことであり、世界経済は持ちこたえると思います。

 

■企業業績の現況

米国の企業業績はピカピカです。下はS&P500指数の一株当たり利益です。

7月第2週から2018年第2四半期の決算発表シーズンが始まりますが、現在の力強いモメンタムが維持できるかどうかに注目したいと思います。具体的には第2四半期のEPSが前年比で+20.0%以上の成長を維持できるかが決め手になります。

 

■注目イベント

7月第2週から第2四半期の決算発表シーズンが始まります。折からの原油高で石油会社の決算は良くなると思われます。その反面、マーケットのボラティリティーは第1四半期に比べるとやや下がったので大きなトレーディング・オペレーションを抱えているメガバンクの業績は足踏みすることが懸念されます。

 

テクノロジー・セクターに関しては第1四半期も極めて安定した決算が出ていたので引き続き好決算が予想されます。強いて言えば最近の米中貿易戦争のレトリックがハイテク企業の経営者のマインドや設備投資に与える影響については注意を払う必要があるでしょう。

 

■注目ETF

いまは原油の値動きが良いのでWTI原油連動ETF(ティカーシンボル:USOがトレーディングの対象として好適だと思います。またエネルギー・セレクト・セクターSPDE(ティッカーシンボル:XLEもトレードし甲斐のある銘柄だと思います。

 

今年の相場の柱となってきたテクノロジー・セクターではテクノロジー・セレクト・セクターSPDE(ティッカーシンボル:XLK、あるいはパワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(ティッカーシンボル:QQQ、そしてナスダック100指数の3倍の値動きをするように設計されているプロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(ティカーシンボル:TQQQなどが引続き注目されます。

 

■まとめ

S&P500指数の向こう一ヶ月のターゲットはこれまで通り2800を予想します。いまは一時的にディフェンシブ株へのシフトが起きていますが、好景気が続く限りハイテクのアウトパフォーマンスが続くと思われます。足下の米国経済ならびに企業業績はすこぶる好調です。原油高の折、エネルギー関連も注目できると思います。