アメリカのマーケット展望【2023年9月度】

短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4250とします。

米国経済はおおむね堅調です。懸念された物価高もかなり解消しました。

(出典:セントルイスFRB)

つまり全般的に及第点と言えます。

しかし過去一か月で市場参加者の懸念点は中国経済へとシフトしました。その中国経済の状況は芳しくありません。

近年の世界経済で、前年に比べて経済がどれだけ拡大したか? すなわちおおまかな限界的経済成長(incremental growth)の25%は中国が、15%はインドが叩き出してきました。

その中国の経済成長がいま減速しているのです。

このことは世界が低成長に向かうことを示唆しています。10年単位で均してみると先進国+新興国全て合算した世界経済はリーマンショック後年々+4.8%前後で成長してきたのですが、今後は成長が+3.2%前後に鈍化すると思われます。

一方、世界の政府の負債を見ると新型コロナで景気テコ入れを各国政府が実施した関係で負債総額は増えています。政府の財政は大きく赤字に傾いたのですが、いまそれをゆっくり立て直している最中です。これらのことは今後政府の資金調達コスト、いいなおせば金利は高止まりする可能性があることを示唆しています。

問題は上に述べたような世界経済の構造変化がどのくらい急激に起こるかです。

すでに中国の不動産開発業者の破綻、信託ファンドの利払い停止などのニュースが聞こえてきているので、ひょっとすると秩序だった減速ではなく、ハチャメチャになる展開も覚悟しておかねばならないかもしれません。

9月は例年相場の地合いが変化しやすい月です。大体、下げ相場であることが多いです。

米国経済の現況

米国の実質GDPは下のチャートに見られるように安定的に推移しています。

(出典:セントルイスFRB)

失業率は歴史的に低い水準で推移しています。言い換えれば好景気が持続しているわけです。

(出典:セントルイスFRB)

鉱工業生産高は景気が失速しそうになると下がってくるのが常ですけれど、いまのところそのような危なっかしい兆候は見えません。

(出典:セントルイスFRB)

企業業績

第2四半期のS&P500のEPSは前年同期比で-5.6%でした。

(出典:ファクトセット)

いまが前年比の成長率がボトムであり、来期以降は改善すると見られています。ただし足下のドル高がいっそう進行すればそれは米国の企業業績にとってマイナスだと思います。

注目ETF

中国経済が深刻な変調をきたしていることからiシェアーズ中国大型株ETF(FXI)をショートする手があると思います。ドイツなど中国に輸出している国も既に減速を感じ始めています。ウィズダムツリー欧州ヘッジドエクイティーファンド(HEDJ)をショートする機会があるかも知れません。景気の見通しが暗転する初期には小型株が苦戦することが知られているのでiシェアーズラッセル2000ETF(IWM)もショート出来ると思います。大型株のETFであるSPDR S&P 500 ETF(SPY)もショートだと思います。

逆にロングすべきはS&P500恐怖指数連動ETN(VXX)です。但しこれはマーケットがギクシャクしはじめてからロングすべきで、マーケットが平静を取り戻したらすぐに手仕舞いしてください。