アメリカのマーケット展望【2023年7月度】

短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4200とします。

6月下旬、市場参加者は今後の政策金利の予想に大幅な修正を加えました。具体的には「年内に利下げがある」というこれまで主流になっていた考え方は姿を消し「来年まで利下げは無い」という新しいコンセンサスが醸成されました。

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利であるフェデラルファンズ・レート(=略してFFレート)を最終的にどの水準まで持ってゆく? ということをターミナルレートと呼びます。現在のターミナルレートのFRBメンバーのコンセンサスは6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で示された経済予想サマリー(SEP)によると5.6%となっています。つまりあと2回利上げがあるということです。これは株式にはアゲンストの風が吹くことを意味します。

2022年2月24日に勃発したウクライナ戦争で開戦後最初の3カ月はエネルギー価格が急騰しました。この時のインフレが酷かった分、今年上半期の前年比較は容易でした。しかし今後は前年比較が厳しくなります。足元の米国経済が強いこともあり、今後、インフレは高止まりし、金利面で落胆させられるリスクは大きいと言えます。

したがって7月は守りに徹するトレード戦略が良いと思います。

米国経済の現況

米国経済はすこぶる好調です。6月29日に発表された2023年第1四半期GDP前期比年率確定値は2.0%と強い数字でした。ちなみに暫定値は1.3%でした。

経済成長の中心は消費であり、とりわけ旅行などのサービス消費が好調です。サービス業は雇用者数が大きく、それが好調なので賃金インフレ圧力は引き続き根強いです。

つまりインフレの原因は去年前半のエネルギー価格の高騰から今は賃金へとシフトしたということです。賃金インフレは一度始まると癖になると言われます。つまりインフレ退治が難しいということです。

このことはFRBをしてタカ派的な金利政策を継続せざるを得なくなることを意味します。株式に強気になれない理由がここにあります。

3月半ばにカリフォルニアを中心としてテクノロジー・セクターと取引の多い地銀が次々に経営危機に陥る場面がありました。しかしその後地銀不安は収束しています。あのとき長期金利は先安観が台頭したのですが今は不安が収まった分、金利には上昇圧力が働きやすいです。

今後問題になりそうな点としてはオフィスビルを中心とする商業用不動産の貸付が焦げ付くリスクが挙げられます。コロナ以降、リモートワークが定着し、それがオフィス需要に暗い影を落としているからです。今後商業用不動産でデフォルトが頻発した場合、おもにそのセクターに貸し込んでいるのは地銀なので再び地銀経営に不安が走るリスクは無いとは言えません。

これとは対照的に一戸建て住宅に関しては新築住宅が盛り返しています。その理由は米国での住宅販売の大半を占める中古住宅の売買成立が低迷していることが挙げられます。過去1年半FRBがぐいぐい金利を引き上げた関係で、今住宅ローンを借り換えすると金利負担がとても重くなります。そこで1~2年前に30年固定住宅ローンを組んでしまったマイホームのオーナーは、少々いま住んでいる処に不満があっても、有利なレートで借金している関係で、わざわざ持ち家を売りに出し、不利なレートで借り直すことはどうしても避けたいと考えています。それが中古住宅の売り物件が払底する理由となっています。新築住宅がにわかに脚光を浴びているのはそのような理由によります。

住宅建設は経済波及効果が大きいので新築住宅販売が上向くことは景気が強くなる可能性が高まったことを示唆しています。(リセッションが近い!)という市場関係者の思惑とは逆の動きだと言えると思います。

企業業績

7月半ばから2023年第2四半期の決算発表シーズンが始まります。四半期決算の前年同期比の変化率的には第1四半期がボトムで、第2四半期から徐々に改善に向かうという予想がある一方でドル高の企業業績へのマイナスの影響を心配する声もあります。全体的には米国の企業業績は株価を牽引するだけの勢いに乏しく、愚図愚図していると形容できます。

注目ETF

7月は軟調な相場展開を予想します。したがってパワーシェアーズQQQ信託シリーズ(QQQ)、ARKイノベーションETF(ARKK)、テクノロジー・セレクト・セクターSPDEファンド(XLK)をショートしたいと考えます。一方、地銀危機が去ったので金融セレクト・セクターSPDRファンド(XLF)はロングで良いと思います。さらにWTI原油連動ETF(USO)もロングしたいです。