アメリカのマーケット展望【2021年9月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4200とします。

(出典:ヤフー・ファイナンス)

パウエル議長は8月27日のジャクソンホール・シンポジウムでのスピーチで年内にテーパーに着手することを明言しました。普通、連邦準備制度理事会(FRB)は12月から金融引き締めをすることは避けるので11月からテーパーが始まると予想するのが順当だと思います。

但し雇用統計が強ければテーパーを早目に開始することもありうると思います。

テーパーに関しては「既に株価に織り込まれている」とする市場参加者が多いです。しかしここまで株価が一本調子で上げてきたということは、まだ市場は金融引き締めに十分注意を払っていないとも解釈できるわけで「波乱は無い」と決め付けるには根拠に乏しいです。

今後、米国政府の一連の財政支援が期限切れで終了すること、企業業績は第2四半期の目の覚めるような急成長の後、前年比較がだんだん厳しくなる関係で成長率の大幅鈍化は避けられないこと、すでに韓国、トルコ、ロシア、ブラジルなど多くの国でインフレ抑制のための利上げが始まっており、先進国との金利政策面での足並みの乱れが目立ってきていることなどを考え合わせると状況は険しいと言えるでしょう。

今月は-6%から-7%くらいの指数の下落もあると思います。

■米国経済の現況

米国経済は好調です。下は米国と中国の四半期GDPの前年比成長率を示したチャートです。

(出典:商務省、国家統計局、ムーディーズ)

これを見ると3期連続で米国のGDP成長率の方が中国のそれよりも高くなることがわかります。

これはどうしてかといえば中国では新型コロナデルタ変異株の蔓延に備えるため厳格な人の動きの管理を行っていることに加え、不動産価格高騰の抑制政策、大気汚染の抑制のため石炭の消費を抑えているなど、いろいろな政策が重なっていることによります。

その関係で米国だけが独走態勢に入っているような印象を与えているのですが、それは別の見方をすれば世界の経済の間で凸凹な景気回復になりつつあることを示唆しています。

実際、香港・上海・東京などの株式市場がダラダラ安している一方で米国だけが高い状況となっています。このような不均衡は永遠には続きません。どこかで大きな訂正が入るリスクもあると思います。

■企業業績

米国の企業業績はすこぶる好調です。第2四半期決算発表シーズンではS&P500採用企業の8割以上が良い決算を出しました。EPS成長率も前年同期比+80%以上を記録しています。

しかし今後、前年比較は徐々に厳しくなってゆくと思いますので今のような好調がずっと続くと決めてかかることはできません。

■注目ETF

トライオートETFの特徴は「売りから入ることもできる」点にあります。9月は波乱の相場が予想されるため、今月は売りから入るトレード戦略を試してみるのに最適だと思います。SPDR S&P500 ETF(コード:SPY)は米国を代表する大型株の株価指数です。これを売り立てすることでマーケットが下がった時、利益を手にすることが出来ます。

なおプロシェアーズ・ウルトラS&P500(コード:SSO)はS&P500指数の2倍の動きをするように設計されています。ただし厳密にはキッチリと2倍の動きをしない場合もあるので注意が必要だと思います。また自分のシナリオと違う方向へマーケットが動いた場合は2倍の動きをするように設計されているETFはその分、危険ですので見込み違いしたときは、直ぐに損切りすることも検討してください。

同様にパワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(コード:QQQ)はナスダック100指数に連動するETFです。マーケットが下落する局面ではこのETFを売りから入ることで下げ相場を取ることが出来るでしょう。

プロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(コード:TQQQ)はナスダック100指数の3倍の動きをするように設計されています。しかし往々にして設計通り3倍の動きにならないことが多いです。レバレッジETFはハイリスクのトレード対象になるので注意を払う必要があります。イメージ通りのトレードが出来ていないと思ったら、反対売買して手仕舞いすることや、しばらく休み、頭を冷やすことも検討してください。

テクノロジー・セレクト・セクターSPDR(コード:XLK)は米国の大手IT企業の株価に連動するように設計されたETFです。マーケット急落局面では、このETFも「売りから入る」トレード戦略が援用可能かも知れません。