アメリカのマーケット展望【2021年7月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4400とします。

(出典:ヤフー・ファイナンス)


7月は経験則的に相場が強い月として知られています。

(出典:ストックトレーダーズ・アルマナック)


米国経済は好調です。企業収益はスルスル伸びています。長期金利は安定しています。これらのことは少なくともごく目先的には株式市場に対して弱気になる理由は少ないことを示唆しています。

しかし第2四半期の新規株式公開(IPO)は113件、調達金額は399億ドルと空前の水準でした。これは株式の供給が増えていることを意味し、需給関係を崩しかねません。

いまのところそうやって続々と上場されるIPOの大半は上昇しています。その意味で投資家の資金の回転は効いています。もし一部のディールがズッコケて投機資金のリサイクルが出来なくなれば相場の暗転もありうると思います。

(ちぇっ!こんなことならもっと大胆に相場を張っておくべきだった。今度こそ……ホームランを狙うぞ!)

投資家のキモチが、こんな風に大きくなった時こそが、もっともリスキーな瞬間です。いまは新しいポジションを取る時は普段より少しずつサイズを小さくし、慢心を戒めるべき局面でしょう。

■米国経済の現況

6月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で連邦準備制度(FRB)メンバー18名に対して行われたアンケートの結果、今年のGDP成長率のコンセンサス予想は+7%という結果になりました。もしこれが実現するなら、1980年代前半以来の高いGDP成長率になります。つまり米国経済はすこぶる好調なのです。

足下のインフレは5%に突っ掛ける展開となっており、これはまずいです。FRBは金利政策の優先事項をこれまでの雇用からインフレ抑制へと大転換し、8月にワイオミング州ジャクソンホールで開催される経済シンポジウムあたりから債券買い入れプログラムの縮小、つまりテーパリングを開始すると見られています。このシナリオは明快に市場関係者に対して伝えられているため(もう織り込み済みでは?)と考えている投資家が多いです。しかし実際にテーパリングが始まると、そう一筋縄では行かないと思います。金融引き締めは喩えて言えば日光のイロハ坂をエンジン・ブレーキを使いながらソロリソロリと降りてゆくようなもの。気を緩めることはできません。

■企業業績

7月半ばから2021年第2四半期の決算発表シーズンが始まります。今期のS&P500四半期一株当たり利益(EPS)は前年同期比+58%が見込まれています。ちなみに第1四半期は前年同期比+47%でした。これらの数字は、いずれも「空前の」という表現がふさわしい、とても立派な成長率です。いまのところ落胆が出るような兆候は殆ど見られていません。それだけに逆にサプライズで業績が悪かった場合、市場が受けるダメージも大きいはずです。

メインシナリオとしては絶好調を想定しつつ、不測の事態にも注意を怠らない姿勢で臨みたいと思います。

■注目ETF

冒頭で述べたように今月は経験則的に強気で臨むべき月です。従ってロング(=買いから入るトレード)を基調としたいと思います。ただ一カ月で決着を付けないと8月以降は難しい相場になるので、まんまと1回転取れなかった場合は未練がましくポジションを残さず、月末までに一回払った方が良いと考えます。

パワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(コード:QQQ)はナスダック100指数に連動するETFです。それの3倍の値動きになるように設計されたプロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(コード:TQQQ)は変動率が大きいのでごく短期での勝負にしか向きません。

SPDR S&P500 ETF(コード:SPY)は米国を代表する株価指数であるS&P500に投資するETFです。もっともトレードしやすい銘柄と言えると思います。プロシェアーズ・ウルトラS&P500(コード:SSO)はそれの2倍の変動率になるように設計されているので注意が必要です。これも長期でのBUY & HOLDには向いていません。

テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLK)はアップル、マイクロソフト、フェイスブックなどのハイテク大型株に投資するETFです。これも短期のトレードに向いていると思います。