アメリカのマーケット展望【2020年10月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは3300とします。

現在の米国株式は追加景気支援策の可決が見込み薄なこと、11月3日に総選挙を控えていること、新型コロナワクチンが承認されるかどうかわからないことなど、いろいろな不確実性を孕んでいます。

そのような不透明感を嫌気して10月の第3週くらいまで株式市場は軟調な展開になるかも知れません。しかし10月末までには相場は切り返し、11月3日の選挙前、そして選挙後も、ジョー・バイデン、ドナルド・トランプのどちらが勝つ場合でも相場は一足先に底入れするというのが過去の経験則になっています。

大統領選挙を巡るジンクスでは投票日の3ヵ月前から起算して投票日前日までのS&P500指数がマイナスであった場合、かならず現職大統領が負けています。

今年の場合、8月3日の引け値は3294.61ですので、それがマジックナンバーになります。

大統領選挙戦は接戦であり、現時点ではどちらの候補が勝ってもおかしくないです。同様のことは上院議員選挙に関しても言えます。今回は上院の議席の3分の1が改選されます。上院では共和党が優先なのですが、ここへきてレースは混沌としてきています。

ひょっとすると大統領、下院、上院のすべてが民主党によって支配されるというシナリオも全く無いとは言い切れない状況です。

その場合、株式市場関係者はそのような一方的な勝利を嫌気する傾向があります。これは共和党が勝とうが、民主党が勝とうが、兎に角、力の均衡が崩れるのは良くないという考え方があるのです。

その場合、株式市場は大きく崩れるリスクもあると思います。

10月は「暴落の月」としても知られています。大恐慌のキッカケになった1929年の「暗黒の木曜日」が起きたのも10月ですし、1987年の「ブラックマンデー」も10月の出来事でした。その他、1978年、1979年、1989年、2008年に急落がありました。

その反面、10月はマーケットがボトムを打ち、急反発する月としても知られています。1946年、1957年、1960年、1962年、1966年、1974年、1987年、1990年、1998年、2001年、2002年にそのような場面がありました。

言い直せば、10月は「弱気一辺倒でもいけない」のです。どこかでV字型の反発があることを常に頭に入れながらトレードを進めてゆく必要があります。

■米国経済の現況

先の連邦公開市場委員会ではFRBメンバーが持ち寄った各々の経済予想数字の集計が示されました。経済予想サマリー(SEP)と呼ばれる資料がそれです。そこでの2020年のGDP予想は、これまでの悲観的な予想が大幅に上方修正されました。その一方で、来年以降の反発も小さいものになると修正されました。

つまり新型コロナは米国経済に甚大な影響を与えたには違いないけれど、それは思ったよりは酷くなかったということです。

ある意味、今議会で追加の景気支援法案がなかなか通過しにくくなっている理由は、景気がそれほど酷くないので切迫感が薄れたことが影響していると思います。

■企業業績

企業業績は2020年第2四半期をボトムとして今後上向いてゆくというのがコンセンサス予想になっています。

向こう12ヵ月のS&P500の一株当たり利益(EPS)に基づいた株価収益率(PER)は20.9倍です。これは過去5年の平均の17.2倍より明らかに割高です。

■注目ETF

さて、以上のことをまとめると10月相場は前半急落するリスクが高く、後半に底入れ、急反発する可能性があります。

したがってトライオートETFを活用したトレード戦略を立案する際も、このイメージを想定しながらプランを立てると良いでしょう。

10月前半、相場の落勢が強いならプロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(コード:TQQQ)を売り立てるやり方があると思います。同様に、プロシェアーズ・ウルトラS&P500(コード:SSO)を売り立てる手もあります。Direxionデイリー米国金融株ブル3倍ETF(コード:FAS)を売り立てることもできるでしょう。なおこれらの「ダブル」、「トリプル」型のETFは動きが荒い上に時間が経てば経つほどそれらのETFが依拠している原資産の動きの2倍、3倍という設計通りの動きをしなくなります。これはどうしてそうなるかといえば「ダブル」、「トリプル」の動きを得るために、先物などの期限のある投資対象を利用せざるを得ないため、限月の乗り換えコストがどうしてもレバレッジETFのパフォーマンスを害してしまうという構造的な問題に因ります。

したがってこれらの「ダブル」、「トリプル」ETFは、せいぜいスイング・トレードのような、数日間から二週間どまりのトレードに限定してください。また見込み違いで逆を突かれたら、すぐ手仕舞いしてください。

つぎに10月下旬に相場が底入れするというシナリオが実際に起きた場合の投資戦略ですが、そのときはハイテク株を買う絶好のタイミングであり、来年の1月いっぱいくらいまで相場を引っ張ることができるケースも多いです。パワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(コード:QQQ)なら過度のレバレッジはかかってないので、ロングのポジションを引っ張っても原資産にたいするパフォーマンスの劣後はありません。

おなじ切り口でSPDR S&P500ETF(コード:SPY)も良いと思います。