チャート活用のススメ① ~チャートを読むとは空気を読むのと同じ~

こんにちは!テクニカルアナリストの山口です。

私の最も得意とする「チャート」についてお伝えたいと思います。

その前におさらいですが、「チャート」とは、投資をする際に見る価格推移のグラフのことです。投資においてチャートを利用する人のことをチャーティストとかテクニシャンといいます。

また、チャートを利用した相場分析の方法をチャート分析やテクニカル分析といい、その資格保有者が「テクニカルアナリスト」です。

【チャートは投資家の心理の動き】

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「相場は生き物」といわれます。チャートは生き物である相場の心理状態を表していると思います。

市場には資金量も大小様々で、投資スタンスも超長期投資から超短期売買とバラバラな多種多様な考えを持った投資家たち、例えば、個人投資家や機関投資家、また、実需筋などが参加しており、それらの人たちの「資産が増える喜び」や「資産が減る恐怖」などといった心理状況が反映しながら価格が形成されていくので、「値段の動き=値動き」は「集合心理の変化の軌跡」と言えます。

そして、その「集合心理の変化の軌跡」(=「値動き」)を可視化したものがチャートです。

したがって、私はチャート分析(テクニカル分析)の真髄はマーケットの心理状態を探ることだと思っています。ただ、意外とテクニカル分析をわかりやすく、また、正しく伝えている人が多くありません。

そこで、今回からはテクニカル分析についてもお伝えしていこうと思います。チャート分析は、一度しっかり理解すると株式市場、商品市場、債券市場、為替市場など、もちろんどんな金融市場でも、また、どんな銘柄、商品、通貨ペアでも同じ手法で分析ができると言われています。もちろんETFでも利用可能です。是非、お役立て頂ければと思います。

【ファンダメンタル分析とテクニカル分析】

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ちょっと話は変わります。

例えば、私達は日常生活をしている中で「褒められた」から「喜ぶ」や、「叱られた」から「落ち込む」、たまにその逆で「(物凄く大げさに)褒められた」けど「(わざとらしいし馬鹿にされているようで)落ち込む」や、「叱られた」けど「(心に響いて)感動する」といったことがあると思います。

「褒められる」だから「喜ぶだろう」という予測、これが投資で言うところのファンダメンタル(経済の基礎的要因)分析といい、その相場そのもののスペックや、今、世の中で起きていることや起こるであろうことから、今後の相場動向を予想する方法になります。

・景気が良い(良くなる) だから これから株価が上がるだろう 買い

・景気が悪い(悪くなる) だから これから株価が下がるだろう 売り

ファンダメンタルとは、こんなイメージです。

このファンダメンタル分析に対し、テクニカル分析は、市場心理、特に価格の方向性(トレンド)にフォーカスして市場が「上昇傾向にある」のか「下落傾向にある」のか、また、その市場心理の傾向やその変化を探ろうとするやり方です。

ある人自身のスペックや、「褒められる」「叱られる」といったその人に影響を与える外的な要因(いわゆるファンダメンタル)を観察し、その人が今後どう動くのかを予想することはもちろん重要です。

しかし、それ以上にその人が今までどんなことをしてきて今はどんな心理状態あるのか、例えば、「喜んでいる」のか「悲しんでいる」のかといった心理状況やその変化(テクニカル分析)を観察し、その人が今後どう動くのかを予想することも重要だということです。

テクニカル分析とは「値動き」(=市場心理の把握)に重きを置く相場分析で、巷で流行りの言い方をすれば、『空気を読む』ことだと思います。

・株価は上昇傾向(市場は買いたい心理状態) だから これからも株価は上がるだろう 買い

・株価は下落傾向(市場は売りたい心理状態) だから これからも株価が下がるだろう 売り

更に、

・市場心理に変化の兆しが見られる だから これから株価は反転か、横ばいで推移する可能性がある

テクニカル分析のイメージはこんなです。

【まずは、チャートを見てみよう】

とりあえず、チャートを見ていきましょう。そうするとパターン的なものが色々と見えてきます。最初は見えないかもしれませんが、そのうちに見えてきます。

下のチャートをご覧ください。これは「iシェアーズ 中国大型株 ETF【中国代表株50】(ティッカーシンボル:FXI)の月足チャートになります。なにか、この人の行動パターンや傾向が見えませんか??

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1分ぐらいでいいです。よーく見てください。なんか見えてきますよね?

例えば、次のようなことがわかりませんか?

(1)なんか周期みたいなものがありそう

12月から3月ぐらいに相場が反転しているような気がする

6月から9月くらいに相場が反転しているような気がする

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ご存知の方も多いと思いますが、経済学では、景気にサイクルがあるという考え方(=景気循環理論)があります。

在庫が増えたり減ったりするサイクルは約4年程度(在庫循環=キチンサイクル)、設備投資のサイクルは約10年程度(設備投資循環=ジュグラーサイクル)、建築物の建て替えサイクルは約20年程度(建築循環=グズネッツサイクル)、技術革新や大きな戦争などは約50年程度(コンドラチェフサイクル)と言われています。相場はこういった景気のサイクルの影響を受けて動きますので、相場にも何らかのサイクルがあってもおかしくはありません。

(2)ある一定の価格水準で下げ止まったり、上げ止まったりしてそう

黄色い○で示した価格水準で高値になったり、安値になったりしているような気がする

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実際に取引をしている多くの投資家は、過去につけた高値や安値、キリの良い価格などを意識しながら取引をしています。前にここまで上がったから、前にここまでさがったから、そういった価格を意識して売買します。そのため、こういったことが起こりえると考えられます。

(3)トレンドが続くことが多い

チャートの上昇と下落が数カ月程度続いているように見える

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人間の心理状態はある方向に傾くとそれが継続、増大する傾向にあります。私達の生活でも良くあることです。例えばファッション業界、おもちゃ業界、外食産業、ある商品が注目され始めるとどんどん注目され、人気が出てブームが起こり、それがいつの間にか下火になり、場合によっては消えて行ってしまったりする。

また、人間関係もそうです。ネットワーク理論なんてものもありますが、ある人がいじめられ始めると、今までいじめに参加していなかった周りの人たちもそれに加わるいじめが拡大する傾向があり、ある人が評価され始めると、今まで関心の無かった人たちも評価し始めて、過大評価される。

株価も同様で上昇傾向になると価格が高くなっているにも関わらず人気が出て買いたい人が増えてきてそれが数カ月続く。下落傾向になると今度は価格が安くなっているにも関わらず売りたい人が増えてきてそれが数カ月続く。これが所謂「トレンド」です。

このように、市場のさまざまな心理状況を読み取ろうとするのが、テクニカル分析になります。興味を持っていただけましたでしょうか?
次回以降、もう少し具体的な分析手法についてお伝えしていこうと思います。