どっちが良いの?トライオートETF VS 現物ETF

「米国株ETF」が、日本でも少しずつ浸透してきました。
日本の株式市場を代表する株価指数である日経平均株価は、1990年1月につけた高値「39,260円」を、その後30年間で一度も超えることができていない反面、米国を代表する株価指数であるS&P500指数は同期間で約9倍に成長しています。
日本の投資家も、経済成長の期待値が日本よりも高い、米国の株式を買う動きにシフトしているのでしょう。

ただ、言葉の壁や情報量の少なさから、米国の個別株式の銘柄分析を日本人が行うのは、未だにハードルが高いのは事実です。
そんな中、人気を集めているのが米国株ETFです。
米国株ETFには「NYダウ」「S&P500指数」「NASDAQ」などといった米国を代表する株価指数に連動する成果を目指すETFや、米国企業の「テクノロジーセクター」「ヘルスケアセクター」などといった、業種別株式に投資をする「米国株式セクター投資」も可能とするETFも存在します。

インヴァスト証券のトライオートETFでも、それらの米国株ETFを、証拠金取引を用いた自動売買で取引することができます。

ただ、投資に詳しい方ほど、ここで一つの疑問が生じることでしょう。

「米国株ETFが素晴らしいのはわかっている。では、米国株ETFをあえてトライオートETFの自動売買で取引する理由って、なんだろう?」

今回の記事では、トライオートETFの自動売買で米国株ETFを取引する理由を、現物取引との対比で解説します。

1-どっちが儲かったの?

図:損益シミュレーション

こちらは、トライオートETFで人気の自動売買、「ナスダック100トリプル_ヘッジャー」を2018年1月2日から、2020年2月28日までの間に運用した場合の損益シミュレーションです。※
推奨証拠金の108,252円に対し、その期間の実現損益と2020年2月28日時点での評価損益の合計であるトータルリターンは、57,732円です。
つまり、推奨証拠金に対して53.33%の利益がでていますよ。ということを示したシミュレーションになります。

※2020年2月28日時点。シミュレーションの結果であり、将来の利益を保証するものではありません。

「ナスダック100トリプル_ヘッジャー」は、米国NASDAQに上場している「PROSHARES TRUST ULTRAPRO QQQ」ティッカーコード「TQQQ」というETFを、証拠金取引を用いた自動売買運用を行うプログラムです。

今回は、こちらの「TQQQ」を現物投資して保有し続けた場合と、「ナスダック100トリプルヘッジャー」で自動売買運用した場合とを比較します。 「TQQQ」の現物を、「ナスダック100トリプルヘッジャー」の推奨証拠金である108,252円で購入できる口数分購入した場合の損益シミュレーション を見てみましょう。

図 出所::筆者作成

こちらの図が「ナスダック100トリプルヘッジャー」と「TQQQ」を現物で購入した場合の、2018年1月から2020年2月末までにおける損益シミュレーションです。 2020年2月末時点では以下の通りです。

  • 「ナスダック100トリプルヘッジャー」=57,732円の収益
  • 「TQQQ_現物」=61,741円の収益

「TQQQ_現物」の収益のほうが、微かに上振れる結果となりました。
※シミュレーションの結果であり、将来の利益を保証するものではありません。

このシミュレーションをみると、「TQQQの現物を持っていたほうが儲かったじゃないか!」と考えがちですが、注目すべきは「運用中に発生したリスク」です。
赤枠で囲んだエリアを見ると、「ナスダック100トリプルヘッジャー」は微かな調整はあるものの右肩上がりの収益で推移しました。これは、「ナスダック100トリプルヘッジャー」の特徴である「売りヘッジ」が相場急落局面で上手く効き、買いポジションの含み損の拡大を抑えることができたためです。
その点、「TQQQ_現物」は「売りヘッジ」を行っていないため、損益が一気にマイナスに転じてしまったのがわかります。

「ヘッジャー」プログラムの詳細は、こちらの記事をご覧ください

上記シミュレーションでは、「TQQQ_現物」の収益率が「ナスダック100トリプルヘッジャー」より高くても、「TQQQ現物」は相場急落時により大きなリスクを伴った、とも考えることができます。

2-リスクの比較

投資の世界においてリスクとは「不確実性」の大きさのことを指します。
具体的には、リターンのぶれ幅のことです。
先ほどの「ナスダック100トリプルヘッジャー」と「TQQQ現物」の損益シミュレーションの図に、リスクの概念を追加してみましょう。

図 出所:筆者作成

こちらは、損益シミュレーションに、「ナスダック100トリプルヘッジャー」、「TQQQ現物」それぞれの損益の月次騰落率(ぶれ幅)を追加した図です。
「TQQQ_現物騰落率」は、「ナスダック100トリプルヘッジャー騰落率」と比較して、「大きく上がるし、大きく下がる」ことがわかります。 この図からは、「ナスダック100トリプルヘッジャー」より、「TQQQ_現物」に投資するほうが「損益のぶれ幅が大きい=リスクが大きい」とも考えることができます。

投資家も人間ですので、大きな評価損失を抱えると「損益が±0で良いから逃げ出したい」という気持ちになると思います。特に大きな相場調整局面においては「これが株式バブルの崩壊か」「底値は果てしないのではないか?」といった恐怖心に苛まれます。今後の相場が「一転反発して戻すのか?」または「更に下落し続けるのか?」ということは、誰にもわかりません。故に、相場調整局面で損益が大きく上下することは投資家にとってストレスとなるでしょう。

本記事の下部に今回のシミュレーションで用いた算出方法を明示しています。
ご関心がある方はご覧ください。

3-リスクリターン効率とは?

投資の世界では「リスクとリターンはトレードオフ」とよく言われます。
リスクをとらなければリターンを得ることはできない。ということを示す言葉です。
ただ、同じリターンを得るためにとったリスクの度合いは、時に異なる場合もあるのです。

ここに①と②の架空の金融商品があります。

  1. リスク20%リターン10%
  2. リスク50%リターン10%、

この2つの金融商品は同じリターンにもかかわらず、とったリスクの度合いが異なります。ここからは1の金融商品のほうが「とったリスクに対して効率よくリターンを得ることができた」と考えることができます。
2つの金融商品を比べるときは「どれだけのリスクをとって、どれだけのリターンを得ることができたのか」ということを比較することが大切です。
ただ、リターンが同一の値の金融商品なら比較は簡単ですが、異なるリターンの場合、どのように比較すれば良いのでしょうか。

4-効率よく運用できたのはどっち?

「シャープレシオ」という、2つの金融商品のリスクリターンを比較する方法があります。
投資初心者の方は聞き覚えのない言葉かもしれませんが、ここでは「シャープレシオの数値の大きいほうが、とったリスクに対して効率よくリターンを得た」と考えるようにしてください。
シャープレシオの数式は以下で求められます。

年率換算リターンは集計期間の収益率を年率換算したもの、年率換算リスクは、収益の月次騰落率の標準偏差(ばらつきの度合い)を求め、それを年率換算したものです。
上の数式の意味は「その金融商品に投資することで得られるリターンが、とったリスクに対し、無リスク資産※のリターンをどれほど超過することができたか」ということを示しています。

※一般的に、無リスク資産とは国債の利回りのことを指しますが、シャープレシオにおいては「無担保コールレート」を用いります。ただ、2020年3月現在の無担保コールレートはほぼ0%の水準であることから、今回の計算において無リスク資産の年率リターンは「0%」とすることとします。

それでは、「ナスダック100トリプルヘッジャー」と「TQQQ現物」の、2018年1月~2020年2月におけるシャープレシオを求めてみましょう。

「ナスダック100トリプルヘッジャー」のシャープレシオは「1.0」
「TQQQ現物」のシャープレシオは「0.4」

となりました。シャープレシオは数値が高いほうがリスクリターンの効率が良いと判断する材料となります。
つまり、「ナスダック100トリプル_ヘッジャー」のほうが、リスクリターン効率の良い運用ができたと考えることができます。

一般にシャープレシオは、同じベンチマークの投資信託同士を比較する際に用いられます。トライオートETFの「ナスダック100トリプル_ヘッジャー」も、ベンチマークをTQQQとした「買い、売り両刀のアクティブ投資信託」とも言える運用をするプログラムであることから、今回の比較検証でシャープレシオを用いることとしました。
また、シャープレシオはあくまで過去のリスクリターン効率を示すものです。将来にわたるリスクリターン効率を保証するものではないことはご留意ください。

5-効率よくリターンを追求するために

シャープレシオの検証では、「ナスダック100トリプル_ヘッジャー」はTQQQへの現物投資より、優れたリスクリターンを示しました。
トライオートETFを用いて米国株ETFを取引する理由は、「リスクヘッジも行いながら、効率よくリターンを得ることを目指す」という商品性にあると考えることができます。

ただ、現物ETFには無い、トライオートETF独自のリスクも忘れてはなりません。

6-ヘッジャーは、新しいプログラムが出たら乗り換えを検討

ヘッジャーは、新規売り注文を自動売買注文の中に設定している為、相場下落時にヘッジ機能を果たすことが期待されます。
ただ、新規売り注文のエントリー価格は相場が上昇基調にあっても、それに伴ってトレールされない、つまり付いてきてくれるわけではありません。大きく相場が上昇した後、下落局面が到来しても、売り指値がプログラム稼働当初の低い設定値のままでは、ヘッジ機能を果たすことができません。
その為、ヘッジャーの新プログラムがリリースされた時は以下の手順を踏むことをお勧めします。

① 稼働中の旧ヘッジャーの自動売買を停止する。
② 口座の証拠金維持率に余裕を持ったうえで、新しいヘッジャーを稼働させる。
③ 旧ヘッジャーの注文が決済されれば、新ヘッジャーに移行完了

※もしくは、旧ヘッジャーの売り注文のエントリー価格を、現行の相場水準から適切と思われる価格に手動で調整する。

旧ヘッジャーの稼働を停止しても保有建玉の決済注文は生きている為、決済価格に到達すれば自動で決済されます。
※新たなプログラムを発注することで一時的に証拠金維持率が低下する点にはご注意ください。

7- 余裕を持った証拠金管理

ヘッジャーは売りヘッジが効いているがゆえに、過去のシミュレーションにおけるドローダウン(過去のシミュレーション期間における最大累積利益からの最大下落幅)が小さい傾向にあります。ドローダウンが小さいと、推奨証拠金も少ない金額が算出される為、万が一売りヘッジが効かない状態での相場下落局面では証拠金維持に不安が残ります。その為、推奨証拠金はあくまで目安ととらえ、余裕を持った証拠金管理を行うことを心がけましょう。

8-最後に

リスクリターンの観点を考察することで「一概に収益率だけで金融商品を比較することはできない」ということがわかりました。
これは、弊社の「トライオートETF」だけに留まらず、すべての金融商品にも言えることです。金融商品の特徴をよく理解したうえで、ご自身に合った金融商品に投資することが、最も大切だと考えます。
その中で、皆様にトライオートETFを用いた資産運用をご検討いただければ幸いです。


算出過程

【ナスダック100トリプル_ヘッジャー】
1セットの推奨証拠金=108,252円※(2020年2月28日時点)
収益=スプレッドを加味した月次終値ベースで累計実現損益・評価損益・金利配当等を含む値から推奨証拠金の10,8252円を差し引いたトータルリターン。

【TQQQ_現物】
TQQQの2018年1月2日の始値=46.97ドル
2018年1月2日のUSD/JPYの始値=112.61円
購入資金(推奨証拠金と同額)=108,252円
購入口数=(108,252円/112.61円)/46.97ドル≒20.47口
収益=月次終値ベースの配当込み円建て評価額-108,252円

【月次騰落率】
月初から月末で、どれほど損益が変動したか。
(月末時点の損益-月初時点の損益)/月初時点の損益

【年率換算リターン】
{(検証期間末日時点でのトータルリターン+推奨証拠金)/推奨証拠金}^(12/26)-1

【年率換算リスク】
月次騰落率の標準偏差*√12

【税金】
「ナスダック100トリプルヘッジャー」、「TQQQ現物」ともに、シミュレーションにおいて税金は考慮しておりません。

【手数料】
「ナスダック100トリプルヘッジャー」には自動売買手数料が発生しません。 TQQQ現物を海外株式口座で購入する場合、通常買い付け手数料が発生しますが、今回のシミュレーションでは考慮しておりません。