6月12日に米朝首脳会談
6月12日(火)にシンガポールでアメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正恩朝鮮労働党委員長による初の米朝首脳会談が開催されます。
会談の目的
今回の米朝首脳会談はアメリカと北朝鮮のトップが初めて直接会談すると言う意味で歴史的なイベントです。
しかし会談が達成しようとしている目標は曖昧であり、何を持って「会談は成功した」と判断するかの基準はハッキリしていません。また今回の会談は通常の外交のように長年の周到な準備の上で実現したものではなく、急遽決まりました。その関係でアメリカ側の準備が整っていないことを指摘する識者も居ます。
もちろん会談では核問題が話し合われると予想されますが、たとえば「非核化」が何を指すかという定義では北朝鮮の考えとアメリカの考えは必ずしも一致していません。
北朝鮮は経済制裁を緩めて欲しいという希望を持っていると思われますが、制裁緩和が打ち出される保証はありません。つまりアメリカの北朝鮮に対する「最大限の圧力」路線は変更されない可能性もあるということです。
各国の利害
北朝鮮の非核化ならびに緊張の緩和に関し、当事者として一番大きな利害を持っているのは韓国です。従って12日の米朝首脳会談が不調に終わった場合でも韓国は対話のモメンタムを失わないよう最大限の努力を傾けると思います。
韓国に次いで利害が大きいのは北朝鮮と地続きになっている中国です。従って今回の会談が不調に終わった場合、中国も事態の収拾に動くと思われます。
これと対照的にアメリカは失うものが極めて少ないので柔軟な姿勢で会談に臨むことが出来ます。
マーケットへの影響
今回の米朝首脳会談は「政治イベント」であり「経済イベント」ではありません。なぜなら北朝鮮は国際経済に殆ど組み込まれていないからです。会談が全く不調に終わった場合、センチメント的にリスクオフになることは予想されるものの、それが世界経済に与える影響は軽微だと思われます。
下はデリバティブ取引所CBOEに上場されているVIX指数です。VIX指数は俗に「恐怖指数」と呼ばれ投資家が価格変動に対しどのような期待を抱いているかを反映していると言われます。
現在、VIX指数は極めて低い位置にあり、米朝首脳会談に先立って投資家の不安は余り高くないことを示唆しています。別の言い方をすればマーケットはこの会談をあまり気にしていないということです。
共和党の計算
トランプ政権はこれまでに税制改革法案を成立させましたし貿易交渉でも中国、メキシコ、カナダの各国にプレッシャーをかけています。つまり実績を誇示することは出来るのです。
今年は中間選挙の年であり、共和党はそれに向けて勢いづいていると言えるでしょう。米朝首脳会談に関しても、ただ会って握手しただけで「大きな進歩があった」と米国民は感じるはずです。つまりアメリカは今すぐ具体的な合意に到達することを切望しておらず、現状に満足しているということです。
為替市場への影響
もし米朝首脳会談が極めて不首尾に終わった場合、リスクオフの動きから円は一時的に買われる可能性があると思います。しかしその場合でもリアクションは束の間であり市場参加者の緊張が長期間に渡って維持される可能性は低いです。
むしろメイン・シナリオとしては米朝首脳会談が大きな波乱も、大きな成果も無く平穏に終わることが考えられます。その場合は、最近の流れを引き継ぎ、世界のマネーが好景気に沸く米国に流れ、ドルがじり高を辿ることが予想されます。