日銀がETFを購入することが金融緩和になるのは何故?その仕組みと買い入れ規模

日銀によるETFの買い入れが始まってもうすぐ6年が経とうとしています。当初はあまり注目されていませんでしたが、ここ最近は金融政策の中心に置かれかなりの額が投入されています。なぜ日銀はETFを購入しているのか?どうしてETF購入が金融緩和に繋がるのかを、ETFの仕組みと合わせて分かりやすく説明します。

1.日銀によるETF買い入れの歴史と規模

ETFの買い入れ規模は拡大の一途を辿っています。つい先日開催された7月末の金融政策会合でも、約3兆円の予算が追加されて市場を驚かせたばかり。この買い入れ、スタートは一体いつなのでしょうか?そしてその目的とは?

1-1.始まりはリーマンショック、目的は買い支え

そもそも日銀がETFの買い入れを始めたのは2010年、リーマンショック後のギリシャ危機の頃からです。このころ、日経平均株価は歴史的な安値に突入しており、このままではどこまで下げ進んでしまうか分からない状況でした。そこで日銀は、日本の代表的な指数に連動するETFを買い入れることで株価を買い支えようとしたのです。

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1-2.これまでの買い入れ総額

日銀は、ホームページで買い入れを行った翌日にその詳細を公表しています。(具体的な銘柄は非公開)。これまでの総買い入れ金額は、買い入れを始めた一番最初の頃から合計すると、ETFだけでなんと約9兆円にも上ります。日経平均株価が8,000~9,000円代の頃から購入を始めているので、含み益もかなり出ていると思われます。

1-3.日銀が買い入れる銘柄って?

具体的な銘柄名は公表されていませんが、日銀が購入する銘柄は日経平均株価、TOPIXおよびTOPIX400に連動する銘柄を筆頭に、今年の4月からは「設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業 を支援するための指数連動型上場投資信託受益権買入等に関する特則」に基づき新たに投資対象となる指数を追加しました。

追加された指数は日銀の買い入れに対応するためにわざわざ作られた指数で、設備投資や人材投資を頑張っている企業を応援したい!という目的に照らして相応しい企業が選ばれています。今後も買い支えの対象としたい企業を対象にした新たな指数が誕生していくかもしれません。

2. なぜETFの買い入れが金融緩和になるの?ETFの仕組みと買い入れの罠

ETFが、株の買い支えのための金融政策として位置づけられていること、そしてその対象銘柄についてご紹介してきましたが、そもそもなぜETFを買い入れる事が株価の買い支えになるのか、その仕組みをご紹介します。

2-1.ETFの意味と仕組み

まずは、ETFの意味と仕組みについてご紹介します。

2-1-1.ETFは上場投資信託

ETFはExchange Traded Fundの略で、日本語では上場投資信託、という意味になります。これはその名の通り投資信託が証券取引所に上場した商品で、取引所でいつでも売買ができる投資信託という訳です。従来の投資信託は1日1回売買の申し込みをすることで取引が成立。1日1回限定の取引なので、リーマンショックのような急な相場変動の時にはリスクがありました。

2-1-2.ETFは指数に連動し、現物を保有している

ETFはもともと、日経平均株価やTOPIX、海外であればS&P500やダウといった「指数」に連動するように設計された投資信託です。どうやって指数に連動させているかって?仕組みは単純。指数に組み入れられている銘柄を同じ割合で保有しているのです。こうすれば、わざわざ何かしなくても指数と同じ値動きをしてくれるという訳。

2-1-3.ETFを買えば間接的に現物を買う事ができる

日銀は、元々のルールで市場から直接株を買う事を禁止されています。例え相場が急激に下がってもダイレクトにトヨタやユニクロの株を購入することは出来ないのです。しかし、直接購入に当たらないETFであれば購入が可能。これにより、日銀がETFを購入→ETFのプロバイダ(設定会社)が現物の株を購入→相場押し上げ、というサイクルが成立するという訳です。

2-2.日銀が大株主に!?買いすぎ注意のETF

間接的に現物の株を大量購入しているという事は間接的ではあるものの、買い入れを続けた場合日銀がそれらの指数に組み入れられている上位銘柄の大株主になってしまう可能性があります。日経平均やTOPIXに組み込まれている割合の高い銘柄(トヨタ、ソフトバンク、NTT、ユニクロ、KDDIなど)は、既にかなりの割合の株を日銀が間接的に保有していることになり、間接的であれ国有企業になるのでは?と倫理にも問題視がされています。

2-3.買いと売りは表裏一体、いつか売る日が来たら・・・?

買い入れを続けることで大株主になってしまうリスクがある半面、買い入れをやめていつか「売り」に転じてしまう日がきてしまったらどうなるでしょう。ETFを売る事は間接的に現物の株を売る事になってしまうため、すなわち9兆円分の売りが発生してしまうということ。日銀がついに売りを始めた、というニュースが流れた瞬間株価が大暴落してしまうかもしれませんね。

3.どうなる?日銀ETF買い入れ

間接的に現物株を買い支えることができ、それが企業を応援することにもなる!と日銀は更にETFの購入枠を広げることに積極的です。金額が増えるとその分大株主になってしまう可能性も上がるため、新たな指数を開発する、構成銘柄の少ない日経平均株価連動(225銘柄で構成)ではなく構成銘柄の多いTOPIX(2000銘柄以上で構成)を中心に購入するなどして対応をしています。当分買いは継続しそうですが、買った後一体どうするのか、というところに今後は焦点が当たって行きそうです。

4.まとめ

いかがでしたか?日銀によるETF買い入れ、裏にはこんなカラクリがあったんですね。ETFは小額から購入できる投資信託として一般の投資家からも人気が高まっているところなので、日銀が買い入れを継続しているうちに挑戦しておけば、「買い支え」のご利益にあやかれるかも知れませんよ!