【江守哲監修_コアレンジャー_ユーロ /英ポンド】レポート

2020年後半のリリース以降、ご好評いただいておりました「有名ストラテジスト監修コアレンジャー」ですが、今回2021年末までの相場を想定したロジックとしてバージョンアップされました!

ストラテジストによる解説動画はこちら

こちらのレポートではエモリファンドマネジメント株式会社代表取締役、江守哲氏の予想するユーロ /英ポンド相場の予想レンジをもとに組成した自動売買プログラム「江守哲監修コアレンジャーユーロ/英ポンド」と、相場の先行きについて解説致します。

1.概論

1- 1. 設定値

通貨ペア:EUR/GBP
想定期間:2021年4月~2021年12月末

ストラテジスト想定値
サブレンジ(売り):0.9200-0.8850ポンド
コアレンジ(売り買い):0.8850-0.8300-ポンド
サブレンジ(買い):0.8300-0.7600ポンド

自動売買プログラム設定値

※ストラテジスト想定レンジの±100pipsの範囲にてレンジ幅設定

出所:トライオートFXツール画面よりインヴァスト証券作成

1-2.有名ストラテジスト監修コアレンジャーの選び方

有名ストラテジスト監修コアレンジャーは、これまでのコアレンジャーとは異なり、「ストラテジストによる将来の相場予測に基づくレンジ設定」という新しいアプローチで作成されております。
そのことから、過去の相場におけるシミュレーション結果である、自動売買セレクトの期間収益率やリスクリターン評価の値はあまり参考になりません。
自動売買プログラムを選択する上では、ストラテジストの解説レポートを確認し
①運用通貨ペアがレンジ相場を形成すると思えるか
②ストラテジストの相場予測の考え方が腑に落ちるか
③設定値の中で上手くレンジ相場になりそうか
という点から自動売買プログラムを選出して頂けますと幸いです。

1-3.注意点

ストラテジストによる相場想定は、2021年4月時点のものです。
今後の相場状況等の変化により、想定が変更される可能性がございます。
相場の状況と、解説レポートの内容、及び自動売買ロジックの注文設定をご確認いただき、お客様のご判断のもとで運用をご検討ください。

2.想定レンジ根拠

2-1. 新型コロナの感染拡大によるユーロ安

ユーロポンドの基本的な方向性は下向きと考えている。欧州を取り巻く環境は徐々に改善しているものの、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は大きく、ドイツやフランスなどユーロ圏の主要国では依然としてロックダウンが実施されるなど、経済活動に大きな支障が出ている。ドイツのIFO経済研究所は、新型コロナウイルスの感染状況が再び悪化したことを受けて、21年のGDPの見通しを前年比3.7%増(従来は4.2%増)、22年を3.2%増(同2.5%増)へ見直した。IFOは、世界景気の回復で製造業は持ちこたえたものの、ロックダウンの打撃が大きい小売業やサービス業、悪天候に見舞われた建設業などの活動が低迷したとしている。また、コロナ禍による20-22年の損失は4050億ユーロに達すると見積もった。もっとも、3月の企業の景況感指数は96.6と、前月の92.7を上回った。上昇は2カ月連続で、19年6月以来の高水準となった。向こう6カ月の見通しを示す期待指数も100.4と改善している。ドイツ国内では新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加しているが、IFOのフュースト所長は「独経済は自信をもって春を迎えつつある」と分析している。

ユーロ圏と英国の製造業PMIとユーロポンドの推移

出所:リフィニティブからエモリファンドマネジメント作成

また、3月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は62.5と、1997年6月の調査開始以降で最高となった。ただし、サプライチェーンの混乱や、新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウンの再導入を受けて、拡大ペースが近く鈍化する可能性も指摘されている。欧州ではロックダウンの再導入でサービス業が特に打撃を受けており、製造業が景気回復のけん引役となっている。もっとも、ユーロ圏の製造業は活況を呈しており、特に記録的な拡大を示したドイツが中心だが、改善傾向は他の国全体に広がっているもようである。製造業は内需拡大と輸出ペースの回復で恩恵を受けている。ただし、サプライチェーンの問題を背景に価格は上昇。サプライヤーの納品期間は、調査開始以降で最大の伸びを記録している。

2-2. 新型コロナのワクチン接種に伴った景気回復によるポンド高

一方、英国の20年第4四半期のGDP確報値は前期比1.3%増だった。20年通年では9.8%減少となり、過去300年あまりで最大の落ち込みとなった。ただし、新型コロナウイルスワクチン接種が欧州で最も急速に進んでおり、BOEは今年5%の成長を見込んでいる。しかし、景気回復の鍵を握るのは、家計が貯めこんだお金を消費に回すかどうかにかかっている。第4四半期の貯蓄率は16.1%で、第3四半期の14.3%から上昇。20年は16.3%で、19年の6.8%を大きく上回り過去最高となった。貯蓄率の上昇は、保有株の価値下落で帳消しになる可能性がある。

また、3月の英国の製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は58.9と、約10年ぶりの高水準となった。受注が急増したほか、新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウンの段階的な緩和を見越して人員も増加し、人員の拡大ペースは14年以降で最高だった。英国では新型コロナのワクチン接種が進展しており、今年の景気回復につながるとみられている。さらに、ロックダウンの緩和で4月12日から必要不可欠ではない店舗と屋外での接客が再開されたことも、今後の経済拡大につながる可能性がある。また、企業の楽観度は7年ぶりの高水準となっている。消費財の生産は増加に転じている。輸出はなお低迷しているが、欧州、アジア、米国の需要回復で増加している。投入価格の上昇ペースは50カ月ぶりの高水準で、販売価格の上昇ペースは17年1月以来の高水準となっている。状況は徐々に改善する可能性が高いといえる。

2- 3. ECBとBOEによる金融政策

金融政策面だが、ECBは3月の理事会で、金利の上昇を抑えるため、次の四半期の資産購入をこれまでより「かなり速いペースで実施する」ことを決定した。理事会の議事要旨によると、理事会メンバーは新型コロナウイルス危機対策の「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」について、「市場環境に応じて購入ペースを加速したり、減速したりすることが可能」との方針を確認した。会合では、長期金利の上昇を抑えるため、PEPPを通じた債券購入を4-6月期に大幅に加速する方針を決めている。ECBは昨年12月、PEPPの規模を5000億ユーロ増額して1兆8500億ユーロに拡大。ECBは必要がなければ全額使用せず、一方で良好な金融環境の維持に必要であれば、買い入れ枠を再調整すると繰り返し説明している。また、ユーロ圏景気見通しの不確実性は依然高いが、ワクチン接種の進展やバイデン米政権の経済対策を受けて、昨年12月時点よりも低下していると分析。変異ウイルスの感染拡大などで短期的には下振れリスクが残っているが、中期的なユーロ圏の成長見通しを取り巻くリスクは、よりバランスが取れていると判断した。

ドイツと英国の国債利回りの推移

出所:リフィニティブからエモリファンドマネジメント作成

ECBのラガルド総裁は、ECBの低金利維持の決意を試すかのような域内国債利回りの上昇について、「われわれを好きなだけ試せばよい。われわれには現在、使える特別なツールがある。必要に応じて使っていく」と発言している。またユーロ圏の長期金利は2月後半以降高止まりしていることについて、「われわれには現段階で使える例外的なツールがある」と強調。その上で「必要に応じてそれら手段を講じる用意がある」としており、断固として金利の上昇を抑制するとの強い意志を示している。また、ユーロ高をけん制する姿勢も鮮明にしている。ユーロ圏の期待インフレ率は2年超ぶりの高水準で、インフレ押し上げに苦慮してきたECBにとっては歓迎すべき状況だが、実体経済より速いペースでのインフレ率の上昇には警戒感を示している。

BOEは3月18日の金融政策会合で、政策金利を過去最低の0.1%に据え置くことを決めた。量的緩和などの資産買い取り枠は8950億ポンドで維持している。声明では、CPI上昇率が今春に2%の目標に向かって上昇するという見通しを示す一方、「インフレ期待は引き続きしっかりつなぎ留められている」と強調した。そのうえで、2%目標を持続的に達成する大幅は進展が図られたという明確な証拠がない限り、金融政策を引き締める考えはないという従来方針を繰り返している。

ユーロ圏と英国の消費者物価指数(CPI)の推移

ユーロ圏と英国の消費者物価指数(CPI)の推移

ユーロ圏の3月の消費者物価指数(HICP)速報値は前年同月比1.3%上昇と、上昇率は2月の0.9%から加速している。一方、英国のCPIは2月のデータで0.9%上昇と、1月の1.4%上昇から低下している。これは、ユーロ圏の実質金利が低下する一方、英国の実質金利が上昇することを意味する。つまり、理論的にはユーロ安・ポンド高になりやすいといえる。それぞれの対ドルでの理論値は、ユーロが1.1840ドル、ポンドが1.60ドルである。つまり、現行のユーロは割高、ポンドは割安と判断できる。このようなファンダメンタルズ面や通貨価値の理論値の面から、ユーロポンドには調整余地があると考えられる。

2- 4. ワクチン接種が推進される中での、ユーロポンドの推移

世界の新型コロナウイルスワクチンの接種状況

出所:日本経済新聞

ワクチン接種が速く進んだ英国のポンドにはアドバンテージがある。これからワクチン接種が進み、経済活動の正常化が進展するドイツやフランスのようなユーロ圏には、経済回復の余地がありそうだが、一方でインフレ率の高さと低金利政策を背景に実質金利は低く抑制されるだろう。そうなると、相対的にユーロはポンドに対して強くなりづらいと考えるのがセオリーである。為替相場は往々にしてセオリー通りにならないものの、ユーロポンドについてはまずはセオリーを重視した対応を検討したい。

ユーロポンドの実勢値と理論値の推移

出所:リフィニティブからエモリファンドマネジメント作成

目先のユーロポンド相場は、1ユーロ=0.8450ポンド水準でサポートされており、昨年2月の新型コロナワクチンの感染拡大が進んだ際の安値である0.8280ポンドを割り込まずに反発している。このような点からも、今後はむしろ0.9200ポンドを目指して上昇する可能性がある。しかし、そこは売り場になるだろう。ユーロポンドの理論値である0.7400ポンドを目指す動きがいずれ見られるだろう。ただし、この水準の前後ではサポートされるものと考えている。