アメリカの経済指標の重要度ランキング|その他の指標や注意点も解説

重要な経済指標は為替レートに大きな影響を与えることがあるため、FXをする人は発表される経済指標の発表スケジュールや、為替レートに与える影響を理解する必要があります。この記事では、特に重要と思われる経済指標の概要と、経済指標を確認する際の注意点について解説しています。FX初心者、および為替レートに大きな影響を与える傾向がある経済指標にはどのようなものがあるか知りたい人は、ぜひ最後までお読みください。

アメリカの経済指標を優先して確認すべき理由

アメリカは一国だけで世界のGDPの約4分の1を占める経済大国です。また米国の法定通貨である米ドルは、国際通貨のなかで中心的な地位を持つ「基軸通貨」のため、アメリカで発表される経済指標は、世界の経済動向や金利、為替などに大きな影響を与える傾向があります。

世界中に多くの経済指標があって、どれを見たらよいかわからないという人は、まずアメリカの経済指標を優先して確認すると良いでしょう。

アメリカの経済指標の重要度ランキング

アメリカで発表されるものだけでも多くの経済指標があるため、ここでは特に重要なものを紹介します。各経済指標の重要度は、市場が経済情勢に注目しているのか?雇用や物価に注目しているのか?政策金利に注目しているのか?によって変化します。そのためランキングはあくまでも目安とお考えください。

米国雇用統計

アメリカの雇用について調査した指標で、アメリカ労働省労働局が発表します。米国発表内容次第ではアメリカの中央銀行にあたるFRB(米連邦準備理事会)の意思決定に大きな影響を与えることがあるため、世界中の多くの市場参加者が注目する指標です。

米国雇用統計と一言でいっても、発表される項目は10数項目あります。なかでもとくに重要度が高いのは以下の3つです。

  • 非農業部門雇用者数
    農業部門を除き、民間企業や政府で雇用されている人数とその増減をまとめたもの                                                                                                
  • 平均時給(前年比・前月比)
    農業部門を除いた主要産業の1時間あたりの平均賃金をまとめたもの。前月比、前年比いずれも重要な指標です。インフレ下で前月比、前年比いずれも低下傾向にあれば、インフレが収束に向かっている可能性があります。しかし前年比が低下、前月比で上昇しているような場合、インフレ懸念が再び市場参加者に拡がることがあります。
  • 失業率
    アメリカ国内の16歳以上の働く意思がある失業者を労働人口で割って算出したもの

米国雇用統計についてより詳しく知りたい人はこちらの記事が参考になります。
米国雇用統計はいつ発表される?重要な項目や為替相場との関係性を解説

FOMC

FOMCとは(Federal Open Market Committee)のことで、連邦公開市場委員会を指します。FOMCは主にアメリカの金融政策を決定する会合で、日本でいう日銀金融政策決定会合にあたるものです。FRB議長や、各連邦準備銀行総裁で構成され、6週間ごと、年8回行われます。

FOMCの最終日に公表される声明文は、現在の経済動向や雇用に関する見解や今後の見通し、政策金利に関する内容などが含まれており、他国の景気や金融政策、為替レートに大きな影響を与えます。FOMCは数ある経済指標のなかでも、最も注目度が高い経済イベントといえるでしょう。

またFOMC最終日の3週後に発表されるFOMC議事録(議事要旨)は、どのような経緯で今回の金融政策が決定されたのかといった内容が記録されているため、こちらも注目されています。

消費者物価指数(CPI)

都市部の消費者が購入する衣料・食料品といった約200項目の商品や、サービス価格の変化を調査して指数化した経済指標です。毎月15日前後に米労働省労働統計局が発表します。

FRBの大きな役割は「雇用の最大化」と「物価の安定」であり、消費者物価指数はFRBの金融政策に大きな影響を与える場合があります。

また同時に発表される、コア指数も重視されます。コア指数とは消費者物価指数から価格変動が大きい食品やエネルギー価格を除いたものです。

消費者物価指数(CPI)について詳しく知りたい人はこちらの記事も参考になります。
消費者物価指数(CPI)とは?注目される理由や見方について分かりやすく説明

国内総生産(GDP)

一定期間内にアメリカ国内で生産された財やサービスの付加価値の総額のことです。米商務省経済分析局から四半期ごとに、速報値、改定値、確定値に分けて発表されます。速報値は該当期間の1ヶ月後、改定値は2ヶ月後、確定値は3ヶ月後に発表されます。例えば4~6月のGDPは7月末に確報値、8月末に改定値、9月末に確定値が発表されます。

GDPは消費・投資・輸出・政府支出などから構成され、国内全体の生産活動が把握できることから、注目度が高い経済指標です。またGDPには名目GDPと、物価変動の影響を差し引いた実質GDPがあります。

ISM製造業景気指数

ISMとはInstitute for Supply Managementのことで、300超の製造業に対して新規受注・生産・雇用・入荷・在庫などのアンケートを実施し、その回答結果を指数化したものです。全米供給管理協会が毎月第1営業日に公表しており、月の始めに発表されることから景気の先行指標として注目されます。

同指標は好不調の基準を50としており、50を上回っていれば景気拡大、下回れば景気後退と判断します。

第3営業日に発表されるISM非製造業景気指数と併せて、押さえておきたい経済指標です。

フェデラル・ファンド金利(FF金利)

アメリカの政策金利のことをフェデラル・ファンド金利と呼びます。先に述べた通り、アメリカの政策金利は、他国の景気や金融政策、為替レートに大きな影響を与えるため大変重要です。

アメリカのFRS(連邦準備制度)に加盟している民間銀行は、預金残高のうち一定割合をFRSに預け入れることが義務付けられています。仮に預け入れる資金が不足している場合、加盟銀行同士がお互いに短期資金を融通し合うことになりますが、このときに適用される短期金利がフェデラル・ファンド金利です。

アメリカ以外の確認すべき経済指標

ユーロは市場取引量や外貨準備シェアで米ドルに次ぐ規模を誇る通貨です。EU(欧州連合)に加盟している27ヶ国中、ユーロを導入している20ヶ国にのぼり、この20ヶ国のことを「ユーロ圏」と言います。ユーロは第二の基軸通貨とも言われていることから、世界の中央銀行の政策金利や景気や通貨価格に影響を与える可能性があります。以下、ユーロ圏に関連する重要な経済指標について紹介します。

ユーロ圏の重要な経済指標

ユーロ圏の重要な経済指標は以下の3つです。

  • ユーロ圏失業率
  • 消費者物価指数(HICP)
  • ECB

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ユーロ圏失業率

ユーロ圏の労働力人口に占める失業者の割合を表す経済指標です。欧州委員会統計局が毎月初日、または前月月末に発表しています。一般的に失業率の上昇は景気悪化、下落は景気上昇を示すため、景気や通貨価格、ECB(欧州中央銀行)の金融政策に影響を与える可能性があります。

消費者物価指数(HICP)

Harmonised Consumer Price Indexesの頭文字をとったもので、ユーロ圏の欧州の消費者物価指数を表します。ユーロ加盟国の消費者物価指数を加重平均して算出され、欧州委員会統計局が毎月発表しています。ECBは中長期的に2.0%の物価上昇率を目標としていることから、物価動向に注目しており、発表内容次第によってはECBの金融政策に影響を与える可能性がある重要な経済指標です。

ECB

欧州中央銀行のことで、ユーロ圏の一元的な金融政策を担う中央銀行にあたります。

米ドルに次ぐシェアを持つユーロを導入しているユーロ圏の金融政策も、アメリカやその他の国の景気や金融政策、為替レートなどに大きな影響を与える可能性があるため、世界中の市場参加者が注目しています。

特に6週間に1度開催されるECB理事会はECBの最高意思決定機関であり、政策金利が発表されるため、注目度の高い経済イベントです。

またECB開催日の4週間後に発表される議事録(議事要旨)も、市場参加者は重視しています。

日本の重要な経済指標

日本はGDPで世界3位。法定通貨である円の外国為替市場取引額の通貨別シェアでは3位を誇り、世界の三大通貨の1つという位置付けにあります。そのため日本で発表される経済指標が、世界経済に与える影響は小さくありません。

日本で発表される重要な経済指標は以下の通りです。

  • 金融政策決定会合
  • 日銀短観
  • 消費者物価指数

以下、詳しく解説します。

金融政策決定会合

日本銀行が金融政策の方向性について討議・決定する会合です。主な参加メンバーは総裁、副総裁、6名の審議委員で構成され、金融市場調節方針や金融政策手段、経済・金融情勢に関する基本的見解などについて協議をします。

会合後、直ちに決定内容が公表されますが、そのなかで日本の金融政策に関する重大な発表が行われる可能性があることから、世界中の市場参加者が注目します。

日銀短観

正式名称は「全国企業短期経済観測調査」で、日銀が全国の企業約1万社を抽出し、企業が自社の業績や設備投資額、経済環境の現状や先行きをどう見ているか?などについてアンケート調査を行いまとめたものです。毎年3月、6月、9月、12月に調査が行われ、翌月の始め(12月は中旬)に公表されます。調査から公表までの期間が短いため、速報性が高く、市場での注目が高い経済指標です。

日銀が金融政策を決めるうえでの判断材料になる可能性がある他、海外でも「TANKAN」と呼ばれるほど広く知られています。

消費者物価指数

全国の世帯が日常的に購入する財やサービス価格が、どれくらい変動したかを示す指標で、総務省統計局が毎月19日を含む週の金曜日の午前8時30分に、前月分を公表しています。

物価の安定が日銀の金融政策の目的の1つであるため、消費者物価指数も日銀の金融政策に大きな影響を与える可能性がある重要な経済指標です。

FXで経済指標を確認する際の注意点

本記事で紹介した経済指標は、発表内容次第では大きく為替レートが動く可能性があります。ポジションを持っている場合、証拠金が少ないと急な価格変動で追証を求められることがあるため注意が必要です。

ただし市場参加者が、発表内容を予測して先回りで対策を立てており、重要な経済指標発表後にあまり為替レートが動かないこともあります。このように経済指標発表前に、為替の変動要素がすでに為替レートに反映されている状態を「織り込み済み」といいます。

また発表内容が、市場予想と大きく異なる「サプライズ」が起こるかもしれません。FX初心者は重要な経済指標が発表される直前や直後は、ポジションを持たないように心がけましょう。

まとめ

重要な経済指標は多くの市場参加者が注目しているため、発表直前・直後は為替レートが大きく動く可能性があります。発表内容によっては大きな損失になる可能性があるため、発表される日程をチェックして対策を立てておきましょう。

また重要な経済指標は、すでに市場参加者が織り込み済みであまり為替レートが動かなかったり、発表内容が市場予想をはるかに超えるサプライズが起こったりすることもあります。FX初心者は、重要な経済指標発表の直前・直後にポジションを持たないことをおすすめします。

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