あらかじめ分散投資ができ運用コストも低いことから中長期の資産運用に適した金融商品として人気のETF。そんなETFにもレバレッジをかけて少しアクティブな運用をできる方法があることをご存知でしょうか。ETFで堅実な長期運用ももちろんおすすめですが、それでは少し物足りないという方に、少しリスクをとってレバレッジをかけたETFの運用方法についてどこよりも詳しくご紹介いたします。
1.ETFのレバレッジ投資って何!?
ETFとはExchange Traded Fundの略で上場投資信託と呼ばれ、証券取引所に上場されいつでも売買ができる投資信託のことです。株式や債券などの主要な指数をはじめ金や原油などのコモディティまで日本国内のみならず世界中の多彩な資産に投資することができる優れた金融商品です。そんなETFにも株の信用取引、日経225先物取引などと同様に、レバレッジをかけて投資金の数倍の取引をすることができるのです。その仕組みを詳しくみていきましょう。
1-1. レバレッジって何のこと
そもそもレバレッジって何?と思われる人もいるでしょう。本来、レバレッジとは「テコの原理」のことで、実際の投資金の数倍の額の取引をすることを意味します。レバレッジ2倍という場合、投資金が10万円だとすればその2倍の20万円分の取引ができる、つまり同じ元金10万円に対してリターン、リスクとも2倍になるということです。株の信用取引、日経225先物取引、FX取引等で取り入れられている投資の仕組みです。
1-2.レバレッジ型ETFとは
では、レバレッジ型ETFとはどんなものなのでしょうか。実は、現在日本のETFで最も活発に取引されているのが「日経平均レバレッジ・インデックス」、“日経レバ”などの略称で呼ばれますが、日経平均が5%上昇したら10%上昇し、反対に日経平均が5%下がったら10%下がるように設計されたインデックスです。
1-3. レバレッジ型ETFのリスク
レバレッジ型ETFは単純に原資産の動きの2倍になるというわけではなく、「前日比」の2倍の動きとなります。言葉では分かりにくいので、数字で比較してみましょう。下の表は、日経平均株価が連続して前日比500円上昇した場合に、単純の2倍の場合と日経平均レバレッジ・インデクッスの値動きを比較したものです。
レバレッジ型ETFの値動き
レバレッジ型ETFは、上昇時には単純な2倍よりも高いリターンが期待でき、下落時には単純2倍よりも下落幅が抑えられることになります。
2.レバレッジ型ETFに投資する時に必ず押さえておきたい3つのポイント
ETFは比較的低リスクの金融商品ですが、レバレッジ型ETFとなった途端ハイリスク・ハイリターンに分類されます。そんなレバレッジ型ETFに投資する時に必ず押さえておきたいポイントを解説いたします。
2-1. レンジ相場の時こそレバレッジ型ETFを利用する
株でもETFでも右肩上がりの強い上昇トレンドの時の方が買いたくなるのが投資心理ですが、レバレッジ型ETFが効果を発揮するのはトレンド相場ではなく価格が揉み合うレンジ相場です。例えば、日経平均株価は直近1年間でこそおよそ20%上昇していますが、1日の値動きは数%動けばよい方です。レンジ相場に入ってしまうと通常のETFでは利益を確定できるほどの値上がり幅になりませんが、レバレッジ型ETFならば原資産の2倍の変動幅となるのでレンジ相場でも利益確定できる機会が増えます。上昇トレンドで有効だと言われたりもしますが、それならばレバレッジ型ETFではなく、コストやリスクを考えると通常のETFを長期保有する方がよいでしょう。
2-2. 短期売買を基本とし長期では保有しない
値動きをより効果的に利益に繋げるレバレッジ型ETFは、1日の中で買って売ってを繰り返すデイトレードなどの短期売買に向いていますが、通常のETFに比べると信託報酬がやや割高になっているため長期保有には向いていません。長期で保有する場合にはレバレッジ型ETF以外のETFをおすすめします。また、短期売買の方が良いとはいっても、頻繁に売買する際にはその分手数料もかかりますので、その分を考慮して売買する必要もあります。手数料は証券会社によって異なりますのでできるだけ安い会社を探してみてください。
2-3.相場下落局面ではインバース型ETFで利益を狙う
インバース型ETFとはレバレッジ型ETFと反対で、原資産の価格が10%下落したら20%上昇するように設計されたETFです。自分の相場観で今後下落が続きそうだと考えた時に、通常のETFでは買いのみですがインバース型ETFならば株の信用売りと同様、相場下落を利益に繋げることができます。インバース型は、レバレッジ型とは反対に原資産が5%下落したら10%上がり、5%上昇したら10%下落するように設計されたETFです。
3.アクティブ運用におすすめのレバレッジ銘柄5選
国内では、レバレッジ型ETFも日経平均株価やTOPIXに連動するものが主流ですが、海外にも同様に主要株価指数に連動するレバレッジ型ETFがあります。また、中にはレバレッジ3倍と、よりアクティブに運用できるETFもあります。ただ、いずれも短期売買に向き長期保有には適していないことは忘れないでくださいね。
3-1.国内レバレッジ型ETF
国内レバレッジ型ETFでは日経平均株価に連動するタイプの人気が高く、日によっては日本株全体の売買高の半分程度を占めるほどです。
NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス連動上場投信(1570)
日経平均株価変動率に対して2倍の値動きになるよう設計されたETFです。
こんな特徴の銘柄です。
- 同種のETFの中で純資産額3,866億円(2017年4月末現在)と最大規模でもっとも人気がある。
- 日経平均株価の上昇時に、短期でより大きな利益を狙うのに適している。
- 初めてレバレッジ型ETFに投資するのに適している。
NEXT FUNDS日経平均ダブルインバース・インデックス連動上場投信(1357)
日経平均株価が1%上がるとと2%下がり、1%下がると2%上がるように設計されたETFです。初めての方には少し混乱するかもしれませんが、日経平均株価が下がるダブルインバースの価格が上昇します。
こんな特徴の銘柄です。
- 日経平均株価下落時に、短期でより大きな利益を狙うのに適している。
- 保有している現物株や国内株式ETFの値下がりのヘッジ(保険)として利用できる。
3-2.海外レバレッジ型ETF
プロシェアーズ ウルトラS&P500®(SSO)
通称”S&Pダブル”と呼ばれ、S&P500指数が1%上がると2%上がり、1%下がると2%下がるよう設計されたETFです。
こんな特徴の銘柄です。
- 原資産のS&P500指数は、米国株式市場時価総額の約80%をカバーし米景気動向をいち早く反映している。
- 日本株よりも比較的日々の変動が大きいため、よりアクティブにトレードしやすい。
プロシェアーズ ウルトラQQQ(TQQQ)
プロ向けに提供される「ウルトラプロ」の称号を持つETFで、ナスダック100指数の変動率の3倍の値動きをするように設計されています。
こんな特徴の銘柄です。
- 原資産のナスダック100指数は米国ナスダック市場に上場する金融以外の時価総額上位100銘柄で構成され、米国に上場する海外銘柄が含まれる。
- 構成銘柄が100銘柄と他の指数に比べ少ないためより変動が大きく、その3倍の値動きとなるためさらにエキサイティングなトレードができる。
Direxionデイリー米国金融株ブル3倍ETF(FAS)
米国大型株指数であるラッセル1000に組み込まれている銘柄のうち、金融関連セクターに分類される大型株を厳選し、指数変動率の3倍の値動きをするように設計されたETFです。
こんな特徴の銘柄です。
- 金融関連セクターの値動きは政治経済動向に敏感なためもともと変動が大きい傾向があるが、その3倍の動きとなるためよりエキサイティングなトレードができる。
- S&P500やナスダック100とは異なる動きをする場面も多いため相場動向への注意がより必要となり、初心者にはハードルが高い。
4.レバレッジ5倍まで運用できるCFD取引
レバレッジ型ETFでは、銘柄によっては3倍のレバレッジをかけたものもありますが、実はレバレッジを5倍までかけることができる投資方法があることをご存知でしょうか。それがCFD取引です。
4-1.CFD取引とは
CFD取引とはContractForDifference、差金決済取引のことをいいます。日本ではもともと証拠金取引として日経225先物と取引やFX取引でお馴染みの方法です。取引する際には取扱業者に証拠金と呼ばれる資金を預け、その証拠金をもとに売買で生じる差損益のみをやり取りする方法です。レバレッジは対象資産により法律で定められており、株価指数は最大10倍、コモディティは最大20倍、ETFは個別株の範疇となり最大5倍となります。つまり、ETFなら実際に必要な代金(現物価格)の5分の1という小額の資金で運用することができるのです。
4-2.CFD取引でETFに投資するメリット・デメリット
レバレッジ5倍ということは、現在価格が1万円のETFを2000円の証拠金で取引することができるので資金効率が各段にアップします。レバレンジ1倍なら1万円で1口しか購入できませんが、レバレッジ5倍であれば5口購入できるというわけです。では、CFD取引でETFに投資するメリット、デメリットを見ておきましょう。
メリット
- 売買手数料が無料の場合が多いので頻繁にトレード可能
- 現物ETFと同じく分配金がもらえる
- 海外ETFも円建てで取引できるので投資対象が豊富
- 円建て取引なので投資元本に対して為替リスクがない
- 下落相場では売りから取引することができる
デメリット
- 現物ETFとは異なり含み損が拡大し証拠金が不足するとロスカットとなる
- 売り取引には株の信用取引と同様貸し株料がかかる
- 保有金利コストがかかるため長期保有には不向き
4-3.CFD取引のリスクとその対処法
ハイリスク・ハイリターンに分類されるCFD取引において最も覚えておかなければならないリスクは「価格変動リスク」です。レバレッジ1倍の現物取引であれば、価格変動リスクといってもマイルドに捉えて長期保有を考えられますが、レバレッジ5倍、つまり従来の5分の1の投資金に対する価格変動リスクは大きくなりますよね。知らず知らずのうちに買いすぎてしまわないように注意してください。
損失拡大防止のロスカットルール
FX取引と同様に強制ロスカットルールなどが設けられています。これは、実際の有効資金が取引の担保資金となる証拠金を割り込んだ時に、それ以上の損失拡大を防止するために設けられています。
口座に預ける資金を多めにしてリスクコントロール
証拠金というのはあくまで取引の担保として拘束される資金です。取引口座に預けた資金目いっぱい、買える分だけ買ってしまうと、ちょっとした値下がりですぐに強制ロスカットになってしまいます。そうならないように、実際にETFを購入する際には、口座に預けた資金の半分程度までにしておきましょう。余剰金をしっかり確保することで、急な値下がり時にも担保割れにならないよう備えておくのです。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。中長期で資産形成を考えることが重要だと分かってはいても、やはり目の前の結果も求めてしまうのが投資です。気長に運用したい人は現物ETFでしっかり長期運用するのが良いでしょうが、少しリスクを取ってプラスアルファの利益を求めたい方には、レバレッジ型ETFやCFD取引などを活用してみてはいかがでしょう。これまで馴染みのなかった海外ETFなども、最近ではロボアドバイザーによるポートフォリオ運用や、ご紹介したCFD取引の形態での自動売買サービスなども行われています。レバレッジをかけて運用するといっても、リスクコントロールの方法を覚えてしまえば、むしろ資金効率の良い運用方法と言えるでしょう。興味ある方はぜひチャレンジしてみてください。