2020年の総括と2021年展望

2020年は世界経済が新型コロナウィルスの影響で大きく揺れた一年でした。
2020年の各国の株式市場の振り返りと3月のコロナショック相場におけるアセットクラス別の値動きをご紹介します。最後に来年の注目点とテクニカル分析から注目銘柄ご紹介します。

2020年株式市場の総括

【アメリカ株式市場】
アメリカの主要指数であるダウ工業株価、ナスダック総合、S&P500を見ていきます。
コロナショックで世界の金融市場が大きく揺らいだ3月に大幅下落したものの、急速に戻し、年後半には新高値を更新しました。感染拡大の中でも、高い上昇率となりました。ZoomやSlackなどのIT株を中心に高値をつけた展開となり、11月にはナスダックは史上最高値を更新しました。12月21日にはテスラがS&P500の銘柄に組み入れられるといったイベントもありました。

(出所:Bloomberg)

【日本株式市場】
年初は日本株式市場でもアメリカ株式市場と似たような値動きとなりました。11月以降の日経平均株価はバブル期の高値を更新したことで、日経平均に追随する形でアメリカ株が動く局面も見られました。12月に入ってからも27,000円台のレンジで推移しています。27,000円台を維持して、2020年を終えられるかに注目です。

(出所:Bloomberg)

【欧州株式市場】
欧州株式市場では、アメリカ、日本とは異なる状況となっています。これまでの2つの市場では、コロナショック前の高値を更新しているものの、欧州の株式ではまだコロナショック前の価格まで戻せていない状況にあります。これは、欧州諸国のコロナ感染者数が激増している点、未だ決着のつかないブレクジット問題の2つが、価格を戻せていない主たる要因と考えています。世界で一番早くコロナワクチンを導入したのも欧州です。ワクチン効果が実証され、ブレクジット問題が解決さえすれば、下落前の価格に戻ることは難しくないと考えています。

<ユーロストックス50>

(出所:Bloomberg)

アセットクラス別でみる3月のコロナショック相場

どのアセットクラスでもコロナが世界的に拡大した3月に安値を記録しました。
アセットクラスが異なるETF、QQQ(インデックス)、GLD(コモディティ)、LQD(債券)を比較すると、リスク回避銘柄と呼ばれるGLDやLQDでもコロナショック時は下落が見られました。これはキャッシュ(現金)の需要が増したということになります。この時期はどのアセットクラスに投資していたとしても、難しいマーケットの局面だったといえます。
その後、各国の政府が株式の買い支えや経済支援政策により、金融市場へ徐々に資金が戻り始め、今年の夏前にはこれらのETFの価格もコロナショック前の水準に戻りました。加えて、コロナワクチンの開発進捗や世界的に投資の重要性が増したことで、株式を中心に上昇が顕著となりました。また今年最大のイベントであったアメリカ大統領選挙はほぼ事前の予想どおりの結果となり、一段と高値を更新する展開となりました。

(出所:Bloomberg)

今回のように大きな下落が発生し、キャッシュ(現金)需要が強い場合は買いの局面とも言えます。
基本的に個人投資家が動かせる資金は、ヘッジファンドなどの機関投資家と比べ大きくありません。しかし機関投資家が扱うお金が大きすぎるがゆえに、個人投資家の方が取引しやすい局面があります。それは大きな下落が発生した前後などです。機関投資家は投資家の解約に見舞われるため、取引が制約され、また出金に対応するために現金を用意する必要から、手持ちの資産を売却する傾向があります。数か月後に経済が回復した場合や回復の予兆があると、機関投資家には顧客が戻ってきます。機関投資家は再び資産を買うサイクルに入るため、相場も上昇する傾向にあります。今回のコロナショックでも3か月程度で下落の大部分を戻したETF、株価指数が多く見られました。

2021年の注目点

来年2021年の前半はまだコロナが市場の主役として居続けることでしょう。来年のシナリオは2パターンを考えています。
ようやくワクチンの実用化が始まったことで、その効果次第で来年後半は経済の回復が一気に始まることが想定されます。この場合、コロナ経済対策で余った余剰資金が、ナスダックやS&P500、日経平均をはじめ、世界的な株式市場への資金の流入し、高値を更新していくシナリオが1つ目のパターンと考えています。この場合、株価指数に連動するETF銘柄でトレンドを追い自動売買注文と裁量取引で長期的に保有し続けるのが、パフォーマンスを引き出す取引方法と考えています。
反対に現在ウイルスの変異型が出てきているように来年も市場の話題がコロナ中心となったシナリオの場合、今年の3月のような大きな下落が発生する可能性が残り続けます。そのシナリオでは、長期的に見てレンジ帯で推移しているリスク回避銘柄の自動売買と株価指数に連動する銘柄の自動売買を組み合わせ、リスクを限定し、リターンを狙う取引方法と考えます。

来年注目するETFはQQQ(ナスダック100)とLQD(投資適格債)

一般的に値動きが逆の関係になりやすいと言われるナスダック100 (QQQ)と債券(LQD)に注目しています。このコロナ相場ではこの関係性に変化が表れてきたため、来年注目銘柄としてQQQとLQDをご紹介いたします。

(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)

テクニカル的にこの2つの銘柄を確認します。
QQQは直近で日足の上昇トレンドラインを形成しています。かつ8月末からダブルボトムに近い強い買いのシグナルが出ています。一方でLQDはコロナショック後も一定の値幅でレンジ帯を形成し、約半年間にわたり、その範囲を推移しました。株式が上がれば、債券は下がりやすい傾向がありますが、このような構図は2つのチャートから見えてきません。つまり、株価に対しては強気ながらも、これまでに経験したことのない相場に対応するために、リスクヘッジとしての債券にも一定の需要があり、それを投資の機会としている取引が増えたことで、このようなレンジ帯を形成していると考えています。これまでは「株価が上昇すれば、債券は下落する」でしたが、コロナ禍では「株価が上昇しても、債券はレンジを継続する」になったと言えます。年明け以降、実体経済の回復兆しが強く表れてくれば、さらなる株価の高値更新も期待できます。

最後に今年は予想が全くつかないコロナ相場となりました。来年はワクチンの効果によって、どれだけ実態経済の回復兆しが見えるか次第で株式市場の展開が大きく変化する1年になると予想しています。リスクとリスクヘッジを見直して、来年の相場に備えましょう!今年も1年間ありがとうございました!!