ユーロドル – 年間見通しと戦略【2019年版】

ポピュリズム台頭の政治リスクが、今年ユーロ相場の最大懸念?

1.ユーロドルの注目点

2019年のユーロドル相場の注目点としては、以下の通りです。

  • 1-1.ポピュリズム政権の台頭とブレグジットの悪影響
  • 1-2.ECBは、強気の出口戦略を継続できるのか?
  • 1-3.FOMCは政策転換するのか?
  • 1-4.ドル・インデックスから見たユーロ相場

1-1.ポピュリズム政権の台頭とブレグジットの悪影響

2016年のブレグジット決定後から、欧州では「EUの存続」に関して、波乱が続いている。ドイツでは、ポピュリズム政権の台頭を受けて、メルケル首相が与党第1党のCDUの党首の座を降ることを余儀なくされ、イタリアでは、五つ星運動が政権を押さえ、財政拡大政策がEUから怒りをかい、フランスでもマクロン大統領の支持率は急落気味だ。
 特に今年は、欧州で様々な選挙(以下参照)が続き、要人ポストの任期満了も多く、ポピュリズム政党の躍進が、今後もEUのリスクとなりそうで、こういった面がユーロ相場の上値を押さえる可能性には留意しておきたい。
 一方英国のブレグジットに関しては、1月15日の議会における離脱案の採決がまず、試金石となりそうだが、現状、ほとんど可決の見込みはないとされている。3月末の離脱期限に向けて、「ハード・ブレグジット」となる懸念が高まっており、こういった混迷がEUやユーロ圏経済にも良い影響を与えるはずもない。
 ただ、未だブレグジットが確定しないことで不透明感が続くが、焦点はブレグジット後の英経済であり、直ぐに影響が見えないとしても、基本的にブレグジットによって、英国が、将来的に衰退していく可能性がありそう。その場合は、EU諸国のポピュリスト達もEUからの離脱に及び腰となるだろうが、もし英国が息を吹き返すようなことがあった場合、EU離脱議論が、各国で再燃するリスクがある。この問題は、あくまで来年以降とみられるが、そういった息吹が今年、ポピュリズムの台頭によって、盛り上がりを見せるなら、ユーロ相場の将来は暗いかもしれない。

03月03日:エストニア議会選挙
04月14日:フィンランド議会選挙
05月12日:リトアニア大統領選挙
05月23日:欧州議会選挙(26日まで)
05月26日:ベルギー連邦政府選挙・地域政府選挙、スペイン統一地方議会選挙、独ブレーメン州議会選挙
09月01日:独ブランデンブルク州、ザクセン州議会選挙
09月XX日:チプラス・ギリシャ首脳・任期満了
10月27日:独チューリンゲン州議会選挙
10月XX日:ドラギ総裁・任期満了、ユンケル欧州委員・任期満了
11月XX日:トゥスクEU大統領・任期満了

1-2.ECBは、強気の出口戦略を継続できるのか?

ECBは、昨年の一時的な景気やインフレの改善期待から、9月から出口戦略を強めている。ただ、その後は一転、政局不安もあり、以下のユーロ圏PMIの推移を見ても分かる通り、現状のユーロ圏経済は、下降線を辿っていることは明白だ。
 こういった中、ECBは、昨年末に資産買い入れを停止した。この判断が正しいのかどうかは、今後も欧州の景気次第だが、現状の株価の調整などを鑑みると、直ぐに欧州景気が持ち直すとも考えづらい。一部に10月に総裁任期を迎えるドラギ総裁が、低金利政策の後始末として、今年夏頃に利上げを想定していたようだが、これさえも実施できるかは現状不透明となっており、その場合金利面が、ユーロ相場を支えることはなさそうだ。

一方、新しいECB総裁候補としては、バイトマン独連邦銀行総裁の名前が挙がっている。過去ドイツ人が、ECBの総裁についたことはなく、ECBの一番の出資者であるドイツから総裁が出ないことは、不思議な感じ強い。ただ、メルケル首相にとっては、ECB総裁ポストよりも、欧州委員長のポストを確保することが優先課題だとされており、今後のECBの後継総裁選び大注目となる。特にバイトマン氏は、低金利政策に批判的であり、その場合ユーロ相場の買い要因となる可能性はあるが、南欧諸国からは強い反対も予想され、状況は不透明。ともかく総裁人事に絡めて、一時的にユーロ相場が荒れた動きとなる可能性には留意しておきたい。

1-3.FOMCは政策転換するのか?

米FOMCは、パウエル議長に交代後も、米国の良好な経済をバックに、粛々と利上げを継続してきたが、昨年10月のNY株価の急落を受けて、微妙にスタンスの変化を見せている。この株価の下落が、「バブルの崩壊」なのかは、賛否両論あるところだが、今年FOMCが、政策金利の引き上げを止めるのかどうか、金融市場の最大の関心ごととなりそうだ。
 ただ、現状パウエルFRB議長の発言は揺れている。特にトランプ大統領が、利上げに不快感を示す中、金融政策の柔軟性を示しながらも、一方で「利上げに忍耐強く慎重に注視できる」と曖昧な発言を続け、バランス・シートの縮小に関しても、正常の戻す姿勢は維持している。恐らく政権からの圧力や株価の下落に、金融政策を左右されたくないのだろうが、株価の下落が続いた場合、景気を圧迫する可能性もある。また、米国の景況感を示す上で、重要なISMの両景況感指数をみると、過去「60」台をピークに落ち込みを見せることも多い。今後も株価の調整が続き、1-3月期は、寒波の影響などから、経済指標の悪化が見えることも多く、早々と利上げ停止、加えてバランス・シートの縮小休止などが発表される可能性も高いみらえる。個人的には、今年FOMCは、3月と6月の利上げを見送り、その後状況が改善すれば、9月と12月に利上げを行えば、この点は、今年の利上げ見通しの2回と矛盾しないと見ている。 

1-4.ドル・インデックスから見たユーロ相場

ユーロ相場と最も連動性の高い、ドル・インデックスから見ると、昨年ドルは、年初の安値からFOMCの利上げ姿勢もあり、堅調に推移した年と言える。つまり、逆説的には、ユーロドル相場は、年初を高値に下落傾向が続いた形となっている。
また、テクニカル面からは、ドル・インデックスは、下値を月足のネック・ラインとなる88.253で支え、モメンタムを示すスロー・ストキャスティックスから見ても、上昇傾向が続く可能性が指摘される。ただ、リスクとしては、前述の通りFOMCが今年利上げを停止すると、これがドルの上値を押さえる可能性があるが、一方でユーロ圏でも、ECBが出口戦略を中止せざるを得ない局面となるなら、この点は中立的な要因となるのか注目したい。

テクニカルを重視するのか、金利面を重視するのか不透明だが、少なくともドル・インデックスで見た場合、現状の94.00から98.00のレンジの次のブレイクがキーとなる。下抜けた場合は、92.00が買いポイントとなるが、一方で上抜けた場合、100.00が、サイコロジカル上、グッド・ターゲットとなる。以下の表は、その場合の主要通貨の想定レベルであるが、終値ベースからの算出なので、50BPから100BPのブレが発生するが、一応ブレイクが発生した場合の目安として参考にして頂きたい。 

 そうなるとユーロドル相場の今年の最大レンジは、ざっくりと1.0950から1.1900が想定されるが、同様の観点からは、次の1.12レベル(現状のユーロドル相場の安値)と1.16ミドルの上抜けから次のユーロ相場の方向感と見ておくのが良いだろう。

2.テクニカル面

テクニカル面で、ユーロドル相場は、昨年2月16日の1.2555の高値から、11月12日の安値1.1216まで下落を継続した形となっている。現状この位置で下げ止まりを示しており、1.1300前後が支える展開が続くと更に突っ込み売りが出来る状況ではない。ただ、もし、維持出来ずに現状の1.1216の安値を割ると、下落が1.1075-1.1120の戻り安値圏まで視野となるが、更には1.0775-1.0825に、上昇時の強いギャップが残っており、こういった位置は守られるとみたい。また、1.0341から1.2555の上昇のフィボナッチ・リトレースメントの61.8%が1.11887にあり、この面でも1.11台は、下落した場合の良いレベルと想定される。最大のリスクは、ギャップの下方ブレイクであり、その場合相場が崩れる可能性に留意しておきたい。

一方上値は、1.1580から1.1620-30レベルが押さえると弱く、1.1650をしっかりと越えても、1.1725-1.1770ゾーンの窓の上限が押さえると上値追いできない。あくまで1.1815や1.1851の戻り高値を越えて、あく抜け感となり、その場合1.1996、1.2155のそれ以前の安値まで視野となるが、上値を押さえる可能性が高く、更なる1.2200-20のネック・ラインを超えることは現状想定することは難しい。

 一方下記月足チャートからは、1.2555の高値がトピッシュとなっており、モメンタムとなるスロー・ストキャスティックスからも下落傾向がはっきりとしており、サポート・ゾーンを目指す可能性が指摘される。この位置は時間軸によって異なることで、把握は難しいが、前述の日足チャートから最低でも1.1100やサイコロジカルな1.1000方向への調整リスクとなる。今年ユーロ相場は、大きな転換がなければ、やはり下落傾向と見るのが無難となりそうだ。 

3.予想レンジと戦略

それでは、総合的に2019年のユーロドル相場の展開と戦略を検討してみたい。

想定レンジは、1.1100~1.1700(1.1900)としておきたい。基本戦略は、ユーロドルとドル・インデックスのモメンタムの状況からドルの堅調が示唆されており、戻り売りが基本となる。 
タイミング的には、現状は株価の下落が、ユーロ相場にレパトリの状況を与えていることやFOMCの政策変更の思惑があることで、下値の1.1300レベルが維持されると突っ込み売りの状況ではない。維持では早期は買いも検討できるかもしれないが、いずれECBの出口戦略に、停滞感が漂う状況となるなら、ユーロ相場の圧迫要因となる可能性があり、今後のECB1-3月のECB理事会を睨んで、1.1600から1.1700方向への上昇では売り場探しが検討される。ストップは1.1815や1.1851の戻り高値超えとして、またこの位置は倍返しポイントだが、それでも1.1900台から1.21台は売り直し場となる。この場合のストップは1.2200超えとなる。
ターゲットは、1.1300が守られるなら、利食いを優先しなければならないが、もし、1.1200を割れるなら、1.1100台は、グッド・ターゲットとなる。一方こういった位置の買いは、時期的に不透明(夏場にECBが利上げ出来ないことがはっきりとする時期か?)であり、その時の状況次第だが、前述の通り1.0775から1.0825のギャップをストップに、検討する形となる。ただ、こういった下落では、1.1400や1.1500が押さえるなら利食い場となりそうだ。 

4.2019年ユーロドルの主な材料

 2019年のユーロドル相場に影響を与えると見られる主な重要材料は以下の通り。また、発表予定やイベントは、現在把握できるものに限っていますが、変更や追加になることもあるので、その点は留意して対応して下さい。(XX日は、日程が未定なもの)