豪ドルとNZドル(AUD/NZD)の魅力と変動要因

 トライオートFXで注目を集めている「AUD/NZD相場」について、その取引の魅力と変動要因について、ファンダメンタルズ面やテクニカル面から、解説させて頂きます。

相場の方向性を見るポイント

【AUD/NZD相場が上昇に転じるケース】

  • 豪州準備銀行が、ニュージーランドに先んじて利上げスタンスに転換する。
  • 鉄鉱石や石炭など資源価格が上昇トレンドに転換する。
  • テクニカル面から、三角保合を上方ブレイクする。

【AUD/NZD相場が下降に転じるケース】

  • ニュージーランド準備銀行が、オーストラリアに先んじて利上げスタンスに転換する。
  • 鉄鉱石や石炭など資源価格が更に調整を深める。
  • テクニカル面から三角保合を下方ブレイクする。

豪ドルとNZドルの概要

 ご存知の通り、オーストラリアとニュージーランドは、両国ともイギリス連邦の加盟国で、現在もエリザベス女王が国王となっています。また、「オセアニア圏」として地理的にも近く、気候なども非常に似通っています。

 利用している通貨は、現在オーストラリアは、豪ドル(AUD)、ニュージーランドは、ニュージーランド・ドル(NZD)ですが、1966年までは、両国ともポンド相場にリンクする豪ポンドやNZポンドを利用していました。また過去「通貨統合」の話もあったぐらいで、経済面の関係性も強く、非常に「近い」国と言えます。

 そうなると、そういった国同士の通貨ペア(AUD/NZD)を取引しても妙味があまりない?と思われがちですが、以下の1988年からのチャートを見て頂くと良く分かりますが、実は過去のAUD/NZD相場は、案外激しく変動しています。また、トレンドが出ると長期にわたって、一定の方向に動くことが多く、中長期投資の対象としては、魅力の高い通貨ペアとなっています。

ファンダメンタルズから読み解く

  それでは、通貨変動の基本要因となるファンダメンタルズ面から見てみましょう。

 以下がオーストラリアとニュージーランドの基礎的経済データです。相場に関係するものだけピック・アップしています。

 これを見ると、名目GDPの総額など数字的には、各段の差がありますが、オーストラリアは大陸で、ニュージーランドは島国です。またオーストラリアは、ほとんどの部分が砂漠で有効利用できる土地が少ないことなどを考慮すると規模の問題には、あまり意味がないようです。

1.経済面

 現在のオーストラリアの経済は、リーマンショック後の弱い状況が続いていますが、実は「景気後退期のない」経済成長を26年以上続けています。若干住宅関連需要やローンの信用増加など不安材料もありますが、今後も移民が継続的に流入していることで長期的な人口増が期待されており、経済の拡大基調を維持すると見られています。

 一方ニュージーランドの経済は、2017年に移民政策を強化したことで、住宅や建設業などに悪影響が見ています。堅調な観光ビジネスが経済を支えるも、不安要因が残る形となっています。 

 また、経済面では、両国とも中国との関係が深いことは良く知られています。その他為替レートに大きな影響を与える経常収支や金融収支はマイナスで、両国とも元来こういった傾向から高金利政策を余儀なくされて来ました。両通貨ペアとも、地政学リスクが低く、高金利が過去日本の投資家の魅力を集めてきましたが、人口や一人当たりのGDP、市場の流動性などを考慮するとオーストラリアに、優位が見えることは明らかです。

 そうなると何故、AUD/NZD相場が、歴史的な安値圏で推移しているか、不思議な感じもします。

2.金融面

 次に為替相場に最も影響を与える金融面から見てみましょう。

 まず、両国の中央銀行が政策金利とする短期の誘導金利となる「キャッシュ・ターゲット」は、現在オーストラリアが1.50%で、ニュージーランドが1.75%となっています。過去高金利通貨として、人気の高かった通貨ですが、リーマンショック後の世界的な景気減速を受けて、両国とも歴史的な低金利レベルにあります。今後の政策金利の引き上げスタンスに、いつ移行するか大きな注目ですが、両国とも「インフレ・ターゲット政策」を同じレベル(1%から3%)で設定しています。両国も現在のインフレ率は2%を大きく超えるような状況ではありません。

 また、直近の中央銀行の声明などを見ても、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、「政策金利を2019年から2020年にかけてこの水準に維持すると予想」としており、豪準備銀行(RBA)は、「短期的に金利を変更する強い根拠はない」としています。

 まだまだ、政策金利の引き上げ時期は先となりそうです。
(注)「インフレ・ターゲット政策」=中央銀行が、インフレ率の上昇に合わせて、機動的に政策金利を変更することを確約している政策。

  ただ、以下のチャートをご覧ください。これは両国の政策金利であるキャシュ・ターゲットの金利差と市場性金利となる10年物国債利回り差を示したチャートです。 

 過去この金利差は、連動性が高いですが、2017年ごろから、キャッシュ・レート差は変わらないのに、オーストラリアの10年物国債の利回りが上昇を強めています。不可解な動きとなっていますが、実は豪州準備銀行は、前述の通り「短期的に金利を変更する強い根拠はない」とする一方、「次の変更は、引き上げ」と、「もう政策金利を下げない」ことを断言しています。こういった面に加えて、良好な豪州経済指標で長期金利が押し上げられているようです。

 一方で、こちらのチャートを見て頂きましょう。先ほどのオーストラリアとニュージーランドの10年物国債利回り差のチャートに、AUD/NZD相場を重ねたものです。

 過去の推移見て頂ければわかるように、通常は両国の金利差に順じて、AUD/NZD相場が連動して上下していますが、何故か2016-2017年ころから、金利差が拡大しているにも関わらず、AUD/NZD相場は安値圏で放置される動きを続けています。

 通常為替相場の変動の大きな要因として、「金利差」が指摘されることが多いですが、この面を考えるとAUD/NZD相場には、何か違う大きな要因が働いているかも知れません。

3.貿易面

  一応、両国間の貿易量でみると、オーストラリアの対ニュージーランド輸出は、それほど大きくはありませんが、ニュージーランドの対オーストラリア輸出が若干多く、こういった面が、AUD/NZD相場に実需面から影響を与える可能性(NZD高)はありますが、金額的にそれほど多くないことで、大きく豪ドルを押し下げるとは想定できません。

 そこで、相場の動きに変化が出たのが、2016-2017年であることを考慮すると、この時に起こった「中国の景気減速→米中貿易戦争の懸念」が大きなポイントとなりそうです。ただ、これも実際中国に対する輸出の依存度で見ても、オーストラリアが、貿易総額の33%、ニュージーランドが22%と若干の多可はありますが、両国とも中国の景気悪化を影響を大きく受けることに変わりはありません。特段オーストラリアが、ニュージーランドに不利となる要因とは思えません。

 ここで一番注目して頂きたいことは、両国の輸出品目の違いです。オーストラリアは、資源輸出が、総額の60%を占めています。一方で、ニュージーランドは、良く資源国通貨と混同されますが、実際ほとんど資源はなく、輸出の中心は農産物です。この点に注目して、以下のオーストラリアの主要輸出品目である鉄鉱石と石炭価格のチャートをご参照ください。2015-17年に、中国経済の減速傾向を受けて、鉄鉱石と石炭の価格が、大幅に下落している状況が見えています。

 断言はできませんが、こういった面が、豪ドルの上昇を抑制している可能性に注目しましょう。 

 

テクニカルから読み解く

 このチャートは、1989年からのAUD/NZDの月足チャートです。過去において、ほぼ5-6年のサイクルで、AUD/NZD相場が上下に変動している形が見えると思います。また、この上下のサイクルは、トップをつけた後、ダブル・ボトムに支えらえて反転しています。加えて下段のモメンタムを示すスロー・ストキャスティクスも2回売られ過ぎゾーンから反転しながら、相場が大きな上昇トレンドに転換しています。

 しかしながら、現在の相場は、ダブル・ボトムをつけて既に7年以上経っているにも関わらず、過去のような反転軌道となっていません。逆にスローストキャスティックスは、2度ゴールデン・クロス後、再度売りを示唆するデッド・クロス気味となっています。こうった点を考えると、現在のAUD/NZD相場が、過去のようなサイクル相場から、大きな「構造的な変化」の状況にある可能性には注意しておきましょう。

1.現在の保合相場(レンジ相場) 

それでは、現在の安値圏での保合相場に、焦点を当ててみましょう。

 以下は、2013年からのAUD/NZDの月足チャートです。

テクニカル的には、三角保合の状況となっています。通常こういった三角保合は、上下のレジスタンスとサポートのブレイクから、次の大きな方向感につながります。そうなると、今後レジスタンスとなる1.1000-1.1200ゾーンとサポートなる1.0500-1.0600ゾーンの次のブレイクから、相場が大きな方向感を示すか注目となりそうです。

 上方のブレイクが発生した場合、更に1.13や1.14台の高値も超えると、上昇トレンドがはっきりとして、過去の中心レベルとなる1.21方向への上昇の期待感となり、更に超えると過去の高値圏となる1.30台への上昇の可能性が見えるかもしれません。

 一方下方ブレイクが発生した場合、1.0200や最安値の1.0020まで割れると、パリティ(1対1のレート)を割り込むリスクとなります。ただ、その場合歴史的な安値圏ですので、どこまで相場が下がるかは想定が難しくなります。一応計算値的には、保合の最初のレンジ幅を直近高値から差し引いた0.97台などが視野となるリスクがあることは留意しておきましょう。

おさらい

 基本的にAUD/NZD相場は、オーストラリアとニュージーランドの国力、経済的な格差や相場が歴史的な安値圏に位置していることを考えると更に下落が進むとは考えづらいですが、あくまで相場ですから、何が起きるかわかりません。ただ、相場の方向性を見るポイントを考慮して、トレードの参考して頂けると良いかもしれません。  

【AUD/NZD相場が上昇に転じるケース】
・豪州準備銀行が、ニュージーランドに先んじて利上げスタンスに転換する。
・鉄鉱石や石炭など資源価格が上昇トレンドに転換する。
・テクニカル面から、三角保合を上方ブレイクする。

【AUD/NZD相場が下降に転じるケース】
・ニュージーランド準備銀行が、オーストラリアに先んじて利上げスタンスに転換する。
・鉄鉱石や石炭など資源価格が更に調整を深める。
・テクニカル面から三角保合を下方ブレイクする。

 以上、AUD/NZD相場の魅力や相場の変動要因を簡単にまとめてみました。 皆さんのトレードのご参考になれば幸いです。