英ポンド円-2020年相場予想と戦略-

“ポンド相場は、既にブレグジット後を睨んだ展開に”

【かんたんまとめ】

 まず、2020年のポンド円相場のレンジ予想を文頭にて簡単に解説します。
その詳細については、本項以降をお読み頂きたいと思います。

◇想定レンジ

130~150円

◇混乱要因

 6月末のブレグジット移行期間延長に絡めて、協議の進展状況次第では、この時期に混乱が想定され、買いは若干リスクが伴いますが、EUも既に離脱が決まった英国と軋轢を作ることはないと思われる。こういった要因での調整は、絶好のポンド円の買い場となりそうです。

◇中長期的な売買戦略

 大きな動きがあれば、逆張りを検討する。
その上でも押し目買いを基本として、136-138円、133-135円は買い狙い場で、ストップは130円割れ。または、更に130円まで買い下がるなら、ストップを126.55-68で検討。ターゲットは、現状の高値となる148円前後が抑えるなら利食い優先で、超えても150円や154円は利食い場。またこういった位置の売り狙いは、ストップを156.62越え、オーバーシュートを考えても、160.66越えで対応しましょう。売りの場合の利食い場は、145円からから140円が維持されると利食い優先が良いでしょう。 

【2019年の相場を振り返って】

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 2016年の国民投票で、「ブレグジット」を選択した英国は、多くの混乱を経て、遂にEUからの離脱を実現することとなりました。

 2019年のポンド円相場は、メイ首相の離脱案が3度否決される中、年初の「フラッシュ・クラッシュ」の急落からは、米中通商協議の合意期待感から、円安が拡大したことで、148.89の年間高値を実現しました。ただその後は中国が、合意文書の一部に強い拒否感を示したことで協議が決裂。これに怒ったトランプ大統領が、次々と対中関税の追加増税を実施、英国では、当初のブレグジットの期限内に、離脱が実現できなかった失望感も加わって、8月には、126.56の年間安値まで値を下げました。
 しかしながらメイ首相の辞任後、新たな首相となったジョンソン氏は、独特の破天荒な性格から、一時は不安心理も高まりましたが、最終的に、総選挙で保守党が歴史的な大勝利を獲得し、「合意無き離脱」を避けうる可能性が見えたこと、また米中通商協議でもトランプ大統領が、2020年の大統領選挙を睨んで、急速に態度を軟化させたことなどから、どうにか第1弾の合意に、明るさが見えてことで、ポンド円相場は、戻りを試す展開で終了しました。
 1月には、英国でブレグジット関連法案が議会で可決、長い道のりとなった英国のEU離脱も1月末で、遂に決着を見る見込みです。
 しかしながら、離脱後も英国は、1年間の離脱猶予期間を迎えますが、未だ数多くの問題が山積しています。もし、2020年こういった問題が、英EU間で順調に克服できない場合、12月末に「合意無き離脱」は避けるとしても、「無秩序な離脱」となる可能性が残っていることは、注意しておきましょう。

【今後のブレグジットの課題】

 2月から本格的に、英国はEUと離脱に関して、具体的な準備を進めなければなりません。
 以下が今後解決しなければならない主な課題となります。
 
・英国とEUの新たな関税条約の締結
・通関ルールの整備
・北アイルランド国境問題の具体的な解決策や運用方法
・漁業権や漁獲割当の調整
・航空・陸運・鉄道の接続性の確保
・金融・雇用・環境・税制などの競争条件の見直し
・EU域外の国・地域との個別FTA交渉

 一応関税に関しては、英EUとも「関税ゼロ、関税割り当て枠なし」を望んでいるようです。この点に関して、比較的順調に交渉が進む可能性が指摘されていますが、ただ、関税以外の分野では、利害関係の多くが対立しています。EUは、英国の「良いとこ取り」は、許さない姿勢です。 
 通常のFTAでも、最終的な締結には2-3年はかかると言われています。そのため、協議が難航した場合は、22年末まで移行期間を延ばすことが出来ますが、2020年6月末までに、決定しなければなりません。ジョンソン首相は、延長しないことを確約していますが、条約締結や法整備など物理的に、難しいことは明白です。

◇FTAとは
自由貿易協定のことを指す。もとよりEU域内における貿易は関税が無税。域外との貿易においても共通関税が定められていた。今般イギリスがEUから脱退することに伴い、イギリスはEUやEU域外の貿易相手国と新たにFTAを結ぶ必要がある。

 また、北アイルランドは、移行期間後も一定期間、EUに残る形となっていますが、この問題も未だ具体的な内容が全く示されていません。加えてスコットランドの独立問題が、再び浮上する可能性もあります。この行方がどうなるか現状は不透明ですが、もし、本当にスコットランドが独立してしまった場合、英国が、本当の意味で小国になってしまう可能性も残っています。
 現状ポンド相場は、ジョンソン首相が、英経済のテコ入れを狙って、財政投資の拡大や大幅な規制緩和を実施するとの見方から、堅調に推移していますが、ポンド相場は、2020年もこういった材料を睨みながら、神経質な展開を続けそうです。 

【ファンダメンタルズ】

 それでは、ポンド円を構成する英国と日本のファンダメンタルズ面をチェックしておきましょう。

〇 英国経済

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 以下に示した英国のサービス業・製造業・建設業のPMIのグラフから、現状の英経済を考えてみましょう。
2016年6月の国民投票では、多くの人がブレグジットの実現性に、懐疑的だったこともあって、国民投票の結果が、将来の英経済の大きな不安材料となり、PMIは思惑的に急速に悪化しました。

◇製造業PMI・サービス業PMI・建設業PMIとは
製造業購買担当者景気指数・サービス業購買担当者景気指数・建設業購買担当者景気指数のことを指します。企業の購買担当者に対してアンケートを実施し、新規受注・生産・雇用状況を調査して結果を指数化したものです。50以上・以下で景気拡大・減速の景況感を判断することができます。

 ただ、ブレグジットを前に、駆け込み需要もあったのでしょう。実態経済自体が、それほど悪化していないこと、また急速に進んだポンド安が、英国の輸出や株価を押し上げ、英中銀の利下げの効果とあわせて一定の改善となりました。

◇政策金利の引き下げ
通常は、政策金利を引き下げると、その国の通貨を保有することで受け取れる金利が低下し、通貨の魅力が低下する=その通貨が売られる。という流れが発生します。GBPが売られると、GBP安・JPY高、つまりGBP/JPY相場は下方向へ推移すると考えられます。

 ただ、それも英議会において、なかなか議論が進まないことで、「合意無き離脱への懸念」が高まったことでからPMIは、じりじりと低下を続けています。現状更なるPMIの低下は不透明ですが、景気の分水嶺となる「50」を割り込んだ状況が続くなら、ポンド相場にも良い影響を与えないでしょう。 

 また、特にPMIでも、建設業に顕著な悪影響が見えています。
これは、ブレグジットによって、外資を含めた多くの企業が英国から既に脱出していますが、本格的にEUから離脱した後も、このような傾向が続く懸念が残っていることが影響しているようです。 
 加えて、英国がブレグジットを選択した一因として、「移民問題」がありますが、今後英国が移民流入を制限した場合、英国にも少子高齢化の波が訪れるかもしれません。

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 上の英国立不動産協会の住宅価格予測などを見ても、国民投票後、落ち込みが顕著となっています。流石に現状は、一定の反発も見えていますが、本格的なEU離脱後の英経済に不透明さが残ることを考えると、海外からの投資ニーズにも限界があり、今後も建設や住宅ニーズが盛り上がることはなさそうです。

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 一方で英中銀のスタンスをみてみましょう。
 英中銀は、リーマンショックの影響で政策金利を長らく0.50%で据え置きましたが、英国民投票でブレグジット決定後、将来的な英経済の不安解消のために、0.25%まで引き下げた後は、ポンド安や一定の不安感の解消から現在は、0.75%まで政策金利を引き上げています。ただ、直近では、合意無き離脱が回避される見通しにも、経済指標の一部に弱い結果が見えることやインフレ率が再び、中銀の政策目標を下回っていることで、カーニー総裁は、「英経済が思わしくない状況となれば、英国中銀は躊躇なく動く」、「EUから離脱しても、経済が回復するなどという保証はどこにもない」として、2020年の利下げを示唆しています。
 近々利下げが実施される可能性が高そうです。ただ、もし、利下げを2020年実施しても、英国経済は、歴史的に高インフレ体質であること。また。恒常的に貿易・経常赤字国であって、利下げによってポンド安が拡大した場合、輸入物価の上昇からインフレ率が上昇し易く、金利と為替の関係は「表裏一体」の状況にあります。

 為替との関係でみると金融政策のかじ取りは難しく、日本やEUのような、マイナス金利政策まで、思い切った導入には限界がありそうです。その面では、金利低下によるポンド売りには、限界がありますが、一方で思い切った手が打てない場合、景気の浮揚効果も薄くなりそうです。 

 また、3月16日には、現在のカーニー英中銀総裁に代わって、アンドリュー・ベイリー氏が新英中銀総裁に就任します。同氏の手腕やスタンスは、現状よく分かっていませんが、かつて英中銀の副総裁を務めていた経歴を持っています。今後の同氏の手腕に注目が集まりそうです。
以上から、2020年の英中銀の政策委員会(MPC)の予定を以下に掲載しておきます。声明や議事録、インフレ報告などの変化に注目しておきましょう。 

01月30日:英MPC、議事録および四半期インフレ報告公表
03月26日:英MPC&議事録公表
05月07日:英MPC、議事録および四半期インフレ報告公表
06月18日:英MPC&議事録公表
08月06日:英MPC、議事録および四半期インフレ報告公表
09月17日:英MPC&議事録公表
11月05日:英MPC、議事録および四半期インフレ報告公表
12月17日:英MPC&議事録公表

〇 日本経済

 英ポンド円相場は、ドル円相場の影響を大きく受けますので、日本経済の状況もチェックしておきましょう。
 日本経済は、2019年の消費増税にも、事前に政府がポイント還元などの対策を打ち出したことで、一部改善が見えています。IMFや日本銀行も成長率の見通しを引上げました。2020年は東京オリンピックも控えていることで訪日外人の増加など、一定の期待感が景気を支えるとの見方となりそうです。
 ただ、海外要因としては、米中通商協議は、フェーズ1の合意に署名が行われましたが、未だ対中追加関税の7割が残されています。中国は、産業補助金や人権問題など、受け入れ難い要求を米国から受けています。両者の壁は厚く、米国の大統領選が終わるまで、完全な合意の可能性は難しそうです。そうなると中国経済の急速な回復を想定することも出来ず、日本経済にも悪影響を与えそうです。
 また、イランや北朝鮮など、核問題に端を発した地政学リスクの問題は、偶発性が高く、想定することは困難ですが、2020年もこういった懸念が続く限り、ほぼ100%輸入に頼っている原油や天然ガスの価格上昇が続いた場合、日本の景気にはマイナス面が強そうです。6月9日と12月に開催されるOPEC総会合わせて、最大の注意を払っておきましょう。 

◇地政学リスク
特定の国や地域が抱える政治・軍事・社会的な緊張の高まりから、世界経済の先行きが不透明なものとなり、関連性のある商品の価格を変動させるリスクのことを指します。
武力衝突などが勃発すると、その地域に対する投資や経済活動の先行きが不透明となり、投資資金の引き揚げに繋がる場合があります。

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 加えて、上の日銀が四半期毎に公表する日銀短期経済観測のチャートをご覧ください。
 日本の景気は、バブル崩壊後、回復過程にあっても、大企業の製造業・非製造業の現況指数(DI)は、25から26に達するとほぼピークをつけています。今後すぐにとは言えないまでも、2020年6月末には、消費増税対策で実施したポイント還元が終わること、歴史的には、オリンピック終了後は、景気が反動的に減速する傾向があることを考えると、日本経済が強い回復を見せる可能性は低そうです。その面では、2020年も日本銀行の低金利政策は、続かざるを得ないでしょう。金利面からは、円相場の上値の重い状況が続きそうです。

【テクニカル】

 それでは、テクニカル面を見てみましょう

〇 ポンドドル相場

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 まず、ポンド円に大きく影響を与えるポンドドル相場の月足チャートです。
 2016年6月のブレグジット決定後、1.5018を戻り高値に、その年の10月に一時1.1378まで急落後は、戻り歩調となりましたが、反発が1.4345と1.4377でダブル・トップをつけて、現状は下値を1.1959で維持して反発的となっています。  
 現状相場のモメンタムを示すスロー・ストキャスティクスは、売られ過ぎから反転上昇となっています。

◇スロー・ストキャスティクスとは
相場の買われ過ぎ・売られ過ぎを判断する分析手法。「Slow%K」と「Slow%D」の2本のシグナルからなるテクニカル指標で、図はSlow%DをSlow%Kが上方向に抜けており、売られ過ぎからの反転局面と見てとることができます。

 サポートとして、1.26-1.28を維持すれば、将来的な上昇期待を持てそうです。ただ、1.25を維持出来ずに、1.22をしっかりと割れてしまうと1.20のサイコロジカルがターゲットとなります。この位置も維持されると長期のサポートからは良いですが、リスクは1.1959の安値割れで、その場合ブレグジット後の最安値1.1378まで主だったポイントがなくなるので注意しておきましょう。

◇サイコロジカルとは
「心理的な」という意味です。サイコロジカルラインというテクニカル指標もありますが、ここでは「心理的に意識されやすい価格帯」という意味で用います。
キリの良い数字の価格は、時にサポートやレジスタンスとして機能することがあります。投資家の多くはその数字を強く意識する為、その価格帯付近では取引が活発になる傾向があり、明確にその価格を抜けた場合は、次の節目へと意識が移る過程で、値が大きく動く場合があります。

 一方上値は1.3452-1.3514の戻り高値を超えるこができるかが、大きな焦点となます。超えても1.40前後には強いレジスタンスが控えています。この上抜けは不透明で、一旦買い手の利食い場となり易いでしょう。あくまで1.4345と1.4377のダブル・トップをしっかりと上抜けて、1.5018の英国民投票時の高値が視野となりますが、英国が、ブレグジットで失ったものを考えると「行って来い」相場となることを、想定するのは厳しいでしょう。

◇サポート・レジスタンスとは?
・サポートライン
日本語では下値支持線といい、「相場はその水準以降は下落しないだろう」と多くの投資家が意識するラインのこと。その価格帯付近まで相場が下落すると、買いが意識されて相場が上に跳ね返され、安値更新の歯止めとなることがある。
・レジスタンスライン
日本語では上値抵抗線といい、「相場はその水準以降上昇しないだろう」と多くの投資家が意識するラインのこと。その価格帯付近まで相場が上昇すると、売りが意識されて相場が下に跳ね返され、なかなか高値が更新されない価格帯のことを指す。

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 また、更なる長期視点から以下の1979年からの週足チャートをご参照ください。
 ポンドドル相場は、案外大きく動いている形が見えます。過去においては、ほぼ1.35から1.70台ミドルがメイン・ゾーンの動きです。これは2.4550の高値と1.0525の安値の半値が上値を押さえ、これより上は総じて売り場、1.35前後は買い場になっていましたが、現状はこのゾーンを下方ブレイクしています。そうなると現状の反転も、このゾーンの下限が上値を抑える形が続いた場合、相場は弱いことが示され、将来的に現状の安値となる1.1959や1.1378を割れて、1985の歴史的な安値1.10525を目指すリスクが残っていることは、留意しておきましょう。 
従って2020年のポンドドル相場の予想レンジを、1.22から1.38をメインに、最大でも1.20から1.43としておきます。

〇 ドル円相場

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 一方ドル円ですが、2019年は年間ベースでのレンジが、7円94銭と歴史的な低水準に留まりました。2020年は、米国の大統領選が控えています。動きが激しくなるか注目ですが、ただ、動きが出ても年後半となりそうで、年前半は揉み合いが続くかもしれません。
 以下の月足チャートをご参照ください。
上値はロング・ランの①レジスタンスを前に上げ渋っています。この位置は、2020年の1月時点で、110.31となりますが、この上抜けの可否は、次の相場展開に重要となります。あくまで超えても112.40、114.55、114.73がターゲットとなりますが、こういった位置も抑えられるとレンジ相場からの逸脱は難しいでしょう。あくまでこういった上抜けが実現して、強気相場となります。
 下値は、一応サポートと104.56、104.87、104.46の②トリプル・ボトムが支えています。この維持では引き続き堅調な相場が続くとみられますが、トリプル・ボトムを逆に割り込むなら、大きな下落相場が訪れる可能性に注意しておいた方が良いかもしれません。 
 また、相場のモメンタムを見る上では、下限のスロー・ストキャスティクスに注目しましょう。現状は、弱気を維持しています。つまりまだ円高リスクが残っている形です。ただ、これも前述の通り、レジスタンスをクリアに上抜けてくれれば、陽転する可能性も残っています。今後もこの動きに注目して対応しましょう。
 下値は、サポートから107-108円が支えると堅調が続きます。またもし、割り込む動きがあっても、トリプル・ボトムを前に、105円が維持されると更なる調整は難しそうです。ただ、逆にトリプル・ボトムの下方ブレイクが発生するとスロー・ストキャスティクスも反落を続け、その場合フィボナッチ・リトレースメント(75.31から125.86)の50%となる100.58が、グッド・ターゲットとなります。ただ、フィボナッチの61.8%=94.62までの調整は、最悪の状態として、トランプ大統領の選挙での敗北、米中通商協議の完全決裂、FOMCの利下げスタンスへの転換などの悪い状況が重ならない限りは、現状想定していません。 
 一応2020年のレンジを105円から115円に想定しておきます。

◇フィボナッチ・リトレースメントとは
「フィボナッチ比率」をトレードにあてこんだテクニカル手法です。
「23.6%・38.2%・61.8%・76.4%」という比率を、フィボナッチ比率、または黄金比率と呼びます。多くの投資家がフィボナッチ比率で求められた価格帯を意識する為、相場に影響を与えると考えられています。チャートの高値・安値の間をフィボナッチ比率で区切られたラインを引くことで、サポートライン・レジスタンスラインを判断します。

〇 ポンド円相場

出所:有限会社フォレックス・ラジオ作成

 最後にポンド円を見てみましょう。
ブレグジット後2016年10月に116.85の安値まで急落後は、2018年1月に、フィボナッチ・リトレースメント(116.85-195.89)の半値となる156.37と重なる156.61で戻り高値をつけて再調整しています。
ただ、これも下値は124.05の安値を前に126.55で支えて、現状は反発的となっています。一応モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスもどうにか反転的ですので、141-142円が支えると強い可能性はありますが、ただ、139円をしっかりと割れると136-138円、135円を維持出来ない場合、133円などがターゲットとなりますが、一旦支えられるとみています。ただ、130円を維持出来ずに、126.68や126.55の安値を割れると相場が崩れ、124.05の安値まで割り込むと、下値の目途が立たなくなり120円のサイコロジカル的に重要な位置までターゲットとなることは、留意しておきましょう。
一方上値は、147.86の高値を超えても、148.89から153.86ゾーンの戻り高値圏の上抜けは不透明で、あくまで156.62を超えて、英国投票前の高値となる160.66、163.90-164.10を超えて、完全に強気が蘇る形となりそうです。

【2020年の見通しと戦略】

 2020年の英ポンド円の相場を見る上で、重要なポイントをまとめておきましょう。

・まだ移行期間にあることで、本当の意味でポンド相場のトレンドは発生しない可能性。
・引き続きブレグジット絡みのニュースで、荒れた動きが継続。
・英中銀に利下げの余地は少なく、2020年利下げは一回程度。あっても2回が限界とみられ、金利面だけでは、ポンド安は続かない。
・テクニカル面からは、押し目では買いが検討される。
・もし、EUの協調に心配して「秩序無き離脱」のリスクが高まった場合やスコットランドの英国からの独立の思惑が高まった場合、ポンド相場の買いは得策とならない。

 上記を踏まえて、
ちょっと広めですが、英ポンド円相場の予想レンジを130円から150円としておきます。
 また、ポンドドルとドル円の想定の想定レンジから以下のラダーチャートをご参照ください。2020年のポンドドルを1.22から1.38、ドル円を105円から115円と仮定すると、最大で128.10から158.70となります。ポンド円相場の、過去10年間の年間の平均レンジが30円であることを考えると、こういった動きとなる可能性も残っていますが、ポンド円が160円を目指すためには、ドル円が115円まで上昇できないと厳しいことは留意しておいてください。

 また時期的には、3月末までは、本邦の決算に絡めたレパトリから、円高に気味に推移し易いことは注意しておきましょう。

◇レパトリとは
レパトリエーションの略。海外にある資金を自国に戻すことを指します。
決算に伴い、日本企業は海外で稼いだ資金を国内の本社へ送金する動きが出やすいとされます。その際の資金の流れが外貨売り・円買いであり、円高圧力の一つの要因と言われます。

 加えて3月中に米国の大統領選挙に絡めて、民主党候補者がほぼ確定する可能性があります。もし、左派となるサンダーズ氏やウォーレン氏が、優勢となった場合、株価が嫌気するリスクがあることは留意しておきましょう。 
その後は、6月末のブレグジット移行期間延長に絡めて、協議の進展状況次第では、この時期に、混乱が想定された場合の買いは若干リスクが伴いますが、EUも既に離脱が決まった英国と軋轢を作ることはないと思います。こういった要因での調整は、絶好のポンド円の買い場となりそうです。
一方夏場は、例年相場が揉み合い気味となります。ただ、年後半に向けては、例年円安気味推移する傾向があり、この時期のポンド円の下落は買い場を提供しますが、2020年は米国の大統領選挙を睨んで、思惑的な動きが出易いことは留意しましょう。その場合トランプ大統領の優勢が維持されれば良いですが、もし民主党候補の有利が伝わった場合に、政策の不透明感から、円高になり易いことは注意しておきましょう。

 従って、中長期的な戦略としては、前述の通り大きな動きがあれば、逆張りを検討する形が前提となますが、その上でも押し目買いを基本として、136-138円、133-135円は買い狙い場で、ストップは130円割れまたは、更に130円まで買い下がるなら、ストップを126.55-68で検討しましょう。ターゲットは、現状の高値となる148円前後が抑えるなら利食い優先で、超えても150円や154円は利食い場。またこういった位置の売り狙いは、ストップを156.62越え、オーバーシュートを考えても、160.66越えで対応しましょう。売りの場合の利食い場は、145円からから140円が維持されると利食い優先が良いでしょう。