FXの両建てとは?やり方やデメリット・注意点をわかりやすく解説

「FXは両建てをすれば為替変動リスクを避けられる」。FXの知識が少しつくと、このように考える方もいるでしょう。

しかし、FXの両建ては、潤沢な資金がなければ推奨はできません。この記事では両建てを利用したFX取引のやり方や、メリット・デメリット、注意点について解説します。FXの両建てを検討中の方は、まずはこちらの記事をご一読ください。

FXにおける両建てとは

FXにおける両建てとは、通貨ペアの買いポジションと売りポジションを両方併せ持つ投資手法です。

例えば、米ドル/円の通貨ペアで1ドル100円のときに、ドルを1万通貨買ったとします。この場合、1ドル101円と円安になれば10,000円プラスになり、1ドル99円と円高になれば10,000円の損失になります。

一方、上記と同様の相場で売りポジションを保有していると、1ドル101円と円安になれば10,000円の損失、1ドル99円と円高になれば10,000円のプラスとなります。

では、この相場・同じ通貨ペアで、買いポジションと売りポジションの両方を保有(両建て)していたらどうなるでしょうか。
この場合、売りポジションと買いポジションの損益が相殺され、結果的にプラスマイナスゼロとなります。

また、同じ通貨ペアで買いポジションと売りポジションの両建てをしている限り、仮に円安で102円になったとしても、円高で98円に変わったとしても、プラスマイナスゼロの均衡が変わるわけではありません。

両建ては為替レートが値動きしてもプラスマイナスゼロになるため、意味がないと思いがちです。しかし、後の章で紹介しますが、両建てを上手に活用しているトレーダーもいます。ただ、両建ては賛否両論ある手法で、さまざまなデメリットがあることからインヴァスト証券ではおすすめしていない手法です。

FXで両建てをするデメリット【初心者は要注意】

FXの両建ては、為替損益だけ見ればプラスマイナスゼロですが、その他の部分でデメリットが生じています。初心者からFXを始めて、ある程度FXの仕組みが理解できるようになると、一見、両建てが魅力的に見えることがありますが、以下のようなデメリットもあるため要注意です。

  • スプレッド(コスト)が2倍かかる
  • スワップポイント(マイナススワップ)で損をしやすい
  • ロスカットのリスクが高くなる

スプレッド(コスト)が2倍かかる

両建ては、同じ通貨ペアで買いポジションと売りポジションの両方を持つことなので、単純にスプレッドが2倍かかることになります。スプレッドとは通貨ペアを売買するときに適用される、売値と買値の差のことで、FX取引における実質的な手数料にあたるものです。

両建てで保有して為替損益がない中で、2倍のスプレッドを負担している状態は効率が良いトレードとは言えないでしょう。

スワップポイント(マイナススワップ)で損をしやすい

両建てはスワップポイントで損をする可能性があります。

FX初心者は、両建てで為替損益をゼロにしてスワップポイントだけ狙えば、利益になるのではないかと思いがちです。スワップポイントとは、「金利差調整分」のことで、通貨ペアに関連する2ヶ国間の金利差によって発生する損益のことを言います。スワップポイントは、通貨ペアのうち金利が高い通貨を買って金利の低い通貨を売ると、プラスのスワップポイントとして利益が得られます。一方、金利が高い通貨を売って金利が低い通貨を買うと、マイナススワップという損失が発生します。

つまり、両建てをするとプラスのスワップポイントとマイナススワップが両方発生することになり、スワップポイントは大きく増えません。それどころかマイナススワップの方がプラススワップよりも金額が大きいこともあるため、両建てをしているとスワップポイントで日々損失が拡大する可能性さえあります。

ロスカットのリスクが高くなる

ロスカットとは、FX取引で一定額の損失が発生すると、保有しているポジションが強制的に決済される仕組みのことです。両建てでポジションを二本持つということは、相応の証拠金が必要になるため、価格が大きく変動したときにロスカットが起こりやすくなります。

両建てでポジションを持っていれば為替差損は生じないはずですが、マイナススワップや相場急変時のスプレッド拡大によって均衡が崩れるため、ロスカットになる可能性はゼロではありません。

FXで両建てをするメリット

FXで両建てをするメリットとして考えられるのは以下の3つです。

  • 相場の急変時のリスクヘッジになる
  • 含み損を抑えられる
  • 税金対策になる

それぞれ詳しく見て行きましょう。

相場の急変時のリスクヘッジになる

両建ては、相場が急変しそうでも今保有しているポジションを決済したくないときに有効です。
例えば、米ドル円の通貨ペアで売りポジションを保有中に、円安が進み1ドル110円から115円になり損失が発生、円安はさらに進みそうであると予想していたとします。

そこでリスクヘッジとして115円の買いポジションを保有します。予想通りに円安が進むと、これまで持っていた売りポジションでは損失が発生しますが、後に購入した買いポジションではプラスになっているため、損益が相殺されます。

このように、両建ては大きな値動きによるリスクを避けたいとき、リスクヘッジとして有効です。

含み損を抑えられる

同じ通貨ペアを両建てで持っていると、損益を相殺することができます。米ドル円の通貨ペアの買いポジションと売りポジションの関係は、以下の通りです。

ちなみに、買いポジションも売りポジションも、どちらも1ドル105円で注文できて、スプレッドは考慮しないものとします。

 1ドル106円になると1ドル104円になると
買いポジション10,000円の利益10,000円の損失
売りポジション10,000円の損失10,000円の利益
両建て10,000円の利益と10,000円の損失が同時に発生=損益は0円

税金対策になる

FXは、利益が出ていても決済しなければ含み益の状態であり、自由に使えない反面、課税もされません。今は利益確定をして税金を支払うのは避けたいけれど、含み益を減らしたくないというときは、両建てで保有しておくと課税を遅らせることができます。

ただし、税金対策で両建てをしていると、利益を出せるチャンスが訪れても逃してしまうことになります。両建て自体が賛否両論ある戦略のためあまりおすすめはしませんが、活用するならせめて税金対策ではなく、戦略的に利用した方が有意義かも知れません。

FXの両建てのやり方

ここでは両建ての活用方法について紹介します。代表的な両建ての活用方法として、「つなぎ売り」と「スワップポイントの活用」があります。

つなぎ売りを活用する

つなぎ売りとは、保有しているポジションが大きな価格変動にさらされる可能性があるときに、リスクヘッジとして反対ポジションを保有することを言います。例えば米ドル円の通貨ペアで、長期的には円安トレンドだけれど一時的に円高局面が起きそうというときに利用します。

1月10日に米ドル円1ドル100円のときに、1万通貨を購入。その後、為替レートが2月10日に90円、3月10日に80円、4月10日に110円になったとします。

つなぎ売りなしのケースでは、2月10日、3月10日の時点で含み損が生じていますが、4月10日に110円に戻ったため、ここで利益確定をして最終的には10万円のプラスになっています。

つなぎ売りありのケースでは、今後も円高が続くと予想し、2月10日に90円で5,000通貨分、追加で売り注文(つなぎ売り)を入れています。予想通り円高になり、3月10日に買い戻して5万円の利益を得ています。さらに1月10日に購入していた1万通貨の買いポジションも4月10日に円安に戻ったため、ここでも10万円の利益を出すことができました。

ここで紹介したケースでは、最終的な利益はつなぎ売りなしの場合で10万円、つなぎ売りありのケースで15万円となっています。

日付為替レート【つなぎ売り
なしのケース】
売買
【つなぎ売り
なしのケース】
決済後の損益
【つなぎ売り
ありのケース】
売買
【つなぎ売り
ありのケース】
決済後の損益
1月10日100円1ドル100円で1万通貨購入1ドル100円で1万通貨購入
2月10日90円 1ドル90円で追加の5,000通貨をつなぎ売り
3月10日80円 1ドル90円で2/10につなぎ売りをした5,000通貨を買戻し5万円の利益
4月10日110円1ドル110円で1万通貨売却10万円の利益1ドル110円で1万通貨売却10万円の利益

スワップポイントで利益を狙う

複数口座間での両建ては禁止されている場合もあるため、以下の方法を利用するときは必ず各FX会社のルールをご確認ください。

スワップポイントは通貨ペアごと、またFX会社ごとに異なるため、この価格差を利用して利益を出すことができます。例えば、カナダドル/円をA社で1万通貨購入した場合のスワップポイントが105円、B社でカナダドル/円を1万通貨売りエントリーしたときのマイナススワップが▲95円だったとします。

【カナダドル/円を両建てしてスワップポイントを狙う】

 スワップポイント
A社で1万通貨の買いポジション105円
B社で1万通貨の売りポジション▲95円
合計10円

つまり、カナダドル/円の通貨ペアの場合、A社で1万通貨を買いポジションで、B社で売りポジションを1万通貨保有していれば、為替リスクを抑えて毎日10円のスワップポイントの利益が得られることになります。

ただし、スワップポイントは各国の中央銀行の金利によって変動します。また、A社、B社のどちらもスプレッドを負担することになるため、A社とB社で通貨を購入した際に生じるスプレッドも考慮して検討する必要があるでしょう。

FXで両建てをおこなう際の注意点

両建てを戦略的に利用することは可能ですが、基本的にどのFX会社も経済合理性を欠くという理由でおすすめをしていません。FX会社によっては、両建てを禁止しているところもあります。また、先に述べましたが複数口座間での両建てを禁止しているケースもあるため、両建てをするときは必ずFX会社のルールをご確認ください。

FX自動売買なら両建てや損切りなど面倒な取引が不要!

両建ては運用次第で、為替リスクを抑えて運用ができますが、両建ての売りや買いの注文を入れたり決済をしたりするタイミングを常に考えなければならないため、難しい取引手法です。

そこで、両建てのエントリータイミングなどを気にせず利益を狙いたい人は、FX自動売買を活用してみてはいかがでしょうか。インヴァスト証券の「トライオートFX」は、あらかじめプログラムを設定しておけば24時間、自動売買を繰り返すことで利益が狙えます。自動売買プログラムは必ずしも自分で設定する必要はなく、すでに用意されたものから選ぶことも可能です。

また、自動売買ツール「マイメイト」は、AIが現状に最適なポジションを常に学習し続けるという今までにない特徴を持っているので、ぜひ活用を検討してみてください。

関連記事:FXの自動売買とは?メリットやデメリット・初心者向けのコツ

まとめ

両建ては、活用方法によっては絶えず値動きをする為替レートのリスクヘッジになりますが、コストがかかることやロスカットのリスクが高くなるなど経済的合理性を欠くとの理由で、基本的にどのFX会社もおすすめをしていません。あくまで知識として、両建てにはどんなやり方があるか理解しておくと良いでしょう。