FX会社のサイトを閲覧していると、「スプレッド」という言葉をよく目にするかもしれません。スプレッドはFX取引にかかる実質的なコストにあたるものですが、トレードするうえで損益にもかかわる重要な問題です。また、このスプレッドは常に一定ではなく、急な相場変動要因で広がることもあります。
この記事では、スプレッドの計算方法や注意点について解説しています。FX取引で少しでも損失を避けたい人はぜひ最後までお読みください。
FXのスプレッドとは
FXを始めとした外貨取引では、外貨に「買値」と「売値」が別々に設定されています。スプレッド(spread)とは、広がりという意味があり、FXにおいては「買値」と「売値」の差額を表します。仮に、米ドル円の通貨ペアの買値が110.125円、売値が110.120円だとすると、買値と売値の差、つまりスプレッドは0.5銭です。
多くのFX会社では取引手数料を無料としていますが、このスプレッドはFX取引にかかる実質的なコストにあたります。そのため、FXのスプレッドはFX会社選びの重要なポイントと言えるでしょう。
スプレッドの表示単位は銭とpipsの2種類
買値と売値の差額であるスプレッドを表す単位として、「銭」ではなく「pips(ピップス)」が使われることがあります。pipsは「percentage in point」の頭文字をとったもので、各通貨ペアの最小変動幅のことです。pipの複数形がpipsになります。
1pipがいくらを表すかは、取引通貨によって異なります。米ドル円の他、ユーロ円、ポンド円といったクロス円は、1pip=0.01円(1銭)、10pips=0.1円(10銭 )、100pips=1円となります。また、GBP/USD(ポンドドル)、EUR/USD(ユーロドル)などのドルストレートなら、1pip=0.00001ドルとなります。
米ドルやクロス円 | ドルストレート | |
1pips | 0.01円(1銭) | 0.0001ドル(0.01セント) |
10pips | 0.1円(10銭) | 0.001ドル(0.1セント) |
100pips | 1円(100銭) | 0.01ドル(1セント) |
各通貨単位があるにもかかわらず、なぜpipsという単位を使う必要があるのでしょうか?それは、各通貨の値動きの変動幅を比較しやすくするためです。
もし、「米ドルが1ドル変動した」、「円が1円変動した」、「ポンドが1ポンド変動した」と表現をした場合、各国の通貨単位がバラバラなので、各通貨がどれくらいの値幅で動いたのか、変動幅を比較するのは難しいのではないでしょうか?
そこで、pipsという各通貨共通の単位が必要になります。「米ドルが1pip変動した」「円が1pip変動した」「ポンド円が1pip変動した」というようにpipsを共通の単位とすることで、各通貨がどれくらいの変動幅で動いたのか比較がしやすくなります。
一般的に「銭」は、通貨ペアが米ドル円の他、ユーロ円、ポンド円といった円がからむ通貨ペアのときに使われます。一方、「pips」は円を含む通貨ペアと、円を含まない通貨ペア共通の通貨単位です。
スプレッドの種類
スプレッドには、変動制スプレッドと固定スプレッドの2つがあります。2つの違いについて解説していきます。
変動制スプレッド
特定の要因によって、売値、買値またはその両方が変動する方式です。買値と売値のそれぞれが変動することで、スプレッドが広がったり狭まったりします。つまり、急にコスト負担が大きくなる局面が起こりうるということです。
固定スプレッド
固定スプレッドとは、スプレッドが固定されており、買値と売値が同じ幅で変動する方式です。つまり、スプレッドは常に一定に保たれるため、急にコスト負担が増加する心配はありません。
また、固定スプレッドのなかには、「原則固定スプレッド」としている場合もあります。原則固定スプレッドとは、急な相場変動要因があった場合は、例外的にスプレッドが変動することがある方式のことです。
FXでスプレッドが変動する原因
FX会社のスプレッドが変動するのは、インターバンク市場のスプレッドの変動が反映されるためです。
投資家とFX会社が直接取引をする店頭FXでは、顧客からの注文を受けて、インターバンク市場という金融機関専用のマーケットで売買を行っています。インターバンク市場では、絶えずスプレッドが変動していますが、急な相場変動要因があると、損失リスクを抱えるリスクが高くなるため、スプレッドを広げてでも取引相手を見つけたいケースがあるのです。
また、買い手と売り手が少ない(流動性が低い)通貨の取引も、取引相手が見つけにくいので、スプレッドは広がる可能性があります。
FXでスプレッドが広がりやすいタイミング
FXでスプレッドが広がりやすいのは、以下のようなタイミングです。
- 経済指標の発表
- 突発的な報道やイベント
- 流動性の低さ
いずれの要因も流動性という面で共通しており、流動性が低くなるとスプレッドは広がる可能性が高くなります。
経済指標の発表
各国中央銀行の政策金利や「米国雇用統計」といった重要な経済指標の発表前は、為替レートの大きな変動を嫌って取引を手控えるため、流動性が低くなります。
また指標の発表後は、指標の結果ふまえて多くの投資家が取引を再開するため、価格が一方的に変動する傾向があります。価格が一方的に変動すれば、取引相手を見つけることが難しくなるため、ここでも流動性が損なわれるのです。
突発的な報道やイベント
突発的な報道や、報道やイベントでもスプレッドは大きく変動します。大きなイベントがあると、一方的に価格が変動するため、取引相手が見つかりにくくなり、通貨取引の流動性は低下します。
過去に、ロシアのウクライナ侵攻や、新型コロナウイルスの感染拡大といった大きなニュースによって、FX会社がスプレッドの拡大や、レートの配信ができなくなる可能性を示唆する内容を公表したこともあります。
流動性の低さ
ロンドン市場やニューヨーク市場が取引している時間帯は多くの取引参加者がいますが、ロンドン市場が日本時間の夜中の2~3時頃終了し、ニューヨーク取引所の取引時間も終了する日本時間の朝5~6時頃になると、取引参加者は少なくなります。取引参加者が少なくなると、通貨の流動性が低下するため、スプレッドが広がる可能性があります。
その他、クリスマスや年末年始も欧米の投資家は休暇を取るため、流動性が低下し、スプレッドは広がりやすくなります。
FXのスプレッドによる取引コストの計算方法
FXの取引コストであるスプレッドの計算方法を、クロス円のケースと、その他通貨のケースに分けて解説します。
クロス円の計算方法
クロス円の計算方法は以下の計算式を使います。
通貨数×スプレッド
売値が110.120円、買値が110.125円で、10万通貨を取引したときのコストを計算してみましょう。
スプレッド0.005円×10万通貨=500円。
取引コストは500円ということになります。
クロス通貨の計算方法
自国通貨を含まないクロス通貨の場合は、以下の計算式を使います。
通貨数×スプレッド×為替レート
売値が0.99649ドル、買値が0.99653ドルで、10万通貨取引をしたときのコストを計算してみましょう。
スプレッド0.00004×10万通貨=4ドル×
米ドル円の為替レートを137円とすると、
4ドル×137円=548円 取引コストは548円ということになります。
FXのスプレッドに関する注意点
証拠金が少ない状態で、20~25倍といった高レバレッジで取引をすると、スプレッド分が原因で所定の証拠金維持率を下回り、売買した直後にロスカットが発生することがあります。
ロスカットとは、FX会社ごとに定められている証拠金維持率(自分で定められる場合もあります)を割り込むと、保有しているポジションをすべて自動的に清算する仕組みです。ロスカットはリスクの高いFXが取引で、投資家が大きな損失を負うことを防ぐセーフティネットとしての役割を果たしています。
ここからは、ロスカットの仕組みについて見ていきましょう。 ロスカットの基準となる証拠金維持率は以下の計算式で計算をします。
証拠金維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100
仮に有効証拠金が60,000円で、1米ドル130円で10,000通貨購入したとします。このときに必要な証拠金は52,000円で(レバレッジ25倍の場合)、証拠金維持率は、60,000÷52,000×100=約115%となります。
しかし、円高になり800pips(8円)下落したとすると、-8,000円の損失が発生し、有効証拠金は52,000円に低下します。このときの証拠金維持率は52,000円÷52,000×100=100%です。ロスカット水準を100%の場合、800pips(8円)より下落すると、ロスカットされることになります。
このロスカットの仕組みから、スプレッドが原因でロスカットが起こるのは、必要証拠金が少なく、証拠金維持率がロスカットギリギリの水準にしているためであることがわかります。
ロスカットを避けるためにはFX口座に追加で資金を投入して、十分な有効証拠金を用意しましょう。
FX会社の選び方はスプレッドだけではない
FX会社を選ぶうえで、スプレッドが狭いのは重要な要素ですが、それだけではありません。ここではFX会社を選ぶうえで、スプレッド以外に確認しておきたいポイントを紹介します。
●取扱通貨ペアは豊富か?
FXで扱える通貨は、資源価格が高騰すると強くなる通貨、金利が高い通貨、値動きが荒い通貨など、さまざまな特徴があります。有力な情報を得てチャンスだと思っても、自分が口座開設しているFX会社で希望する通貨の扱いがなければ、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。口座開設の段階で、取扱通貨が豊富なFX会社を選びましょう。
●約定力はあるか
約定力とは、投資家の希望通りの価格で注文を成立できる力のことを言います。希望する価格で取引できるのは一見当たり前に思えますが、FXでは指定していた価格で取引ができなかった、指定した価格よりも少し高い価格で買い付けてしまったという可能性があります。FXの損益に影響するので、約定力のあるFX会社を選びましょう。
●取引ツールは使いやすいか?
FXで売買チャンスを逃さないためには、取引ツールの使いやすさも重要な要素です。数多くのテクニカル指標を用意している、経済ニュースが充実しているなど、自分に合ったもの、あるいは、使いやすいものを選びましょう。
まとめ
FXのスプレッドはFX取引にかかる実質的なコストにあたるものです。そのため、FX会社を選ぶときは、なるべくスプレッドが狭いFX会社を選びましょう。
また、スプレッドが変動するFX会社と、固定または原則固定としているFX会社もあります。スプレッドはFXの損益にかかわってくる問題なので、スプレッドは固定または原則固定のFX会社を選ぶようにしましょう。