【南ア経済や政治の動向と南ア準備銀行の政策スタンス次第】
※本記事は2021年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。
【2022年の南アランド円相場を振り返って】
2022年の南アランド円相場は、年前半には堅調な上昇も、年後半に向けて、売りが強まる形となりました。
年初は、南ア準備銀行が、前年2020年7月以来の利上げに続いて、2会合連続で0.25%の利上げを実施、ロシアの突然のウクライナ侵攻を発端に、先進国の経済制裁もあって、大口の資源供給国であるロシアからの供給が滞るとの見方で原油や天然資源価格が上昇、これにともない金価格が上昇を強め、ムーディーズが南アの格付け見通しを「安定的」に引き上げたこともあって、金の世界シェアの半分をもつ南アランドの対ドル相場が上昇、加えて米FOMCが、金利引き締め政策に転じた一方、日銀が、日本の景気低迷から無制限で国債を買い入れる指値オペを再開、ドル円相場が2015年6月以来の高値となる125.85を越えて上昇を強めたことなどから南アランド円は8.75まで上昇を強めました。
ただ、その後はウクライナの戦争が長引くとの見方から株価が大きく調整したことで、上げ渋る展開も、南ア準備銀行が政策金利の引き上げを継続、原油価格が2008年来の高値をつけ、南アランド円は、8.82と2022年度中の最高値まで上昇しました。
しかしながら、ラマポーザ大統領の不正資金疑惑が高まり、安倍総理の襲撃事件もあって、南ア準備銀行が利上げ幅を0.75%に拡大するも、7.86まで売りに押され、夏場は保合気味の推移とました。
また9月にはドル円相場が1998年の高値となる146.66に迫る上昇を示現したことで、8.46の高値まで再上昇も、急速な円安を懸念する財務省・日銀が、1998年の円買い市場介入に踏み切ったことで、ドル円相場が151.95の高値をつけて急落、南アの第2四半期GDPが、洪水や電力不足の影響でマイナス0.7%に低下、暗号資産取引所のFTXのチャプター11申請を受けて仮想通貨相場が暴落、ラマポーザ大統領の弾劾裁判に対する懸念で、一時7.54まで急落、一応これは否決されて与党・アフリカ民族会議(ANC)の第55回党大会の党首選挙で、ラマポーザ大統領の再選が決定しましたが、今年最後の日銀金融政策決定会合で、YCC政策よる10年物国債変動幅の拡大を発表したことで、これが事実上の利上げと市場に捉えられたことで、ドル円相場が130円まで下落、南アランド円も上げ渋る形で2022年の取引を終了しようとしています。
【2023年の主な材料】
以下が現在、知り得る2022年のイベントや材料です。注目度の高いものは赤字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更される可能性があることは、ご了承ください。
リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は、米国の中間選挙を始め、欧州や日本の選挙、中国の共産党大会など大きなイベントがありましたが、2023年は材料の少ない年となりそうです。
そうなると南アランド円相場は、引き続きウクライナ情勢を睨んだ資源価格の動向、ラマポーザ大統領の経済政策、南ア準備銀行の引き締め策の動向次第となりそうです。
【2023年の注目点】
2022年の相場環境を踏まえて、2023年の南アランド円相場の注目点をまとめてみました。
・ 南ア経済と政治
・ 南ア準備銀行の金融正常化
・ 日銀の政策スタンスの変更はあるのか?
・ 南ア、日金利差との連動性は?
・ 薄れる金価格との連動性
〇 南ア経済と政治
南アは、かつて有色人種に対する人種差別(アパルトヘイト)で知られていましたが、1990年台に入って、ネルソン・マンデラの登場後は、アパルトヘイトを廃止。イギリス連邦と国連に復帰、民主化の中アフリカ最大の経済大国となっています。
資源では、金やダイヤモンドの世界的産地で、アフリカ大陸で最大のトウモロコシ生産国でもあり、アフリカ唯一のG20参加国です。近年では、ダイムラー、BMW、フォルクスワーゲンや日産自動車などが輸出拠点として、同国に工場を置いています。
ただその一方では、エイズの蔓延、教育水準の低い非白人の極端な貧困と格差、高失業率などにより治安の悪化が指摘されています。また、アパルトヘイト廃止後の電力需要の急増にも、発電所の建設が10年以上行われなかったため、2007年ごろから電力不足が大きな問題となっています。この電力不足が、鉱山の操業停止につながり、恒常的にストなどが発生、国民の政治に対する不安感を高めています。
2022年の南アの第1四半期の実質成長率は、オミクロン型変異株など発生によって感染が拡大した際も、政府が行動規制を行わず経済活動を優先していたことが功を奏し、新型コロナウィルス感染拡大以前の水準にまで回復しました。
ただ、ロシアのウクライナ侵攻によるサプライチェーンの混乱や輸入コスト増、加えて、クワズル・ナタール州での大規模な洪水の影響もあって、第2四半期は、前期比マイナス0.7%と縮小に転じました。
10月には、運輸公社トランスネットに対して労働組合が長期的なストライキを行い、物流や貿易などに影響を与えましたが、第3四半期の成長率は前期比でプラス1.6%まで好転しました。
総じて南アの低成長を招いている要因の1つに、深刻化する電力不足が挙げられています。電力公社エスコムは、発電所の修繕や盗電などに対する摘発を進めていますが、赤字が続いていることで、抜本的な解決には至っていないようです。引き続き南アの電力も問題は、南ア相場の懸念材料として残りそうです。
一方政治面では、南アは、アフリカでも数少ない複数政党制が機能する民主主義国家のひとつですが、2009年に大統領に就任したズマ大統領が、私邸の改修に多額の公金を使ったことや武器取引に関連して783件以上の汚職疑惑で辞任に追い込まれたように、政治に対する不安定な懸念が残っています。
その後鳴り物入りで就任したマポーザ大統領も、国営企業の改革には、成功したと言えません。また、今年6月には、汚職撲滅を掲げてきたシリル・ラマポーザ大統領に対しても、汚職疑惑が浮上しています。一応特別臨時国会での弾劾手続きは否決され、与党・アフリカ民族会議(ANC)党首選でも再任されていますので、一応の信頼は維持されているようですが、2023年もラマポーザ大統領の積極的な経済改革が、功を奏すのか期待されるところとなりそうです。
〇 南ア準備銀行の金融正常化
南ア準備銀行は、2021年11月の会合で、それまで最低水準としていた3.5%の政策金利を、3.75%に引き上げ後、1月と3月に0.25%、5月は05.0%、7月から11月まで3会合連続で0.75%の利上げを実施して、年末の時点では、7.00%まで政策金利を引き上げています。
11月の声明では、今後もインフレなどのデータ次第としながらも、引き締め気味の政策の継続が示唆されていますが、世界経済を眺めると米国や中国の景気が、2023年には、弱まる可能性を指摘しています。南アの2023年の成長率見通しも従来の1.9%から1.8%に引き下げていて、インフレの見通しは5.4%、2024年は、4.6%と見込んでいます。また、この会合では3名が0.75%の利上げを主張するも、2名は0.50%の利上げを主張、2023年第2四半期には、インフレが落ち着きを取り戻すと見込んでいるようです。
また、以下の南アの消費者物価指数の推移を見ておきましょう。南ア中銀がインフレの目標とする3-6%ゾーンを越えて、一時前年比で一時7.6%まで上昇しました。一方前回インフレ・ターゲットを越えた2016年も政策金利は7%までで収まっています。これも今後の経済状況次第ですが、利上げ幅の縮小や停止の可能性があることは、留意しておきましょう。
以下は、南ア準備銀行理事会及び政策金利公表予定です。1月から奇数月で、年6回開催されます。
01月26日
03月30日
05月25日
07月20日
09月21日
11月23日
〇 日銀の政策スタンスに変更はあるのか?
2022年12月20日の日銀金融政策決定会合で決定した「国債買入れ額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を、従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大するとの措置は、市場に大きなサプライズとなりました。これ以前に黒田総裁は、「YCCの変動幅の拡大は、実質利上げになる」と話していただけに、市場は日銀のスタンスの変貌と捉えたようです。ただ、同総裁は記者会見において、「これは利上げではない」と明言しています。
この真意は不透明ですが、直近では東京市場で、10年物国債の取引が成立しない日があったり、国債入札で応札が募集に満たない「札割れ」が発生したりと、日本の国債市場で流動性の低下が発生していました。確かに日銀が、日本国債の発行残高の半分も買ってしまっていることで、市場流動性が低下するのは必然といえますが、あくまで市場の健全な育成を司る金融当局としては、由々し難い事実であり、今回の措置はあくまで、流動性を確保するためのテクニカルな措置であったともいえそうです。そうなると日本銀行が、現在のマイナス金利政策を放棄し本当の利上げに踏み切ると考えるのは時期尚早なのかもしれません。
一方来年4月には、黒田総裁の任期が到来します。2023年2月頃には、この候補者が絞り込まれる見通しですが、現在日銀のプリンスと呼ばれてきた雨宮正佳現副総裁と幅広い国際的人脈を持つ前副総裁の中曽宏大和総研理事長、財務省からは浅川アジア開発銀行総裁、岡本元事務次官、また初の女性総裁として翁日本総合研究所理事長などが有力候補とされています。
過去日銀総裁人事は、財務省と日銀の出身者が、たすき掛けで総裁に就くという慣例がありましたが、黒田総裁の評価は高かったとしても、財務省畑の出身であり、現実的にも異例の2期10年となる過去最長の就任期間に、インフレ目標やデフレの克服ができたとは言えません。特に次の総裁には、現在行っている異例規模の国債買入や世界的に唯一マイナス金利を導入している日銀の出口戦略が大きな課題となりそうです。テクニカル面でも相当難しい判断が迫られそうです。その面では、副総裁を経験した日銀プロパーの2名となる可能性が高く、その場合本当の意味で、日銀が利上げスタンスに変貌する日が訪れるかもしれません。そうなるとドル円相場にも大きなインパクトを与えると思います。
2023年は、長らく市場から全く注目を集めなかった日銀金融政策決定会合が、大きな注目となる1年となりそうです。以下は2023年の日銀金融政策決定会合や議事録の公表日です。しっかりと押さえておきましょう。
日銀金融政策決定会合(議事録公表日)(01月23日)
01月17日-18日+展望リポート(03月10日)
03月09日-10日(05月08日)
04月08日:黒田総裁任期
04月27日-28日+展望リポート(06月21日)
06月15日-16日(08月02日)
07月27日-28日+展望リポート(09月27日)
09月21日-22日(3月10日)
10月30日-31日+展望リポート(12月22日)
12月18日-19日
〇 南ア・日金利差との連動性は?
金利面から考察した南アランド円相場との関連性も見ておきましょう。
以下は南アと日本の10年物国債の利回りと南アランド円相場を比較したチャートです。通常円相場は、比較的金利差と連想性が高いですが、ご覧のように2008年から2013年は比較的連想を示していますが、その後はあまり連動性が見えていません。
一方では、単純に南アの政策金利と南アランド円相場を比較した以下のチャートを見てみましょう。こちらは2002年から2007年を除くと、前述の南ア・日金利差を比較したチャートより、連動性が高いようです。
つまりこの2つのことを考えると南アランド円の投資家は、日本の金利の動向如何より、単純に南アの政策金利の動向を見ながら投資をしているようです。
2023年は、日銀の金融正常化が注目されていますが、日本の金利が上昇しても、南アランド円相場に悪影響は少なく、あくまで南ア準備銀行の政策金利の動向を睨んで、投資を考えるのが良いかもしれません。
〇 薄れる金価格との連動性
南アは、金、ダイヤモンド、プラチナなど鉱物資源が豊富ですが、特に金は世界の産出量の半分を占めています。
以下は金価格と南アランドの対ドル相場のチャートです。南アランドは、資源国通貨として有名ですが、2005年から2008年は、リーマン・ショックの影響やそれまで12%まで引き上げていた政策金利を、大幅に引き下げたことなど悪影響を与えています。
2009年から2018年は、総じて連動している形が見えていますが、直近では連動性が全く見えていません。特に金価格の上昇に南アランドの上昇が追いついていないようです。通常こういった連動性は、平常時に連動し易く、「緊急時=リスク回避」の動きの時は、連動し難くなるという傾向があります。
ちょうど2018年以降は、米国のトランプ大統領が、中国の大幅な貿易黒字に懸念を示して、対中圧力を強めた時期です。一部での「第2の冷戦」とまで囁かれるほど緊張が強まりました。この時期から金価格の独歩高が進んでいます。また、新型コロナウィルスの感染、ロシアのウクライナ侵攻と、リスク回避資産として金の需要が高まったようです。
そうなると今後もコロナウィルスやウクライナの情勢が、一服するような状況とならない場合、金価格に準じて、南アランド相場が連動するとは見ない方が良さそうです。
【テクニカル面】
テクニカル面からまず、南アランド円を構成するドル南アランド相場の長期月足をチェックしておきましょう。
ドル南アランド相場は、2011年頃から延々に堅調に推移しています。ズマ前大統領のやりたい放題の政策に対する国民の不満が高まったころから、特に上昇基調を強めています。一旦ラマポーザ大統領に対する期待感から17.2443から売り戻しも入っていますが、逆に期待感が強すぎたせいでしょうか、11.5028を安値に、ラマポーザ大統領就任直後から再び上昇を強め、新型コロナウィルスの感染拡大によるリスク回避の動きで、19.3365の高値をつけた後、13.4083まで再下落後、ウクライナ情勢を睨んで18.5812まで反発を強めています。
波動的には、
第1波=5.5857→11.7710
第2波=11.7710→6.5520
第3波=6.5520→17.2443
第4波=17.2443→11.5028
第5波=11.5028→19.3365
A下落=19.3365→13.4083
B上昇=13.4083→18.5812
C下落=18.5812→ ?
以上のように想定されます。現在は第5波の高値を示現後、ABC下落の形成過程ですが、既に19.3365から13.4083の下落でA下落を完了、次に18.5812でB上昇を示現しています。そうなるとこの18.5812が、レジスタンスとして機能して、次のC下落がどこまで実現できるかが、2023年の焦点となりそうです。ただ、下限のスロー・ストキャスティクスは、買われ過ぎにありますが、未だ反落は見えていません。まず、16.8980の戻り安値を割れる必要がありますが、その場合しっかりとスロー・ストキャスティクスにデッド・クロスが発生して、下落傾向が拡大しそうです。
その場合、17.5199、16.1120、特に14.4045-15.1683の戻り安値まではターゲットとなります。基本前述のように波動がC下落であれば、A下落の下値13.4083を割れるパターンが想定されますが、ただ、過去の上値と下値となる水色のゾーン、レベルとしては11.5028から13.8030となりますが、こういった位置は、5.5857から19.3365の上昇のフィボナッチ・リトレースメント50%の12.4611とざっくりと重なる位置です。この位置を当面割れる可能性は低いと考えておいた方が良いでしょう。もし割れても最終サポートの9.0000レベルは維持されると思います。
当然上値は、18.5812や19.3365を越えないことが条件となりますが、これを前提に、ドル南アランドの来年の想定レンジを、14.0000~18.0000としておきます。
次にドル円相場も見ておきましょう。
ドル円相場は、1990年の160.35の高値から、2011年10月の75.31まで下落後、2022年10月には、160.35の高値と、147.66や125.86の高値を結んだレジスタンスを越えて、151.95まで急反発しました。
特にこのチャートで注目して頂きたいのは、チャート形状から「F」の75.31をボトムとしたリバースH&Sを形成していることです。また現状は、このショルダー部分となるネック・ラインとなる「D」と「C」をクリアして、151.95の上ヒゲで、アーム部分「H」の形成を完了しています。このチャートの75.31の安値を基準に、ロールシャッハ・テストのように、左右対称を考えると次の展開は、再び「B」と同様に「I」の位置まで相場が下落する可能性があるということです。ただ、過去そこまで、チャート形状がぴったりとなるケースは、記憶にありませんので、今後の焦点は「D」と「G」のネック・ラインを維持できるのか、それとも割れる動きがあるのか、来年の相場では、大きな注目点となりそうです。
一応このネック・ラインが維持されるなら、再度「J」を目指す可能性も残っていますが、ネック・ラインを割れて来ると特に過去の動きでは急激な円高となっており、スピードが加速する可能性に注意しましょう。
また次のチャートは、同様のチャートから一定の波動を見たチャートです。
160.35の高値から75.31まで下落しましたが、波動からは第7波で一旦底値を見ているようです。この話を聞くと若干不思議に思う方もいると思います。一般的にエリオット波動からは、5つの波動とABCの上下波動で最終的に完了することが定説とされています。ただ、私の経験からは為替市場では、7波や9波で相場を完了するケースが多くあります。またこの考えを除いても、既に151.95まで上昇した相場であれば、160.35からの下落は一旦終わっているはずで、そうなると次の注目は75.31からどういった波動形成となるかです。
ただ、その場合も①の上昇後の②波の位置が、最初の段階で①を越えておらず、不透明な感じとなっています。そのため、現在では99.02と102.59を「②と②‘」として勘案しています。これは次の展開を見なければなりませんが、少なくとも①の高値が、逆に下値を支えると次の第5波の上昇を迎えることができるでしょう。その場合③の151.95を越える160.35がターゲットとなります。つまり前述のリバースH&Sのケースで申し上げたネック・ラインが、こちらでも重要で、2023年の相場は、これが維持されるのか、割れるのかで相場付きが大きく変わることは留意しておいてください。
以上を勘案して、ドル円相場の2023年の想定レンジを126.00から140.00とします。
以下にドル南アランドとドル円の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を作成しています。
ドル南アランドのレンジを14.0000~18.0000、ドル円を126.00~140.00としましたので、ここから算出される南アランド円の最大想定レンジは7.00から10.00、狭く見ても7.53から9.20となります。
それでは、最後に南アランド円の月足を見てみましょう。
5.61の安値まで下落しましたが、この位置で下げ止まりを見せての反発が、マイナー・レジスタンスを越えるも8.82で上値を押さえられています。
波動的には、
ABC下落=17.78→7.64
第1波=13.10→8.68
第2波=8.68→10.82
第3波=10.82→6.40
第4波=6.40→9.30
第5波=9.30→5.61
となり、5波の下落を完了後、現在は小さな上昇波動を描いて反発しています。
ただ、8.82が上値を押さえて、下段のスロー・ストキャスティクスがデッド・クロス気味であり、早期は下値押し圧力が残りそうです。その場合7.54を割れると7.14-40,7円前後、6.94の戻り安値を割れると6.66-89などがサポートとして維持できれば、良いですが維持出来ない場合、5.96-6.39ゾーンなども視野となります。これも維持出来れば更に突っ込み売りは出来ませんが、リスクは、5.61の歴史的な安値を割れるケースで、その場合想定は難しいですが、サイコロジカルな5.50や5.00などまでの下落リスクとなりそうです。
一方上値は、既に8.45が押さえると弱く、あくまで8.82を超えて、9円前後のレジスタンス、9.30を超えて9.87-10.45ゾーンなどが視野となりますが、第2波のトップ圏となる10.82や11.24を越えるまでは、更に上昇期待は厳しそうです。
以上から2023年の南アランド円の想定レンジを、マトリックス・チャートも参考に7.00から9.00とします。ただ、下値のサポートを見る限りは、6.50ぐらいの下落リスクもあるかもしれません。
【予想レンジと戦略】
それでは、以上を踏まえて、南アランド円相場の今年の戦略についてお話します。
一応来年は、過去のような新型コロナウィルスの感染拡大やウクライナの情勢が更に悪化しないとの前提でお話させて頂きます。
今年の南アランド円の想定レンジを7.00~9.00としました。
戦略的な前提としては
・南ア準備銀行は、利上げ姿勢を継続すると見られますが、来年ペースを鈍らせる可能性がある一方、日銀が金融正常化に舵を切る可能性が残ることで、南アと日本の金利差縮小リスクがある。
・日本の国際収支の悪化や原油・資源高が、円の上値を抑える可能性がある。
・テクニカルから南アランド円とドル円の月足のスロー・ストキャスティクスが、デッド・クロスを示しており、早期は下落リスクが高そう。
・注意点としては、やはりウクライナ情勢です。もし、プーチン大統領が核の使用などに走った場合、リスクオフの展開となりますが、一方で早期に停戦合意となった場合は、リスクオン相場の動きが強まる可能性は留意しておきましょう。
タイミング的な注意点は
また、タイミング的な注意点は
① 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。
② 株価面では、来年前半は今年の流れを引き継いで弱い可能性があり、リスクオフが広がり易い。ただ、年後半に向けては、FRBの利上げ停止などが株価を支え、リスクオンの動きが期待される。
③ ドル円は、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意です。ただ逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。
④ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。
来年のスウィング・トレードの戦略としては、早期は調整のリスクがありそうです。あくまで押し目を待って買い場をさがしましょう。できれば7円に近いレベルへの下落から買い狙いです。ストップを6.94割れとするか、さもなくば6.50まで買い下がりの余裕を持って対応しましょう。理想的は6円まで買い下がれればより良いですが、5.61を割れるなら止める前提となります。一応ターゲットは、下落が先となった場合、7.87-8.03の窓の上限が押さえると弱く利食い、超えても8.45が押さえると利食いながら対応しましょう。あくまで8.82を超えて、9円前後をターゲットとしますが、こういった位置はレジスタンスが残っていることで、しっかりと利食っておきましょう。
※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。