【トルコ大統領選挙が最大の焦点】
※本記事は2022年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。
【2022年のトルコリラ円相場を振り返って】
2022年のトルコリラ円相場は、前年年末に新たに就任したネバーティ財務相が、「個人の為替変動による預金の損失を補填する」政策を発表したことで乱高下を演じた後、年初から突然ともいえるロシアのウクライナ侵攻が、大きなショックを巻き起こし、西側先進諸国がロシアに対する経済制裁を次々と実施。大口の資源供給国であるロシアからの供給が滞るとの見方で原油や天然ガス価格が高騰、他の天然資源や穀物価格の上昇にもつなり、各国のインフレが上昇、世界的に中央銀行が金融引き締め政策を開始する一方で、トルコ中銀が、年央から政策金利の引き下げを開始したことで、トルコリラ円は戻り売りに晒される形となりました。
トルコリラ円は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、7.67まで下落後、米FOMCが利上げスタンスに突入したことで、ドル円が2015年6月以来の高値となる125.85を越えて上昇、トリコ政府が、民間部門に対して外貨からリラへの資金移動を促す「リラ化政策」を発表したことで、8.85まで反発後は、フィンランドとスウェーデンがNATO加入を申請、これに対してNATO加盟国であるトルコが、クルド人問題でこれに反対、7.68まで下落後、バイデン大統領の仲介で、一転加盟を支持したこと、ウクライナ穀物の輸出再開もあって8.35まで反発も、3大格付機関であるフィッチ、ムーディーズやS&Pが、7月から9月にかけて相次いでトルコのソブリン債格付けを引き下げ、インフレの高騰にもトルコ中銀が、8月にサプライズ的に2021年来12月以来の1%利下げを発表しました。
その後もトルコ中銀が3回会合連続で1%の利下げを実施、ドル相場が、1998年来の高値151.95まで上昇したこともあって8.19まで反発も、急速な円安を懸念する財務省・日銀が、1998年の円買い市場介入に踏み切り、暗号資産取引所のFTXのチャプター11申請を受けて仮想通貨相場が暴落、トルコ中銀が2会合連続の1.5%の利下げを発表後、9%まで引き下げた政策金利の当面の引き下げを停止すると発表するも、本年最後の日銀金融政策決定会合で、YCC政策よる10年物国債変動幅の拡大を発表したことで、これが事実上の利上げと市場に捉えられたことで、トルコリラ円は、今年の最安値6.98まで値を下げて、2022年の取引を終了しようとしています。
【2023年の主な材料】
以下が現在、判明している今年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更されることがあります。
リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は、米国の中間選挙を始め、欧州や日本の選挙、中国の共産党大会など大きなイベントがありましたが、2023年は材料の少ない年となりそうです。
ただ、トルコに関しては、6月に実施される大統領選挙と議会選挙が大きな焦点となります。特に現エルドアン大統領が、中銀に介入して過去気に入らない中銀総裁を、次々の更迭。自身の主張である低金利政策を中銀に押し付ける形で、トルコリラ相場が、下落を続けています。来年の選挙で、エルドアン大統領が再選を実現できるか、どうかでトリコリラ相場は、明暗を分けそうです。
【2023年の注目点】
2022年の相場環境を踏まえて、2023年のトルコリラ円相場の注目点をまとめてみました。
・ トルコの概要
・ トルコ経済
・ トルコ大統領選挙
・ トルコ中銀のスタンス
〇 トルコの概要
トルコは、アジアとヨーロッパの2つの大州にまたがり、北は黒海、南は地中海に面し、西でブルガリアとギリシャ、東でジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン、イラン、イラク、シリアと接しています。
古代から東西交通の要となっており、国家としても過去いくつかの支配の変遷がありましたが、13世紀からは「オスマン帝国領」となり、1923年にケマル・アタチュルクによって、現在のトルコ共和国が生まれています。
トルコには、トルコ人以外にもクルド人、クリミア・タタール人、アラブ人などの少数民族が多く、住民の97%がイスラム教徒ですが、地理的な特殊性から不安定な政情が続きました。第二次大戦後は、ソ連と国境を接することで、トルコは冷戦の最前線基地となり、その後も中東紛争の重要な拠点として、近隣諸国との軋轢や民族紛争など常に対立や混乱が続いています。
その政変や軍事クーデターが続いていたトルコで、安定政権の樹立に成功したのが、現トルコ大統領の「レジェップ・エルドアン氏」です。
2002年に同氏が率いる公正発展党(AKP)が単独与党の座を獲得するや落ち込んでいた経済の立て直しに着手しました。2004年にEU加盟交渉国となり、海外からの投資が相次ぎ経済も大きく発展しました。
しかし、エルドアン大統領が率いる公正発展党はもともと親イスラム政党であり、政教分離を快く思っていなかったエルドアン氏と政教分離を守ろうとする軍部との対立が次第に激化し、遂に2016年には、エルドアン大統領の追い落としを狙った「軍事クーデター」が発生しました。この時も、トルコリラ相場は、大きく調整しました。公正発展党による低所得者対策などが功を奏し、国民がクーデターを支持しなかったことでクーデターは、失敗に終わりましたが、現在もエルドアン大統領の独裁的・強硬姿勢から政権の不安定さは続いています。
またコロナウィルスの蔓延、ロシアのウクライナ侵攻を受けた商品や穀物価格の高騰で、トルコのインフレは、既にハイパーインフレ状態です。一方エルドアン大統領は、全く考えを変えず、トルコリラの歴史的な下落が続いています。国民の不満も高まっていますが、2023年の総選挙を睨んで、高騰するインフレやトルコリラ安を食い止めることが出来ない場合、エルドアン大統領の立場も厳しくなりそうです。
〇 トルコ経済
トルコは、中東の国ということで情報が少なく、ファンダメンタルズ的な判断をすることがなかなか難しいですが、ただ、国力を見る上で、一番端的な判断基準となるGDPの規模をみるとトルコのGDPは、2018年度の推計で、世界18位の位置にあります。これは、新興国・高金利通貨として人気の高いメキシコの15位、南アフリカの33位と比べても、それほど悪い位置ではありません。
産業面では、工業は軽工業が中心で、繊維・衣類分野の輸出大国です。また、世界の大手自動車メーカーが、トルコに財閥と合弁で工場を持っていることから、ヨーロッパ向け自動車輸出が盛んで、観光収入と合わせて、有力な外貨獲得源になっています。
またトルコの国土は鉱物資源に恵まれています。ただ、中東の国ですが、石油・天然ガスなどは自国では賄えていません。そのため、恒常的に経常赤字国で、加えてトルコ中銀がトルコ安の防衛のためにドル売り介入を行っています。また個人や法人の預金などの為替差損を補填する政策を行っていることで、外貨準備が不足しています。更にトルコ安が進んだ場合に、防衛するのはなかなか難しくなることは、留意しておいた方が良いでしょう。
加えて現状は新型コロナウィルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻で、世界的にインフレが悪化、2023年には、世界的な景気減速が指摘されています。以下は、トルコの製造業PMIのチャートです。
一旦新型コロナウィルスの感染拡大での大幅下落からは、一時持ち直しましたが、また、景気の分水嶺となる「50」を割り込んでいます。一時の「33.4」までの下落は想定しないとしても、2023年はトルコ経済には厳しい状況が続きそうです。
〇 トルコ大統領選挙
トルコ共和国建国100周年を迎える2023年に、トルコの大統領選挙と議会選挙が実施されます。
大統領選挙に関して、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領率いる最大議席の公正発展党(AKP)と2016年末から同党と協力関係を結んだトルコ・ナショナリズムを前面に押し出す民族主義者行動党(MHP)の与党連合が、既に現職のエルドアン大統領を候補とすることを決定しています。
エルドアン大統領に関しては、過去いろいろと、その独善的な姿勢で物議を醸していますが、特に同氏が金融政策にまで大きく関与し、自分の政策に合わない財務大臣や中央銀行総裁を次々に更迭するなど、トルコリラ相場に波乱を巻き起こしています。
米シンクタンクのカーネギー国際平和財団は、高金利を嫌うエルドアン大統領の思考に、次のような特徴を指摘しています。
1.利下げにより企業の借入コストが低下しインフレ抑制につながるという認識がある。
2.利下げによる自国通貨安は輸出・観光産業を支援し、最終的には景気回復と通貨高につながるという認識がある。
3.利子を禁止するイスラム教の教えを重視している。
4.エルドアン大統領の主要な支持層である建設・不動産セクターにとって低金利環境が望ましい。
特に、「利下げによりインフレ抑制につながる」との認識は、経済学の基本から完全に逸脱しています。確かにこれが実現できれば、凄いことになるとしても、IMFなどもトルコ中銀に対して、利上げによるインフレ抑制を促しています。こういった面が、トルコの格下げにもつながっている訳で、このままでは海外からの投資も集まってこないでしょう。エルドアン政権が続く限り、トルコリラ相場の将来は厳しそうです。
ただ、現在のエルドアン大統領の支持率は、過去の50%割れから、最低賃金の大幅引き上げや社会住宅プロジェクト、低所得層への家族支援、年金支給問題の解決策の発表などで、以下の通り回復を示しているようです。
一方対抗馬に関しては、野党有力候補で、2019年に行われた市長選で与党AKP(公正発展党)を破り当選した、トルコ最大都市イスタンブールの市長を務めるイマモール氏が注目を集めています。ただ、今年12月14日に、選挙管理委員を侮辱した罪で禁錮2年7カ月半と政治活動を禁止する判決が、同氏に言い渡されています。今回の判決に対して野党支持者が反発を強め、イスタンブールで抗議集会が実施されており、イマモール氏も上訴する方針ですが、仮に上訴審で今回の判決が支持された場合、市長辞任を余儀され選挙に出馬できなくなると最大野党の共和人民党(CHP)には大打撃です。
現在共和人民党は、野党6党で「6人のテーブル」とも言われる同盟を組んでいますが、イマモール氏が選挙に出られないとなると候補者選びはかなり混乱しているようです。
ともかく、今後どういった展開となるかは不透明で、その推移を見ながら、トルコリラ投資を考える必要がありますが、現状はエルドアン大統領の優勢が伝えられているようです。
〇 トルコ中銀のスタンス
元来中央銀行の役割は、金融システムやインフレ率を安定させることです。特にインフレ率の調整は、中央銀行が決定する政策金利をベースに調整されます。これが政治や外部の圧力によって、正常に決定されない場合、金融市場に混乱が起きることは歴然としています。
以下はトルコの政策金利と10年物国債利回り、消費者物価指数のチャートです。
現在、消費者物価指数は、前年比で85%台まで上昇する一方、政策金利の引き下げに準じて、長期金利も低下しています。
過去エルドアン大統領が、2020年11月に、チェティンカヤ中銀総裁を更迭、2021年3月には、インフレ抑制に強い意志を示し、利上げを実施したアーバル総裁を在任期間約5カ月で更迭、エルドアンよりと言われているカウジュオール現総裁は、今年8月には、エルドアン大統領の圧力で、利下げを実施。ウクライナ情勢の影響で、原油や穀物価格の高騰もあって、インフレ率が大幅に上昇する中、利下げするとは全くの驚きです。流石に現在は9%まで引き下げた後、据え置きを発表していますが、来年の大統領選を睨んで、人気取りの圧力もかかりそうです。少なくとも選挙までは据え置きを維持してもらわないと、トルコリラ円の下落傾向は続きそうです。
また、一昨年に打ち出した。「為替変動による個人の預金損失を補填する制度」や「リラ化政策」が、この1年トルコリラ相場を支えてきました。ただ、この個人の預金保護は、発表時に1年間に限定されていました。そうなると既に12月には、この期限に到達します。現在のところ、この制度が延長されたとの話は聞こえてきていません。何か新たなトルコリラ相場を支えるような政策が打ち出されないと、今後もトルコリラ相場は厳しそうです。
以下がトルコ中銀の政策金利と議事録の発表日です。今年も毎月政策金利決定会合が開催されますが、中銀の政策や声明の変化には、十分注意を払っておきましょう。
トルコ中銀政策金利発表(議事録公表)
01月19日(01月26日)
02月23日(03月02日)
03月23日(03月30日)
以下は、推定したスケジュール
04月20日(開催後5営業日)
05月25日(開催後5営業日)
06月22日(開催後5営業日)
07月20日(開催後5営業日)
08月24日(開催後5営業日)
09月21日(開催後5営業日)
10月19日(開催後5営業日)
11月23日(開催後5営業日)
12月21日(開催後5営業日)
(正式に決定後、実際段階的に中銀HPに発表)
【テクニカル面】
テクニカル面からまず、トルコリラ円を構成するドル・トルコリラ相場の月足をチェックしておきましょう。
一過性の上昇や歴史的な高値で、テクニカル面で不透明感が強いですが、ともかく現状は2021年12月に18.3554で大きな上ヒゲとなった後、下値を10.3130で支えて、再度18.9052までじりじりと上値を拡大しています。また下段のスロー・ストキャスティクスは、確かに買われ過ぎにありますが、デッド・クロスにはまだ至っていません。上値拡大の余地もありそうですが、歴史的高値にあってポイントを算出することは難しいです。一応サイコロジカルから見れば、20.0000などがターゲットとなる可能性が残っていますが、上ヒゲを出すような動きが見えないと調整する可能性は低そうです。
一方下値は、この18.9052が史上高値と決まったわけではありませんが、18.9052と0.9471の上昇前の安値との50%が1.41897となることで、戻り安値の14.7144と合わせて、もし、現状の高値で上値を押さえられても、この位置が維持されると強い形となりそうです。また更に割れても9.4741から13.2695の窓は上昇サポートに支えられ、ざっくりですが1.1465の安値から18.9502の50%となる10.0259と合わせて、当面維持される可能性が高そうです。ただ、こういった位置を割れると過去の高値からは7.1359-8.5821の水色のゾーンもターゲットとなりますが、最終サポートからは維持される可能性が高いでしょう。
従って、2023年のドル・トルコリラ相場の想定レンジを15.0000から20.0000程度とします。
次にドル円相場も見ておきましょう。
ドル円相場は、1990年の160.35の高値から、2011年10月の75.31まで下落後、2022年10月には、160.35の高値と、147.66や125.86の高値を結んだレジスタンスを越えて、151.95まで急反発しました。
特にこのチャートで注目して頂きたいのは、チャート形状から「F」の75.31をボトムとしたリバースH&Sを形成していることです。また現状は、このショルダー部分となるネック・ラインとなる「D」と「C」をクリアして、151.95の上ヒゲで、アーム部分「H」の形成を完了しています。このチャートの75.31の安値を基準に、ロールシャッハ・テストのように、左右対称を考えると次の展開は、再び「B」と同様に「I」の位置まで相場が下落する可能性があるということです。ただ、過去そこまで、チャート形状がぴったりとなるケースは、記憶にありませんので、今後の焦点は「D」と「G」のネック・ラインを維持できるのか、それとも割れる動きがあるのか、来年の相場では、大きな注目点となりそうです。
一応このネック・ラインが維持されるなら、再度「J」を目指す可能性も残っていますが、ネック・ラインを割れて来ると特に過去の動きでは急激な円高となっており、スピードが加速する可能性に注意しましょう。
また次のチャートは、同様のチャートから一定の波動を見たチャートです。
160.35の高値から75.31まで下落しましたが、波動からは第7波で一旦底値を見ているようです。この話を聞くと若干不思議に思う方もいると思います。一般的にエリオット波動からは、5つの波動とABCの上下波動で最終的に完了することが定説とされています。ただ、私の経験からは為替市場では、7波や9波で相場を完了するケースが多くあります。またこの考えを除いても、既に151.95まで上昇した相場であれば、160.35からの下落は一旦終わっているはずで、そうなると次の注目は75.31からどういった波動形成となるかです。
ただ、その場合も①の上昇後の②波の位置が、最初の段階で①を越えておらず、不透明な感じとなっています。そのため、現在では99.02と102.59を「②と②‘」として勘案しています。これは次の展開を見なければなりませんが、少なくとも①の高値が、逆に下値を支えると次の第5波の上昇を迎えることができるでしょう。その場合③の151.95を越える160.35がターゲットとなります。つまり前述のリバースH&Sのケースで申し上げたネック・ラインが、こちらでも重要で、2023年の相場は、これが維持されるのか、割れるのかで相場付きが大きく変わることは留意しておいてください。
以上を勘案して、ドル円相場の2023年の想定レンジを126.00から140.00とします。
加えてドル・トルコリラとドル円の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を作成しています。
ドル・トルコリラを15.0000~20.0000、ドル円を126.00~140.00としましたので、これから算出されるトルコリラ円の最大想定レンジは、6.30から9.33、少し広いので適正レンジとして6.83から8.49とします。
それでは、最後にトルコリラ円の月足を見てみましょう。
トルコリラ円は、リーマン・ショック前の2007年の高値99.65から、リーマン・ショックで52.30まで下げた後、反発を66.90で限定して、下落傾向を続けています。細かくカウントすると11波連続で下げているような状況で、遂に2021年12月には、6.17と歴史的な安値まで下落しました。
なんと高値から16分の1の価値まで下落していて、テクニカル的に分析することに意味があるか不透明です。また、そこからの反発も8.85で限定されており、下段のスロー・ストキャスティクスも売られ過ぎから全く回復できていません。
下値は歴史的安値圏で、想定が難しいですが、まずはサイコロジカルな6.50、6.17を割れて、6.00や5.50、更に5.00までターゲットとなるのか、注意しておいた方が良いでしょう。
一方上値は、8.18-35の戻り高値が押さえると弱く、あくまで8.85を越えて、サイコロジカルな9.00-10.00、11.10や12.02がターゲットとなりますが、こういった位置には更にレジスタンスが控えています。15.26-46などを越えないとあく抜け感は見えないでしょう。当面、余程のことがない限り、こういった上昇を期待するのは難しいと見ています。
月足だけでは、分かりづらいので直近の日足も見ておきましょう。
昨年の6.17への下落後、11.20に反発後は、ほぼこの半値となる8.85が押さえて、じりじりと下落が続いています。一応現状の下落チャンネルと見ると8.85から7.24への下落幅となる1.61を8.18から下げた位置が6.57となりますので、最低この程度までの下落は想定した方が良いでしょう。ただ、こういった位置やサイコロジカルな6.50が維持されれば良いですが、前述の月足で述べたように、維持できずに6.17を割れると、サイコロジカルな6.00や5.50、5.00などがターゲットとなる可能性が残っていることは注意しましょう。
一方上値は、既に日足の雲の位置からも7.20-40が押さえると弱く、超えても7.64や8.00では売りが出易いでしょう。あくまで8.18や8.35の戻り高値を越えて、8.85方向への期待感ですが、これも不透明です。越えても9.23-90、10.52-71なども厳しく、やはり11.20を最低でも超えないと上昇期待を持つのは難しいでしょう。
従って、マトリック・チャートも参考に、2023年のトルコリラ円の想定レンジを6.50から8.00とします。最大でも6.00から8.50と見ておきたいと思います。
【予想レンジと戦略】
それでは、以上を踏まえて、トリコリラ円相場の今年の戦略についてお話しします。
一応来年は、過去のような新型コロナウィルスの感染拡大やウクライナの情勢が更に悪化しないとの前提でお話しさせて頂きます。
来年のトルコリラ円の想定レンジを6.50から8.00、最大で6.00から8.50としました。レンジの下限に関しては、若干自信はありませんが、最低でも6.17の安値が守られればと思います。
次に戦略の前提としては
・トルコ中銀は、現在利下げを停止していますが、インフレの状況次第も、最低でも大統領選が終わるまでは、更に利下げがないことが価格維持に必要です。
・トルコ大統領選の結果次第で、大きく荒れるリスクがあることは覚悟しておきましょう。その場合ですが、エルドアン大統領が再選されれば、失望のトルコリラ売りが出るでしょう、一方敗退した場合、一気にトルコリラが急上昇するでしょうが、ただ、それでもトルコの将来は不透明で、もし買建てを持っているなら、一旦利食って置くのも一考となりそうです。
・トルコリラ円の場合は、日銀の金融スタンスの変更や日本の国際収支の悪化などの影響はほとんどないでしょう。
・テクニカルからトルコリラ円やドル円の月足のスロー・ストキャスティクスが、現状はデッド・クロスを示しており、早期は下落リスクが高そうです。
・注意点としては、やはりウクライナ情勢です。もし、プーチン大統領が核の使用などに走った場合、リスクオフの動きが広がることで、新興国通貨にも資金逃避が起こり易いので注意です。一方で、早期に停戦合意となった場合は、リスクオンの動きですが、トルコリラ円に関しては、トルコ経済自体が、ドラスティックな改善を見せない限り、あまり期待しない方が良いでしょう。
中長期のスウィング・トレードを前提にお話しします。
流石にこの歴史的な安値圏で、売ることは得策とはていません。あくまで押し目があれば買い場を探しますが、まずは6円ミドルまでの下落で、下げ止まりを確認しながら買って、ストップを6.17割れとするか、腹を括って投資するスタンスなら6.00から5.00まで、レバレッジを押さえて買い下がりの余裕を持って対応しましょう。
ターゲットは、8.85を越えないなら利食い優先。越えても11.20を越えるまでは、しっかりと利食いながら対応しましょう。理想的は11.20や12.02を越える動きですが、そういった動きが来年実現できるかは不透明ですが、一応その場合、15.26-46がターゲットとなります。
※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。